夜行列車

ゆか太郎

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夜行列車

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 最初に気づいたのは僕の体を優しく揺らす振動だった。カタンカタンと規則的な揺れに違和感を感じて目を覚ます。寝起きの目を擦ると、そこには見覚えのない景色が広がっていた。
「ここは……?」
 座っている座席に手を這わせて体を起こすと、硬い革張りの感触がした。高級感のある艶やかな手触りに、更なる違和感とほんの少しの恐怖を感じた。
 つい先ほどまで僕は駅にいたはずだった。いつもと同じように、終電に間に合うように退社をして、眠気を抑えながら駅のホームで電車を待っていた。そこまでははっきりと覚えている。いつもならばそこで終電に乗り込み、終着駅まで眠り、家に帰っているはずだった。
 それなのに今、僕は全く知らない場所にいる。着ているものはシワだらけのスーツで、会社から持って帰ってきた大量の書類が詰め込まれた鞄も手元にある。駅に居た時とそっくりそのまま同じ姿のはずなのに、周りの風景だけが違う。まるで僕だけワープしてきたかのようだった。
 とりあえず状況を掴もうと思い辺りを見回すと、三畳ほどの広さの部屋のようだということはわかった。豪華そうな部屋だが造りはシンプルで、右手側の壁にだけカーテンがかかっている。座っているのはいつものカーペットのような座席でなく、二人掛けの革張りのソファ。目の前には木製の重厚なテーブルがあり、その向こう側にも同じようにソファがある。天井にはアンティーク調のランプが吊るされていて、暖かな灯りがゆらゆらと揺れていた。
 一体自分の身に何が起きているのだろうか。何一つ状況が掴めないまま困惑していると、突然左側の壁の一部がスライドして開いた。どうやら引き戸になっていたらしい。そこから一人の男が顔を出してきた。
「うわっ」
「おや、お客さんですか?」
 彼が被っている帽子のつばをくいと持ち上げこちらを見る。車掌の様な服装に身を包んだその男は、僕の顔をしばらくじっと見た後、にこりと笑顔を見せた。少し焼けた肌に、短めに切り揃えられた茶色い髪。太陽のようなカラッとした笑顔を見て、ほんの少し胸を撫で下ろす。どうやら悪い人ではなさそうだ。しかし、ここが全く知らない場所であることに変わりはない。未だに読めない状況に困惑するばかりだった。
「あの、ここはどこですか。僕、もしかして何か変なところに迷い込んでしまったのでしょうか」
「お客さん、もしかして間違えて来てしまった人ですか?でも、そんなはずはないような……」
「ど、どういうことですか」
 彼は首を傾げながら僕の方を見ている。もしかしてここに座っているのが悪かったのだろうか。慌てて立ちあがろうとすると彼は僕を手で制して首を横に振った。顔色を伺いながら、僕はゆっくりと腰を下ろした。
「そうですね、何から説明いたしましょうか」
 彼は僕の向かいの席に座り、扉を閉めた。頬杖をつきながらにこりと微笑む。車掌の様な格好をしているということは、ここは電車の中なのかもしれない。気づかないうちに勝手に乗り込んでしまったのだろうか。しかし、こんな豪華な電車があの路線を走っているなんて聞いたこともなかった。僕が視線をうろつかせていると、彼は不意に笑みをこぼした。
「実際に見てもらった方が早いかもしれないですね」
 彼は立ち上がると壁にかかっているカーテンを開いた。あらわになった窓を覗き込むと、外にはいつもの東京のビル群の灯りが見える。見慣れた景色にほっと息をついたのも束の間、流れる景色に違和感を覚える。
「これ、段々上っていませんか……?」
 しばらく見つめていると、徐々に景色が移り変わっていく。先ほどまでは地上近くだったはずが、いつの間にか立ち並ぶビルを追い越し、やがて東京の街を見下ろすようになっていった。訳のわからない状況に、僕は窓の外と彼の顔を交互に見ることしかできない。
「安心してください、正真正銘これは電車ですよ。少々特別な、が付きますけれど」
 彼は笑いながらソファに座る。僕も座るように勧められたが、生返事をするだけで一歩も動けなかった。一体何に安心しろというのだろう。いつもの景色が遠ざかっていくのを、ただ口をぽかんと開けて見ていることしかできなかった。
 これは夢なのだろうか。もしかしたら僕は今、いつもの電車の中で不思議な夢を見ているのかもしれない。いいや、きっとそうだ。そうでなければ、こんな風に電車が東京の空を走っているはずがない。
「夢だと思っているでしょう」
