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お裁きの時、八丁堀編、完
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「おはよー、時ちゃん。起きてる?」おヒサ姉さんの元気な声で目を覚ます。
昨日は、あまりに疲れていたので、八丁堀から帰ったら不覚にもそのまま布団に倒れこんでしまった。
ヤバイ、こんな格好をおヒサ姉さんに見せる訳にはいかない。そう思って、昨日来ていた着物を脱いで、ふんどし一丁になった瞬間に、おヒサ姉さんが入ってきた。
ガラリ!
「きゃあー!……時ちゃん。着替えているなら、そう言ってよ。まだ、アタシ達は清い中なんだから、フンドシ一丁姿の時ちゃんなんか見たくないわ」
そう言いながら、おヒサ姉さんは両手で顔を押さえた。
しかし、指の隙間から時次郎の良くしまった肉体をつい凝視してしまうのであった。
鍛冶屋は、重い小槌、大鎚を打ち続けるので、胸の筋肉や腕回りが鍛えられている。それに加えて、時次郎は、多くの武芸者から教わった技を忘れないために、毎日の鍛錬を欠かせなかった。その肉体は、おヒサ姉さん以外の誰が見ても惚れ惚れするモノであった。
「おヒサさん、オレと夫婦になれば、毎日みれますよー」
オレは慌てて着替えながらおヒサ姉さんに声をかける。
「だからーッ、まだ時ちゃんと夫婦にはならないから!」
おヒサ姉さん、顔を真っ赤にしながらも、必死に否定する。
「ところで、おヒサさん、朝からどうしたんですか?あ、もう大丈夫ですよ。着物着ましたから」
オレは、新しい着物を着ながら、顔を押さえて、赤くなっているおヒサ姉さんに向かって行った。
「時ちゃん、もう朝じゃないのよ。何寝ぼけてんの?」
「アタシ達は、もう一仕事してお客様の所から戻って来たの。これから遅めのお昼ご飯だよ」
「時ちゃんは、昨日遅く帰ってきて、その後直ぐに寝ちゃったみたいだから。今度は、昼ごはんご馳走してあげようと思って……」
やっと落ち着いたようで、手を顔から下ろしながら声を出す。顔の赤みも引いている。
「ゴメンね、今日もおタマちゃんいるけど、それでも一緒に食べる?」
「お!それは嬉しい。昨日の午後は、お団子と握り飯だけだったから、はら減ってるんですよねー」
目が覚めたら猛烈に腹が減って来た。
「それじゃあ、今日もご相伴にあずかりますか!」
そう言って、おヒサ姉さんの部屋に入ってちゃぶ台に座る。
「今日はアジの開きと、卵焼きだよ。さっき帰って来るときに魚屋の兄ちゃんに無理言って、三匹とも開きにしてもらったの。アジの開きは、おタマちゃんに焼いてもらったの。卵焼きは、このあいだの蚤の市で手に入れた卵焼き器を使ったのよ」
「あー、あの鉄板で四角い箱を作ったヤツだろう? なるほど、こうやって卵のうす焼きを何層にも重ねるのか。この発想はなかったな」
そう言って卵焼きを横からしげしげと見つめる。それからおもむろに口の中に、パク。
「お! けっこういけるじゃないか。ほんのわずかの甘味が、良い感じだ。あまりにも甘過ぎると、食べ続けると飽きちゃうけど、この味付けは良いね」
ここは、ポイントを稼がないとな。
「おヒサ姉さんと結婚すると、こんなご飯が毎日食べられるのかー。こんちきしょう! 羨ましいぜ!」
横で、おタマちゃんがまた笑いをこらえていた。
「時次郎さんとご飯を食べてると、楽しいですね。おヒサ師匠も、時次郎さんが来ると明るくなりまスから」
ご飯を食べるのを止めて、ニコニコしているおタマちゃん。
「えー、それって褒め言葉かい、おタマちゃん?」
「ええ、そうでスよ。時次郎さん」
「おう! おタマちゃん。ありがとうよ。礼を言わせてもらうぜ」
