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芋狩り

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 獅凰が手を振り下ろすと根はブチブチと音を立てながらちぎれて大きな芋が落ちた。しかし、巨大な芋の怪物は動きを止めるどころかよりいっそう激しく暴れだした。それにつられて、他の5体も一斉に獅凰に攻撃をしかけた。獅凰は、能力のランクはCランクだったものの身体能力においてはSランクだとシフェリに言われていた。獅凰は実際に動いてみて実感した。体が思った以上に動く。今まで現世で使っていた体で考えて動いていては、頭が体についていかないと感じたほどだ。しかし、それでも数に押され避けるので精一杯になっていた。数少ないチャンスで反撃を試みるが、足や腕の一部を落とすのが限界だった。それでも、最初は攻撃が効いていると少しの喜びを感じていたがいくら腕や足を落としても減らない。これは、おかしいと思い1つに意識を集中させその一体の全ての足と腕を落とした。その代償として別の個体から一発くらってしまったがシフェリのクッションみたいな魔法のお陰でかなりのダメージが軽減された。その後隙を見て回復魔法をかけてくれたため次の行動に支障はでなかったが、獅凰は恐ろしいものを見てしまった。引きちぎった筈の腕と足が再生したのだ。獅凰は、かなり悲壮な顔をした。その顔を見たシフェリが獅凰に1ついい情報をくれた。
 「あれは再生しているわけではないのです。体の一部を移動させて腕や足として使ってるだけなのです。その証拠に少しずつ個体が小さくなっているのです。」
 ならば引きちぎり続ければいつかは終わると思い。1つずつ消していくことにした。攻撃をくらうことを気にしなければ一体に対してかなりのダメージを与えられる。それにそこに関してはシフェリがなんとかしてくれると期待していた。そして、一体が残り5つしか芋が残らなくなったときその個体の動きが急変した。引きちぎられて軽くなったからか動きが速くなった。獅凰も並走することはできても距離を縮めることは出来なかった。
 「それを無視して他の個体に攻撃を当てるのです!この個体は任せるのです。」
 「他を攻撃しても速いやつが増えるだけだろなんか一発で殺せるようなやつないか!」
 「首に当たる部分を破壊するのです!そこに魔力の流れを感じます。そこをたちきれば動きが止まるのです!」
 シフェリの助言からすばしっこい個体を無視して他の個体の首を狙った。獅凰が首を狙おうとすると必死で首を守ろうとする傾向があったどうやらシフェリが言っていることはビンゴだったらしい。しかし、5体を相手にしながら一体の首を狙うのは難しい。せめて2体引き剥がすことが出来たら。そう思った瞬間、考え事をしていたせいか攻撃に対処するのに遅れをとってしまった。背中には土の壁、足元も地面しかない。芋の怪物は容赦なく獅凰を叩き潰した。そのあともただひたすらに同じところを攻撃し続けた。
 ボコン
 大きな音を立てながら地面が芋の怪物を飲み込んだ。獅凰をひたすらに攻撃していた個体とその付近にいた他の2体も土に飲まれた。地上にいる2体のうちの一体の後頭部に飛び乗り笑うものがいた。そのものは素手でその頭となるであろう芋を力ずくで引き剥がした。そのものは笑いながらもう一体の首にのしかかる。芋の怪物は必死で逃げようとした。本能が、死を自覚したのだろそれは、必死に暴れた。そんなことを気にするそぶりもなくその者は、首を剥ぎ取った。土に飲まれた個体達がちょうど起き上がってきた。最初はやる気に満ちて反撃に出ようとしていたのだがやがてその惨劇を見て何を理解したのか、おもむろに震えだした。それをその者は1つずつ頭をもぎ取っていく。もちろんその者は、獅凰なのだが5体を仕留めたあと自分の仕事は終了と言わんばかりにその場に倒れこんだ。その頭上に獅凰の記憶からも消えていたすばしっこい個体がやって来た。しかし、獅凰は慌てる様子もなく目を閉じた。そのまま眠ろうとしたのだ。その個体は、獅凰の顔面を潰そうとしたところでその個体の動きが止まった。ギチギチと鈍い音を立てながら動きをとめた。芋の怪物は、光の鎖に縛られていた。
 「やっととらえることが出来たのです。獅凰も安心してないで反撃くらいするのです!もし私が助けなかったらどうしてたのですか!」
 「助けてくれたじゃん。」
 獅凰は鎖に縛られた固体の頭をもぎ取る。
 「そう言うことじゃないのです。」
 「てか、今凄く驚いてたんだけど意外と有能なんだな。」
 「意外とってなんなのです!流石に私もおこるのですよ!」
 そんな事を言い合いながら動かなくなった芋の体を引きちぎっていく。
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