 男の声に意識が引き戻される。声の方を見ると、先ほどと同じような笑みが僕の方をじっと見ていた。
「まずは先ほど言った通り、私の方から説明しましょう。これが貴方の夢なら、ゆっくり話を聞いても良いのでは?」
 確かにそうかもしれない。これが夢ならば、別に僕が急いで何かをする必要はない。ここでゆっくりして、不思議な景色を見て、彼の話を聞くくらいはしてもいいだろう。夢ならばいつか勝手に覚めるのだから。
 僕はソファに腰を下ろし彼を見つめた。
「そんなに肩肘張らなくても大丈夫ですよ。獲って食べたりいたしませんから、リラックスしていてください」
「じゃあ、お言葉に甘えて……」
 スーツのジャケットを脱いで鞄と一緒に横に置く。ついでによれよれだったネクタイも外し、鞄の中に放り込んだ。僕の姿を見て彼は満足そうに頷くと、両手を机の上で組んだ。
「まず端的に言うと、この電車は限られた人しか乗ることができないんです。特別な人の前にしか現れない、少々特殊な電車でしてね」
「特別な人?」
「夜へ行きたいと願った人です。それも、一層強く、心の奥底から本当に望んでいる人のところにしか来ない。あなたもそうなのではないですか?」
 頬に浮かべた笑みはそのままに、黒い瞳が僕の心を見透かすかのようにこちらを向いている。僕自身が目を逸らしている僕の心を、目の前の不思議な男にははっきりと捉えられているようで、心臓がずしりと重たくなる。その視線に耐えきれずに僕が俯くと、彼は弱々しい声を出しながらこちらに手を伸ばした。恐る恐る顔をあげると、彼は不安そうな顔をして僕の方を伺っていた。
「無理に言わなくても大丈夫です。今は話を聞いていただければ」
 彼の顔にも声色にも、もう先ほどの恐ろしさは感じられない。優しそうな、ありふれた青年の顔に見えた。僕が一息ついて姿勢を正すと、安心したのが伝わったのか彼はもう一度口を開いた。
「この電車は、そういった夜に行きたいと願った人のところにだけ現れます。朝が来なければ、このまま夜が明けなければ。そう強く願った人を、永遠の夜へ連れて行ってくれるそうです」
「永遠の夜、とは?」
「私はよく知らないのですが、きっと幸せな場所なんだと思います。なにせ、みなさんそこにいくことを心から願っておられる方々が乗って行かれますから」
 彼が窓の外へ視線を向けたのに釣られて、僕もそちらへ目をやる。窓の外の夜景は少しずつ遠ざかっている。
 彼が言ったことには確かに心当たりがあった。溜まっていく仕事、終わりの見えない生活、上手にできない自分。何度も明日が来るのが怖いと思った。寝ると朝が来てしまうから寝ることすら怖くなった。そんな自分が情けなくて塞ぎ込んでいるうちに、出来ていたことすら出来なくなった。でも自分で終わりを選ぶ勇気すらなくて、叶うはずもない夢を願うことしかできなかった。
 もしこの電車が僕の祈りに応えて来てくれたのならば、それを断る理由などないのではないだろうか。このまま心地よいリズムに揺られて、永遠の夜とやらに向かうのも悪くない気がする。これが都合の良い夢でなく現実ならば、の話だが。
「一つ、ご提案があります」
 黙り込んだ僕を見て、彼はピンと人差し指を立てた。
「この電車は常に世界を回っているため、今東京へ戻ることはできません。しかし地球を一周した後、もう一度東京に着くタイミングがございます。その時に、この電車に乗って夜へ行くか、元の生活へ帰るか決められてはいかがでしょうか?」
「それでもいいんですか?」
「もちろんです」
 彼はにこやかに頷くと、どうされますか?と僕に問いかけた。確かに彼の提案は悪くないような気がした。
「じゃあお言葉に甘えて、そうします」
 僕がそう言うと、彼は晴れやかな笑顔で承知しました、と応えた。
「次に東京に着くまで一日ほどかかります。それまでにゆっくり、電車の中からにはなりますが、世界旅行を楽しまれてはいかがでしょうか」
 生まれてこの方、日本から出たことなどない。どこへ向かうのかは知らないが、見たことのない景色が見られると思うと先ほどまでの不安感は薄れ、段々と興味の方が大きくなっていった。
「また都市に到着した際はお声がけさせていただきますね。少々であれば、アテンダントの真似事もできますよ」
 彼は立ち上がって自信げに胸を張った。愛嬌のある立ち振る舞いに、自然に笑みが溢れる。初めて会うはずなのにどこか男の表情や話し方には懐かしさを感じる。陽気そうな見た目に反してかっちりとした話し方をするところがまた良い。
 いつの間にかこの場所や彼に対する警戒心は綺麗さっぱり消えていた。
「では私は仕事に戻らせていただきますね。次の都市までは少々時間がありますので、お疲れでしょうし睡眠をとられるのも良いかと。」
