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第18章  魔王であり父である

ただの小さな祈り

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 勇者は魔王を討つもの
 魔王は勇者に討たれるもの
 
 古来よりそうなる定めにある二人。
 だけども、両者が何を思い何を感じたのか知る者はいるだろうか?
 彼らに付き従う者でさえ全てを知り、全てを見た者は居ない。
 全てを見て、知ったふりをする者ばかりだ。

 そうして彼らを真に理解する者は誰一人存在しない。
 そして、彼ら自身もまた理解する事など無いのだ。


「終焉が始まる…願わくばラルフよ、ミーラだけでもこの定めから救って欲しい…」

 魔王ガルフは、ただの優しく愛おしい妻に願う。可愛い娘の幸せを願うただの父親として暗闇に眩しく光る星を見つめ勇者を待つ。
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