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三章・推しとの境界線
5・推し友の家で初めてのお茶会です
エリンゼルからのお茶会の誘いから五日後、六月の上旬に突入し時折雨が降る梅雨の季節となりノアと結婚が出来る日まで残り約二週間となった。
…ガタッ…ガタッ…
ノア…今頃、何をしてるのかな?
皇室のパーティー以降、お互いに忙しく顔を合わせる事すらないままの状況に紫色の長い髪をベビーピンクのレース付きの大きなリボンで編み込みハーフアップにし鎖骨が見え腰に大きなリボンがついたレース付きのロータスピンクが混ざったアイスラベンダーのドレスにリボン付きのラベンダーのヒールパンプスを履き両耳にアメジストのピアスをつけた姿で馬車の中で窓を見ながらノアへと思いを馳せた。
「ミリア様、そろそろマスト伯爵家が見えて来る頃です」
向かい合わせで座る今回、護衛に着いてくれるリシュンに視線を向け笑みを浮かべる。
「楽しいお茶会になるといいな」
「そうですね、私もミリア様にとって楽しいお茶会になる事を願っております」
❋
王都から少し東に位置するマスト伯爵家はお洒落な街並みの中に赤煉瓦の壁に囲まれた大きな屋敷だった。
「既に、バレアーナ子爵令嬢が来ていますわ。温室の方でお待ち頂いているからあなたも…って、聞いているの?」
チェリーピンクのレースヘッドドレスを着けた癖のある桃色の長い髪にリボンの柄が散りばめられたチェリーブロッサムと白の膝丈までの半袖のフリル付きドレスに白のレースハイソックスと白の厚底のヒールパンプスを履いた姿のエリンゼルは興味津々な顔で辺りを見渡すミリアを見るなり眉を寄せ問いかけた。
「あ、ごめん。庭も邸も街並みも凄くお洒落だなって思って…」
「当然よ。マスト伯爵家はジュエリーや綿や絹などの様々な布地を扱った事業や今や名のあるブティック店を経営していますの」
「なるほど…」
だから、レトロでお洒落な屋敷や街並みなのかぁ…
自慢げに言うエリンゼルの説明に納得しているとエリンゼルは再度口を開いた。
「それに、皇室のパーティーの後に今まで断れ続けたリリタリオン公爵様から事業に投資して頂ける事になったとお兄様から聞いたの。おかげでこの先もマスト伯爵家は安泰だとお兄様もお父様も喜んでいたわ」
「良かったね、エリー」
「ええ」
嬉しそうに笑みを零し頷くエリンゼルの姿に同じく嬉しさが込み上げた。
❋
屋敷の裏庭である桃色の薔薇の庭園の中にある白いドーム型の温室には様々な花々があり中心には三つの白い丸型のガーデンテーブルと一つのテーブルに三つの白い椅子が並べられていた。
「ロドムーシ侯爵様、あの時は大変申し訳御座いませんでしたっ!」
「えっと…」
三つのガーデンテーブルの内、ケーキやマカロン等が乗せられたケーキスタンドとピーチティーが入った金の装飾が施された白いティーカップが置かれた真ん中のテーブルにて椅子に座りながら深々と頭を下げ謝罪の言葉を口にするアイリス・バレアーナ子爵令嬢を前に戸惑いの表情を浮かべた。
本当にあの時の令嬢だったんだ…
アイリスの瞳を持ちキャメル色の長い髪を銀色とレモンイエローのリボンの形をしたバレッタで編み込みハーフアップにし肩を出した胸元のリボンと白のフリルの装飾があるアイリスのドレスにリボン付きのヒールパンプスを履いたアイリスを見ながら皇室のパーティーで出会った際の彼女と重なった。
「それと、あの時は助けて頂きありがとうございますっ!」
顔を上げ感謝の言葉を述べるアイリスに疑問の声を上げる。
「そう言えば、あの時の令息は誰だったの?」
助ける為に嘘をついて叫び声を上げたけどそれと同時に直ぐ様逃げて行ったから背後からしか姿の確認は出来なかったんだよね
「あの方は…ロブリティス伯爵家のジュード・ロブリティス小伯爵様です」
「ジュード・ロブリティス!?」
「エリー、知ってるの?」
驚き直ぐに不快だと言わんばかりに眉を寄せるエリンゼルの姿に首を傾げる。
「あなた、あのジュード・ロブリティスを知らないんですの?」
「えっと…」
ミリアの記憶ってクズ王太子が殆どでそれ以外はその周りに居た人物と突っかかって来た人物しか覚えてないんだよね。私自身の記憶も小説に出て来た人物しか知らないし…
「はぁ…ジュード・ロブリティスは社交界でも有名な女好きなんですの。噂によると平民の女性を捕まえて暴行を加えたり貴族でも自身より階級が下の貴族の女性に言い寄って暴行を加えたと言う話を聞いた事がありますわ」