 彼はこの場での決まりをいくつか説明してくれた。
 車両間の移動はできないが、この車両のものは自由に使って良いこと。車掌さんを呼びたいときは机の上の呼び鈴を鳴らせば来てくれること。決まりというよりも、ホテルのルームサービスの案内をされているようだった。
「そんな至れり尽くせりでいいんですか」
 もちろん、と微笑みながら彼は扉から出ていく。まるで夢のようだと思ったところで、これが夢である可能性が十分にあることを思い出した。
「それではごゆっくりどうぞ、悠太様」
 彼は深く礼をして、ゆっくりと扉を閉めた。名前を教えた覚えはないが、今はそんなことすら気にならなかった。夢ならば何の不思議もない。
 それよりも、一人になった途端に体が疲労感を訴え始めた。今日も朝から夜中まで働き詰めだったのだから当然なのだが、いつも以上に急激に襲ってくる眠気に抗えず机に突っ伏した。彼の言葉に甘えて、しばらく眠ることにしよう。
 夢の中で眠るとどうなるのだろうか、もしかしたら夢から覚めてしまうのだろうか。それは嫌だと思った。浮かび上がってくる不安から逃げるように、そっと瞼を閉じた。

 肩を優しく叩かれる感覚に意識を引き上げられる。ゆっくりと目を開けると、そこは先ほどと変わらない部屋の中だった。顔を上げると車掌の姿をした彼が向かいの椅子に座りこちらを見ていた。
「悠太様、少し疲れは取れましたか?」
「はい、一度寝たらかなりスッキリしました」
 伸びをすると体の硬さも少し軽くなったような気がした。いつの間にか電車は止まっているようだった。窓の外を覗き込むと、そこには巨大なビル群が立ち並び、ギラギラと輝く街が広がっていた。
「先ほどシンガポールに到着したところでしたので、お声がけをと思いまして」
 外の派手な景色はシンガポールのものらしい。確かとても大きい街だということくらいの知識しかなく、人が沢山居るのだろうなという薄っぺらな感想しか出てこない。景色からして、この電車が空中で止まっていることだけはわかった。既にそのくらいの事には違和感を感じなくなってしまっていた。
 ふと彼に声をかけようとして、一つ疑問が口をついて出た。
「そういえば、あなたの名前を教えてもらえませんか?」
「私、ですか?」
「ええ、なんて呼んだら良いかわからなくて」
 呼びかけようとする度にこうやって詰まるのは面倒だ。それならば先に聞いてしまった方が良い。彼は僕の名前を知っているのに、こちらは知らないのは不公平だと思ったのも理由の一部ではあるのだけれど。
 しかし僕の思惑に反して、彼は眉を下げながら微笑んだ。
「名前はありませんので、好きに呼んでいただいて大丈夫ですよ」
「名前がない?」
「そのままの意味です。まぁ夢のような所ですのでお気になさらず」
 そう言われてしまうと気になってしまうのが人の性というものだが、彼の表情を見るとこれ以上聞いても答えてくれそうにないことが伺えた。
 仕方なく、彼のことを「車掌さん」と呼ぶことにした。服装の印象から決めてしまったが、本当に彼が車掌なのか、車掌がどういう仕事をする人なのか僕にはよく分かっていない。ただ、今は目の前の彼を表す言葉として、適当に名前をつけるよりもこの呼び方がよりしっくりくるように感じた。
 車掌さん、と僕が呼びかけると、彼は何でしょう、とこちらを向いた。
「観光案内、してもらえますか?」
 しばらく電車は止まっている。このまま何の知識もない僕が窓の外をただ眺めていても世界旅行は面白味のないものになってしまいそうだった。それに彼が自信ありげに言っていた「アテンダントの真似事」とやらも気になる。
「もちろんです!ただし、本当に真似事程度なので期待はしないでくださいね」
「大丈夫ですよ、何か話していただけるだけで楽しいです」
 実のところ僕は本物のアテンダントを見たことがないので、似ていたとしてもわからないのだけれど。
「それでは観光案内を始めさせていただきます」
 そう切り出すと、シンガポールの名所について語り出した。有名なマーライオンは意外と小さいこと。樹木のような建物が並ぶ地区があること。窓の外を指差しながら、一つ一つ説明してくれる。
「特に観光名所として有名なうちの一つが、あそこに見える、船の乗ったような大きなビルですね」
 彼が指差した先を見ると、テレビで見た覚えのある巨大な建物が見えた。
「あの船の上にはプールがあって綺麗なんです。今日は丁度、上空を通る予定だったと思いますが……」
 彼の言葉を遮るようにがたりと大きな振動が起こった。どうやら電車が動き出したらしい。窓の外の景色はゆっくりと動き出し、更に上空へと昇っていく。