「あ! それとアジの開きの焼き加減も最高だぜ。おタマちゃんと所帯を持つ奴が羨ましいぜ!」
「時次郎さん、ありがとうございまス。でも、うちには病弱な母親がいるので、母を一人置いて嫁ぐ事は出来ないでス……」
少し顔が暗くなるおタマちゃん。
「大丈夫だよ、おタマちゃん。おタマちゃんほどベッピンさんなら、お袋さん込みで面倒見てくれるヤローなんかあっという間に現れるさ。オレが太鼓判を押すよ」
オレは慌てて、おタマちゃんを慰める。
「そうよ! アタシも時ちゃんと同じく太鼓判押しちゃうから!」
おヒサ姉さんが、おひつからご飯をよそりながら、合いの手を入れて来た。
心なしか、笑っているおタマちゃんの目に涙が浮かんでいるように思えた。そうこうして、遅めのお昼ご飯だよを食べ終わって、三人でお茶を飲んでいると……
「おい、時次郎はいるか!」隣のオレの部屋の前で、大声で叫んでいる奴がいた。
オレは、おヒサ姉さんの部屋から出て行って答えた。
「時次郎はオレだが、何の用だ? せっかく飯を食った後のまったりした時間を過ごしていたのに。ほれ、ことわざにも有るだろう。『親が死んでも食休み』てな」
「おお、お前さんが時次郎か。オレは岡っ引きの八兵衛っ言うんだ。お休みのところ申し訳ないが、直ぐにお奉行所まで来てくれ、八丁堀の旦那がお待ちかねだ」
「お、例の仲間が捕まったのか? 分かった、用意したら直ぐに行くから。八兵衛さんは先に戻って八丁堀の旦那に伝えてくれ」
「あいよ!」そういうと、その岡っ引きは着物の裾を捲り上げて、フンドシを見せながら、長屋を走り去って行った。
「じゃあ、おヒサさん。オレもこれからお奉行所まで行ってくらあ」
飯の礼を言ってから自分の部屋に戻る。その前に、
「あ!昼飯ごちそうサマでした。これに懲りずに、毎日誘ってくれると嬉しいぜ」
オレは、部屋に帰ってから急いで準備して長屋を出て行った。おヒサ姉さんとおタマちゃんは、ニコニコしながらオレに向かって手を振っていてくれた。
***
「ごめんなすって! 手前、鍛冶屋の時次郎と言うもんです。八丁堀の旦那の御用で伺いました」
お奉行所の入り口にいる門番にそう告げると、奥の方から旦那が飛んできた。
「おお! 待っていたぞ、時次郎。先ほど上州の暴れん坊一味を御用にして、牢屋にぶち込んだ所だ」
「今から一人ずつ連れてくるから、顔を見てくれ。もちろん、お前に危害が加わらないよう立ち会い人は複数人を立てて、お前をそに中に紛れ込ませる」
半刻もしないでいると、お奉行所のお白州には仲間一味がズラリと引っ立てられて来た。時次郎は、一味から被害を受けた住人達に混じる形で、彼らの顔を順番に見た。その中には、短刀から受けた持ち主の顔かたちと一致する男がいた。
時次郎は、その男を八丁堀の旦那に告げた。後は、旦那の吟味次第だ。
***
「大変だー、大変だー、八丁堀を揺るがす大事件だよー。さあさあ、中身を知りたきゃあ、このかわら版を買っとくれー!」
それから数日後、街ではかわら版屋が大騒ぎをしていた。
そりゃあそうだ。何しろ八丁堀の関係者が関わった事件だ。お上がどんなお裁きをしたか、お江戸の町民としては気にならない訳はない。飛ぶように売れるかわら版をオレも一枚受け取った。
結局、八丁堀の旦那のお隣さん、嫡男と許嫁の娘さんは、百叩きの上で、江戸所払いになったそうだ。
まあ、結局人を刺したが殺していないと言うところが、お裁きの結果に大きく効いたのだろう。それに、許嫁を手籠めにされた事に対する敵討ち、という側面も情状酌量として大きく効いている。
かわら版としては、例えお武家様であっても、ご定法に照らして正しい裁きを下す、という所に重点を上げて書かれている。
