魔王を倒した。帰還前にちょっと別の惑星に行くことになった。そこは男女比があべこべで男が断然多かった。でも、女に囲まれた。

笹くれ

文字の大きさ
1 / 3

前編

しおりを挟む
 カズヤは日本の高校に通うごく普通の学生だった。ある日、異世界に勇者として召喚されてしまう。地球に帰還するには魔王を倒さなければならないと言われる。カズヤは家族や友人に再び会うため魔族との戦いに明け暮れる。何度も死線をさまよった末、三年後の今日、ついに魔王を討ち倒した。

 カズヤは今、天界にいる。カズヤを召喚した女神と向き合っている。早く地球に帰還したいと、そわそわしていたが、告げられた言葉は望むものではなかった。「君は地球に帰せないかな」「強くなりすぎ。魔王を単独撃破って何?」「地球に帰したら第二の魔王になる危険がある」カズヤは第二の魔王なんてならないと反論したが、女神は聞かなかった。

 女神はある提案をする。「君、私の眷属神にならない? そうしたら地球に帰還を認めよう」「眷属神なら、たとえ悪さをしても私が処罰できるからね」地球に帰還したいカズヤには選択肢がなかった。眷属神、つまり神になるには「試練」を達成しないといけないらしい。カズヤは女神のすすめられるまま、試練があるという地球とは別の惑星に行くことになった。

 カズヤは女神の転移で惑星に到着する。眼下に広がるのは雄大な海。女神によると、この惑星の99%が海で、陸地は島が数える程しかない。今いるここは最大面積の島だった。そして、カズヤの背後には、白亜の塔があった。天高くそびえ立っている。あれが試練の塔、全100階層。神になるにはあの塔の頂に辿りつく必要があった。

 カズヤが塔を眺めていると、人影が近づいてくる。だが、それは人間ではなかった。全身がメタリックカラーのアンドロイドだった。「失礼、身元不明の不審者様」「アナタの生体情報はデータベースに登録されていませン。不具合の可能性がありまス。シティズンナンバーを提示してくださイ」カズヤは迷ったが、正直に自分が別の星からの来訪者であることを語った。

 アンドロイドは目を光らせながら、「なるほド、興味深いお話でス」「いエ、疑っていませン。アナタが現れる直前、空間歪曲反応を観測しましたのデ」カズヤは信じてもらえたことにほっとする。アンドロイドにシティズンナンバーを発行してもらう。これでこの島での滞在が許可されたらしい。カズヤはさっそく試練の塔へ向かうことにする。

 が、アンドロイドがそれを待ったした。「塔にはモンスターがいまス。軽挙妄動は命がお陀仏になりまス」カズヤは心配は無用だと笑った。魔王を倒した勇者にとってモンスターなど怖くはない。「あとそれから、塔にはギミックが――」アンドロイドはまだ何か言っていたようだが、カズヤはすぐに塔を攻略してやると気合いをいれた。

 30分後、カズヤは再び海岸に戻ってきていた。両手両膝をついてうなだれている。カズヤの初挑戦の結果はというと、1階層もクリアできなかった。モンスターは弱かった。だが、ギミックがあった。通路にボタンがあって、それを押したままの状態でないと、正解のルートが開かないのだ。つまり、あの塔の攻略には必要人数が2人以上だった。

 カズヤが落ち込んでいると、頭をなでられる。さっきのアンドロイドが側で慰めてくれていた。カズヤは感謝し、改めて名前を聞いた。「ワタシに名前はありませン。型番号はF-4510Eでス」末尾をとってマルイと呼ぶことにした。ちなみに、鋼鉄製の胸はふくらみがあることから女型であった。

 カズヤが名案を思いつく。マルイに手伝ってもらえばいい。それにマルイが反論した。「塔のギミックは生命体だけに反応しまス」「あいにくワタシのボディーに血は通っていませんのデ」カズヤは残念に思うが、気を取り直し、マルイに街へ案内してもらうことにした。そこには人が多くいるらしい。仲間を探すにはうってつけだろう。

 街に着いた。建物は現代日本と代わり映えしないビルだ。だが、カズヤはその景色に違和感を覚えた。そして気づく。男だ。通行人が男ばかりなのだ。不審に思い、マルイに聞く。「本島の人口は1万人ですガ、そのうち女性は100人で、残り全てが男でス」「男女比は1:100、男だらけなのは当然の帰結でス」それを聞いたカズヤは唖然とした。

 あるビルの巨大スクリーン。そこに男たちが集まり出す。カズヤが何事かと思い見ていると、スクリーンにお姉さんが映る。アンドロイドではなく、人間だ。「只今、午後四時をお知らせします」時報、それだけだ。だが、男たちは大興奮。「うぉおおお!!!」「おっぺえ! おっぺえ!」全員が全員、目をぎらつかせて、腰を振り、竿ダッチしていた。カズヤはその光景に絶望した。

