蝕まれても君が好き。

闇猫古蝶

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出会い

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春。
三年生になりようやくクラスに馴染めてきた五月。

知樹はバスケ部での活動を終えると七時頃、駅近くの書店へ足を運んだ。

三十分ほど店内を回り、漫画の新刊を買った。

会計を済ませ店を出ようとした時、入口付近でさらさらとした長い黒髪に青く輝く瞳をした女の子(多分同じ歳。)とすれ違った。

きちっとした白い制服に身を包み、肩に鞄をかけている。

その制服をみるに知樹の通う東条高校の近くにある女子高、西条高校だろう。

「何?」

その子が店に入るのをじっとみていたようで不審がられた。

「いや、ごめんっ。綺麗だな、って思って…」

本心ではあるがそれを伝えてしまった事実に恥ずかしくなり頬が赤くなる。

「えと、名前は…?」

やや上ずった声になってしまう。

「結。淡雪結。貴方は?」

透き通った綺麗な落ち着いた声にドキリとしてしまう。

「倉偲知樹。あと…」

「あのさ」

知樹の声は遮られ、迷惑だったかと心配になる。

「とりあえず見てきていいかな?すぐ、終わるから」

「うん!」

まだ話せることか嬉しくてつい元気の良い返事になる。

それに少し困ったような顔をした結を見送ってから、店の前にあるベンチに腰掛ける。

さっき買った漫画を読みながら待つこと数分。

結は買ったもの(大きさからすると参考書だろう。)を鞄にしまい、隣に座った。

「それで、何?」

「西条の生徒?何年生?あと、いきなりごめん。嫌だった?」

結ははぁとため息をつく。

「一気に質問しないで」

「う…ごめん」

なんだか謝ってばかりなきがする。

「別にいいよ。私は西条の三年。それと、嫌じゃないよ」

「よかった。あ、僕は東条の三年」

知樹はニコッと微笑むが結はそれをじっと見るだけで笑みを見せない。

結は携帯を取り出し時刻を確認すると

「じゃ、そろそろ帰るね」

と言って立ち上がった。

向いた方向は駅とは反対。家はこの近くなのだろうか。

「うん、またね」

会えるかもわからないのに言ってしまう。いや、会いたいから、なのかもしれない。

「またね」

結は一言そう言うと歩き出した。

知樹は、結が行ったのを見届けると駅に向かった。

駅のホーム。
そこには松川健人がいた。

帰る方向も同じだし仲がいい(と思いたい)ので隣に立つ。

「健人、部活お疲れ様」

健人の黒髪は少し汗で湿っていた。

筋肉のついたたくましい腕で鞄を持っている健人は肩に竹刀袋をかけている。

「ああ、お疲れ、知樹も」

「うん!」

健人はあまり口数は多くないがいいやつだ。

「剣道、楽しい?」

「まぁ。部長は相変わらずうるさいけど」

こうして話題を振らないとあまり会話をしようとしない。

だが剣道部部長の話になるとよく話す。

というより愚痴だが。

ちなみに健人は剣道部副部長、知樹はバスケ部部長だ。

そしてその後もぽつぽつと何かしらを話しながら二人は電車が来るのを待った。

電車がくるとそれに乗り込み、三十分ほどで駅についた。

その後は道が別れるので二人は別々に帰った。

知樹は

「また会えるかな…」

なんて呟きながら。


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