また、手籠めにされた許嫁の仇討ちという事も手伝って、弱気を助け強気を挫く、江戸っ子の思いと重なったようだ。
そういう事もあって、今回のお裁きの結果は、江戸の町民には好意的に受け取られている。
当然、真の下手人は貼り付け獄門だそうだ。上州の暴れん坊一味でも二番手の位置にいたそうだが、それまで散々親分である暴れん坊に虐げれれてうっぷんが溜まっていたらしい。
いつか復讐してやろうと思ったが、丁度いい塩梅にあの二人が刺してくれた。二番手としては、これを機に一気に恨みを晴らした、という事らしい。
自決刀は、二番手がワザと八丁堀の旦那の庭に投げ込んで、あの二人の仕業にしようとしたらしいが、結局自分の短刀も失くしてしまい探していたそうだ。
一味は親分が失踪したが、二番手の命令で潜伏先で待機していたら、そこで御用となったらしい。二番手は、一味を江戸の潜伏先で待たせている間に、自分の短刀を必死に探していたそうだが、結局はそれが命取りになった次第だ。
……
ここからは、後で八丁堀の旦那から聞いた話しだが……
最初は、『短刀は自分の物ではない!』と必死に拒否していた。しかし、一味のうちの何人かが、二番手が上州の鍛冶屋で見習いに作らせた短刀を安く購入した、と自慢していたのを覚えていた。それが決め手となって、最後は自分がやったと認めたそうだ。
しかし、なぜ短刀の所有者が自分だと分かったのか、ずっと不思議がっていたそうだ。
それと、江戸所払いの二人は、大阪の親類の元で新しい生活を送るらしい。手籠めにされた娘さんも、大阪ならば噂に振り回されずに生きていけるだろうという事だ。
オレは、そこら辺をかいつまんで、おヒサ姉さんに伝えた。
おヒサ姉さんは、しんみりと……こう言った。
「そうね、傷ついた女心より、噂話の方が怖いからね。江戸所払いは、彼女にとってはいい事なのかもね……」
<八丁堀編>
*** 完 ***
昨日は、あまりに疲れていたので、八丁堀から帰ったら不覚にもそのまま布団に倒れこんでしまった。
ヤバイ、こんな格好をおヒサ姉さんに見せる訳にはいかない。そう思って、昨日来ていた着物を脱いで、ふんどし一丁になった瞬間に、おヒサ姉さんが入ってきた。
ガラリ!
「きゃあー!……時ちゃん。着替えているなら、そう言ってよ。まだ、アタシ達は清い中なんだから、フンドシ一丁姿の時ちゃんなんか見たくないわ」
そう言いながら、おヒサ姉さんは両手で顔を押さえた。
しかし、指の隙間から時次郎の良くしまった肉体をつい凝視してしまうのであった。
鍛冶屋は、重い小槌、大鎚を打ち続けるので、胸の筋肉や腕回りが鍛えられている。それに加えて、時次郎は、多くの武芸者から教わった技を忘れないために、毎日の鍛錬を欠かせなかった。その肉体は、おヒサ姉さん以外の誰が見ても惚れ惚れするモノであった。
「おヒサさん、オレと夫婦になれば、毎日みれますよー」
オレは慌てて着替えながらおヒサ姉さんに声をかける。
「だからーッ、まだ時ちゃんと夫婦にはならないから!」
おヒサ姉さん、顔を真っ赤にしながらも、必死に否定する。
「ところで、おヒサさん、朝からどうしたんですか?あ、もう大丈夫ですよ。着物着ましたから」
オレは、新しい着物を着ながら、顔を押さえて、赤くなっているおヒサ姉さんに向かって行った。
「時ちゃん、もう朝じゃないのよ。何寝ぼけてんの?」
「アタシ達は、もう一仕事してお客様の所から戻って来たの。これから遅めのお昼ご飯だよ」
「時ちゃんは、昨日遅く帰ってきて、その後直ぐに寝ちゃったみたいだから。今度は、昼ごはんご馳走してあげようと思って……」
やっと落ち着いたようで、手を顔から下ろしながら声を出す。顔の赤みも引いている。
「ゴメンね、今日もおタマちゃんいるけど、それでも一緒に食べる?」
