11 / 13
逃亡犯
しおりを挟む
八丁堀の旦那は、オレの話を全て聞いてから、オレに礼を言い終わると、脱兎の如く家を飛び出して行った。
オレは、障子が開け放たれた奥の間で、冷めたお茶を飲んでいた。オレが旦那に刀の話をしている前に、入れてくれていたみたいだった。
八丁堀の旦那、結構気がきくなあ。それに、天下のご定法を大切にしている。お江戸の治安を守るんだ、という熱意で動いてくれているのが良いなあ。ああいう八丁堀の旦那なら、オレも応援したくなるぜ。
などと、ツラツラ考えていたら、あちらの用事も済んだみたいで、おヒサ姉さんとべっぴんなおタマちゃんが、奥方様と一緒に奥の間に入って来た。
「時ちゃんー、終わった?」
おヒサ姉さん、満足そうな顔をしてオレに話しかけて来た。奥方様の髪結が自分の思い通りに仕上がったのだろう。
「おお! 用事は済んだぜ。旦那はオレの話を聞いたら、飛び出して行っちまった」
オレは開け放たれた障子を目で指した。
「あら、そうなの?」
おヒサ姉さんは、ビックリした様に言った。
「ええ、ウチの旦那様ったら、直ぐに行動しちゃう性格なのよね」
奥方様が、旦那の行動を補足する様に答えた。
「でも、時次郎さんの具申が何か働いたのでございましょう。これでこの事件が少しでも早く解決してくれると良いんですけど」
綺麗になった髪を気にしながら、奥方様は旦那が出て行った庭先を眺めめてポツリと言った。
おヒサ姉さんとおタマちゃんは、八丁堀の家から出て、次の仕事場に行く事になっていたようだった。オレは、今日はもう仕事も無いので、長屋に帰るついでに錦町の若親分の番所まで足を延ばす事にした。
「それじゃあな! おヒサ姉さん、おタマちゃん。頑張って稼いできてくれよ! オレの生活がかかってるんだからよー」
「何言ってんの、時ちゃん。アンタはまだ、髪結いの亭主じゃあ無いんだからね。ちゃんと自分で稼ぐんだよ!」
おヒサ姉さんの言葉に反応して、横でおタマちゃんが笑いをこらえていた。
「ハイハイ、今はまだ……、だよね。早くオレも髪結いの亭主になりたいもんだ!」
「もー、時ちゃんたら。早く何処かに行っちゃって!」
おヒサ姉さん、顔を赤らめながら、手のひらでオレを追い払う格好をする。
おタマちゃん、もう笑いをこらえるのが、限界みたいだ。
「それじゃあな! また、あとで」
そう言い残すと、オレは、二人の美人から離れていった。
***
錦町の若親分は、先代の親分の実の子供ではない。先代の親分さんと女将さんの間に子供が出来なかったらしい。
境内に捨てられていた赤子を先代が見つけて、自分達の子供として育てて来たそうだ。
お江戸では、普通の話だ。子供が出来ない、病気で亡くした、そう言う夫婦は、境内に捨てられた子供を育てる。
せっかく、この世に生を受けたのだ。子供を育てたい夫婦が育てて何が悪いのだ!