 カズヤはマルイの紹介で宿をとった。アンドロイドの受付だ。部屋に入ると、即座にベッドに倒れ伏した。もう仲間を集められる気がしなかった。この島では希少な女は特別区画に隔離されていて、男たちは女と直接触れ合う機会はない。だから画面越しでもあんなに興奮するらしい。カズヤとしては出来れば彼らとお近づきになりたくなかった。ならば、塔をどう攻略するべきか頭を悩ませていると、部屋までついてきたマルイが膝枕してくれた。メタリックなふくらはぎは固かった。

 翌日、カズヤは再び塔の前にいた。隣にはマルイもいる。「ワタシのストレートは岩をくだきまス」マルイはむんと胸を張る。ついてくる気らしい。周りには他の男たちもいる。塔前にあるクリスタルに触れると、彼らの姿が消える。攻略済みの階層までは自由にワープできるらしい。もちろん、カズヤはワープできないが。

 塔の中のモンスターを倒せば、魔石が手に入る。魔石は工業エネルギーとして利用価値があり、それがそのままこの島では金銭となっている。産業の全てがアンドロイドによってオートメーション化されているため、男たちが金を稼ぐためには塔に挑んで魔石を得るしかない。生活費だけでなく、税金もちゃんとある。カズヤもギミックの突破方法は思いつかないが、今日の宿代のため行かなければならない。

 カズヤが塔の入り口から入る。第一階層、最初の通路。そこに人影があった。全身がフルアーマーだったので、カズヤはアンドロイドだと思った。それをマルイが否定する。「生体情報を確認しましタ。個体名、アカリと判定。彼女の保護を推奨しまス」カズヤは驚いた。彼女、つまりは女だ。女は特別区画に隔離されているのではなかったか。「統括AIにアクセス――20分前、特別区画の地下通路入り口にアカリの使用履歴がありましタ」そんな報告を聞きつつ、カズヤは彼女に近づく。

 女のぶつぶつ呟く声がする。「私ならやれる、私ならやれる、私ならやれる……」カズヤが背後から声をかける。すると女は腰を抜かした。「きゃあああ!」「男! こっちにこないで!」「嫌っ、嫌ぁあああ!」ひどく怯えられたので、カズヤが困っていると、マルイが前に出てくる。「ご安心くださイ、アカリ様」「この方は本島の男ではありませン。別の星からの来訪者様でス」「証拠をご覧くださイ」マルイが指さす。女がその先を目で追った。カズヤの腰付近へ。「うそっ。女の私がいるのに竿ダッチしてないっ」それを聞いたカズヤは微妙な気分になった。

 女はフルフェイスのヘルメットをとる。アカリと名乗る。「ちゃんと話ができる男っているのね。ケダモノしかいないと思っていたわ」アカリは感心している様子だ。カズヤがなぜ彼女が塔の中にいるかを聞いたところ、「男に媚びを売るなんてもう限界!」「モンスターを倒して、自分でお金を稼いでみせるのよ!」そうアカリが強く宣言した。

 特別区画から出ない女は普段、男に対するサービス業で金銭を得るらしい。直接は会わずに、動画や生配信、ボイスチャットで男の相手をする。アカリの場合、ボイスチャットで男と会話して分単位でいくらという計算のようだ。「ほとんどハアハアと息を荒げるだけよ? 気持ち悪いったらありゃしない」アカリは腕をさする仕草をした。カズヤも街にいる男たちの様子を思い出し、それはそうだろうなと思った。

 カズヤにとってアカリの存在はありがたかった。仲間になってくれないかと尋ねると、二つ返事でオッケーされた。どうやらアカリはモンスターを一人で倒すのは怖かったらしい。アカリが仲間になったことで途中のボタンのギミックを突破でき、第二階層へ行くことができた。懸念事項はアカリが戦いの素人であることだが、その辺はカズヤがフォローするしかないだろう。アカリが疲れていたので早めに解散した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

足手まといだと言われて冒険者パーティから追放されたのに、なぜか元メンバーが追いかけてきました

ちくわ食べます
ファンタジー
「ユウト。正直にいうけど、最近のあなたは足手まといになっている。もう、ここらへんが限界だと思う」 優秀なアタッカー、メイジ、タンクの3人に囲まれていたヒーラーのユウトは、実力不足を理由に冒険者パーティを追放されてしまう。 ――僕には才能がなかった。 打ちひしがれ、故郷の実家へと帰省を決意したユウトを待ち受けていたのは、彼の知らない真実だった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

勇者のハーレムパーティー抜けさせてもらいます!〜やけになってワンナイトしたら溺愛されました〜

犬の下僕
恋愛
勇者に裏切られた主人公がワンナイトしたら溺愛される話です。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...