想世のハトホル~オカン系男子は異世界でオカン系女神になりました~

曽我部浩人

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第11章 大開拓時代の幕開け

第271話:御利益ありすぎな護符とトレーディング御札

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 ダインとジンの屋台を後にするツバサ一行。

 マリナはツバサ人形、イヒコはミロ人形、子供が胸に抱いてちょうどいい大きさの中サイズをそれぞれ抱えてご満悦の様子だ。片手でツバサ人形を抱き締め、もう片方の手は本物のツバサと手をつないでいる。

 マザコンな2人にしてみれば、至福の一時だろう。

 一方、欲張ったミロは大サイズのツバサ人形を抱えていた。

 その隣には、ツバサとミロのぬいぐるみ人形(中)を両手に抱えてホクホク顔のククリが並んでいる。彼女はミロを父親と同一視しているので、ツバサとミロの間を行ったり来たりしていた。

 ミロはツバサ人形(大)を抱えるために、両手にあふれるほど持っていた出店の料理を一気に平らげたくらいだ。

 早食いするミロを見ていて、ふとツバサは気付いた。

「そういえばトモエはどこへ行った?」

 さっきまで一緒だったトモエがいないことに──。

「あれ……トモエさんがいない?」

 胸に抱えたツバサ人形の頭の上で、マリナはキョトキョト首を回す。

 イヒコは来た道を指差してツバサに言った。

「ドンカイ親方のリヴァイアサン焼きまでは一緒にいました。リヴァイアサン美味しい美味しいって串焼き食べまくってましたし」

 目端めはしの利く子だ。家族の動向をチェックしていたらしい。

 だが、イヒコもそこまでしか把握してないという。

「トモエはすばしっこいからな。ひとつところにジッとしてない」

 ミロも落ち着きのないアホ娘だが、トモエは輪をかけて気まぐれで行動力がある上に家族ファミリー随一の素早さで好き勝手に跳び回る。

 遠出する時は首輪とリードを付けたいくらいだ。

「でもまあ、迷子ってことはないだろ」

 現実なら迷子案件で慌てるところだが、おバカ娘だろうとトモエは15歳になる少女。庭とも言うべきハトホルの国で迷うほど愚かではない。

「トモちゃんならお手伝いした出店を見に行ったよ」

 ミロはツバサたちが歩いている進行方向を指差した。

 これからフミカとプトラがやっている屋台に向かうつもりだった。

「なんだミロ、おまえトモエの行く先を聞いてたのか」
「うん、親方ところで別れた時『んなんな』言いながら走ってった」

 トモエの口癖を真似するミロは小脇にぬいぐるみを抱え直すと、もう片方の手をツバサの肩や胸元に伸ばしてきた。触ってるわけではない。

 ダインとジンの出店で貰ってきたミロ人形(小)を、ツバサの肩に乗っけたり、着物の合わせ目……というより胸の谷間に突っ込んだり、自分がツバサ人形を抱いてるように、ツバサをミロ人形まみれにしているのだ。

 セクハラではないので大目に見ている。

 それに……声を大にしては言えないが、ミロ人形は一目見たツバサは「可愛い!」とハートを撃ち抜かれていたので大歓迎だった。

 先ほど、ジンをこっそり屋台裏に連れ込んで──。

『いいかジン、ミロ人形の全バリエーションを誰にも気付かれることなく俺の部屋まで持ってくるんだ。余裕があればバリエーション増し増しで作ってくれ。あと、俺のスタチューや全身可動のフィギュアを作った要領でミロヴァージョンの製作も頼みたい……くれぐれも内密にだぞ、いいな?』

『了解です──俺ちゃん承りました、マム』

 誰がマムだ、と渾身の力で踏んだのは言うまでもない。

『待ってましたご褒美です!』
『おまえもお仕置きがご褒美になるんだよなぁ……』

 正直、ツバサには度し難いが性癖ならば仕方あるまい。

 せめて愛情を込めてあげよう。愛の鞭の過激なシゴキバージョンと思えばいい。

「じゃあトモエを追うつもりで、文学少女コンビの出店に行ってみるか」

 頭に1体、両肩に1体ずつ2体、胸元に3体。

 合計6体のミロ人形を乗せたまま、ツバサは歩き出した。両手はそれぞれマリナとイヒコと手をつないで、気に入ったロボットを手に入れてホクホク顔のヴァトとジャジャがそれに続く。