そういう風にして、世代が回れば良いじゃ無いか。そういう考え方が普通だった。
先代が亡くなる前には、既に立派な御用聞きとして、先代の補佐が出来るまでになっていたから、先代の後を継ぐのに誰も異論は無かった。オレも先代には色々お世話になっていた時から、若親分と親しくさせてもらってた。
「よう! 若親分!」
オレは番所に入りながら声をかける。
「あ! おはようございます、時次郎さん。この間は、スリのお縄に協力してくれてありがとうございます」
若親分は、ペコリと頭を下げて、人懐っこい笑顔を見せた。
「所で、時次郎さんのお耳には既に入っていますか? 例の八丁堀の事件」
「ああ、八丁堀の嫡男と許婚の行方不明の件か?」
「お! さすが、話が早い。八丁堀の旦那から、オレたち江戸中の岡っ引きに伝令が飛んだんです。それで、これからオイラも大井の宿で聞き込みです。すいません、ワザワザ来て頂いたのに」
若親分はすまなそうな顔をしながら出発の準備をしていた。
「イヤ、良いってことよ。お仕事の邪魔は出来ないものな。オレは、この間買い損ねた、うまい団子を買いに来ただけだからな」
そう言って、オレは番屋を後にして、団子屋に向かった。先代の親分さんに良くご馳走になって、馴染みの団子屋が近所にあるんだ。
……
「こんにちは!」
「あら、いらっしゃいませ! ご無沙汰ね。時次郎さん元気にしてた? もっと顔見せにいらっしゃい」
「婆さんも元気そうで何よりだ。婆さんの、お団子はうまいからなあ」
そう言いながら、店に並んでいる出来立ての団子を指差す。
「みたらし十本、しょうゆ十本、あと、アンコも十本もらおうか!」
「毎度アリー! 時次郎さん、気前いいわあ」
「いやあ、長屋で待ってる人へのお土産さ」
「あら、それって時次郎さんの奥様?」
「イヤイヤ、まだそんな関係じゃないんだけどね。まあ、お隣さんさ」
「まだ、って事は、脈ありなんでしょ? もう押し倒しちゃいな。女なんて、それで一発よ!」
「ダメダメ、逆に殴られるくらい、強いから」
「大丈夫。女は、好きな男には弱いから」
「うーん、そういうもんかなあ? まあ、婆さんの応援は受け取ったぜ。とりあえず、頑張るよ」
……
時次郎が長屋に戻ると、八丁堀の旦那が既に来ていた。
「どうしたんですか? 旦那」
「おい、時次郎! お前、嘘を付いたろう!」
「髪結いのおヒサは、お前の女房じゃあないじゃないか。八丁堀の同心に嘘をつくなんて、牢屋にぶち込まれたいのか?」
「うへー、申し訳ありません、その方が、お役に立てるかと思ったんでございます」
「もう、こうなったらさっさと結婚してしまえ。そうすれば、嘘では無くなるだろう? 女は押し倒してしまえばいいんだ。それとも、押し倒されたい方か?」
「それを、八丁堀の旦那が言うんですか?そういえば、だんご屋の婆さんにも言われたな……」
「まあ、それは急がんでいいが、こっちは急ぎの用だ。お前の言う通り、大井の宿で、二人を押さえた。予想通り、安い宿屋に隠れていた」
旦那の語りは続く。オレは黙って聞く。
「大井川を渡ろうとしていたらしいが、ここ数日は川が荒れてて、川渡りが禁止されててな。それが幸いした」
旦那は玄関口に座って、しゃべり続ける。
「それで、二人を吟味したら、幸町の寺の裏で刺したと言うので行ってみた」
やはり寺の裏か、時次郎は妙に納得する。そういえばおヒサ姉さんもそんな事を言ってたっけ。
「ほとけ様が見当たらないで、寺の中を探し回ったら、ヤブの中に連れ込まれて、その上から葉っぱがかけてあった。あの二人が、ヤブまで引っ張って行って、犯行を隠したのかと思ったんだ」
八丁堀の旦那、いよいよ核心に触れたようで、段々と早口になる。
「ところが、その遺体のそばに、この短刀が落ちていた。これも、相当な血が付いている」
そう言いながら、布に包まれた包みを上り口にソッと置く。
「こいつを至急見て欲しいんだ。出来たら、この持ち主と、死体の関係も分かったらな。そこまでやってくれれば、儂に嘘を付いたのは見逃してやる」
旦那の表情からは、夫婦だと嘘をついてしょっ引く話が、本気なのか嘘なのか、見当がつかない。
しかしやるしか無かろう。オレもこの件は興味はあるしな。
「ヘイ……分かりました。若い身空で、牢屋に入りたくは無いですから。少しお時間ください。この程度の短刀なら大した記憶はないでしょうが、キチンと手順を踏まないと、オレに喋ってくれないんです」
