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ドラゴンの女王編

第八十三話 ヒャッホー! 木のドアだ!

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『ヒョヒョヒョではまず組み分けをしましょう』

 謎の声がそう言うと、ひらひらと2枚折りの紙が5枚、天井から降ってきた。

『さあその紙を拾いなさい』

「罠じゃないわよね」

 ミイナが誰もいない空間を睨みつけながら落ちた紙を拾う。

『ヒョヒョ罠などとんでもございません、普通の紙ですよ。ささ、他の方々もどうぞどうぞ』

 なんとなくムカつくが、ミイナが率先して拾ったので拾わないなんて男が廃る!
 という気持ちで足元に落ちた2枚折りの紙を拾った。
 リンリン、セイントちゃん、天使も足元の紙を拾う。あ、天使のやつがもう中を開きやがった。

「③?」

『ヒョヒョヒョ、説明する前に開くとはお早いですね。少々お待ちを』

 謎の声が途切れる。
 そして10秒後。

『ヒョヒョッお待たせしました』

 気持ち悪い焦った笑い声の後、右から木のドア、鉄のドア、超怪しいドアの入り口真ん中上に、右から①、②、③という数字が現れた。

『ヒョヒョヒョ、そこのお馬鹿さんが開いてしまったので簡単に説明しますが、開いた数字があなた達の入るドアとなっております』

「じゃあ私はあのいかにも怪しそうなドアに入らないといけないの?」

『お馬鹿さんなのに理解が早くて助かります』

 お馬鹿さん呼ばわりされた天使が納得する。お馬鹿さん(笑)。

「なるほどね。じゃあ私は②だから真ん中の鉄のドアに入れってことね。アンタ達はどう?」

「僕は……③、天使と一緒ウサ!?」

「よろしくねウサちゃん」

「誰がウサちゃんだ! 僕はセイントだウサ!」

「私は②です! やった、お父――ミイナ様と一緒ですね」

「リンリンと一緒なら頼もしいわ」

「それは私のセリフですよ」

 あっさりと組み分けが決まってキャキャ楽しそうな四人。残りは俺だけだが。『正直天使のいる』+『一番怪しい』=の③以外ならどこでもいい。てか数字とドアの数的にもう決まっているようなものだ。贅沢を言えばミイナと同じ②が希望だが……。
 ゆっくり紙を開く。

「①……か」

 木のドア。一番の大当たり。グッジョブ!

『ヒョヒョヒョでは各々方、紙に書かれた数字に従ってそのドアの先へと進んでください』

 謎の声が案内してきたので、俺は①と数字の書かれた木のドアに向かう。

 するとミイナが「止まりなさい!」と俺やリンリン、セイントちゃん、天使の動きを声だけで止めた。

「なんで? こっちは従う理由はないのだけれど」

 ビリビリ数字の書かれた紙を破ったミイナが、誰もいない鉄のドアを睨みつける。

「最初は真ん中のドアに全員で突然するわよ。
 私に着いてきなさい!」

 ルールガン無視でミイナが意気揚々と鉄のドアへと進む。その風格は某ロボットアニメのガキ大将よりガキ大将だ。

 だがミイナが鉄で作られたドアノブに手をかけた時。

『ヒョヒョヒョ、私は別にそれでも構いませんが、こちらには人質がいるのをお忘れなく』

「人質?」

 人質という言葉に、ミイナの機嫌が悪くなる。声が超怖い。

「ヒョヒョヒョ、そうです『国王』という人質がこちらにはいらっしゃるのですよ」

「国王……」

 国王と言われ、ミイナの顔がますます怖くなる。多分ゴブリン程度なら眼力だけでで殺せそうな怖さだ。

『なので自身の手にした数字以外のドアには入らないでいただきたい。でないと国王がどうなることやら……ヒョヒョヒョ、ヒョーーッヒョヒョヒョヒョ――!』

 蝉のようにやかましい笑い声が頭に流れる。超ウゼェ!

「ミイナ様、声の方に従いましょう」

「そうウサ、ここは素直に従っておこうウサ」

「……そうね」

 リンリンとセイントちゃんが左右から説得したおかげでミイナの顔が普段通り可愛い顔に戻る。ありがとう二人とも。

「今回だけなんだからね!」

『ヒョヒョヒョ、ありがとうございます』

 ツンデレ全開でドアの先に進むミイナ。
 怒っているけどさっきと違いめっちゃ可愛い。

「待ってくださいお父――ミイナ様!」

 続いて、リンリンが鉄のドアの中に入っていく。

「僕達も行こうウサ」

「ジンくんがよかったけど、この際ウサちゃんと仲良くなるチャンスだしいいかな」

「だから僕はセイントウサ!」

 天使とギャーギャー(セイントちゃんが一方的に)言い合いながら、天使とセイントちゃんは超怪しいドアの先へと怪しまず普通に進んだ。
 サヨナラ天使。お前は二度とそこから帰って来るんじゃないぞ。
 もう天使だけ帰って来ないだろうと決めつけて、晴れやかな顔で見送る。マジサヨナラ!

『ヒョヒョ、一番のお馬鹿さんっぽいそこの人間、①のドアへ進みなさい』

「誰が一番のお馬鹿さんだコラ!」

 木のドアに叫び、その後もぶつぶつ細かい文句を言いながら木で作られたドアノブを捻って、若干薄暗いドアの先へと俺は進んだ。
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