想世のハトホル~オカン系男子は異世界でオカン系女神になりました~

曽我部浩人

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第7章 還らずの都と灰色の乙女

第175話:大切なものは守ればいい

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 戦争で命を落とした──真なる世界ファンタジアの英雄たち。

 こちらの世界から活力エナジーを奪っていく蕃神ばんしんとの戦いでは、多くの者がその亡骸なきがらさえ残っておらず「せめて遺影だけでも……」と工芸の巧みな神族や魔族が彼らの似姿をアダマントの鋼板こうばんに彫り込み、慰霊塔いれいとうに収めたそうだ。

 それは最初、小さな城くらいの大きさだった。

 蕃神との戦いを経るに連れ、戦死者の数は天井知らずで増えていき、彼らの遺影を収めた慰霊塔も拡張せざるを得なかった。

 ついには都市を超える大きさにまで増築されたという。

「私の父と母は……生と死を司る女神と魔王として……この死者の眠る都を管理をしており……慰霊の都は、いつしかこう呼ばれるようになりました」

 英霊たちの眠る都──“かえらずのみやこ”。

 その来歴を振り返り、ククリは話を続ける。

「最後の大戦争が終わった後……その戦いで亡くなった者の遺影を収めると、私の父と母は……自らも“還らずの都”へと入り……そして……」

 ククリは苦しそうにうつむくと、涙ぐむ声で言う。

「二度と……戻ってきませんでした……」

 両親との悲しい別れを思い出してしまったらしい。

 ツバサやミロを両親と見間違えた時、「帰ってきた」「戻ってきた」「置いていかれた」と泣いていたが……これが原因なのだろう。

 その辺りの事情を、ククリは泣きそうになりながら明かす。

「都の門を内側から固く閉ざして……“還らずの都”を地中深くに封じてしまったのです……その際、父様と母様は……こう仰いました……」

『我らは死者の都を守る者として、彼らと共に眠りにつかねばならぬ』
『おまえ1人遺していくのは不安だけど……外から守る者も必要なのです』

『父と母は内から守る。おまえは外から守る』
『わたしとお父様に忠誠を誓う、キサラギ族がいつも傍にいてくれます』

『彼らと共に、おまえは“還らずの都”を守るのだ』
『たとえ何者であろうと……都に立ち入らせてはいけません』

『我が娘ククリ──そなたに都の門を開く、唯一の鍵を授ける』
『いずれ兆し・・が現れた時、必要となるでしょう』

兆し・・が現れたなら、“還らずの都”は再び地上に姿を現す』
『その時こそ、あなたが門を開くのです……ククリ』

 兆しとは何か? その時とはなんなのか?

 ククリは両親に尋ねたという。

『兆しとは、“還らずの都”が地上へ現れる前兆……』
『その時とは、“還らずの都”が地上に現れた、まさにその時……』

 真なる世界ファンタジアが──“還らずの都”を必要とする時。

『その時こそ……おまえが門を開けるのだ』
『それができるのはククリ、あなただけなのです……』

 命の女神と死の魔王の力を受け継いだ者──ククリ。

 真なる世界ファンタジアが『いつか必要とする時が来る』という“還らずの都”を開けられるのは、彼女が持っている鍵だけとのことだ。

 話し終えたククリは、完全に俯いてしまった。

「母様……父様……っう……うっ……くすん……ぐす」

 還らずの都の鍵について話している間に、父母との悲しい別れを脳内で完全再現したのだろう。ツバサたちの前でも構わずに泣き出してしまった。

 すると、ツバサの横にいるミロが肘鉄で合図してくる。

 ん! んんっ! としきりに顎をしゃくってククリを示していた。

 ……まさか、母親代わりに慰めてこいとでも?