「それって、犯罪でしょ?裁かれないの?」
「父親であるロブリティス伯爵が全て揉み消しているのよ。その伯爵の地位と権力で全てね。そもそも、ロブリティス伯爵も相当な女好きで有名だしクズな親子って事よ」
「もしかして、そのロブリティスと何かあったの?」
心底不愉快そうな顔をしながらその言葉の節々に怒りが滲み出ているエリンゼルに疑問の声を投げかけると、エリンゼルは茶色の瞳を細め睨みつけた。
「私のお母様が昔、ロブリティス伯爵に言い寄られた事があるのよ。それに、同じ伯爵の地位だからと言って私もジュード・ロブリティスに言い寄られた事があるわ。今、思い出しても心底不愉快で極まりないわよ」
「エリーもマスト伯爵夫人もどうやって撃退したの?」
「そんなの決まってるでしょ?一発殴れば逃げ出したわよ」
「なるほど」
当然の様に言い返すエリンゼルに納得と言わんばかりに頷いた。
「…マスト令嬢が羨ましいです」
「…?」
ポツリと呟いたアイリスにエリンゼルと一緒に視線を移す。
「私は子爵の地位ですし、マスト令嬢の様に人に対して強く言えないので…」
「あなたが気を病む必要はありませんわ。元はと言えば、あの女好きが言い寄って来たのが原因でしょ?」
「それは、そうなんですが…」
「…?」
アイリスの瞳と目が合うとアイリスは再度口を開いた。
「あの時…ロブリティス小伯爵様に言い寄られた時、本当は直ぐにはっきりとお断りしないといけないと分かっていたのに身がすくんで口に出来なくて…でも、逃げようとしたら腕を掴まれて怖くて声を上げたけど誰も助けてくれなくて諦めかけた時にロドムーシ侯爵様に助けて頂いたんです。だけど、あの時は気が動転してしまっていたせいとまさか助けて頂けたのがロドムーシ侯爵様だとは思わなくて…」
「尚更、怖くてお礼も言わずに逃げ出したという訳ね」
「…はい」
エリンゼルの言葉に小さく頷いたアイリスは伺う様に恐る恐る視線を上げ目が合うなり再度口を開いた。
「今までお茶会やパーティーでロドムーシ侯爵様とお会いして来ましたが、その…えっと…」
口篭り必死に言葉を探すアイリスの姿に何を言いたいのか直ぐに分かった。
「お茶会やパーティーに私が参加する度に他の令嬢達と口論になったり物を投げつけたり暴力を振ったりしていたから尚更、そんな私が助けた事に驚きと恐怖で逃げ出したんですよね?」
「そ、それは…申し訳ございません」
「謝る事なんてありませんわ。事実ですし…」
「いえ!ロドムーシ侯爵様があの様な態度を取ったのは仕方ありません!皆さん、ロドムーシ侯爵様の事を悪く言ってばかりで腹が立つのは当然の事です。そう分かっていながらロドムーシ侯爵様の事を庇護出来ず何も言えないままただ見ていた私の方が謝るべきなんです。本当に…申し訳ございませんでした」
ドレスの丈をぎゅっと両手で握り締め顔を下げ謝罪の言葉を口にするアイリスに困惑しつつも口を開く。
「バレアーナ子爵令嬢のお気持ちは良く分かります。皆が皆、物事をはっきりと口に出せる訳ではありません。その相手が自身よりも階級が上であったり力を持つ者なら尚更です」
そう、ミリアやエリンゼルの様に誰もが皆物事をはっきり言える訳ではない。私は本物のミリアじゃないから彼女の…アイリスの気持ちが良く分かる。バイトの上司や先輩、後輩にも悪く言われても自分が悪いのだから仕方ない…そう言われて当たり前なんだと思う程反論なんて出来なかった。だから…
「私はバレアーナ子爵令嬢が私の事を悪く思わないでくれるだけで嬉しいです。例え、令嬢達の前で何も言えなくてもこうして謝罪をしてくれて思ってくれているだけで十分ですわ」
「…ロドムーシ侯爵様」
顔を上げ涙を溜め込んだアイリスの瞳で真っ直ぐに見つめるアイリスに笑みを浮かべた。
「それよりも気になるのは…」
険しい顔でエリンゼルへと視線を移すとエリンゼルも同じ様な事を思っていたのか茶色の瞳と目が合いお互いに頷く。
「そうね、あの女好きがもうバレアーナ子爵令嬢に言い寄らないとは限らないわ」
「何か良い手立てが‥」
タッタッタッタッ‥
「大変です!エリンゼル様っ!」
「”っ‥!?”」
突然、血相を変えて走って来た黒と桃色のメイド姿のショートヘアの栗色の髪をした三十代ぐらいのメイドにその場に居た私達は驚き視線を向けた。
「大変なんです!実は…」
「っ…!?」
メイドはエリンゼルへと駆け寄るなり耳打ちをするとエリンゼルは目を見開き眉を顰めた。
「如何致しますか?」
「…‥」
何があったんだろう…?