「アイ、分かった。夫婦の件以外は、お前の言う事は信じてやる。仔細分かったら、いつでも構わないから儂の家に来い!」
そういうと、八丁堀の旦那は、手下の岡っ引きと一緒に、長屋から出て行った。ちょうど入れ違いに、髪結い美人姉妹が戻ってきた。
「おヒサ姉さん、おタマちゃん。お帰りなさいー」
「時ちゃん。ただいまー!」
「時次郎さん、ただいま帰りまスた…」
「ちょうど良い案配だったな。今さっきまで、八丁堀の旦那が来てたんだ、オレとお前が偽装夫婦だってバレちまったぜ!早く結婚しろ、と脅されちまった」
「えー! それは大変。なんとかしないと、八丁堀の奥様に怒られちゃう」
「おヒサ姉さん、もうこれは、今晩オレたちも一つになって、結婚するしか無いんじゃ無いか?」
「うるさい! 一つになるのは、まだ早いの。ところで、八丁堀の旦那は、何しにここまで来たのよ?」
「ああ、実は例の事件に進展があってな。また新しい短刀を持ってきて、この持ち主を調べてくれって言うんだ。それが出来たら、オレたちの事黙っててくれるって……」
「なーんだ、まだ首の皮一枚で繋がっているのね。じゃあ、時ちゃん、チャチャっと調べて、八丁堀の旦那に教えてきてよ」
「分かったよ。これから仕事場に行くから。ホレ、お前たちにお土産だ。錦町の美味い団子屋の団子だ。今朝の朝ごはんのお礼だよ!」
「オレはこれから仕事場で仕事をしなくちゃなんねえから、勝手に食べててくれ。じゃあな!」
おヒサ姉さんとおタマちゃんにそう言うと、オレはその短刀がくるまっている包みを持って仕事場に向かった。
……
オレは、障子が開け放たれた奥の間で、冷めたお茶を飲んでいた。オレが旦那に刀の話をしている前に、入れてくれていたみたいだった。
八丁堀の旦那、結構気がきくなあ。それに、天下のご定法を大切にしている。お江戸の治安を守るんだ、という熱意で動いてくれているのが良いなあ。ああいう八丁堀の旦那なら、オレも応援したくなるぜ。
などと、ツラツラ考えていたら、あちらの用事も済んだみたいで、おヒサ姉さんとべっぴんなおタマちゃんが、奥方様と一緒に奥の間に入って来た。
「時ちゃんー、終わった?」
おヒサ姉さん、満足そうな顔をしてオレに話しかけて来た。奥方様の髪結が自分の思い通りに仕上がったのだろう。
「おお! 用事は済んだぜ。旦那はオレの話を聞いたら、飛び出して行っちまった」
オレは開け放たれた障子を目で指した。
「あら、そうなの?」
おヒサ姉さんは、ビックリした様に言った。
「ええ、ウチの旦那様ったら、直ぐに行動しちゃう性格なのよね」
奥方様が、旦那の行動を補足する様に答えた。
「でも、時次郎さんの具申が何か働いたのでございましょう。これでこの事件が少しでも早く解決してくれると良いんですけど」
綺麗になった髪を気にしながら、奥方様は旦那が出て行った庭先を眺めめてポツリと言った。
おヒサ姉さんとおタマちゃんは、八丁堀の家から出て、次の仕事場に行く事になっていたようだった。オレは、今日はもう仕事も無いので、長屋に帰るついでに錦町の若親分の番所まで足を延ばす事にした。
「それじゃあな! おヒサ姉さん、おタマちゃん。頑張って稼いできてくれよ! オレの生活がかかってるんだからよー」
「何言ってんの、時ちゃん。アンタはまだ、髪結いの亭主じゃあ無いんだからね。ちゃんと自分で稼ぐんだよ!」
おヒサ姉さんの言葉に反応して、横でおタマちゃんが笑いをこらえていた。
「ハイハイ、今はまだ……、だよね。早くオレも髪結いの亭主になりたいもんだ!」
「もー、時ちゃんたら。早く何処かに行っちゃって!」
おヒサ姉さん、顔を赤らめながら、手のひらでオレを追い払う格好をする。
おタマちゃん、もう笑いをこらえるのが、限界みたいだ。
「それじゃあな! また、あとで」
そう言い残すと、オレは、二人の美人から離れていった。
***
錦町の若親分は、先代の親分の実の子供ではない。先代の親分さんと女将さんの間に子供が出来なかったらしい。
境内に捨てられていた赤子を先代が見つけて、自分達の子供として育てて来たそうだ。
お江戸では、普通の話だ。子供が出来ない、病気で亡くした、そう言う夫婦は、境内に捨てられた子供を育てる。
せっかく、この世に生を受けたのだ。子供を育てたい夫婦が育てて何が悪いのだ!