 少し体を乗り出して下を覗き込むと、確かに巨大な船の一部に水が張っているのが見えた。流石にこの時間に人はいないのか、ライトに照らされた水面だけが揺らめいているのが見える。
「眺めも良くて人気の場所なんですよ。悠太様もぜひ行ってみられてはいかがですか?」
「僕が、ですか?」
 そもそもシンガポールに旅行に行く予定などないのだが、僕があのキラキラとした場所にいること自体が全く想像できない。それに、あのプールを綺麗だとは思うが、入りたいとは思わない理由があった。
「実は僕、泳げないんです。だからプールはあまりいい思い出がなくて」
 子供の時から泳げないことが、沢山ある自分のコンプレックスの一つだった。泳げないというだけで恥をかき、嫌な想いをしたことは今でも苦い記憶のまま残っている。
 とはいえ、大人になってからはプールに入る機会も無いので、最近はそんなふうに思うこともなかったはずなのだが。突然思い返すように湧き立ってきた感情に戸惑いながらも、僕は窓の外を眺めていた。
「でもシンガポールはきっと他にも楽しいところが沢山ありますよ。日本からそう遠くないですし、おすすめだと思います。」
 まるで楽しんだことがあるかのような彼の口ぶりに、僕は首を傾げた。
「車掌さんは行ったことあるんですか?」
「いいえ、一度も。何せ仕事一筋なもので。」
 苦笑しながら、彼はおもむろに立ち上がった。
「シンガポールの紹介はこれまでにしましょう。次に止まるまでかなり時間がありますから、またお休みになってはいかがでしょうか」
 彼の言葉に甘えて、僕はもう一眠りすることにした。先ほどまで仮眠を取っていたとはいえ、やはり一日中働いた疲れは軽い睡眠では消えることはない。せっかくの不思議な旅の大半を睡眠に費やしてしまうのも勿体無い様な気がしたが、車掌さんの気遣うような表情から僕が酷く疲れた顔をしていることは鏡を見ずとも分かった。
「次の到着地に着いたらまた起こしてください。そして、もしよかったら車掌さんの話を聞かせて欲しいです」
 部屋から出ていく彼にそう声をかけると嬉しそうな笑顔を浮かべた。
「はい!もちろんです!」
 彼が出ていくのを見送ってから、僕は二度目の眠りについた。今度は不安に追われることもなく、心地よい揺れに身を任せながらゆっくりと意識は沈んでいった。

 次に起こされた時、窓の外は一面海だった。夜なので暗くてあまりわからないが、耳をすませてみるとさざ波の音が聞こえてくる。月明かりに照らされた波がゆらりと揺れている。その海の向こうに輝く島があるのが見えた。
 暗い中うっすらと見える景色に心がざわつく。初めて見るはずなのに、なぜか体が嫌悪感を訴えている。身に覚えのない、どうしようもない感覚を押さえ込んで、僕は車掌さんの話に耳を傾けた。
「あそこに見えるのがモン・サン=ミシェルです。フランスの観光名所の一つですね」
 どうやら次の到着地はフランスだったらしい。ここがフランスの中のどこなのかは知らないが、遠くに見える島がとても有名な場所だということは流石の僕でも知っていた。  
 車掌さんが指差す方を見ながら、彼が持ってきてくれたサンドイッチにかぶりついた。小腹が空くだろうと言って持ってきてくれたそれは、ハムと胡瓜が食パンに挟まっている、僕の舌によく合う味だった。
 優しい味が口いっぱいに広がる度に、震えていた心は落ち着きを取り戻していく。変わりなく明るく話してくれる彼の声も、僕を安心させてくれた。
「今では島まで伸びる道路が建設されていますが、昔は潮が引いて道ができる時しか行き来できなかったそうです。非常に危険な旅だったとか」
 彼の話を聞きながらサンドイッチを完食すると、訴えていた腹の虫がようやく鳴き止んでくれた。満足した腹を撫でながら外をもう一度見ると、外の景色にどこか既視感を覚える。古い記憶を引っ張り出して探ると、しばらくしてその答えは見つかった。先ほどまで感じていた嫌悪感の理由も。
「似たような地形が地元にもあった気がします。島があって、時折そこへ続く道ができるんです。あんなに立派な島ではなく、本当に小さな小島でしたが」
「海の近くのご出身なんですね」
「ええ、まぁ」
 泳げないということもあって僕は昔から海が嫌いだった。特に夜の海は恐ろしい。暗い中波の音が聞こえるだけでそこから逃げ出したくなる感覚に襲われる。
 ただ、古い記憶の中にも海で溺れたようなものは無い。不良ではなかったので夜の海に遊びに行ったことも無かったはずだ。それなのになぜか齢三十を過ぎた今でも夜の海を怖がっている。幼い頃に海の近くに住んでいたというだけで、ここまで怖くなるものなのだろうか?