 ツバサが目で尋ねると、ミロは「そうだよ!」と眼力を返してきた。

 そりゃ母性本能は「慰めてやりたい!」と訴えているが……。

 オロオロしていたら──クロウと視線があった。

 骸骨がいこつの彼に眼球はないので視線はないが、それでも洞穴のような眼窩がんかの奥には上位スケルトン特有の知性の揺らめき、とも言うべき暗い光が灯っている。

 その視線とかち合うと、彼もまたゆっくり頷いた。

 意訳すれば「お願いします」ということだろう。

 どいつもこいつも──ツバサに母親役を押しつけてくる。

 本当なら「誰が母親だ!」と怒鳴ればいいところだが、悲しみを露わにして嘆くククリの手前、そんな暴挙には出られない。

 おまけに神々の乳母ハトホルとしての本能が胎内で疼いている。

「…………ッ! …………ッ!」

 ミロやクロウに反論するか、彼女のためにと言い訳したかったが、ククリの泣き顔を間近で見ていると、そんなムードぶち壊しなことはできない。

 無言のまま事を推し進めるしかなかった。

 せめて周囲への態度だけでも「しょうがない」と露わにする。

 不機嫌な形相でミロにだけ「今回だけだからな!」と怒りのジェスチャーを送ると、ツバサは渋々立ち上がってククリの席に近寄った。

 下手に優しい言葉を掛けても逆効果だ。

 ツバサはそっとククリに寄り添い、その小さな身体に手を回して自分の母なる胸に抱き寄せてやった。彼女は逆らうことなく、自ら飛び込んでくる。

「……か、母様……母様ッ……母様っ……うぅぅぅ……!」

 ツバサの爆乳に顔を埋めてククリは泣き喚いている。

 しかも結構な声量を上げているが、ツバサの乳房が防音材の役目を果たしているので呻いているぐらいにしか聞こえない。

 その震動は全部──ツバサのおっぱいに伝わってくる。

 以前から何度も反復するみたいに述べているが、ツバサの胸は超爆乳なのに感度はバツグンなのだ。こんな震動を受けたら……気持ち良すぎて身悶えてしまう。

 思わず淫らな嬌声きょうせいで喘いでしまいそうだ。

 だが、喉の奥にグッと力を入れて押し殺す。背筋を行き来する快感に痙攣しそうにあるが、それも力尽くで抑え込んだ。身動ぎひとつしない。

 女神の快感に打ち震えるも、他人の目がありまくりなので必至に耐える。

 ……こんな羞恥しゅうちプレイばっかりだな俺!?

 大概たいがいの者は気付いていない。

 ミロだけは「わかってるよ~? 知ってるよ~? ツバサさんは今、女と母と幸せを胸一杯に感じてるんだよね~?」と言いたげな、全部わかってます的な笑顔で生温かくこちらを見守っていた。

 ──ムカツクなぁ、アホの笑顔!