メイドの問いかけに険しい顔で黙り込むエリンゼルの姿にアイリスと顔を合わせ心配そうにエリンゼルへと顔を向ける。
ガタッ‥
「申し訳ありませんが、今日のお茶会はここまでにさせて下さいませ」
椅子から立ち上がり暗い顔でそう言うエリンゼルの姿に心配が募り首を横に振る。
「エリー、何があったのか分からないけど私で良かったら力になるわ」
「っ…、あなたの力を借りるまでもありませんわ!だから‥」
「エリーは私にとって大切な推し友で親友だよ。だから、もし困ってる状況なら助けになりたい」
「っ…」
「わ、私もロドムーシ侯爵様と同じ気持ちです!こんな私でも力になれる事があるのかは分かりませんが…」
アイリスと共に心配そうな顔でそう言うとエリンゼルは結んでいた口を開けた。
「…実は、明日来る予定だったリリタリオン公爵様を慕うファンクラブの令嬢達が来ていますの」
「ファンクラブの令嬢達?」
「ええ…大事なお話があってお茶会を口実に招待状を送ったのだけど‥」
「何故か、今日突然やって来たって事ね」
「ええ…」
「分かった。なら、明日開かれる予定だったノアのファンクラブの令嬢達とのお茶会を今日しましょう。そこに、私達も同席してね」
「あなた、自分が言っている事を分かっているの!?ファンクラブの令嬢達はあなたが思っている様な‥」
「分かってるわ。だからこそ、逆に分からせるにはいい機会だと思わない?」
悪女なら売られた喧嘩は買わないとね!
…ガタッ…ガタッ…
ノア…今頃、何をしてるのかな?
皇室のパーティー以降、お互いに忙しく顔を合わせる事すらないままの状況に紫色の長い髪をベビーピンクのレース付きの大きなリボンで編み込みハーフアップにし鎖骨が見え腰に大きなリボンがついたレース付きのロータスピンクが混ざったアイスラベンダーのドレスにリボン付きのラベンダーのヒールパンプスを履き両耳にアメジストのピアスをつけた姿で馬車の中で窓を見ながらノアへと思いを馳せた。
「ミリア様、そろそろマスト伯爵家が見えて来る頃です」
向かい合わせで座る今回、護衛に着いてくれるリシュンに視線を向け笑みを浮かべる。
「楽しいお茶会になるといいな」
「そうですね、私もミリア様にとって楽しいお茶会になる事を願っております」
❋
王都から少し東に位置するマスト伯爵家はお洒落な街並みの中に赤煉瓦の壁に囲まれた大きな屋敷だった。
「既に、バレアーナ子爵令嬢が来ていますわ。温室の方でお待ち頂いているからあなたも…って、聞いているの?」
チェリーピンクのレースヘッドドレスを着けた癖のある桃色の長い髪にリボンの柄が散りばめられたチェリーブロッサムと白の膝丈までの半袖のフリル付きドレスに白のレースハイソックスと白の厚底のヒールパンプスを履いた姿のエリンゼルは興味津々な顔で辺りを見渡すミリアを見るなり眉を寄せ問いかけた。
「あ、ごめん。庭も邸も街並みも凄くお洒落だなって思って…」
「当然よ。マスト伯爵家はジュエリーや綿や絹などの様々な布地を扱った事業や今や名のあるブティック店を経営していますの」
「なるほど…」
だから、レトロでお洒落な屋敷や街並みなのかぁ…
自慢げに言うエリンゼルの説明に納得しているとエリンゼルは再度口を開いた。
「それに、皇室のパーティーの後に今まで断れ続けたリリタリオン公爵様から事業に投資して頂ける事になったとお兄様から聞いたの。おかげでこの先もマスト伯爵家は安泰だとお兄様もお父様も喜んでいたわ」
「良かったね、エリー」
「ええ」
嬉しそうに笑みを零し頷くエリンゼルの姿に同じく嬉しさが込み上げた。
❋
屋敷の裏庭である桃色の薔薇の庭園の中にある白いドーム型の温室には様々な花々があり中心には三つの白い丸型のガーデンテーブルと一つのテーブルに三つの白い椅子が並べられていた。
「ロドムーシ侯爵様、あの時は大変申し訳御座いませんでしたっ!」
「えっと…」
