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第25章 勇者の心

聖剣の輝き 2

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 ミーラは、少しずつ自分に誰かが来ていた事を力を注いでくれた事を感じていた。それは薄っすらで確かな物でも無い、側に感じても手にも掴めない自分には何も感じられない。そんなミーラに、誰かが淋しそうな冷たい手を合わせた気がした。
 それを硬い壁から感じる、だが感じるのは僅かに過ぎない。そんな手にミーラは違和感を感じてた。

"この手は、こんなものだったか?"
"これは、何かが違う"
"知ってるのはこんなのじゃ無い"

 勇者が剣を振るうのは守るものか居るから。助けたいと心が叫ぶから。求める者が居るのなら勇者は光に立ち続ける。
 魔王はどうだ?
 倒されるべき対象。それに私はなった。父を亡くし母を亡くし残った私はならなきゃいけなかった。
 だから、このまま固まりになり消失するならそれでも良いと。
 勇者がラルトが手を汚さなくて良いのならそれで良いと。

 だけれどミーラに手を伸ばした先程の者は、魔王が恐れた勇者では無い。ミーラが守りたかった彼、ラルトでは無い。
 違う存在に変わり始めた何かだった…

【彼の手は、あんなに冷たくない】

 ミーラは、ゼーラルが魔力を維持して形成した結界を自らの意思で破るほかなかった。

 魔王は勇者を嫌っていた?
 魔王は勇者を倒さなきゃいけない?
 魔王は勇者に倒されなきゃいけない?

 全ては否だ。

 勇者を好きだから魔王は悪に立ち続ける。
 勇者に嫌な事をさせたく無いから魔王がやる。
 嫌われるのは魔王で良い。
 光に立ち続けるのは勇者であって欲しい。

 【なにせ、現魔王は勇者が光だから。】
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