 自分の中にずっとある恐怖心の理由の部分だけがぽっかりと空いているような気がして、僕は首を傾げた。
「海はあまり好きではありませんか」
 黙ってしまった僕を見かねたのか、彼が口を開いた。
「そうですね……。でも、この景色はとっても綺麗だと思います」
 この言葉に嘘はなかった。今でも夜の海は怖く、どこから襲ってくるとも分からない波の音は心をざわつかせる。それでも、今ここから見えているあの島は美しいと思った。そう思うことができるのは、彼が横にいてくれているからでもあった。彼の声や仕草は僕の心を落ち着かせてくれる。彼のおかげで目の前に広がる海もほんの少しだけ怖くないと思えた。
「そう言っていただけると、なんだか私も嬉しいです」
 彼は帽子を脱ぎ、少し照れくさそうに頭を掻いた。白い手袋に包まれた指が茶色く硬い髪を揺らす。帽子を脱ぐと、彼は更に同年代の友人のように見えた。まるで友達と一緒に電車に乗って旅行でもしているかのような、そんな感覚すら覚える。この幸せな瞬間を目に焼き付けていたくて、窓の外をじっと眺めていた。彼もまた隣で、何も言わず窓の外を眺めていた。

 電車は再び走り始める。途中で車掌さんに「昼食は何がいいですか?何でもいいですよ」と言われたので、天ぷら蕎麦をお願いした。そんな簡単なものでいいのかと何度も聞き返されたが、僕にとっては久しぶりに好物がゆっくり食べられるだけで嬉しかった。
 彼が持ってきてくれた天ぷら蕎麦の出汁は、懐かしい薄口の味付けだった。海老の天ぷらも大きく、サクサクとした衣につゆが染みているのがまた美味しかった。とても彼が言ったように出来合いのものを合わせただけの様には感じられない。つゆを飲み干すと、温もりが腹の底から身体中を満たしていった。
 モン・サン=ミシェルを出てから景色はずっと海だった。夜なのでほとんど何も見えず、窓に反射した自分の顔を見飽きてしまうくらいには長い間海の上を走っている。車掌さんに聞くと、今は大西洋を渡っているらしい。この電車を外から見ることができたらきっととても幻想的で綺麗だろう。空や海を自由に駆ける電車の姿を頭の中で想像しながら、食後の眠気に抗えずに瞼を閉じた。

 目が覚めると、いつの間にか電車は大都会の上空を走っていた。目下に広がる輝かしい風景に目を細める。シンガポールの時とはまた違った、キラキラとした輝きが線状に走っている。段々と電車が下降していくにつれてその輝きが目の前を通り過ぎていく。途中で通った大きな通りを見て、ここがアメリカのニューヨークであることに気づいた。
「おや、起きておられましたか」
 車掌さんが扉を開けて現れる。ちょうど僕を起こしに来たところらしい。寝る前に食べていた蕎麦の器が無くなっているということは、僕が寝ている間に一度来たのだろう。
「ここはニューヨークですね」
「その通りです。と言っても、到着する場所は自由の女神像も見えない所ですが」
 申し訳なさそうな表情を見せる彼に、僕は首を横に振った。
「どんな場所でも見たことのない景色ですし、車掌さんの話もとっても楽しいですから」
「そう言っていただけると非常に嬉しいですね。ぜひ残りの旅も楽しんで言ってください」
 彼の口から軽やかに語られる名所の紹介を聞きながら窓の外を眺めていると、徐々に街の雰囲気が変化していくのに気づいた。怪しげなネオンがちらほらと見える。一つまた一つと細い路地へ入っていく。やがて列車が止まると、そこは街灯もほとんどないような細い裏路地だった。道路をほとんど埋めるように電車は止まっている。
 暗闇の中をよく見ると、正面のレンガの壁一面に人の顔や風景の絵が鮮やかに描かれている。ここからでは端が見えないほど一面に描き込まれていた。
「こういったアートは日本ではあまり見かけませんよね」
「ええ、シャッターに描かれた落書きくらいしか見たことがなかったもので……」
 日本で見る落書きとは比べ物にならないほどの絵としての完成度の高さに圧倒される。同じ材料で同じ様な場所に描かれたものでも、こんなにも伝わってくるものが違うのだと驚かされた。それと同時に、ある一つの疑問が頭に浮かぶ。
「こういう絵って、消されたりしないんですか」
「有名な画家が書いた場所は観光地化することで残っている場所もあるとは思います。ただ違法行為であることが多いですし、治安維持のために消されている部分も多いそうですよ」
「そうなんですか……」
 こんなにも素晴らしい絵が消されてしまうのは勿体無いと思うが、街の事情もあるのだろう。部外者の僕が何か言える立場ではない。
