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投獄

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 ガチャン
 「獅凰、どういうことなのです?」
 獅凰達は突如投獄されたのだ。それもまさかギルドの地下にある牢屋とはさらに都合が悪い。
 
 投獄される数時間前、獅凰達はショッピングを楽しんでいた。食べ物を屋台で買ったり、ミラに教えておくためにここにある商品、店をメモしていた。するとあることに気がついた。ギルドの本部があるじゃないかと。獅凰達は顔を伏せて行動した。少し怪しいが、人が多いため紛れることが出来ていた。しかし、付近で事件が起こっていたらしい。連続万引き犯がいたそうだ。その被害は膨大でどこの店もてを焼いていたらしい。その万引き犯の捕縛がギルドからの依頼として出ていたそうだ。獅凰達はそれに関わってしまった。
 
 「例の万引き犯だ!誰か捕まえてくれ!」
 獅凰は迷わずその男を追いかけた。獅凰は、実際にそれを功績としようと思ったり、それを仕事として金銭のやり取りをしようとは全く思っていなかった。ただ純粋な善意だけでの行動である。
 「ぐわぁ!何なんだお前は、あり得ないスピードで走りやがって。クソッ」
 獅凰は、戦闘の積み重ねで足の裏と地面との設置の瞬間に能力を発動させることで爆発的なバネを作り出し、恐るべきスピードを出せるようになっていた。獅凰にとって、万引き犯を追いかけて捕まえることは何もしんどくない事だったのだ。
 「あーあんたありがとう。本当に助かったよ。ギルドに依頼は出していたんだがなかなか解決してくれなくて…」
 そんなおじさんの声を聞いたときに、人混みの後ろから大きな声が聞こえてきた。
 「人の依頼を奪うのは良くないなぁ。ルールってもんを何一つ分かっちゃいねぇ。人の獲物を横取りするのはご法度だろ?そんなことも分かんねぇなんてどこのルーキーだよ!」
 どうやらギルドからの依頼を受注していた者らしい。
 「悪かった、横取りをするつもりなどない。そもそも、ギルドに勤めてもいないからな」
 男達は顔を見合わせた。そして、あることを思い出した。ギルドに入らずに功績をあげようとする異端な者がいると。そして、それを見つけ次第拘束せよと。それは、ギルドに勤めるものすべてに伝えられていたものであった。そして、それが獅凰だと考えた。その彼らがとる行動はひとつしかない。ギルドのルールに乗っ取ったように見せて、獅凰を捕まえること。さらに、依頼の報酬と獅凰を捕まえたことによる報酬を貰うことだ。
 「だとしても、人の仕事を奪うってのはいいことじゃないだろ?俺たちだってこれで日々飯を食ってんだからな。そんな大切な仕事を奪われちゃたまったもんじゃない。」
 男達は、大袈裟に獅凰を避難した。
 「いや、もともと報酬何て貰うつもりないから、それはあんたが貰ったらいい。俺は何もしなかった。万引き犯を捕まえたのはあんただ。それでいいだろ?」
 獅凰は、これ以上面倒なことになって存在が明らかになることを恐れて一刻も早くこの場を去りたかった。しかし、すでに獅凰であると気付いている男達は逃がすはずもない。なぜなら莫大な報酬が目の前にあるのだから。
 「ちょっとついてきてもらおうか。少しギルドの談話室でも借りて話そうじゃないか。」
 男は力強く獅凰の腕を掴んだ。それをようやく後ろから追い付いてきたシフェリとレイラが目撃した。レイラは、怒り男を殺す勢いで近づいてきた。
 「待てレイラ。落ち着け。」
 レイラは、獅凰の言葉で落ち着きを取り戻した。
 「何だ仲間か。おい!こいつらも連れていけ!」
 結果的にシフェリとレイラまでも巻き込んでしまうこととなった。
 
 そして、今に至る。
 「どうしてって俺がやっちまったからだろ」
 「そういうことじゃない」
 レイラは、じっと獅凰を見つめる。
 「獅凰ならあの状況を打開できた。武力にでなくとも制圧できたはず。今だってそう。逃げようと思えば逃げれる。なのに獅凰はしない。なんで?」
 「あー、そういうことか。理由は、一つ国王に迷惑をかけたくないそれだけ。もし、俺たちの行動が国王の耳に届いてみろ。俺たちを見捨てるにせよ庇うにせよ、国王は、危険人物をギルグットに連れ込んだ人間になってしまう。それではうまくいく会談もどうなるか分からない。」
 すると二人はしゅんとした。逃げるすべはないと言われたようなものだから。
 「けど、心配すんな。最悪の場合強行突破する。出来る限りの抜け道を探したあとでだけどな。」
 二人は少しほっとした表情を見せた。
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