 ツバサは泣きじゃくるククリを気遣いながら抱き上げると、自分がククリの席に座ることにした。この方が姿勢的に楽だからだ。

 胸への震動で時折ビクンビクンとなるものの、できるだけ平静を装う。

 神々の乳母ハトホルの本能が成せるまま、母を求めて泣くククリを抱き寄せると、ありったけの母の愛情を込めて、何も言わずに慰めてやった。

 地母神が持つ母親系技能スキルを総動員させて──。

 今回は5分ぐらいでククリも落ち着いてくれた。

「グスッ……申し訳ありません、ツバサ様……また胸を貸していただいて……」

 目元を赤く腫らしたククリが謝ってくる。

 まだ涙が止まらないのか、着物の袖で何度も拭っていた。

「い、いや、胸を貸すくらい、どうってことないよ……うん」

 正直──かなりやばかった。

 具体的にどうやばかったのかと問われれば、下着がやばいこと・・・・・になりかけていた。ショーツどころか、ツバサの場合はブラジャーまでもがだ。

 そりゃあ性感帯の塊みたいな胸にバイブレーションを押し当て続けられたようなものなのだ。ハトホルミルクが漏れるのも無理はない。

 漏れすぎたミルクの香りがいつ立ち上るかとハラハラした。

 平静を装うのも一苦労である。

 それでも神々の乳母としての技能と、オカン系男子としての本能を無意識に発現させると、まだ目をこすっているククリに涙をすくってやった。

「だから、もう泣かないで……あんまり目をこするとヒリヒリするよ」
「はい、ありがとうございます、母さ……ツバサ様」

 途中で言い直したから良しとしよう。

 そのまま言われていたら、いつもの決め台詞が出ていたところだ。

「さて、落ち着いたところで……ククリちゃん……あ、違っ!?」

 ツバサまで言い間違えたので慌ててしまった。

 さっきまでククリ“さん”と仮にも敬称で呼んでいたのに、我が子のように慈しんでいたら、無意識にククリ“ちゃん”と愛称っぽく呼んでしまった。

 これは失礼だ。ミロを笑えないじゃないか──と思いきや。

「いえ、あの、ツバサ様……ちゃん・・・、でいいです」

 ククリ本人からお許しが出た。しかも、嬉しそうにだ。

 失礼には当たらなかったようなのでホッと胸を撫で下ろすが、捨てられた子犬のような目で懐かれてしまった。そこに一抹の不安を覚える。

 まさか──彼女もツバサの娘になるとか言い出さないよな?

 8人目の、それも灰色の御子の娘だなんて、どう受け止めればいいんだ?

 心中複雑になっていると、ミロが陽気に声を掛けてきた。

「ダイジョーブだよ、ツバサさん! 起源龍オリジンのジョカちゃんって前例があるし、灰色の御子の1人や100人、余裕で娘にできるって!」

「おまえは人の心を読むなよ!?」

 そういえば、既に創造神の龍を娘に迎えていたツバサであった。

 それを考えたらククリを娘にするなど朝飯前……。

「……って、そういう話じゃない。そっちの話は置いといて」

 ツバサは見えない箱を脇に置く仕種をすると、話の軌道を戻していく。

「ククリちゃん、君のお父さんやお母さんの話を聞いて、いくつか尋ねたいことが出てきたんだ。まずは…………」

「はいっ! ククリちゃんって何歳なの?」
「なんでおまえが聞くんだよ!? しかもそれ関係ないし!」

 いきなり挙手をして質問するアホを、ツバサはチョップで黙らせた。

 ククリはツバサの膝の上でおろおろしている。

「え、えっと……いくつなんでしょうか? 皆さん、元地球テラの人々の感覚からすると、かなりお年寄りということになると思いますが……でも、私、つい最近まで眠ってましたから……ええーっと」

「君も生真面目に答えなくていい……ん、眠っていた?」

 不自然なワードが出てきたのでツバサが反応すると、ククリではなく彼女の両脇に立ったまま控えていたダルマがズイッ! と乗り出してきた。

「そのことに関しては、わしからご説明してもよろしいでしょうか?」

 ツバサが頷き、真似るようにククリも頷く。

「では……ククリ様はご両親、つまりわしらキサラギ族がお仕えしていた女神様と魔王様との悲しい別れの後、その悲しみの辛さから逃れるためか、深い眠りに落ちてしまわれたのです。それはもう、とても長い眠りでしたのぉ……」

 キサラギ族は還らずの都と共に──眠る彼女も守り続けた。

「それがあの方々に授けられた使命、でしたからな」

 ダルマは誇らしげに語った後、その後についても説明してくれた。

「お二方が入られると、還らずの都は地中深くへと埋まっていきました……それが凡そ500年ほど前だと年寄りたちから聞いております」

 同時に──ククリも眠りに落ちたという。

「それから数百年、眠るククリ様をわしらキサラギ族は御守り続けました……お目覚めになったのは100年ほど前でしょうかな? そう、このわしダルマがまだ紅顔の美少年だった頃…………あ痛っ!?」