「ただこれを消すとなると、すごく苦労しそうですね」
 僕がそう言うと、彼はきょとんとした顔でこちらを見つめた。何か変なことを言ってしまっただろうかと一瞬不安になる。
「あの、僕何かおかしかったですか」
「いえ……変わった心配をされるものだなと思いまして。確かにこれだけのものを消すためには非常に労力を費やしそうですね」
 笑みをこぼした彼の姿にほっと胸を撫で下ろす。確かに彼が言うように、この絵を見て消えてしまうことを悲しむことはあっても、消す側の苦労を心配する人はあまりいないかもしれない。どこかの町で清掃活動をした記憶もない自分にその発想が出てきた理由は分からなかった。
 ただ、そう指摘された後でも、色とりどりのスプレーを綺麗に落とすのには時間がかかるだろうなと思った。電車が出発した後もしばらく壁を眺めていた。どこにも残らないまま消されてしまうかもしれない絵を、その端に辿り着くまでずっと見つめていた。

 ニューヨークを出発し、電車は再び走り続けていた。ここから先は東京に着くまで止まらないらしい。車掌さんは後で夕食を持ってくると言って部屋を出ていってしまった。しばらくすると電車はアメリカ大陸を抜けて、太平洋へと飛び出した。再び暗い海だけを映す様になった窓のカーテンを閉めて、僕は意識の先を外の景色から自分の中へと移動させた。
 東京に着くということは、僕は先延ばしにした決断をしなければならないということだ。このまま電車に乗って永遠の夜へと行くか、それとも東京で降りるのか。いつの間にかこれが夢であるという可能性は僕の中から綺麗さっぱり消えていた。
 同じ考えがずっと頭の中を回っている。二つの答えがぐるぐると追いかけっこをしているようだった。ソファに深くもたれながら腕組みをしていると、扉をノックする音が回り続ける僕の思考を止めた。
「夕食をお持ちしましたよ」
 車掌さんがお盆を持って部屋へと入ってくる。その上には湯気のたったご飯と味噌汁、鮭の切り身が乗っている。お盆を僕の目の前に置くと、湯呑みにお茶を入れてお盆の横に置いてくれた。
「すみません、何から何までしていただいて」
「悠太様は大切なお客様ですから、当然のことです。やはり、日本食がお好きなのですか?」
 手を合わせて味噌汁を啜りながら、小さく頷く。どちらかというと幼い時から日本食を好んで食べていた様な記憶がある。今でもたまの休みに自炊をする時はご飯と味噌汁と何か一品というのが定番だった。肉よりも魚が好きなので、夕食には塩鮭をリクエストさせてもらった。
 鮭に箸を入れれば身がほろりと崩れる。それをご飯と一緒にかきこめば、程よい塩気とご飯の甘みが合わさって口いっぱいに広がった。温もりが体に吸収される度、先ほどまでキリキリと脳を締め付けていた思考がほぐれていく。あっという間に完食すると、彼は嬉しそうにお盆を下げた。
「東京に到着するまで、もうしばらく時間があります。それまでどうぞ、心ゆくまでごゆっくりお過ごしください」
 車掌さんはそのまま部屋を出ていってしまった。本当はもう少し話をしたかったのだけれど無理に引き留めることはできなかった。ニューヨークを出てから急に彼の態度がよそよそしくなったような気がして、声をかけられずにいたのだ。机の上の呼び鈴を鳴らせば来てくれるのだろうが、用も無いのに呼びつけるのは申し訳ないと思う。きっと彼にも仕事があるのだろうと思い、最後までそのベルに触れることはなかった。
 僕はもう一度腕を組み、ソファに体を預けた。心地よいリズムに揺られながら、刻一刻と決断の時が迫っているのを感じていた。

「もうすぐ東京に到着しますが、どうなされますか?」
 ノックの音とともに車掌さん扉から顔を出した。窓の外に見える景色から、彼がもうすぐ来ることには薄々気づいていた。現れた彼になんと言うかも決めていた。
「降り口まで行ってもいいですか?」
「ええ、もちろん」
 スーツのジャケットを着て、重たい通勤鞄を手に持つ。立ち上がるといつもの疲労感は無く、体が軽く感じられた。部屋を出ると車両の降り口の前へと誘導される。車両の扉の小窓からも東京の夜景が一望できた。毎日見飽きていた景色のはずなのに、なぜかとても久しぶりに感じた。
「もう間も無く到着となりますので、最後にもう一度ご確認をさせていただきます」
 振り返ると、彼は帽子を深く被りピンと背筋を伸ばして立っていた。明らかにこれまでとは違い、いかにもマニュアル通りに話しているという感じだ。寄る街について楽しそうに語っていた彼の姿はもう見ることはできないのだろうかと少し寂しさを感じた。
