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第21話 新たなる魔王 

涙  2

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 ミーラの涙はいつまで経っても乾かなかった。何時間経ったのだろうか?戦況は変わっているだろうか?誰か酷い目に遭っていないだろうか?

 時間が経つ度に、ミーラは泣きながらも頭は冷静になっていた。父が母が亡くなった今の自分は独りぼっちだ。
 そんな自分が何が出来る?何をすれば良い?そんな風に心も頭もぐちゃぐちゃになりながらも考えていた。
 この時のミーラはきっと"魔王の娘"としての自分しか居ないと思って居たのだろう。だからこそ、思考を止めてはいけないと、感情に飲まれてはいけないと感じていた。

 今はまだ悲しんではいけない。
 今はまだ止まってはいけない。
 今はまだ感じてはいけない。

 ミーラは、壊れはじめた。
 心を凍らせ、感情を殺し、表情を無くした。
 大切な者を亡くしたミーラには、もう人間に対する愛情も優しさも、全てが跡形も無く消え去った。

 あるのは父と母を殺した人間への復讐。
 民を混乱に恐怖に陥れた人間への怒り。

 ミーラを誰も止められない。それは勇者であってもミーラ自身であっても止められない。
 ミーラは、怒りと復讐を糧に魔王となった。
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