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第11章 明かされる歴史  ラルトside

愛情の在り方 1

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「ラルフ様と私ゼーラルはその日からミーラ様を見かけ会話した事が一度も無いのです。ただ、私は一度ミーラ様をから出来損ないと言われたとだから…あの時が最初で最後の会話なのです…」

 やっぱりか…そうとしか有り得ない。
 思い感じた事がやはり起きていた。

 ミーラにとって大好きな母ラルフ、頼りになる執事ゼーラル。二人の存在は性格が素のミーラ自身を失う程大切で大きな存在だったのだろう。
 自分だってそうだ。
 大変な時辛い時に信頼出来る誰かが居て話す事が出来て、心が救われる。俺は母さんや父さんが居たから優しくなれた。
 それに勇者として初めての討伐の時俺には彼らが居た。それだけで力も勇気も湧き負担に感じていた感情すら安心に変わった。
 ミーラにとってもきっとそんな風に大切だったと思う。

 だからこそ、二人が居ないミーラには安息は無かったのだと思った。それほどまでにきっと自分を知る誰かの存在が大きいのだと実感した。
 同時に母さんや父さん。それに自分は、ミーラの特別でも大切な人でもないのかもしれないと思った。その気持ちはいつも何処かに潜んで居た。今顔を出したこの気持ちは何故か誰かを思う恋心より家族を思う愛情に似た感じがした。

ーーあぁ。俺は気付いてしまったのか?

 ミーラを大切に思う。それは間違いない。
 だが、ゼーラルから聞かされた昔のミーラ。どんなに不安だっただろう。寂しかっただろう。悲しかっただろう。そう思い感じたラルトは異性としてでは無く…たった少しの間過ごした家族としてミーラが心配なのではないだろうか?それはゼーラルやミーラの母ラルフのように…
 どちらも尊い愛情のたった少しの違いが切なくラルトに感じさせた。
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