「このまま電車に乗って永遠の夜へと向かわれるか、電車を降りて元の生活に戻られるか。どちらを選ばれますか?」
 ただ、帽子のつばの影からこちらを見つめる瞳に、もう恐ろしさは感じなくなっていた。いつだって彼の眼差しは変わらず、ただ僕を見守ってくれていた。黒い瞳の奥に見える優しさに安心して、僕は口を開いた。
「僕は、ここで降ります」
 ずっと悩んでいたけれど、本当のところは今も少し悩んでいるけれど、この景色を見てようやく決断を下すことができた。
 ずっと夜の景色を眺めていたら、自分の中にある心がようやくはっきりと見えるようになった気がした。暗闇に目が慣れたおかげかもしれない。確かにそこにあった僕の願いの形が、今は手に取るようにわかる。
「もちろん僕は明けない夜を望みました。今だってこの時間が続けばいいのにと、そう思っています」
 そう願っていたことは事実だった。僕の心はずっと叫んでいたと言うのに、僕自身が目を逸らし続けていた。彼は何も言わず、頷くこともせず、ただ僕をじっと見つめていた。その視線に応えるように僕は続ける。
「だけど、本当に夜ばかり見ていたら、夜以外の景色が恋しくなってしまいました。自分が夜以外の時間や風景も好きだということに気づいてしまったんです」
 昼間の明るい街の賑わいも、夕焼けが沈む海の綺麗さも僕は覚えていた。どんなに朝が来ることを嫌がっていても、毎日変わらず昇る朝日を美しいと感じていたことを思い出してしまった。
 今はもう、自分の心から目を逸らすことはしたくなかった。
「だから僕は帰ります。夜以外の景色を見るために」
 僕が口を閉ざしたのを見て、彼は頷いた。
「そうですか。では、間も無く停車いたします」
 ぶっきらぼうに聞こえたその言葉の端にはどこか嬉しそうな声色が混じっているように聞こえた。ほんの少しだけ口角が上がっているようにも見えた。それは気のせいかと思うほど些細な変化だったが、僕には確かにそう見えた。やはり、彼は柔らかな表情をしている方がいい。最後にもう一度、一緒に旅をした友人の面影が見られたことが何より嬉しかった。
 電車は徐々に速度を落とし、そっと止まった。ガタンという音と共に、目の前の扉が開く。そこは会社の最寄り駅だった。頬を撫でる生暖かい空気に、東京に帰ってきたのだという実感がようやく湧いた。
「これまでお世話になりました。食事も美味しかったですし、何よりこんな素敵な旅をありがとうございました。僕の一生の思い出です」
 彼の方を向き直し、深く頭を下げた。決して忘れることのできない、一日限りの旅に別れを告げる。
「お客様が喜んでいただけたなら何よりです。これからも良い旅を」
 間近で見る彼は、部屋で向かい合っていた時よりも大きく見えた。彼の話をもう聞くことができないと思うと寂しかった。しかし僕はここから去る決断をしたのだから行かねばらならない。
 振り返って降りようとした瞬間、突然ぐいと手を掴まれた。予測していなかった衝撃に驚いて振り返る。何か言おうとして口を開くより先に、目の前に開かれた彼の素手が迫っていた。その瞬間、脳裏を電流のような痛みとともに知らない記憶が駆け抜けた。
 その手の大きさを僕は知っていた。指の隙間から見える顔にも見覚えがあった。じわじわと頭の奥からどす黒いものが染み出してくる。学校のプール、夜の離島、消えない落書き。ああ、どうして僕は忘れていたのだろう。彼を、この人のことを「優しい友人」だなんて錯覚していたのだろうか。
 彼の帽子が扉から吹き込んだ風で飛んでいく。パサついた茶色い髪が風になびく。塩と血が混じった香りが鼻を掠めた気がした。
 来るはずの痛みに耐えるように反射的に僕は目を瞑った。しかし、思い出した記憶と同じように痛みが訪れることはなかった。
「ごめん、悠太」
 その声を聞いたのを最後に、僕の意識はプツリと途切れた。

 誰かに肩を強く揺さぶられる振動で目が覚めた。うっすらと瞼を開くと、心配そうに僕を覗き込む男の人の姿があった。それは車掌服に身を包んだ、小太りの男性だった。
「お兄さん起きて。この電車このまま車庫に入っちゃうから」
 目を擦ると、そこはいつも通勤で使っている電車の中だった。会社を出て駅に着いたところまでは覚えているのだが、いつの間にか電車に乗って寝てしまっていたらしい。 
 車掌さんにお礼を言って急いで立ち上がる。重たい鞄を引っ提げて電車を降りたところで、車内から呼び止められた。
「お兄さん、この電車に乗っていたんだよね?」
「ええ、そうですけど……」
 今まで寝ていたのではっきりとは覚えていないが、ここで目覚めたということはこの電車に乗っていたはずだろう。
