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第二十九話 シーナ大佐
しおりを挟むスリカ少佐による転移が始まる。
景色が変わり、気がつけば広い部屋にいた。
私が十人住んでもまだ余裕のあるその部屋には、テーブルや机、トイレやシャワー室のような部屋にベッドやキッチンなどが備えてあった。
「今回はクロノ一人だから、自分の部屋に転移した」
「ここがスリカ少佐の部屋」
広いな。
じろじろ部屋の中を見てると、スリカ少佐が眉をひそめる。
「言っておくがこの部屋は自分の部屋の一室に過ぎないからな。普段はあまり使わないからこんなに質素なんだぞ」
質素とは思えない立派な部屋だが、スリカ少佐にとっては質素なのだろう。
「そうか」
「そうだ!」
念を押すように強く言い、ドアに手をかける。
「司令室はここからすぐ近くだ」
部屋から出ると、明かりの並ぶ天井があり、私が五、六人並んでも通れそうな広い通路と、左右にはこの部屋と同じドアが数多くあった。
「ここは自分達『佐官』クラスの本部滞在用の部屋だ」
「ふむ。そうか」
スリカ少佐の後ろからついて行き、しばらく歩くこと数分。厳重そうな両開きのドアの前で立ち止まる。
「ついたぞ」
ドアをコンコンコンと三回ノックをするスリカ少佐。
すると、中から凛々しい女の声が聞こえた。
「入れ」
「失礼いたします」
両手でドアを開き、中に入る。
私もその後ろから部屋に入ると、その部屋は先程のスリカ少佐の部屋より狭いが、冠や調度品のようなものが左右に並べられている豪華な部屋だった。
そして部屋の一番奥には、先程の声の主である女が椅子に座っており、机の上で何やら紙に書いたりしている。
スリカ少佐はその女の前に立ち止まり、ビシッと敬礼をした。
「ガーディアンズ二十六番隊所属。スリカ少佐。ただ今任務を終え、帰還いたしました」
「ご苦労。今回の合格者は一人だけか」
「はっ、一人だけです」
「そう、か」
書くのをやめ、女が鋭い瞳で私を見てきた。
長い赤髪でスリカ少佐と同じ服装のその女からは、試験会場にいたどの女よりも、あの森にいたどの猛獣よりも強い圧を感じる。
まあ私にとってはただただ睨まれているように感じるだけだがな。
「ほう、余の圧に耐え切れるのか」
女がニヤリと笑う。
が、その目や全身からは、野獣のような野性味のあるオーラのような迫力が溢れ出ていた。
「いい。気に入ったぞお前、名前はなんだ」
「クロノ。ディーア・クロノだ」
「クロノ。か」
女が立ち上がり、私の2歩分くらい離れた場所に立つ。
じっとこちらを見ながら、確かめるように自身の拳をグーパーと握り――。
「いくぞ!」
「!?」
突然、私のお腹を殴ってきた。
パンンッッ!!
私はその拳がぶつかる前に右手で受け止めた。
乾いた破裂音のような音が部屋中に鳴り響く。
暴風や衝撃波が私達を中心に発生して、部屋中がめちゃくちゃになる。
「うわっ――!」
スリカ少佐は部屋の隅に飛ばされていた。
私は女を睨む。
「なんのつもりだ」
「なに、軽いテストだ」
そう言い、悪びれもなく女が拳を引っ込めた。
テストだと?
「スリカ。この部屋を直せ」
「いてて……はっ、はい!」
壁の隅で背中をさすっていたスリカ少佐がピシリと立って敬礼し、ぶつぶつ呪文を唱える。
すると幾何学模様が部屋の床に浮かび上がり、まるで時が遡るようにぐちゃぐちゃになっていた部屋が元通りになる。
「ふぅ。完了しました」
「ご苦労」
周囲を眺めて満足した女は、元に戻った机の上に座り、口を開いた。
「紹介が遅れたな。余はガーディアンズ二十六番隊所属。『ジーク・シル・シーナ』大佐だ。シーナ大佐と呼べ」
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