「余計な誤情報ごじょうほうは盛らなくていいです、父上」

 いらんことを言いかけたダルマの顔面に、ヤーマの鉄棒が唸る。

 この息子、父親にはかなり辛辣しんらつのようだ。

「んっもう……わしだってヤーマ君みたいな時があったんだよ、本当に……痛い痛い痛い!? 鼻の穴に突っ込むのやめてぇ!?」

「……そんなわけでして、ククリ様が目覚められたのは大体100年前です」

 ダルマの解説を引き継いで、ヤーマがそう結論づけた。

 それからククリが眉根を寄せて話し出す。

「ですから、私は550年前くらいに生まれて、500年前から400年くらい寝てて……それを差し引くとしたら……うん、150歳くらいですね!」

「寝てるの換算したら550歳だよね」
「不老の神族や魔族に年齢なんて大した意味はないだろ」

 ミロのツッコミにツバサがツッコミの上掛けをする。

 そもそも年齢をあーだこーだ言いだしたら、ジョカフギスなどこの世の始まりから生きているのだから何億歳では利かない。気にするだけ無駄である。

 するとミロはポンッ! と手を打った。

「そうか……ロリババア枠だね!」
「ジャンルを増やすな。ウチはもうオーバーフロー気味なんだから」

 ただでさえツバサやミロが様々なニーズの融合体で、どちら方面に需要があるかわからんキャラになってるのに、更に上乗せされてはたまらない。

「ククリちゃんの年齢はさておき……君のお父さんやお母さんはこう言ってたんだよね? いつか、真なる世界が“還らずの都”を必要とする時が来るって……」

「はい、確かに仰ってました。ただ……それがどのような形で必要とされるのか? その時とは何が起きた時なのか? 詳しいことは何も……」

「うーん、投げっぱなしに聞こえなくもないが……」

 誰の目から見てもこの世界に異常事態が起こった時、もしくは真なる世界ファンタジアに滅亡寸前の危機が訪れた時……“還らずの都”が必要とされるのだろうか?

「私的な意見を述べさせてもらってもいいですか?」

 クロウが手を挙げて話に参加してきた。

 ツバサが頷くと、一拍の間を置いてからクロウは語り出す。

「この世界が還らずの都を求める時とは、どのような事態か知りようもありませんが、求められる以上、真なる世界ファンタジアに何らかの不都合が起きた時だと推測できます。還らずの都には、その不都合を解決するだけの力がある……」

 この力こそが──キョウコウの求める“最高の軍事力”では?

 クロウの推論すいろんにはツバサも賛成できた。

「そうですね……そう考えれば、キョウコウが還らずの都を探している辻褄つじつまが合いますし、ククリちゃんのご両親が言及しなかったのも頷けます」

 還らずの都には最強の力がある──だから誰にも渡すな。

 そんなことを娘に伝えれば重荷にしかならない。

 おまけに、その伝聞情報はどこかに漏れてしまえば、力を求める者や野望を抱く者を呼び寄せてしまう可能性まで出てくる。

 その結末は、還らずの都を悪用されるという末路だけだ。

 そうなれば最悪の事態である。

「ククリちゃんのご両親はわざと・・・ぼやかしたんだろう……情報の質を落とすことで、ククリちゃんも何を守っているかわからずにした。わざと曖昧あいまいにして、良からぬ者が興味を抱かぬようにしたのかも知れない……」

 ツバサとクロウが話し込んでいると、ダルマも参加してくる。

「そういえば、わしらキサラギ族にも“真なる世界ファンタジアに必要なもの”としか伝わっておりませんからな……どんなものなのか想像したことさえありません」

「キサラギ族の大半は、父上のように何も考えて……いえ、大らかですからね。還らずの都は、古代の種族たちの墓としか考えておりません」

 ダルマの発言を受けて、ヤーマはそう付け加えた。

 まるで「私は違います。還らずの都について自分なりに考察を重ねてきました……無論、効率よく守るためです」と言いたげだった。

 というか、神族の技能スキルで表情を読み取ったらそんな感じだった。

「恐れながら──私からも申し上げたい議がございます」

 ヤーマは挙手すると、自分が調べてきたことを解説してくれた。

「還らずの都は、ククリ様のご両親様が入ると同時に地中深く埋没しました。その後、我々キサラギ族はその上に村を建て、守ってまいりました」

 それから時が経つにつれ、幾度かの地震がこの地を襲った。

 地震の度に大地にはひび割れのような亀裂が生じ、それはやがて今のような複雑怪奇な谷となったらしい。そこでキサラギ族は、地中深くにある還らずの都をより近くで守るため、谷底にこのような里を設けたとのこと。

