上 下
34 / 50

国王からの依頼

しおりを挟む
 ある日、国王から呼び出された。
 「今回は何のご用でしょうか。」
 今回召集されたのは、獅凰だけではなかった。シフェリや、レイラは勿論、レオまで呼ばれていた。獅凰は、余程重要な事かかなり深刻な問題があるのではないかと最速で駆けつけた。
 「いや、そんなにかしこまらなくてもいい。リラックスしてくれて構わない。」
 その言葉で少し緊張がほぐれたどうやらただこのメンバーが必要なだけだったそうだ。
 「では、本題に入る。獅凰君に私から依頼を頼みたい。」
 獅凰は、にやける顔を引き締めて王に告げた。
 「我々は、独立した組織です。クラウディオ帝国の恩恵を受けているとはいえ、我々に依頼する際は我々の決めたルールに従って貰いたいのですがよろしいでしょうか。」
 「無論、そのつもりだ。我々とて、あなたたちの恩恵を受けていないわけではない。DCSがいることで、国近辺の驚異が排除されている件については非常に感謝している。ここで、国の命令に従い、仕事を放棄したなどの汚名を着せるつもりはない。」
 「それでは、内容から入りましょうか。」
 その内容は国王の従者によって伝えられた。国王が、ギルグッドと呼ばれる国の長と会談がある。そこへ行くまでの護衛をして欲しいとのこと。そして、それなりに長い旅となってしまうため。軍隊を構えてしまうと、備蓄が減ってしまう。出来るだけ最小限の人数で行きたいとのことだ。それにそれほどの大軍で押し寄せれば持っていない敵意を悟られる可能性があるため控えたいそうだ。しかし、国王が動くため賊のひとつやふたつ現れない訳がない。それを、獅凰たちに処理をしていただきたいのだ。
 「しかし、そうなると我々は長い間DCSをあけることになります。それでは、いくらDCSのルールとはいえ仕事を放棄しているのと代わりはありません。」
 国王は、その心配はいらないと言った。
 「そのためにレオ君を呼んだのだ。レオ君であれば多少無茶な依頼でもこなすことが出来るだろう。それに、私はここ最近の彼の行いで彼を信用している。獅凰君が、我々と着いてくることで不利益を被らないように彼には軍の采配の全権を一時的に譲るつもりだ。」
 国王は、レオに獅凰の仕事を肩代わりさせようとしたのだ。
 「かといって、DCSに一人も残らないのは少し問題がある。獅凰君以外の一人を残すことは許可しよう。どのみち、ヴィンスは連れていくつもりだからな。」
 しかし、そのタイミングでヴィンスは獅凰にある話を持ちかけた。
 「今回は、DCSの全員で行ってくれないか?」
 「なぜだ?」
 「国王には、確信があるわけではないから伝えていないのだがギルグッドで何か不穏な動きがあるらしい。後悔だけはしたくない。今持てる最大戦力は持っておきたい。念のためにレオも来てほしかったがさすがにそれでは国の警備に関わる。」
 その言葉を聞いて獅凰は承諾した。請け負った仕事を完遂出来なかったという事実が残るのも嫌だったからだ。獅凰は、国王にこう話を持ちかけた。
 「それは、一人も残さなくてもいいという事でしょうか」
 「ふむ、それはどういうことか。話してみろ。」
 「国王様は、我々の実力を実際に見たことはないでしょう。我々にその実力を紹介するアピールをさせて頂きたいのです。我々にとってこれは宣伝になります。国王様ほど顔の広いお方の評価が頂けるなら今後の売り上げにも大きく関わることでしょう。しかし、メリットは我々だけではありません。勿論これほどの恩恵を頂いておきながら裏切る気などはございませんがもしそのような事態に至った時の対策がとりやすくなるでしょう。国王様も、反乱分子になるかもしれない者の弱味を握ることは悪くは無いことでしょう。」
 国王は、獅凰の言葉に驚きを見せた。その他のものは確かに商売人の背中を見た。
 「しかし、獅凰君。それでは我々がまるでDCSを信用していないようではないか。それでは、私の気持ちが進まない。」
 「それは、国王様が国王と市民として我々を捉えているからではないでしょうか。我々はあくまで大切なクライアントとして捉えています。そして、商売の中で一番大切なのは信頼です。しかし、100%の信頼ではない。それはもはや崇拝か、友達でございます。我々が求める信頼は、80%の信頼と20%の疑念であります。我々としてはクライアントに常に我々がきちんと依頼を遂行出来るか疑ってかかっていただきたいのです。それが、我々の緊張感ににも繋がるので。」
 国王は、またもや獅凰に圧倒された。これほどまでに国王を敬意を持った上で国王として見ていない人物は初めてだったからである。
 「獅凰君が、そう言うのならそれでいいのだろう。しかしひとつ聞いておきたい。DCSの運営はどうするのだ。」
 「国王様も仰ったように、私たちもレオを信頼しています。あらゆることを考えた上で、彼にDCSを任せられると判断しました。その代わり、彼がこの依頼を受けていただければですが。」
 国王は、レオに返事を仰いだ。勿論レオが断る訳もなく、獅凰が考えていたようにことは進んだ。そして、三日後の護衛まで準備をし始めた。
しおりを挟む

処理中です...