おそら の きみ へ

綱砥 鈴

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いきるということ

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もう、十分だとは思いませんか
私が生きた時間は

私は君と同い年
追いつけるはずのない時間を
私は追いついてしまった

止まった君と進む私
もう1人では進みたくない
もう1人では進めない

私は頑張りました
君がいない世界で生きること
私は頑張りました
私だけが残った世界で生きること

もう、十分だとは思いませんか
もう、十分だとは思いませんか

君を追いかけてはダメですか

きっと君は言うでしょう
まだ早すぎる、などと
もっと楽しめ、などと





それなら、私は生きましょう
君が望むことなら
君が喜ぶのなら
君の、ためなら

単純だと笑われてもいい
哀れだと嗤われてもいい

それだね、私の中の君は偉大なんだ

だから、だからせめて
私がそちらに着いたとき
迎えに来てはくださいませんか

いつもの笑顔で
恥ずかしそうに首を少し傾けて
壊れものに触れるようなその手で
抱き締めてはくださいませんか

悲しい顔はしないでください
ただただ笑顔で
お疲れ様と、言ってはくださいませんか

それだけで私はきっと
生きていた意味を感じるでしょうから
君に愛されているのだと感じるでしょうから
君を愛して良かったと感じるでしょうから

いつか、迎えに来てくださる
その日まで
私は精一杯生きましょう


君が生きたかった世界を

君が生きられなかった世界を

君と生きたかった世界を

君と生きるはずだった世界を



君がいない、この世界を

精一杯生きようじゃありませんか



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