 還らずの都は──その時が来たら地上に浮上してくる。

 その時、大地は今以上に裂けることだろう。

 こうしている今も還らずの都は徐々に浮上しているのかも知れない。それが何度となく繰り返される地震や、大地の裂け目となって現れているのだ。

 即ち、このひび割れた渓谷は兆しそのもの。

「ゆえに──この谷は“兆しの谷”と呼ばれるようになったのです」

 だが、兆しというには微々たるものだ。

「恐らく……本当の兆しはもっと大きなものだと思われます。現に、ここまで谷が割れても、真なる世界ファンタジアに大きな異変が現れておりません。もしも、その時が訪れたなら、私たちのような凡俗ぼんぞくでもわかると伝え聞いておりますので……」

「なるほど……それで“兆しの谷”なのか」

 この谷は数百年前から徐々にできあがったらしい。

 これほどの亀裂が生じているところを見ると、徐々にではあるが“還らずの都”が持ち上がっているのだろう。ただ、前兆というには程遠いようだ。

「難しいことはツバサさんたちに任せるよ」

 長話に飽きたのか、頬杖ほおづえを突いていたミロがそんなことを言い出した。

「“還らずの都”にどんなものが仕舞ってあるか知らないけど、それは大変な時が来るまで出しちゃいけないもんなんでしょ?」

 大切なことはそれだけ、とミロはチェシャ猫のように歯を剥いて笑う。

「だから、キョウコウって暴れん坊に渡しちゃいけない。アタシはそこだけ理解しておくから、難しいことはツバサさんやクロウのオッチャンで話して」

 ホクトさんおかわりー♪ とミロはのんきにお茶を要求していた。

 複雑になりかけた話をぶった切って核心だけを突く。

 時折、ミロはこういうことをする。

 ウチの娘、希代きだいのアホガールだが──アホでもないのだ。

 こういう時、ミロの器の大きさというか王の資質ししつというか……そういった才覚を思い知らされる。磨けば光る玉なのかも知れない。

 さる老騎士の神から『主神メイン・の王権オーソリティー』を授けられたのも納得だ。

 物事というのは本来シンプルなものなのに、難しく考えれば考えるほど煩雑になっていき、思考の迷路に迷い込んでいってしまう。

 大切な目的のみを見据え──その一点を突き詰める。

 ミロはアホだから深く考えないのか、その思考へスマートに辿り着けるのだ。他の瑣末事さまつごとは見落とすというより眼中にないらしい。

 それらはツバサが拾い上げるから、持ちつ持たれつでちょうどいい。

 クロウは感心そうに何度も頷いていた。

「なるほど……真理ですね。小難しい屁理屈を唱えたところで、我々が成すべきことはただひとつ、還らずの都とククリさんを守ること」

 仮説や推論を並べ立て、議論を交わしても意味がない。

 大切なことをしっかり確認して、そこにだけ注力すればいい。

 ミロの意見で場の流れが変わったのでツバサは苦笑する。クロウも剥き出しの歯茎はぐきをズラしていた。どうやら微笑んだらしい。

「ツバサ君、ひとまず還らずの都に関してあれこれ考えるのは後にしましょう。今はそれを狙うキョウコウという男の動向に注意するべきです」

「はい、キョウコウはプレイヤーを数百人、それに相当数のモンスターを兵士として生産しています。遅かれ早かれ、ここを嗅ぎ付けないとも限らない」

 早急な対策が必要だ──ツバサとクロウの意見は一致した。

 ツバサはククリを抱いたまま空いた手を伸ばすと、クロウの手をがっちり握手を交わす。まだ同盟こそ結んでいないが、今はこれでいいだろう。

 2人の握手を見届けたククリは、また涙ぐんでる。

 だが、嬉しそうに微笑み、人差し指で涙をすくっていた。

「ありがとうございます、ツバサ様、クロウおじさま……」

 それからククリは、愛おしそうにミロを見遣る。

「ミロ様もありがとうございます……フフッ、大事なことだけをみんなに伝え、それが本当に正しいことで、誰もが頷かされてしまう……」



 そんなところも父上そっくり──ククリは懐かしむように呟いた。


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