「一度見回りしたはずなんだけどその時にはお兄さん居なくてね。車庫に入る直前にお兄さんを見つけたんだよ。見落としてたのかなぁ……」
 手を振って電車の奥へと消えていく車掌の言葉に首を傾げながら、僕は駅の改札を出た。何気なく鞄から取り出したスマホをつけた瞬間、そこに表示された画面に僕は思わず声を上げた。
「うわっ、何これ」
 静かな駅前に僕の声が響く。誰かに聞かれたかなど気にする暇もなく、急いでスマホのロックを解除した。
 メールや電話に大量の通知が溜まっている。どれも会社の人からだった。何か問題でも起きたのだろうかと急いで内容を確認するが、「何かあったのか」とか「体調を崩したのか」という心配するような言葉ばかりが並んでいる。意図を読み取れないままメッセージを確認していると、ある違和感に気がついた。
 もしかして、と慌ててアプリを閉じ、ホーム画面に表示された日付の部分を見る。何度目を擦って見直しても、スマホの電源を入れ直しても、そこに表示されている数字は変わらなかった。
「やっぱり一日過ぎてる……」
 最後の記憶から明らかに一日ずれている。自分に襲いかかった既視感のある異変に深くため息をついた。これはもうどうしようもないのだと僕は分かっていた。
 前にも一度だけこう言ったことがあった。その時はまだ大学生で、一日居ないくらいで大ごとにはならなかったから良かったのだけれど。
 少なくともメッセージの内容から、僕が丸一日出社せず、連絡も一切取れていなかったことは確からしかった。その間、昨日の夜からさっきの電車でずっと寝ていたのかどうかは分からない。ただ、今はとりあえず一刻も早く家に帰りたいと思った。スマホをしまおうとした時、いつ外したのかも覚えていない、くしゃくしゃになったネクタイが鞄の中に入っているのが見えた。
 鞄を閉じて家の方向へ歩き出す。家に帰ったらすぐに布団に入って眠りにつこう。ほんの少しお腹が空いている気もするが耐えられないほどではない。それよりも早く朝日が浴びたいと、なぜか無性にそう思った。

 
 遠ざかる東京の街を見下ろしている間、ずっと左手を握りしめていた。開いたままの扉から吹き込む強い風が髪を乱す。そっとほどいた指の隙間から、ざらざらと温かい砂のようなものがこぼれ落ちていく。それは暗闇の中で煌きながら、風に吹かれて空を舞っていく。最後のひとかけらが暗闇の向こう側へ消えて見えなくなるまで、ずっとその輝きを見ていた。あいつがここで過ごした一日分の記憶と、思い出してしまった苦い記憶が全て空へと消えるのを見送った。
 少なくとも、ここでの記憶はあいつにとって温かいものだったらしい。それだけで俺にとっては十分だった。
「もう来るなよ」
 三回目は無いからな、と呟いて扉を閉めた。
 強く願い焦がれた、幸せな永遠の夜なんて存在しない。俺がそのことに気づいた頃には既に元の世界には帰れなくなってしまっていた。やっと気づいた自分の罪を償うことすらできなくなってしまった。残されたのは、人でなしになる道だけだった。
 夜を願う人の前に現れ、嫌な思い出を掘り起こし、心を弱らせてその命を喰らう。世界を回り続ける、列車の形をした化け物の中で、俺はずっとこの化け物の手伝いをしている。二重の意味で人でなしだな、と笑いながら手のひらを見つめた。傷だらけの、人を殴り慣れた手を隠すように真白の手袋をはめなおした。今更善人ぶっても無駄だということは十分わかっていた。しかし、これは俺が縋りついている、やっと見つけた贖罪の機会だった。
 身勝手だとわかっていても、あいつには幸せに生きていて欲しい。そう思って、苦い記憶を根こそぎ奪って送り出したはずだった。学校のプールでの嫌な思い出も、故郷の海で小島に取り残されて怖い思いをしたことも、私物にされた落書きを必死に消したことも、その全ての元凶だった俺のことも。まさか、もう一度ここに現れるとは夢にも思っていなかったけれど。
 あいつがもうここに来ませんように。顔を見て素直に謝ることすらできない俺を綺麗さっぱり忘れてくれますように。夜を願うことなく生きていけますように。俺がそう思うことすらおこがましいかもしれないから、せめて「明るく優しい車掌さん」として強く祈る。
 落ちていた帽子を拾って深く被った。
 段々と暖かい街の灯りが霞んでいくのを、鼓動のようなリズムに揺られながら見つめていた。
 列車は今も夜の空を駆けている。

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