三つのガーデンテーブルの内、ケーキやマカロン等が乗せられたケーキスタンドとピーチティーが入った金の装飾が施された白いティーカップが置かれた真ん中のテーブルにて椅子に座りながら深々と頭を下げ謝罪の言葉を口にするアイリス・バレアーナ子爵令嬢を前に戸惑いの表情を浮かべた。
本当にあの時の令嬢だったんだ…
アイリスの瞳を持ちキャメル色の長い髪を銀色とレモンイエローのリボンの形をしたバレッタで編み込みハーフアップにし肩を出した胸元のリボンと白のフリルの装飾があるアイリスのドレスにリボン付きのヒールパンプスを履いたアイリスを見ながら皇室のパーティーで出会った際の彼女と重なった。
「それと、あの時は助けて頂きありがとうございますっ!」
顔を上げ感謝の言葉を述べるアイリスに疑問の声を上げる。
「そう言えば、あの時の令息は誰だったの?」
助ける為に嘘をついて叫び声を上げたけどそれと同時に直ぐ様逃げて行ったから背後からしか姿の確認は出来なかったんだよね
「あの方は…ロブリティス伯爵家のジュード・ロブリティス小伯爵様です」
「ジュード・ロブリティス!?」
「エリー、知ってるの?」
驚き直ぐに不快だと言わんばかりに眉を寄せるエリンゼルの姿に首を傾げる。
「あなた、あのジュード・ロブリティスを知らないんですの?」
「えっと…」
ミリアの記憶ってクズ王太子が殆どでそれ以外はその周りに居た人物と突っかかって来た人物しか覚えてないんだよね。私自身の記憶も小説に出て来た人物しか知らないし…
「はぁ…ジュード・ロブリティスは社交界でも有名な女好きなんですの。噂によると平民の女性を捕まえて暴行を加えたり貴族でも自身より階級が下の貴族の女性に言い寄って暴行を加えたと言う話を聞いた事がありますわ」
「それって、犯罪でしょ?裁かれないの?」
「父親であるロブリティス伯爵が全て揉み消しているのよ。その伯爵の地位と権力で全てね。そもそも、ロブリティス伯爵も相当な女好きで有名だしクズな親子って事よ」
「もしかして、そのロブリティスと何かあったの?」
心底不愉快そうな顔をしながらその言葉の節々に怒りが滲み出ているエリンゼルに疑問の声を投げかけると、エリンゼルは茶色の瞳を細め睨みつけた。
「私のお母様が昔、ロブリティス伯爵に言い寄られた事があるのよ。それに、同じ伯爵の地位だからと言って私もジュード・ロブリティスに言い寄られた事があるわ。今、思い出しても心底不愉快で極まりないわよ」
「エリーもマスト伯爵夫人もどうやって撃退したの?」
「そんなの決まってるでしょ?一発殴れば逃げ出したわよ」
「なるほど」
当然の様に言い返すエリンゼルに納得と言わんばかりに頷いた。
「…マスト令嬢が羨ましいです」
「…?」
ポツリと呟いたアイリスにエリンゼルと一緒に視線を移す。
「私は子爵の地位ですし、マスト令嬢の様に人に対して強く言えないので…」
「あなたが気を病む必要はありませんわ。元はと言えば、あの女好きが言い寄って来たのが原因でしょ?」
「それは、そうなんですが…」
「…?」
アイリスの瞳と目が合うとアイリスは再度口を開いた。
「あの時…ロブリティス小伯爵様に言い寄られた時、本当は直ぐにはっきりとお断りしないといけないと分かっていたのに身がすくんで口に出来なくて…でも、逃げようとしたら腕を掴まれて怖くて声を上げたけど誰も助けてくれなくて諦めかけた時にロドムーシ侯爵様に助けて頂いたんです。だけど、あの時は気が動転してしまっていたせいとまさか助けて頂けたのがロドムーシ侯爵様だとは思わなくて…」
「尚更、怖くてお礼も言わずに逃げ出したという訳ね」
「…はい」
エリンゼルの言葉に小さく頷いたアイリスは伺う様に恐る恐る視線を上げ目が合うなり再度口を開いた。
「今までお茶会やパーティーでロドムーシ侯爵様とお会いして来ましたが、その…えっと…」
口篭り必死に言葉を探すアイリスの姿に何を言いたいのか直ぐに分かった。