 無論、隣に並んで歩くのはミロを置いて他にいない。

 そのミロの傍にはククリが幸せそうな顔でついてきていた。

 子供たちを連れて、フミカとプトラが出した屋台までやってくる。

 その出店は──きらめいていた。

「うわぁーぉう、キンキンギラギラで目にまぶしいね」
「グラサンかけるほどじゃないだろ」

 道具箱インベントリから取り出したのか、ミロは古臭いデザインのサングラスでキラキラ光る屋台の輝きをシャットアウトしていた。そこまでキツい光ではない。

 しかし、縁日の灯りでも目映まばゆいのは確かだ。

 フミカとプトラの屋台も他の神族の屋台のように、2店舗分のスペースを確保していた。その屋台は商品を並べるテーブルを大きく取っていたが、網棚を立てて壁にしており、そこに小粒の商品を引っ掛けて陳列もしていた。

 その商品が光を浴びて輝いている。

 並んでいるのはネックレス、ペンダント、イヤリング、ブレスレット、チョーカー……女の子受けが良さそうなファッション小物が多い。

 ネックレスやペンダントのチェーンは元より、シルバーアクセサリーや金属プレートで作られたアクセサリーも目立つ。材料はダインが都合したのだろうが、それを加工したのはプトラのセンスに違いない。

 ああいう凝ったデザインはダインには不得手ふえてのはずだ。

 パワーストーンをあしらったものもあり、遠目から分析アナライズしてもかなりの強化バフ効果が窺える。神族が手作りしたものならではだ。

 しかも──プトラ作である。

 自他共に「ダメ人間!」と認めるコギャルのプトラだが、道具作りの腕前だけは傑出していた。というか、常軌を逸しているのだ。

 神族だから神懸かっているのは当然なのだが──。

 その腕前をたとえるなら、ライターを作らせれば山をも焦がす高出力火炎放射器を作り、水筒を作らせたら携帯式のダムを作るような異才である。

 つまり──魔法の道具マジック・アイテムを作る才能があった。

 あれらのアクセサリーにも“お守り”としての効果を付与したつもりだろうが、まかり間違って高出力ブーストされていたら……と思うと、縁日で気軽の売らせていいものか不安になる。

「あ、バサ兄。心配性が眉間のしわになって現れてるッスよ~?」

 ツバサたちに気付いたフミカが手を振りながら、そう声を掛けてきた。

 まるで本を読むようにツバサの表情を読んだらしい。

 フミカもまたお祭り仕様、ピンクの法被はっぴを着込んで屋台の売り子をやっていた。こちらの店舗もスプリガンの少女たちがお手伝いをしている。

 小麦色の肌をしたナイスバディな文学少女。

 法被をしっかり着込んでいるが、短パンから覗く太股や着物の合わせ目から覗く鎖骨に同年代の少年ならドキドキするだろう。

 ダインがこの場にいたらショートするに違いない。

「なになに? オカンさんたち来たし? いらっしゃ~い♪」

 同じ格好をしたプトラも笑顔で出迎えてくれた。

 フミカよりやや見劣りするものの、同年代の女子高生と比べればプトラも発育はすこぶる良い。コギャルといえども肌は焼いておらず、美白したようなきめ細かい肌が眩しいくらいだった。

