神様に愛されている α×α(→Ω) 

尾高志咲/しさ

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幕間 1

伊織の謝罪 ①

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 ……氷室一族のアルファを、勝手にオメガにした。

 何も起こらないはずはないと思っていたが、果たして氷室のオメガたちは大層ご立腹らしい。いつも冷静な比企が、慌てて自分の元に来る。

「伊織様、早めに氷室家を訪問なさった方がよさそうです。志乃様の姉君たちがお会いになりたいと……」

 さっさと行って、一度頭を下げて来い! とは流石さすがに言えなかったのだろう。だが、比企の顔を見ればそう思っていることはすぐにわかった。
 志乃との仲が許されるのならば、謝ることなんて何でもない。そう思ったが、流石に本人がいる前で口論になったりしたらまずい。優しい志乃は、俺と家族の間で板挟みになって胸を痛めることだろう。
 一人で訪問する口実を考えていたら、比企が志乃を自宅から連れ出すと言う。

「ちょうど、来月オープンするテーマパークの招待日があります。そちらに志乃様をお連れしましょう」

 久世グループが作った大規模テーマパークは、事前に抽選で一般客を招く。話題作りの一環だが、自分が志乃を連れていきたかった。今回ばかりは仕方ない。

 翌朝、志乃はきらきらした目をして話しかけてきた。

「あのね、伊織! 比企さんが誘ってくれたんだ。伊織は用事で行けないんだよね。すごく残念だけど、また今度一緒に行こうね……」
「代わりに俺が、志乃と初♡デートおおお! 伊織の分まで、たっぷり楽しんでくるからな~」
「大輝! その言い方やめて!」

 真っ赤になって怒る志乃を見ながら、あははと大輝が笑う。心から殺意が湧いたが、今回ばかりは許そう。……だが、やっぱりこいつは志乃から離した方がいい。大輝の留学先を比企に手配させることを決意した。できるだけ日本から遠く離れた国がいい。

 何も知らない志乃は、ごめんねと一生懸命謝ってくる。悪いことなど何もないのだが、謝る姿が可愛いので、うんうんと頷いておく。
 昨晩、もう番になったのだから、他のアルファには反応しないでしょう、と比企が言った。そういう問題じゃないんだ。

 ――自分のオメガを他のアルファに見せたい奴はいない。

 俺の冷ややかな視線に、比企は「当日は、私が志乃様のお側にずっとついておりますので」とすまして答えた。

 初めて氷室家の門をくぐったのは、晴れた日曜日だった。

 アルファの能力が低いとはいえ、氷室家は代々続く名門だ。高位のアルファを輩出する家々で【氷室のオメガ】の名を知らぬ者はいない。
 西洋風の庭園は広く、門からずっと奥に屋敷がある。玄関では既に人が待っており、すぐに応接間へと案内された。

 訪問相手は、当主夫妻ではない。志乃の双子の姉たちだ。氷室一族の中で、最も優秀で美しいと言われるオメガたち。

「久世伊織です。本日はお会いできる機会をいただき、ありがとうございます」

 室内に一歩入り深々と礼をすれば、澄んだ声が響いた。

「どうぞお顔を上げてくださいな、久世様」
「お休みのところをお呼びたてして、申し訳ございません」

 顔を上げた先には、姿形がそっくりなオメガたちがいた。優し気な口調に反して、二人の目は少しも笑っていない。
 ソファーに座るよう勧められ、向かい合って腰を下ろす。

 長女の華乃はなのと次女の咲乃さきの。艶やかな黒髪に白磁の肌、見た者の心を捉えて離さない黒曜石の瞳。華奢で長い手足は名工が作った人形のようで、人間とは思えない。
 志乃よりも十歳年上の二人は、既に他家に嫁いだオメガだ。二人の夫はそれぞれ政界と財界とで華々しい活躍を遂げている。
 
「本日お越しいただいた理由はおわかりでしょう?」
「はい」
「……なぜ、志乃をオメガに?」
「久世の血が、彼は私の番だと訴えました。アルファのままではなく、必ずオメガにするようにと」

 あっという間に室内の温度が下がった気がする。まるで春から真冬に変わったかのように。
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