「お!それは嬉しい。昨日の午後は、お団子と握り飯だけだったから、はら減ってるんですよねー」
目が覚めたら猛烈に腹が減って来た。
「それじゃあ、今日もご相伴にあずかりますか!」
そう言って、おヒサ姉さんの部屋に入ってちゃぶ台に座る。
「今日はアジの開きと、卵焼きだよ。さっき帰って来るときに魚屋の兄ちゃんに無理言って、三匹とも開きにしてもらったの。アジの開きは、おタマちゃんに焼いてもらったの。卵焼きは、このあいだの蚤の市で手に入れた卵焼き器を使ったのよ」
「あー、あの鉄板で四角い箱を作ったヤツだろう? なるほど、こうやって卵のうす焼きを何層にも重ねるのか。この発想はなかったな」
そう言って卵焼きを横からしげしげと見つめる。それからおもむろに口の中に、パク。
「お! けっこういけるじゃないか。ほんのわずかの甘味が、良い感じだ。あまりにも甘過ぎると、食べ続けると飽きちゃうけど、この味付けは良いね」
ここは、ポイントを稼がないとな。
「おヒサ姉さんと結婚すると、こんなご飯が毎日食べられるのかー。こんちきしょう! 羨ましいぜ!」
横で、おタマちゃんがまた笑いをこらえていた。
「時次郎さんとご飯を食べてると、楽しいですね。おヒサ師匠も、時次郎さんが来ると明るくなりまスから」
ご飯を食べるのを止めて、ニコニコしているおタマちゃん。
「えー、それって褒め言葉かい、おタマちゃん?」
「ええ、そうでスよ。時次郎さん」
「おう! おタマちゃん。ありがとうよ。礼を言わせてもらうぜ」
「あ! それとアジの開きの焼き加減も最高だぜ。おタマちゃんと所帯を持つ奴が羨ましいぜ!」
「時次郎さん、ありがとうございまス。でも、うちには病弱な母親がいるので、母を一人置いて嫁ぐ事は出来ないでス……」
少し顔が暗くなるおタマちゃん。
「大丈夫だよ、おタマちゃん。おタマちゃんほどベッピンさんなら、お袋さん込みで面倒見てくれるヤローなんかあっという間に現れるさ。オレが太鼓判を押すよ」
オレは慌てて、おタマちゃんを慰める。
「そうよ! アタシも時ちゃんと同じく太鼓判押しちゃうから!」
おヒサ姉さんが、おひつからご飯をよそりながら、合いの手を入れて来た。
心なしか、笑っているおタマちゃんの目に涙が浮かんでいるように思えた。そうこうして、遅めのお昼ご飯だよを食べ終わって、三人でお茶を飲んでいると……
「おい、時次郎はいるか!」隣のオレの部屋の前で、大声で叫んでいる奴がいた。
オレは、おヒサ姉さんの部屋から出て行って答えた。
「時次郎はオレだが、何の用だ? せっかく飯を食った後のまったりした時間を過ごしていたのに。ほれ、ことわざにも有るだろう。『親が死んでも食休み』てな」
「おお、お前さんが時次郎か。オレは岡っ引きの八兵衛っ言うんだ。お休みのところ申し訳ないが、直ぐにお奉行所まで来てくれ、八丁堀の旦那がお待ちかねだ」
「お、例の仲間が捕まったのか? 分かった、用意したら直ぐに行くから。八兵衛さんは先に戻って八丁堀の旦那に伝えてくれ」
「あいよ!」そういうと、その岡っ引きは着物の裾を捲り上げて、フンドシを見せながら、長屋を走り去って行った。
「じゃあ、おヒサさん。オレもこれからお奉行所まで行ってくらあ」
飯の礼を言ってから自分の部屋に戻る。その前に、
「あ!昼飯ごちそうサマでした。これに懲りずに、毎日誘ってくれると嬉しいぜ」
オレは、部屋に帰ってから急いで準備して長屋を出て行った。おヒサ姉さんとおタマちゃんは、ニコニコしながらオレに向かって手を振っていてくれた。
***
「ごめんなすって! 手前、鍛冶屋の時次郎と言うもんです。八丁堀の旦那の御用で伺いました」
お奉行所の入り口にいる門番にそう告げると、奥の方から旦那が飛んできた。
