悪夢〜やまの恵多短編集〜

やまの恵多

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じゅうえんさま

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小学1年の頃、近所にAちゃんという子が住んでいました。

性格も明るく、活発な子だったAちゃんは、その当時の私にとって、家族に次いで大切な友達でした。

ただ、一つだけ、気になる点がありました。遊ぶのは必ず外か、私の家。Aちゃんの家はすぐ近くにあるのに、Aちゃんから「うちで遊ぼう」と誘われたことはありません。

私はある日、思い切って言いました。Aちゃんの家で遊びたいと。

Aちゃんはしばらく考えて、言いました。

「◯◯ちゃんなら大丈夫かな」と。

友達として認められたような気になった私は喜び、Aちゃんの家まで意気揚々とついて行きました。

「ママは留守にしてるから、入って」

初めてAちゃんの家に上がった私は、その異様さに驚きました。

一言で言えば、ゴミ屋敷。床中に埋め尽くされたチラシやポリ袋。普段接しているAちゃんの雰囲気とは、全く付合しない住環境に、私は言葉を失いました。

「散らかってるでしょ。ごめんね」

Aちゃんは言いました。が、私は部屋の散らかりようから目を移した先、リビングのある一点に視界が釘付けになりました。

散らかり放題のリビングの一角、そこだけ綺麗に整えられた手製の祭壇があり、大きく口を開けたソフビ製の赤ちゃんの人形が祀られていました。

人形は、まるで血でも被ったかのように、顔を中心に赤く染まっており、人形の周りには赤い筆文字で難しい漢字が書かれた紙が何枚も貼られています。

「それ、じゅうえんさまっていうんだって」

Aちゃんは、人形を指差して言いました。

「じゅうえんさまにお願いすると、悪い人をこらしめてくれるんだって。たったの10円なのに、おかしいよね」

Aちゃんは笑って続けますが、私は良くないものを見てしまったような感覚に苛まれ、泣き出してしまいました。

そこへ、玄関の開く音と、Aちゃんの母親の怒声が響きました。

「A!勝手に友達呼ぶなって言っただろ!」

Aちゃんの母親は、凄い剣幕でAちゃんに詰め寄ると、烈火の如くAちゃんを罵倒しています。私は泣きながら、Aちゃんの家から飛び出しました。

その日以降、私とAちゃんは疎遠になり、その出来事から程なくして、私は父の仕事の都合で他県に引っ越すことになりました。もう20年前の話です。

最近、Aちゃんの家が夢に出てきました。あのゴミ屋敷の中、祭壇の人形がこちらを睨んでいます。子供の頃読めなかった漢字も、今なら読めます。














ああ、だから、じゅうえんさまだったんだね。
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