そういう風にして、世代が回れば良いじゃ無いか。そういう考え方が普通だった。
先代が亡くなる前には、既に立派な御用聞きとして、先代の補佐が出来るまでになっていたから、先代の後を継ぐのに誰も異論は無かった。オレも先代には色々お世話になっていた時から、若親分と親しくさせてもらってた。
「よう! 若親分!」
オレは番所に入りながら声をかける。
「あ! おはようございます、時次郎さん。この間は、スリのお縄に協力してくれてありがとうございます」
若親分は、ペコリと頭を下げて、人懐っこい笑顔を見せた。
「所で、時次郎さんのお耳には既に入っていますか? 例の八丁堀の事件」
「ああ、八丁堀の嫡男と許婚の行方不明の件か?」
「お! さすが、話が早い。八丁堀の旦那から、オレたち江戸中の岡っ引きに伝令が飛んだんです。それで、これからオイラも大井の宿で聞き込みです。すいません、ワザワザ来て頂いたのに」
若親分はすまなそうな顔をしながら出発の準備をしていた。
「イヤ、良いってことよ。お仕事の邪魔は出来ないものな。オレは、この間買い損ねた、うまい団子を買いに来ただけだからな」
そう言って、オレは番屋を後にして、団子屋に向かった。先代の親分さんに良くご馳走になって、馴染みの団子屋が近所にあるんだ。
……
「こんにちは!」
「あら、いらっしゃいませ! ご無沙汰ね。時次郎さん元気にしてた? もっと顔見せにいらっしゃい」
「婆さんも元気そうで何よりだ。婆さんの、お団子はうまいからなあ」
そう言いながら、店に並んでいる出来立ての団子を指差す。
「みたらし十本、しょうゆ十本、あと、アンコも十本もらおうか!」
「毎度アリー! 時次郎さん、気前いいわあ」
「いやあ、長屋で待ってる人へのお土産さ」
「あら、それって時次郎さんの奥様?」
「イヤイヤ、まだそんな関係じゃないんだけどね。まあ、お隣さんさ」
「まだ、って事は、脈ありなんでしょ? もう押し倒しちゃいな。女なんて、それで一発よ!」
「ダメダメ、逆に殴られるくらい、強いから」
「大丈夫。女は、好きな男には弱いから」
「うーん、そういうもんかなあ? まあ、婆さんの応援は受け取ったぜ。とりあえず、頑張るよ」
……
時次郎が長屋に戻ると、八丁堀の旦那が既に来ていた。
「どうしたんですか? 旦那」
「おい、時次郎! お前、嘘を付いたろう!」
「髪結いのおヒサは、お前の女房じゃあないじゃないか。八丁堀の同心に嘘をつくなんて、牢屋にぶち込まれたいのか?」
「うへー、申し訳ありません、その方が、お役に立てるかと思ったんでございます」
「もう、こうなったらさっさと結婚してしまえ。そうすれば、嘘では無くなるだろう? 女は押し倒してしまえばいいんだ。それとも、押し倒されたい方か?」
「それを、八丁堀の旦那が言うんですか?そういえば、だんご屋の婆さんにも言われたな……」
「まあ、それは急がんでいいが、こっちは急ぎの用だ。お前の言う通り、大井の宿で、二人を押さえた。予想通り、安い宿屋に隠れていた」
旦那の語りは続く。オレは黙って聞く。
「大井川を渡ろうとしていたらしいが、ここ数日は川が荒れてて、川渡りが禁止されててな。それが幸いした」
旦那は玄関口に座って、しゃべり続ける。
「それで、二人を吟味したら、幸町の寺の裏で刺したと言うので行ってみた」
やはり寺の裏か、時次郎は妙に納得する。そういえばおヒサ姉さんもそんな事を言ってたっけ。