「お茶会やパーティーに私が参加する度に他の令嬢達と口論になったり物を投げつけたり暴力を振ったりしていたから尚更、そんな私が助けた事に驚きと恐怖で逃げ出したんですよね?」
「そ、それは…申し訳ございません」
「謝る事なんてありませんわ。事実ですし…」
「いえ!ロドムーシ侯爵様があの様な態度を取ったのは仕方ありません!皆さん、ロドムーシ侯爵様の事を悪く言ってばかりで腹が立つのは当然の事です。そう分かっていながらロドムーシ侯爵様の事を庇護出来ず何も言えないままただ見ていた私の方が謝るべきなんです。本当に…申し訳ございませんでした」
ドレスの丈をぎゅっと両手で握り締め顔を下げ謝罪の言葉を口にするアイリスに困惑しつつも口を開く。
「バレアーナ子爵令嬢のお気持ちは良く分かります。皆が皆、物事をはっきりと口に出せる訳ではありません。その相手が自身よりも階級が上であったり力を持つ者なら尚更です」
そう、ミリアやエリンゼルの様に誰もが皆物事をはっきり言える訳ではない。私は本物のミリアじゃないから彼女の…アイリスの気持ちが良く分かる。バイトの上司や先輩、後輩にも悪く言われても自分が悪いのだから仕方ない…そう言われて当たり前なんだと思う程反論なんて出来なかった。だから…
「私はバレアーナ子爵令嬢が私の事を悪く思わないでくれるだけで嬉しいです。例え、令嬢達の前で何も言えなくてもこうして謝罪をしてくれて思ってくれているだけで十分ですわ」
「…ロドムーシ侯爵様」
顔を上げ涙を溜め込んだアイリスの瞳で真っ直ぐに見つめるアイリスに笑みを浮かべた。
「それよりも気になるのは…」
険しい顔でエリンゼルへと視線を移すとエリンゼルも同じ様な事を思っていたのか茶色の瞳と目が合いお互いに頷く。
「そうね、あの女好きがもうバレアーナ子爵令嬢に言い寄らないとは限らないわ」
「何か良い手立てが‥」
タッタッタッタッ‥
「大変です!エリンゼル様っ!」
「”っ‥!?”」
突然、血相を変えて走って来た黒と桃色のメイド姿のショートヘアの栗色の髪をした三十代ぐらいのメイドにその場に居た私達は驚き視線を向けた。
「大変なんです!実は…」
「っ…!?」
メイドはエリンゼルへと駆け寄るなり耳打ちをするとエリンゼルは目を見開き眉を顰めた。
「如何致しますか?」
「…‥」
何があったんだろう…?
メイドの問いかけに険しい顔で黙り込むエリンゼルの姿にアイリスと顔を合わせ心配そうにエリンゼルへと顔を向ける。
ガタッ‥
「申し訳ありませんが、今日のお茶会はここまでにさせて下さいませ」
椅子から立ち上がり暗い顔でそう言うエリンゼルの姿に心配が募り首を横に振る。
「エリー、何があったのか分からないけど私で良かったら力になるわ」
「っ…、あなたの力を借りるまでもありませんわ!だから‥」
「エリーは私にとって大切な推し友で親友だよ。だから、もし困ってる状況なら助けになりたい」
「っ…」
「わ、私もロドムーシ侯爵様と同じ気持ちです!こんな私でも力になれる事があるのかは分かりませんが…」
アイリスと共に心配そうな顔でそう言うとエリンゼルは結んでいた口を開けた。
「…実は、明日来る予定だったリリタリオン公爵様を慕うファンクラブの令嬢達が来ていますの」
「ファンクラブの令嬢達?」
「ええ…大事なお話があってお茶会を口実に招待状を送ったのだけど‥」
「何故か、今日突然やって来たって事ね」
「ええ…」
「分かった。なら、明日開かれる予定だったノアのファンクラブの令嬢達とのお茶会を今日しましょう。そこに、私達も同席してね」
「あなた、自分が言っている事を分かっているの!?ファンクラブの令嬢達はあなたが思っている様な‥」
「分かってるわ。だからこそ、逆に分からせるにはいい機会だと思わない?」
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