「おお! 待っていたぞ、時次郎。先ほど上州の暴れん坊一味を御用にして、牢屋にぶち込んだ所だ」
「今から一人ずつ連れてくるから、顔を見てくれ。もちろん、お前に危害が加わらないよう立ち会い人は複数人を立てて、お前をそに中に紛れ込ませる」
半刻もしないでいると、お奉行所のお白州には仲間一味がズラリと引っ立てられて来た。時次郎は、一味から被害を受けた住人達に混じる形で、彼らの顔を順番に見た。その中には、短刀から受けた持ち主の顔かたちと一致する男がいた。
時次郎は、その男を八丁堀の旦那に告げた。後は、旦那の吟味次第だ。
***
「大変だー、大変だー、八丁堀を揺るがす大事件だよー。さあさあ、中身を知りたきゃあ、このかわら版を買っとくれー!」
それから数日後、街ではかわら版屋が大騒ぎをしていた。
そりゃあそうだ。何しろ八丁堀の関係者が関わった事件だ。お上がどんなお裁きをしたか、お江戸の町民としては気にならない訳はない。飛ぶように売れるかわら版をオレも一枚受け取った。
結局、八丁堀の旦那のお隣さん、嫡男と許嫁の娘さんは、百叩きの上で、江戸所払いになったそうだ。
まあ、結局人を刺したが殺していないと言うところが、お裁きの結果に大きく効いたのだろう。それに、許嫁を手籠めにされた事に対する敵討ち、という側面も情状酌量として大きく効いている。
かわら版としては、例えお武家様であっても、ご定法に照らして正しい裁きを下す、という所に重点を上げて書かれている。
また、手籠めにされた許嫁の仇討ちという事も手伝って、弱気を助け強気を挫く、江戸っ子の思いと重なったようだ。
そういう事もあって、今回のお裁きの結果は、江戸の町民には好意的に受け取られている。
当然、真の下手人は貼り付け獄門だそうだ。上州の暴れん坊一味でも二番手の位置にいたそうだが、それまで散々親分である暴れん坊に虐げれれてうっぷんが溜まっていたらしい。
いつか復讐してやろうと思ったが、丁度いい塩梅にあの二人が刺してくれた。二番手としては、これを機に一気に恨みを晴らした、という事らしい。
自決刀は、二番手がワザと八丁堀の旦那の庭に投げ込んで、あの二人の仕業にしようとしたらしいが、結局自分の短刀も失くしてしまい探していたそうだ。
一味は親分が失踪したが、二番手の命令で潜伏先で待機していたら、そこで御用となったらしい。二番手は、一味を江戸の潜伏先で待たせている間に、自分の短刀を必死に探していたそうだが、結局はそれが命取りになった次第だ。
……
ここからは、後で八丁堀の旦那から聞いた話しだが……
最初は、『短刀は自分の物ではない!』と必死に拒否していた。しかし、一味のうちの何人かが、二番手が上州の鍛冶屋で見習いに作らせた短刀を安く購入した、と自慢していたのを覚えていた。それが決め手となって、最後は自分がやったと認めたそうだ。
しかし、なぜ短刀の所有者が自分だと分かったのか、ずっと不思議がっていたそうだ。
それと、江戸所払いの二人は、大阪の親類の元で新しい生活を送るらしい。手籠めにされた娘さんも、大阪ならば噂に振り回されずに生きていけるだろうという事だ。
オレは、そこら辺をかいつまんで、おヒサ姉さんに伝えた。
おヒサ姉さんは、しんみりと……こう言った。
「そうね、傷ついた女心より、噂話の方が怖いからね。江戸所払いは、彼女にとってはいい事なのかもね……」
<八丁堀編>
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あまみさんに見つかってしまったぁぁ〜ヾ(๑╹◡╹)ノ"
あ〜そうか流さんの作品を見に来たのね!
見に来て頂き、ホントありがとうございます。
ノベルアップの最初の八丁堀編をアルファポリス用に修正した版なので、宣伝を控えていたのです。えへへ。٩( ᐛ )و