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エンペラーゴブリン編

第三十一話 俺の攻撃

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 この爆発の威力。あのサダンさんですら確実に死んでいるだろう。

「ぐすっ。ううう、お義父さん。あなたの娘とメイドの嫁? はエンペラーゴブリンから命懸けで守りますので、どうか地獄でハデス教官と仲良く……いや、やっぱり怖いので天国で俺の知らない天使。もしくは俺の嫁と勝手に名乗る不届き天使とイチャイチャしながら末永く過ごしてもう二度と現世に現れないでください。南無阿弥陀。寿限無寿限無。諸行無常の鐘が鳴る。鳴かぬなら、そろそろ食べ頃、ホトトギス」

 目を瞑り、涙を流して自作のお経を唱えながらサダンさんのご冥福をお祈りする。

「ホォーホッホッホッ。思い知ったか【九将軍】!」

 両手を空高く広げながら、それはそれは嬉しそうにエンペラーゴブリンが空に向かって吠えた。

「あの下等な小娘どもも今の衝撃で気絶したようですし、目覚める前にトドメを刺せばいいだけなので、もう私の邪魔者は片付いたも同然ですねぇーー!」

 と笑みを浮かべながら、気絶したミイナとマカへ『ゴブリンデスビーム』を放とうとしていた。
 ヤバイ。このままだと殺されてしまう。
 顔の腫れも引き、傷も癒えたので二人を守る為に立ち上がって聖剣を構える。
 すると突然、エンペラーゴブリンの背後に黒い影が現れ、エンペラーゴブリンの両手両足をガッチリと動けないようにホールドした。

「貴様は【九将軍】! 何故生きてるのですか!?」

「はぁはぁ。剣を囮にしてな……爆発したのはワシの剣だ……」

 黒い影の正体はボロボロのサダンさんだった。生きてたのかよ。やっぱり無敵なのかよ。
 あまりの(俺の中でRPGの)魔王っぷりに恐怖でブルリと震えたが、チワワのようにブルブルしている俺に気づいたサダンさんが、獲物を見つけたティラノサウルスのような圧倒的捕食者の目でこちらを睨み。

「害虫! 今だ! 貴様の『聖剣』とやらで早くこのゴブリンを攻撃しろ!」

 と、必死の形相で怒鳴った。
 攻撃? 俺に言ったのか? マジで!? 攻撃しろって? 聞き間違いじゃないよな!? 聞き間違いなのか? 聞き間違いかも……。
 突然の世界がひっくり返るような発言に、だんだん自信がなくなってきた。『攻撃しろ』と言ったのは聞き間違い……だよな? 
 とりあえず一旦深呼吸して落ち着いたので、聞き間違いじゃないのかビクビクしながら確認してみた。

「い、今攻撃って言いました? お義父さん」

「言ったぞコラ。それとワシは貴様のお義父さんなどではない」

 聞き間違いではなかった。
 後半を聴かなかった事にして、攻撃するのにあたり、注意事項を伝える。

「でもお義父さん。俺の必殺技をそんなボロボロの体で受けたら死んでしまいますよ。それでもいいですか?」

「誰がお義父さんじゃコラァ。つべこべ言わず攻撃せんか! 貴様がこのゴブリンより先に死にたいのかオラァ!」

 攻撃するのは俺なのに殺すと脅された。怖ぇ。

「了解っっっすーーーーー!」

 普段から植えられたサダンさんへの恐怖で自動的に体が動き、ロボットのようにぎこちなく攻撃モーションに移る。

「ま、待ちなさい害虫さん!」

 エンペラーゴブリンがなんだか必死になって焦っているが、オートパイロットとなった俺は止まらなかった。

「デハ遠慮ナク攻撃スルッスーーーー! クラエ『シャイニング・スター・スラッシュ』」

 聖剣を振り、光の斬撃がエンペラーゴブリン達へ向かう。

「やめろおおおおおおぉぉぉぉっ――――」

 神気全開で放った斬撃は、エンペラーゴブリンとサダンさんを覆うように巻き込み、遠くにあった山を貫いてこの星を旅立った。
 そして二人のいた場所を土煙が舞う中。俺はというと。

「ウィーンガシャ。攻撃完了。コレヨリ『ヒューマン』ニ戻リマス」

 という自分の言葉で人間に戻り、土煙へと両手を合わせ。

「終わったな。
 あなたのことは今度こそ忘れません。サヨナラ、お義父さん。どうか天国でもお元気で……」

「――ガハッ、ゴホッ」

 咳き込む声が聞こえる。風で土煙が消え、なんと黒焦げで左手の消えたサダンさんが姿を現した。
 まだ生きてたのかよ。あの攻撃を受けて左手だけで済むって凄すぎるよ。最早不死身界のレジェンドだよ。

「おのれぇぇぇ――害虫のくせにぃぃぃぃ――」

 という悔しそうな声の方向に顔を向けると、サダンさんと同じく全身が黒焦げになり、左手と左足の消えたエンペラーゴブリンがそこにはいた。
 コイツも生きてたのかよ。しぶとすぎだろ。ゴキちゃんかよ!
 だがエンペラーゴブリンは体は回復し始めているが、まだ動けるようになるまで時間がかかるようだ。

「これはチャンス」

 死にかけたエンペラーゴブリンへトドメを刺そうと思い聖剣を構えた。すると。

「ガーくん。あと一歩だよ」

 という聞き覚えのある明るい声がして、エンペラーゴブリンの倒れている頭上の穴から、大きな手がニョキッと生え。

「よし、着いたぞ。地上だ」

 ランサーゴブリンを背負ったガーディアンゴブリンが穴から這い出てきた。
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