翼が生えた王子は辺境伯令息に執心される

尾高志咲/しさ

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翼が生えた王子は辺境伯令息に執心される

9.エドマンドの誓い

 いつのまに眠ってしまったのか。

 ふと目を開けると、僕はエドマンドの腕の中にいた。大きな翼と逞しい腕に包まれて身動きができない。先に目覚めていたエドマンドと目が合って、ついばむように軽く口づけられた。僕をしっかりと腕の中に捉えたエドマンドの熱い息が耳にかかる。ぶるりと震えた体は、ますます強く抱きしめられた。

「……貴方を閉じ込めてしまえたらいいのに」
「エドマンド」 
「愚か者だとわかっています。それでも、この美しい翼ごと囲って誰にも見せたくないと思ってしまうのです」

 欲を湛えた宵闇色の瞳に溺れそうになる。いや、もうとっくに溺れているのかもしれない。
 切なげに眉を寄せるエドマンドに自分から口づければ、彼は瞳を大きく瞬いた。

「じゃあきっと、僕も愚かだと思う。翼なんか生えてこれからどうしようって思ってたのに……今は、この呪いを許してもいいって思ってるから」
「ミシュー……」

 翼の秘密を知った今、エドマンドが恐れていたような気持ちには少しもならない。
 体を包んでいた翼がふわりと広がった。

 エドマンド、と口にしようとすれば顔中に口づけが降ってくる。瞼に、鼻に、唇に。僕を見つめる瞳が潤んでいるのに気が付いた。まるで泣き出してしまいそうな彼の頬に手を伸ばす。

「ねえ、エドマンド。『魔女の呪い』はずっと続くんでしょう?」
「はい。決して解けない呪いだと言われています」
「この翼ごと好きでいてくれる? ずっとだよ?」
「……ロフォール伯爵家の男に二言はありません。父も祖父も、代々約束をたがえませんでした」
「北の辺境伯の領地で僕は受け入れてもらえるかな。皆に化け物だと忌み嫌われはしないだろうか?」
「ミシュー。我が領民たちは神の御使いが現れたと喜ぶことでしょう。何もご心配はいりません」

 エドマンドが不安を吹き飛ばすように、僕の手を大きな両手で握りしめる。

 ――何があってもお守りします。貴方だけを愛すると誓います。

 まるで魔女に告白した先祖のように真摯な瞳と言葉を向けられて、じわじわと頬が熱くなる。こくりと頷くと、エドマンドは輝くばかりの笑顔を見せた。同時にふわりと広がってはためく翼がおかしくて、思わず口元が緩む。

「この翼、いつか僕の言うことも聞いてくれるかな?」
「そればかりはお約束できませんが」

 困ったように笑うエドマンドの胸に、そっと頬を寄せる。

(……この優しい人が好きだ。とんでもない魔女の呪いだけど、どうか幸せを運んでくれますように)

 エドマンドは僕の体を抱きしめて、もう一度優しく愛の言葉を囁いた。







 ~・~・~・~・~・~・~・~・~

 お読みいただきありがとうございます!
 明日からは続編となる新章に続きます。
 朝晩の2回更新予定です(´∀`*)
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