クロスフューチャー

柊彩 藍

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6章~正義の制裁者~

革命の英雄

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 朝からハルトに客が来ていた。
 「私、警備隊のトップを務めさせていただいている。サラディン・ジョーンズだ。少しでも時間があるなら君と少し話がしたい。」
 ハルトは特に用事も無かったためアルビオンに用事が出来たことだけを伝えてサラディン・ジョーンズというものについていった。
 その男はハルトを警備隊の本部らしき場所へと連れていった。そして、そこの牢屋ではなく接待室に案内された。捕まえられる訳ではないようだ。
 「まずは、自己紹介をしようか。先ほども言った通りここの者達を、統括しているサラディン・ジョーンズというものだ。君の名前は?」
 「ハルト・グレンフェル旅人だ。」
 「早速本題に入らせてもらうが昨日見たものを全て教えてほしい。」
 ハルトは、昨日の事件を全て話した。見たものをそのまま語りもしたが、ハルトは時々自分の主観や感情、感覚を交えて喋った。それには、見た視覚のみの情報では伝わらない者があると感じていたからだ。実際に、昨晩の男はその行為その見た目以上に残酷な雰囲気を漂わしていた。それがあの場で、ハルトが足を動かせずにいた理由でもあるのだろう。
 「なるほど動けなかったと。しかし、そいつが圧倒的に強いと本能が対峙することを拒否したわけではないのだろ。見たところ君はそうとう強いはずだ。」
 「それは、買いかぶり過ぎですよ。あなたからものすごいオーラがにじみ出てるんですから。それよりそうですね。恐怖に支配されて足を動かせなかったという感じでは無かった。かといって魔法か何かで自分の意思とは関係なく強制的に足の動きを止められているわけでもなかった。そんなつもりは無かったのだが、自分から進んで足を止めているような感じだったと思う。」
 サラディンは、少し難しい顔をした。それは、ごく普通の反応であろう。自らがそのものを捕らえようとしているのに対し、自らがその進む足をとめているというのだから矛盾という他ない。
 「すまない、時間をとらせてしまった。私の聞きたかったことはそれだけだ。ありがとう。」
 立ち去ろうとするサラディンをハルトは呼び止めた。
 「もし、よろしければ俺の質問にも答えてほしい。」
 サラディンは、驚いた様子を見せたが快く応じてくれた。
 「それで、聞きたいことは何だ?」
 「2つあるけどまず一つ。この国について教えてくれ。」
 サラディンは、伝えられる事を全て話してくれた。自衛方法や、犯罪に対する抑止力等は警備隊が行っているとしか言わなかったが、それ以外はかなり詳しく説明してもらった。特に建国に至るまでの過程等はこれ以上にないほど詳しかったように思えた。
 「王国時代は、とにかく平民たちの生活が苦しかったんだ。重税に、低福祉、我々が国のために動いている十分の一すらも恩恵を得ることは出来なかった。」
 サラディンの話によれば、貴族や王族の護衛の任務では、肉の壁として働かされたり、農村では不作豊作に限らず一定の、多量の税が求められた。さらに、その税によって巻き上げられた食料は、貴族や王族の備蓄となり。彼らは裕福な食生活を送っていた。それだけならまだ民も、耐えうることが出来ただろう。しかし、彼らは巻き上げた多量の食料を消費しきることなく捨ててしまうのである。その食べ物で飢えを紛らせることが出来た日々はいくつあっただろうかと嘆くばかりであった。しかし、民が落胆したのはそれだけではない。彼らは、少しずつ血を流し続けていたのだ。王の不当な行いを棚にあげて暗殺し自らがその座につく。そして、前の王と変わらない政治を行った。血は流れても、世が良くなっていくことなど無かったらしい。そこであるものは、平民の団結こそ希望ある明日を迎えられると唱えたのだ。はじめは誰もその言葉に耳を傾けようともしなかった。重税により食料が巻き上げられているため戦うための英気すらも途絶えてしまっていたからだ。しかし、そのものは具体的な作戦を掲げて支持をあおいだ。次第に彼に賛同するものが増え、革命を成し遂げたのだと。
 「二つ目の質問はどうやら聞かなくてもよくなった。」
 「なぜだ?」
 「それは、俺の質問があなたは何者かだからだ。革命の英雄」
 「それは、それほど称えられたものでもない。そのせいで多くの人間を死に追いやってしまったのだから。」
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