「ほとけ様が見当たらないで、寺の中を探し回ったら、ヤブの中に連れ込まれて、その上から葉っぱがかけてあった。あの二人が、ヤブまで引っ張って行って、犯行を隠したのかと思ったんだ」
八丁堀の旦那、いよいよ核心に触れたようで、段々と早口になる。
「ところが、その遺体のそばに、この短刀が落ちていた。これも、相当な血が付いている」
そう言いながら、布に包まれた包みを上り口にソッと置く。
「こいつを至急見て欲しいんだ。出来たら、この持ち主と、死体の関係も分かったらな。そこまでやってくれれば、儂に嘘を付いたのは見逃してやる」
旦那の表情からは、夫婦だと嘘をついてしょっ引く話が、本気なのか嘘なのか、見当がつかない。
しかしやるしか無かろう。オレもこの件は興味はあるしな。
「ヘイ……分かりました。若い身空で、牢屋に入りたくは無いですから。少しお時間ください。この程度の短刀なら大した記憶はないでしょうが、キチンと手順を踏まないと、オレに喋ってくれないんです」
「アイ、分かった。夫婦の件以外は、お前の言う事は信じてやる。仔細分かったら、いつでも構わないから儂の家に来い!」
そういうと、八丁堀の旦那は、手下の岡っ引きと一緒に、長屋から出て行った。ちょうど入れ違いに、髪結い美人姉妹が戻ってきた。
「おヒサ姉さん、おタマちゃん。お帰りなさいー」
「時ちゃん。ただいまー!」
「時次郎さん、ただいま帰りまスた…」
「ちょうど良い案配だったな。今さっきまで、八丁堀の旦那が来てたんだ、オレとお前が偽装夫婦だってバレちまったぜ!早く結婚しろ、と脅されちまった」
「えー! それは大変。なんとかしないと、八丁堀の奥様に怒られちゃう」
「おヒサ姉さん、もうこれは、今晩オレたちも一つになって、結婚するしか無いんじゃ無いか?」
「うるさい! 一つになるのは、まだ早いの。ところで、八丁堀の旦那は、何しにここまで来たのよ?」
「ああ、実は例の事件に進展があってな。また新しい短刀を持ってきて、この持ち主を調べてくれって言うんだ。それが出来たら、オレたちの事黙っててくれるって……」
「なーんだ、まだ首の皮一枚で繋がっているのね。じゃあ、時ちゃん、チャチャっと調べて、八丁堀の旦那に教えてきてよ」
「分かったよ。これから仕事場に行くから。ホレ、お前たちにお土産だ。錦町の美味い団子屋の団子だ。今朝の朝ごはんのお礼だよ!」
「オレはこれから仕事場で仕事をしなくちゃなんねえから、勝手に食べててくれ。じゃあな!」
おヒサ姉さんとおタマちゃんにそう言うと、オレはその短刀がくるまっている包みを持って仕事場に向かった。
……
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
無用庵隠居清左衛門
蔵屋
歴史・時代
前老中田沼意次から引き継いで老中となった松平定信は、厳しい倹約令として|寛政の改革《かんせいのかいかく》を実施した。
第8代将軍徳川吉宗によって実施された|享保の改革《きょうほうのかいかく》、|天保の改革《てんぽうのかいかく》と合わせて幕政改革の三大改革という。
松平定信は厳しい倹約令を実施したのだった。江戸幕府は町人たちを中心とした貨幣経済の発達に伴い|逼迫《ひっぱく》した幕府の財政で苦しんでいた。
幕府の財政再建を目的とした改革を実施する事は江戸幕府にとって緊急の課題であった。
この時期、各地方の諸藩に於いても藩政改革が行われていたのであった。
