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第11章 明かされる歴史  ラルトside

過去を写す魔法 3

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その後ミーラの父、ガルフは話は終わったと言わんばかりにミーラの母とゼーラルを下がらせた。ミーラは一人残された。扉から出されたゼーラル達は何度も扉を叩き面会を懇願するが願わなかった。
 そして場面はまた変わり、ある日ゼーラルはミーラの母に呼ばれ自室に招かれた。ミーラの母は、ゼーラルに茶を出しソファーに座るよう指示した。
 ミーラの母は、小さくつぶやいた。

「私が…私が母なばかりに…ガルフが父なばかりに」

「ラルフ様!そのような事…」

「いいのです。元は私が悪いのです。」

 ミーラの母、ラルフは涙と共に歯をそのやららかな赤い唇が切れてしまうのではないかと思うくらいキツく、キツく食いしばる。それほどまでに魔王の娘である事がミーラにとってもラルフにとっても"いけない事"なのだろうか?ラルトには不思議で仕方ない。
 自分は勇者の息子として産まれた訳でなくアーランド家一人の息子として産まれ、たまたま勇者の力があったから勇者として今此処にいる。…だからだろか。
 ーー少なくとも"魔王の娘 ミーラ"を知らないと確信した。
 自分が見たのは知っていたのは、ただの人間界に居る"ミーラ"。だからだれもミーラを出来損ないなんて言わない。知らない。そんな場所に居たミーラだ。
 ーー勇者にならなきゃ見れなかった景色。

 そう思い目の前に写し出される光景にラルトは釘付けになって行った。
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