 自慢の金髪はいつでも片側だけ昇天するように盛り上げているが、今日はお祭り仕様なのか団扇うちわや提灯といった小物で飾っている。

 出店の接客をスプリガンたちに任せたフミカとプトラがこちらにやってくると、イヒコとヴァトがプトラに駆け寄っていく。

「プトラお姉ちゃん!」
「プトラさん!」

「あら、アンタたちも来たし。やっぱりオカンさんと一緒だったんだね。んも~、本当にマザコンのお母さんっ子なんだし」

 呆れたような口振りだが、その声色はとても優しい。

 駆け寄る2人を受け入れるようにしゃがみ込んだプトラは、イヒコとヴァトを迎え入れるために両手を広げ、2人の小さな肩を抱き寄せた。

 ツバサがやるとお母さんだが、プトラがやればお姉ちゃんだ。

 イヒコ、ヴァト、プトラ──。

 ハトホル一家に加わる前、3人はこの過酷な真なる世界ファンタジアの環境を生き抜くためにパーティーを組んでいた。その絆は本当の姉弟のように強い。

 プトラに抱きついたイヒコは心配そうに顔を上げる。

「プトラお姉ちゃん大丈夫? またトンデモアイテム作ってない? みんなにあげるんだからちゃんとセーブしなきゃダメだよ?」

 同様にヴァトも不安を露わにする。

「僕たちが使う道具ならまだしも、普通の人間に近いみんなに配るものなんだから自重しないと……また変な機能とか追加してないよね?」

 妹分と弟分の苦言に、さすがのプトラお姉さんも心外のようだ。

 頬を引きつらせて苦笑いを浮かべながら問い返す。

「アンタたち……あたいをなんだと思ってるし?」

「「──制御装置リミッターなしの魔道具アイテムしか作れないダメ人間」」

 そうだけどさぁ! とプトラは姉弟の発言を認めながら、納得いかないかの頭を掻き毟って苦悩していた。しかし、ちょっと演技過剰でふざけている。

 ウケ狙いでわざとやってる節もあった。

「まあまあ、イヒコちゃんもヴァト君もお姉ちゃんに辛辣しんらつなコメントするもんじゃないッス。ああ、バサ兄の心配性も無問題ッスよ」

 そこへフミカが助け船を出してきた。

「健康祈願に無病息災、財産上昇に武運長久、恋愛成就、縁結び、安産祈願に子宝祈願、家内安全、交通安全、厄除け方位除けに開運招福、五穀豊穣から大漁に豊漁……その他諸々の加護を与えられたお守りの数々!」

 プトラが作ったアクセサリー。大きさ的に携帯ストラップか根付みたいな大きさのものだ。フミカはそのひとつ摘まんでプラプラさせた。

「お守りの見本市だな……ん?」

 分析アナライズしてみると効能こそ強いが、お守りの域を超えていない。

「プトちゃんが手加減なしで作ると現実を改変する効果を持ったマジックアイテムになっちゃうんで、そこはウチがちゃんと調整をかけてるッス。でも、神族ゆかりのアイテムだから効果は折り紙付きッスよ」

「なるほど、効能こそ高いがあくまでもお守りか」

 種類分けされた各種アクセサリー。

 それは“護符”アミュレットと呼べる働きをするだろう。

 フミカが制限セーブをかけたとはいえ、プトラの常識から外れた才能で作られた護符は種族の者たちに多大な加護を約束してくれるはずだ。

「そうか、それがコンビを組んだ理由だな」

 読書家という共通の趣味で意気投合した女子高生コンビ。

 アクセサリー類のデザインも、そこに付与する加護も、仲良く共同作業で作ったそうだ。フミカが監修しているなら間違いはないだろう。

「でも、どのアクセにも1個だけ、あたいが手加減なしで付与してる共通の加護があるし。それだけは絶対に譲れないし」

 プトラはイヒコにネックレス、ヴァトにブレスレットを付けてやる。

 どちらも個性に合ったデザインのものだ。

「当然、みんなにあげるのにも付与してあるし」

 2人だけではなく、マリナやジャジャ、ミロやククリにもセンスに見合ったアイテムをプレゼントする。この子も気配りを忘れない子だ。

プトラおまえが手加減なしって……それ、強力かつ絶対的に発揮されるだろ」

 そこを気にするツバサにプトラはペンダントを手渡してきた。

 2人の女神を象った横顔のシルエットが重なるようにデザインされた、コイン状のペンダントトップで飾られたものだ。

 2人の女神の横顔は──ツバサとミロをかたどったものだろう。

 それを手渡してきたプトラは、慈しみに満ちた笑顔でこう告げてきた。

「そう、ここぞって時に絶対発動して、みんなを守ってくれるし」



 理不尽な死が訪れた時──この護符を身代わりに必ず回避する。



 すべての護符に施されたプトラ渾身こんしんの加護だった。

 思い返せばプトラはイヨやオリベが助けを請い、大穴の底にいた迷える子供たちを救おうと尽力したほど優しい性格の持ち主である。

 その優しさは、この地に生きる者たちにも分け隔てなくもたらされていた。

あの子たち・・・・・を見捨てなかった、おまえらしいな……」

 ツバサは穏やかに微笑むとプトラの頭を撫でてやった。照れ臭そうに笑うプトラだが、そんな彼女をツバサは我が事のように誇りに思う。

「ねえねえプトラちゃん、トモちゃん来てない?」

 ツバサと同じデザインのペンダントを貰ってご機嫌なミロだが、この出店へ向かったはずのトモエの姿が見えないので尋ねていた。

「トモちん? なら出店の……ほら、あそこにいるし」

 プトラが指差した屋台の一角、そこに人だかりができていた。

 プトラとフミカのお店はアクセサリーのお店でもあるため、訪れるお客さんは各種族の女の子ばかりだ。中にはファッションにうるさそうな青年もいるが、基本的に10代後半から20代ぐらいの若者が多い。

 だが、プトラが指差した一角はちょっと毛色が違った。

 若者が多いことには変わりないのだが、ダインやジンの屋台のように小さな子供まで群がっているのだ。またオモチャのたぐいだろうか?

「んなぁー、順番に1人3枚までな! 3枚選んだら列の最後尾から並び直す! そして順番が来たらまた3枚選んで引いてもいいな!」

 その人だかりを仕切っていたのが、トモエだった。

 漫画の神様が好んだタイプのベレー帽を被り、口元には偉そうなカイゼル髭をくっつけて、煙草たばこも吸えないくせにパイプをくわえている。

 愛用の体育着の胸元には『作者』という名札を付けていた。

「あれは……何をしてるんだ、トモエのやつ?」

 トモエの中途半端なコスプレにツバサは首を傾げるしかない。

 スプリガンの少女たちと一緒に群がるお客さんを捌いており、屋台のテーブルに山と積み上げられた封筒みたいなパックを配っている。

 1人が1回に選べるのは3枚まで──。

 3枚のパックを選んだ種族の子供たちは、その場ですぐに開けるとカードのようなものを取り出して、確認しては喜んだり口惜しがっていた。

 みんな口々に「まだ揃わない!」とか「欲しいの出た!」とか叫んでおり、中には「交換しない?」とカードを持つ者同士で話し込んでいる。

「なんだか……現実のオモチャ屋でよく見た光景だな」
「トレーディングカード売り場みたいですよね。わかります」

 ツバサのぼやきに同調したマリナが的確に言い表してくれた。

 あれは──トレカの売店でよく見た風景だ。

 場所によってはコンビニとか大型電気量販店のオモチャ売り場でもいい。

 呆気に取られているツバサたちに、フミカとプトラはトモエが配っているカードの実物を差し出してきた。トランプの手札を扇状に広げるように、何枚ものカードをよく見えるように披露してくれる。

 そこに描かれているのは──。

「──また俺たちじゃねえか!?」

 金属製の薄板で作られた、キラキラと光り輝く加工をされたカード。

 そこに描かれているのはアニメ調に描かれたツバサたちだが、ややデフォルメされており、キャラクターっぽくデザインされている。

 おまけにちゃんとカッコいいポーズまで取らされていた。

 今度はツバサやミロだけではない。

 ハトホル一家、イシュタル陣営、ククルカン陣営、タイザンフクン陣営……神族プレイヤー揃い踏みだった。それぞれの性格を表したかのようなポージングで描かれており、その筆致と表現力は確かなものである。

 各陣営の代表はホログラム加工されていてゴージャス感増し増しだ。

 思わず「SSR」とか呼びたくなる。

 ソシャゲと違って実物があるとトレーディングカードやシールを思い出すが、コレクターだった父親はあの手のカードをよく「ヘッド」と呼んだものだ。

「いやー、ビック○マンとか神○万象とか思い出すッスよねー」
「あたいらもエロカッコよく描かれてるから大満足だし」

 自分たちの描かれたカードをピックアップして、彼女たちも嬉し恥ずかしと言いたげだ。しかし、プトラはヴァトとイヒコのカードを抜き出すと法被の懐へ仕舞い込み、フミカはダインのカードを胸の谷間へ大切そうに差し込んだ。

 気持ちはわかる──ツバサもミロのカードは100枚ぐらい欲しい。

「このカード……というか、これにも護符と似たようか効果が付与されているところを見ると、霊験あらたかな御札おふだと言うべきか?」

 そう、ツバサたちをモデルにしたこのトレーディングカード。

 ビ○クリマンとか神羅○象を彷彿ほうふつとさせるコレクション性の高そうなデザインをしているが、2人の屋台に並ぶアクセサリーに勝るとも劣らない護符としての機能が付与されていた。

 描かれたキャラによって、御利益が違うところまで細かい。

(※セイメイなら武具による攻撃強化、マリナなら防御力アップ、ドンカイなら水属性の強化、ツバサやミロはオールマイティーetc)

「んなんな──御利益ありまくりな!」

 出店の切り盛りをスプリガンの少女たちに託したトモエが、こちらにトコトコ歩いてくる。体操着に付けた『作者』の名札を見せびらかしてだ。

 フミカとプトラの出店で御札を配る──。
 トモエが2人を手伝ったらしい──。
 そういえばこの娘には芸術系の才能があったな──。

「このイラスト描いたの……もしかしなくてもトモエか?」
「んな! 三日三晩徹夜したけどお昼寝した!」

 察したツバサが問うてみると、トモエは嬉しそうに手を上げた。

 トモエには絵描きの才能があった。

 これは技能スキルとして獲得したのではなく、生来トモエが備えていた天性のものだ。時折、蕃神の眷族や珍しいモンスターをスケッチすることで、その片鱗を覗かせていたが、あれから才能が開花したらしい。

 精巧なスケッチを描けることは知っていた。

 まさかポップなイラストも描けるようになったとは──。

 祭りが始まる数日前、縁側で昼寝しているトモエをよく見掛けたが、あの昼寝はこれに注力した結果だったらしい。

「みんなもお祭りで色々出す聞いた。トモエも何か出したいけど、絵しか描けない……フミカとプトラに相談したら、これ作ってくれた!」

 トモエは各陣営のキャラが描かれたトレーディングカードを、誇らしげにツバサへ渡してきた。フルセットでフルコンプのものをだ。

 努力の成果を母親に見てもらいたい──子供らしい振る舞いだ。

 これに肖像権とか恥ずかしいとか喚くのは野暮である。ツバサは「ありがとう」と言いながら受け取り、トモエの頭を「よしよし」と撫でて褒めた。

「頑張ったな……みんなのためによくやってくれた」
「んな! みんな喜んでる! トモエ嬉しい!」

 ニカッ、と音が聞こえてきそうな笑顔でトモエははにかんだ。

   ~~~~~~~~~~~~

 ドンカイのリヴァイアサン焼き。
 セイメイの神酒の振る舞い酒。
 ダインとジンのオモチャ屋さん。
 フミカとプトラのアミュレットショップ。

 そして、トモエがイラストを担当した御利益ありまくりな御札。

「──これで身内が出している屋台は回ったかな?」

 ツバサは回ってきた屋台を指折り数える。

 今回、他陣営から参加したのは準備の手が早いジンくらいのものだが、夏からは「是非とも参加を!」と熱望する他陣営の者が控えている。

 また、他の陣営でのお祭りも企画が進行中だ。

 明日にでも祭りに顔を出して、雰囲気を下見するとも聞いていた。

 あとは自由に回ろうかと歩き出した矢先、トモエから貰ったトレーディング御札をチェックしていたミロが、顔を上げて呼び止めてきた。

「まだだよツバサさん──クロコさんとこ行ってない」

 あの変態メイドも出店するとの報告を受けていた。

『真っ当な店なんだろうな? 出張SMクラブとかだったら張り倒すぞ?』
『御安心ください。お子様向けのスイーツなお店にするつもりです』

 凄むツバサにクロコは素知らぬ顔で返してきた。

 公衆の面前で下着姿にされて鞭で打たれても「ご褒美です!」と鼻血と涙と涎をあふれさせて喜ぶ変態なので油断はできないが、ミロが楽しみにする祭りを台無しにするような不作法はしないはず…………と思いたい。

 ツバサの踏み出しかけた足が重くなる。

「クロコの出店かぁ……正直、嫌な予感しかしないから顔を出したくないんだが、見ておかないと何を売り物にしてるかわからんし、公序良俗に反するものをバラまいてたりしたら怒んなきゃいけないから……ハァ、面倒だな」

「そう仰ると思いまして──私の方から参りました」

 ツバサたちの後ろからクロコの声が近付いてきた。

 ガラガラと荷車を引くような音がしたので、気になって振り返る。



 そこには──移動式屋台を引く駄メイドの姿があった。


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