そんな中、徳川家直参旗本であった緒方清左衛門は、己の出世の事しか考えない同僚に嫌気がさしていた。
清左衛門は無欲の徳川家直参旗本であった。
俸禄も入らず、出世欲もなく、ただひたすら、女房の千歳と娘の弥生と、三人仲睦まじく暮らす平穏な日々であればよかったのである。
清左衛門は『あらゆる欲を捨て去り、何もこだわらぬ無の境地になって千歳と弥生の幸せだけを願い、最後は無欲で死にたい』と思っていたのだ。
ある日、清左衛門に理不尽な言いがかりが同僚立花右近からあったのだ。
清左衛門は右近の言いがかりを相手にせず、
無視したのであった。
そして、松平定信に対して、隠居願いを提出したのであった。
「おぬし、本当にそれで良いのだな」
「拙者、一向に構いません」
「分かった。好きにするがよい」
こうして、清左衛門は隠居生活に入ったのである。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
花嫁
一ノ瀬亮太郎
歴史・時代
征之進は小さい頃から市松人形が欲しかった。しかし大身旗本の嫡男が女の子のように人形遊びをするなど許されるはずもない。他人からも自分からもそんな気持を隠すように征之進は武芸に励み、今では道場の師範代を務めるまでになっていた。そんな征之進に結婚話が持ち込まれる。
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
アブナイお殿様-月野家江戸屋敷騒動顛末-(R15版)
三矢由巳
歴史・時代
時は江戸、老中水野忠邦が失脚した頃のこと。
佳穂(かほ)は江戸の望月藩月野家上屋敷の奥方様に仕える中臈。
幼い頃に会った千代という少女に憧れ、奥での一生奉公を望んでいた。
ところが、若殿様が急死し事態は一変、分家から養子に入った慶温(よしはる)こと又四郎に侍ることに。
又四郎はずっと前にも会ったことがあると言うが、佳穂には心当たりがない。
海外の事情や英吉利語を教える又四郎に翻弄されるも、惹かれていく佳穂。
一方、二人の周辺では次々に不可解な事件が起きる。
事件の真相を追うのは又四郎や屋敷の人々、そしてスタンダードプードルのシロ。
果たして、佳穂は又四郎と結ばれるのか。
シロの鼻が真実を追い詰める!
別サイトで発表した作品のR15版です。
日露戦争の真実
蔵屋
歴史・時代
私の先祖は日露戦争の奉天の戦いで若くして戦死しました。
日本政府の定めた徴兵制で戦地に行ったのでした。
日露戦争が始まったのは明治37年(1904)2月6日でした。
帝政ロシアは清国の領土だった中国東北部を事実上占領下に置き、さらに朝鮮半島、日本海に勢力を伸ばそうとしていました。
日本はこれに対抗し開戦に至ったのです。
ほぼ同時に、日本連合艦隊はロシア軍の拠点港である旅順に向かい、ロシア軍の旅順艦隊の殲滅を目指すことになりました。
ロシア軍はヨーロッパに配備していたバルチック艦隊を日本に派遣するべく準備を開始したのです。
深い入り江に守られた旅順沿岸に設置された強力な砲台のため日本の連合艦隊は、陸軍に陸上からの旅順艦隊攻撃を要請したのでした。
この物語の始まりです。
『神知りて 人の幸せ 祈るのみ
神の伝えし 愛善の道』
この短歌は私が今年元旦に詠んだ歌である。
作家 蔵屋日唱
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる