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はじまりのアンケート
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『世界中に配られましたこのアンケート。女性のみにあてられたそうですが…』
『これは何かの企みがあるに違いない!政府はなにを……』
テレビから流れてくる、どこか無機質なアナウンサーの声。
アナウンサーの女性が言っていた紙は今、手元にある。
氏名の欄には最初から自分の名前と年齢、生年月日が記入されていた。
私はそれをリビングの机に置いてにらめっこ常態。
「真耶ー?書いたらご飯にするわよー?」
お母さんがキッチンからハンバーグの乗った皿を運びながら声をかけてくる。
「はーい」
ティッシュ箱の下にあったお母さんの紙には、私のと同じように<貴方の大切な人(異性)は誰ですか?>の質問。
でも一つだけ違うのはその下の欄に
『宮峰 楽』
とお父さんの名前が書いてあることだ。
私は自分の紙に、幼馴染みの
『石谷 幸也』
の名前を書いた。
紙をお母さんの紙の上に置くとご飯を二人分よそった。
「「いただきまーす」」
手を合わせて今日学校であったことなどを話していると、テレビからなにやら騒がしい声が聞こえてきた。
『……から中継です。なにやら小さい女の子が…』
『こーんばーんわ♪さぁ、皆さん…女性のみなさまにはアンケートをお願いしたと思いまぁす!』
テレビ画面の奥で、夜の街の中光る大きなモニターや電気屋のテレビ。
そのどれにも金色の長い髪をひとつ縛りにした赤目の少女が映っていた。
「あら、なにかしら?」
お母さんも箸を止めてテレビをみている。
なんだか、嫌な予感がした。
『あのアンケートに名前を書かれた男性はぁ…♪今夜八時三十分ぴったりに、死にまーす♪』
女の子がとびきりの笑顔でそう言った。
お母さんも、私も、アナウンサーも、キャスターも、一瞬時間が止まったように固まった。
『あれぇ~?生きてる~?』
可愛らしい声が告げる恐ろしい予告。
「きゃぁぁぁぁ!!」
「いやぁぁぁぁ!」
「う、嘘だ嘘らうそだぁ…!!」
瞬間、絶叫があたりに響き渡る。
『ああ、ごへいがありました』
テヘッとウインクをする女の子に周りが再び静かになる。
『名前が書かれなかった幸せな男性はぁ…♪生き残れまぁす♪』
「よっしゃぁぁぁ!」
何名かの男性の喜ぶ声。
いつもなら、悲しい奴ら、って冷淡に思ったかもしれない。
だがその可愛らしいけれど、少し低い声に未だ注目している者もいる。
次の瞬間女の子がニヤリと笑う。
『まぁ、怪物として…女性の前に立つ敵になってもらいますけど…♪』
「そんな…いやだあああ!」
「怪物になんてえぇ…!」
それでも女の子の言葉は続く。
『あ、名前が書かれた男性は死ぬ…正確には、名前を書いた女性の力になって死んでもらいまぁす♪』
お母さんが箸を落とす音でハッと我に返る。
『紙に書いた名前は消せませんのでぇ、いまさらどうにもできませぇん♪』
時計をみるといまは八時。
まだ、時間はある。
お母さんはいそいで、紙に書いてしまった名前を消しゴムで擦る。
「やだ、あなた…死なないわよね嘘よね?ごめんなさい私がぁ…!」
何度も何度も破れそうなくらいに擦っても全然消えない。
それどころか、紙には皺がつくだけで破れさえしなかった。
ガチャ
と玄関の鍵の開く音と共に
「ただいまぁ」
「おじゃましまーす」
二人の声が聞こえた。
「幸也…?お父さん…?」
玄関に向かうとお母さんは勢いよく扉を開けた。
「あなた!幸也く…」
二人の笑顔が一瞬で血に染まり、その首はぽとりと地を汚した。
「ぇ、あ…あなた?ゆきや、くん?」
「おとうさ…ゆきや…」
玄関に落ちた幸也の首。
それについた二つの目玉は静かに私をみていた。
血の匂いと夏の暑さが押し寄せる中私の意識は遠のいていく。
最後に見たのはお父さんに寄り添うように、首に鉛筆を刺して息絶えた母と、いつまでも私をみつめる幸也の顔だった。
耳にはあの女の子の声が響いている。
『女性はしぶとく生きるなんていいますが…あんがい弱いんですねぇ』
『これは何かの企みがあるに違いない!政府はなにを……』
テレビから流れてくる、どこか無機質なアナウンサーの声。
アナウンサーの女性が言っていた紙は今、手元にある。
氏名の欄には最初から自分の名前と年齢、生年月日が記入されていた。
私はそれをリビングの机に置いてにらめっこ常態。
「真耶ー?書いたらご飯にするわよー?」
お母さんがキッチンからハンバーグの乗った皿を運びながら声をかけてくる。
「はーい」
ティッシュ箱の下にあったお母さんの紙には、私のと同じように<貴方の大切な人(異性)は誰ですか?>の質問。
でも一つだけ違うのはその下の欄に
『宮峰 楽』
とお父さんの名前が書いてあることだ。
私は自分の紙に、幼馴染みの
『石谷 幸也』
の名前を書いた。
紙をお母さんの紙の上に置くとご飯を二人分よそった。
「「いただきまーす」」
手を合わせて今日学校であったことなどを話していると、テレビからなにやら騒がしい声が聞こえてきた。
『……から中継です。なにやら小さい女の子が…』
『こーんばーんわ♪さぁ、皆さん…女性のみなさまにはアンケートをお願いしたと思いまぁす!』
テレビ画面の奥で、夜の街の中光る大きなモニターや電気屋のテレビ。
そのどれにも金色の長い髪をひとつ縛りにした赤目の少女が映っていた。
「あら、なにかしら?」
お母さんも箸を止めてテレビをみている。
なんだか、嫌な予感がした。
『あのアンケートに名前を書かれた男性はぁ…♪今夜八時三十分ぴったりに、死にまーす♪』
女の子がとびきりの笑顔でそう言った。
お母さんも、私も、アナウンサーも、キャスターも、一瞬時間が止まったように固まった。
『あれぇ~?生きてる~?』
可愛らしい声が告げる恐ろしい予告。
「きゃぁぁぁぁ!!」
「いやぁぁぁぁ!」
「う、嘘だ嘘らうそだぁ…!!」
瞬間、絶叫があたりに響き渡る。
『ああ、ごへいがありました』
テヘッとウインクをする女の子に周りが再び静かになる。
『名前が書かれなかった幸せな男性はぁ…♪生き残れまぁす♪』
「よっしゃぁぁぁ!」
何名かの男性の喜ぶ声。
いつもなら、悲しい奴ら、って冷淡に思ったかもしれない。
だがその可愛らしいけれど、少し低い声に未だ注目している者もいる。
次の瞬間女の子がニヤリと笑う。
『まぁ、怪物として…女性の前に立つ敵になってもらいますけど…♪』
「そんな…いやだあああ!」
「怪物になんてえぇ…!」
それでも女の子の言葉は続く。
『あ、名前が書かれた男性は死ぬ…正確には、名前を書いた女性の力になって死んでもらいまぁす♪』
お母さんが箸を落とす音でハッと我に返る。
『紙に書いた名前は消せませんのでぇ、いまさらどうにもできませぇん♪』
時計をみるといまは八時。
まだ、時間はある。
お母さんはいそいで、紙に書いてしまった名前を消しゴムで擦る。
「やだ、あなた…死なないわよね嘘よね?ごめんなさい私がぁ…!」
何度も何度も破れそうなくらいに擦っても全然消えない。
それどころか、紙には皺がつくだけで破れさえしなかった。
ガチャ
と玄関の鍵の開く音と共に
「ただいまぁ」
「おじゃましまーす」
二人の声が聞こえた。
「幸也…?お父さん…?」
玄関に向かうとお母さんは勢いよく扉を開けた。
「あなた!幸也く…」
二人の笑顔が一瞬で血に染まり、その首はぽとりと地を汚した。
「ぇ、あ…あなた?ゆきや、くん?」
「おとうさ…ゆきや…」
玄関に落ちた幸也の首。
それについた二つの目玉は静かに私をみていた。
血の匂いと夏の暑さが押し寄せる中私の意識は遠のいていく。
最後に見たのはお父さんに寄り添うように、首に鉛筆を刺して息絶えた母と、いつまでも私をみつめる幸也の顔だった。
耳にはあの女の子の声が響いている。
『女性はしぶとく生きるなんていいますが…あんがい弱いんですねぇ』
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