【祝福の御子】黄金の瞳の王子が望むのは

尾高志咲/しさ

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第四部 婚礼

第24話 初夜② ※

 
 ⋯⋯言葉も出ない、とはこのことだ。

 イルマの目の前には立派な湯殿があり、溢れるほどの湯で満たされている。湯気が立ち上って全体がぼやけているが、部屋一つ分ほどの広さは優にあるだろう。まるで旅先の貴族相手の宿屋のようだ。

 今まで湯を使っていた時も、一人には十分な広さがあった。スターディアでは毎朝、豊富な湯が用意され、ゆっくりと汚れを落として身を清めることが出来る。だが、これは比較にならない。

「湯につかることで、疲れを癒し体を回復させると聞いた。折角だから、イルマと一緒に入りたいと思って」
「⋯⋯一緒に、入る?」
「そう、一緒に」

 イルマの目が丸くなる。シェンバーは、しっかりとイルマの腰に手を回していた。逃げ出すことなど出来そうもなかった。
 

 イルマは湯殿番たちにあっという間に服を脱がされ、滑らかな石作りの風呂に導かれた。彼等の手際は見事だった。イルマの体を石の台の上に横たえ、花の香りの油を使って全身を揉みほぐす。その後は、髪から爪先までを泡立てた石鹸で丁寧に洗う。汚れを落とし、体を磨かれた後は、そっと湯船に入れられた。
 ふわふわとした心地でいるうちに、湯殿番たちは姿を消した。

 湯は、思ったよりも熱くはない。じわじわと体が温まっていく。湯が波のように揺れて、シェンバーが入ってくるのが見えた。鍛えられた体を目にして、イルマは一気に体温が上がった。これは湯のせいではないだろう。

「イルマ、こっちにおいで」
「こ、ここでいい」
「⋯⋯じゃあ、そっちに行ってもいい?」
「えっ、あ」

 焦れたシェンバーは、イルマの答えを待たなかった。立ち上がって湯の中を歩いてくる。イルマは思わず、頭まで湯の中につけてしまおうかと思った。
 目の前の湯が跳ねた。イルマが体を丸めて縮こまっていると、シェンバーが腰を下ろす。
 俯いていた顔を上げると、シェンバーの上気した顔が目に入った。

 ⋯⋯ああ、これは駄目だ。

 シェンバーの白い肌に、いくつも水滴が滴り落ちている。輝く金の髪を無造作にかきあげて、形のいい眉が見えていた。深い瑠璃色の瞳は、欲と熱を孕んで煌めいている。
 きっと、自分も同じ瞳をしているのだ。体に火がつき、奥に熱が蠢いている。

 口づけは、甘かった。潤んだ唇も、互いに絡めあう舌も。
 抱きしめ合った途端に、肌と肌の間を通る湯が消えていく。尻に硬くそそりたつものが当たり、イルマの体がびくびくと跳ねる。イルマがシェンバーの首に腕を回せば、口づけは一層深くなった。

「⋯⋯イルマ、イルマ」

 名を呼びながら、シェンバーの口がイルマの耳をむ。湯の中で体をまさぐられる感覚は常とは全く違っていた。

 温まった体には熱が宿っている。シェンバーの指が触れる場所は、いつもより敏感になっていた。両胸の突起を摘ままれただけで、イルマの体に痺れるような快感が走る。湯の中で優しく潰すように捏ねられ、思わず声が出た。漏れた声は湯殿の中に響き、それが一層、イルマの羞恥心を煽る。

「ふ⋯⋯あ、やっ⋯⋯」
「⋯⋯可愛い。そんな顔されると全然、我慢がきかない」

 シェンバーの左手が下がっていき、立ち上がっているイルマ自身に触れる。硬く張り詰めている姿を優しく握りしめた。

「やめ⋯⋯あ、あ! 声、出るからッ」
「出せばいい⋯⋯、もっと」

 イルマは堪らず、自分からシェンバーに口づけた。優しく舌で溶かされるのと同時に前を擦り上げられた。肩が跳ねて、気持ちよさに何も考えられなくなる。シェンバーの右手が、イルマの後ろに回る。優しく撫でられ、ゆっくりと奥に指が押し込まれた。

「ンッ⋯⋯ふっ」

 温められた体が、いつもよりもたやすく指を受け入れていく。中の感じる所を擦られて、イルマはシェンバーの体にしがみついた。声は飲み込まれ、快感から涙がにじむ。

「ああ、イルマ⋯⋯。これならすぐに出来そう」

 シェンバーが指を動かすたびに、湯が跳ねる。中がすっかり柔らかく蕩けた頃に、シェンバーはイルマの異変に気がついた。首に回ったイルマの手から徐々に力が抜けはじめたからだ。くったりと自分にもたれかかってくる。

「イルマ? 大丈夫?」
「ん⋯⋯」

 溶けた瞳に火照ほてった肌は、たまらなく情欲をそそられる。だが、このままだとイルマは湯あたりで倒れるだろう。シェンバーは鉄の意思で、イルマの体を湯の中から引き上げた。

「シェン⋯⋯?」

 ぼうっとしたままで、ぴったりと体を張りつけてくるイルマに、気ばかりはやる。

 湯殿を出れば、待ち受けた側仕え達が素早く二人の体から湯を拭きとった。シェンバーが籐椅子に座ると、すぐに扇いだ風が送られる。手渡された冷たい柑橘水を口に含んで、シェンバーは少しずつイルマに与えた。イルマは喉を鳴らして飲み干していく。

「⋯⋯ありがと、シェン。大好き」

 にっこり笑うイルマをしっかり抱えて、シェンバーは再び立ち上がる。もう一刻も待てなかった。
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