本より好きになれるなら

黒狼 リュイ

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第10話

レミーの契約書 3

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「なら…」

 バーネットは静かに口を開いた。まるで自分をゆっくり閉じ込めるかの様にーーその姿があまりにも遠くに感じた。

「バーネット?」

「歯を」

 バーネットは、それ以上何も言わず俯き座っているザティスに近寄った。ザティスも動揺せずに黙って座っている。
 次に取ったバーネットの行動に私は息を飲んだ。

 パッーン。ガタっ…

「うっ…」
「ザティス!!バーネットなにを⁈」

 バーネットはザティスを平手打ちにした。勢い良く叩かれたザティスは見事に倒れた。右頬には真っ赤になったバーネットの右手の跡がくっきり浮かんでいた。だが、ザティスは俯いたままで動き出そうとはしない。バーネットもそれ以上動きはしない。あの大人しくない二人が急に??
 あり得ない光景にレミーは驚き声が出てこない。ザティスに駆け寄り、バーネットに聞くしかできない。他に言葉が浮かばないレミーは二人を交互に見るしか出来ない。

「ザティス・ト・バーン!貴方は何してるのですか‼︎貴方はそれでも貴族ですか?!」

「バーネット嬢…私には何も言えません。…だから殴るなら殴って下さい。」

「貴方は…私は…見たくないわ。」"こんな姿"
「え?今…」

「黙りなさい‼︎レミー、貴方も貴方ですわ‼︎こんな契約書なんて‼︎」

 頭に血が昇ったバーネットをその場に居た誰もが止められない。それほどにバーネットは憤慨していた。そうしてバーネットは何時間も二人に説教をした。だけれど、レミーもザティスもバーネットの話を説教を逃げる事なく何時間も聞いた。

ーーありがとう。そう思ったから…
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