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第22章 破壊と運命

紅の災厄 1

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 ミーラは、我を忘れた。
 ミーラは、自我を捨てた。

 母は、見ず知らず人間に殺されたが父の仇は、見知った人。目の前にいる彼。ミーラを魔族だとも知らずに接して短い間だが共に暮らしたラルト。そして彼は勇者、魔を狩る救世主だとされた勇者。…幼き頃のミーラの夢のその人。
 手に持つ聖剣は、ラルトと暮らしていた時見たそれより遥かに強大な力と光を増している。ミーラやガルフでなければ、その覇気だけで力を削がれてしまうだろう"聖の力"に溢れている。
 そして聖剣の主人ラルトは、ミーラに対し何度も何度も首を振り否定してミーラを避ける。
 
『聖剣の主人が情けないな、呆れるよラルト。君が私の仇だとわ』

「違う!ミーラ待ってくれ!俺は、なにもっ」

『君は話さなくていいよ、私の目の前が答えだから』
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