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第18章 終わる世界と始まる想世
第450話:延世のシェーシャ・マハーバリ
しおりを挟む「バオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオぉぉぉーーーッ!」
龍蛇の魔神皇と化したロンドが雄叫びを上げる。
――守護神と破壊神の衝突。
競り合う双方から発する波及で巻き起こされた嵐も、真なる世界の頂点を極めた力同士の激突から生じた大爆発も、この咆哮によって掻き消される。
一瞬、晴天が訪れた空は沈黙に支配された。
神々の乳母に戻ったツバサは、変貌したロンドと対峙する。
衣装こそ高級繁華街を遊び歩く極悪親父のままだが、7mを超えたその体躯はすっかり人外化しており、まるで龍蛇を擬人化させた怪物のようだ。
そんな怪物が無理やりスーツを着込んでいた。
平素なら滑稽と一笑に付すフォルムだが、本腰を入れた破壊神からの威圧感は凄まじく、とてもじゃないが鼻で笑えるものではなかった。
腕の太さは樹齢千年を数える巨木にも勝る。
「おっしゃあああらぁぁぁぁッ!」
ロンドは肩の後ろへ引き絞った腕を気合い一閃で振り抜いた。
鉤爪を尖らせた掌が空を裂けば、空間はおろか次元をも薙ぎ払う五筋の衝撃波を発生させ、あまつさえ遙か遠方にまで届かせた。
目の端で追う限りでは、地平線の果てに到達しかねない。
「しゃおらららららららららららららーーーッッッ!」
威嚇を交えて乱雑に振り回される両腕。
その度に衝撃波が乱射され、真なる世界に深い傷痕を刻みつけられる。
具体的にいえば――中央大陸北西部が斬り刻まれていた。
最初の激突で北部の中心が抉れ、先の百の過大能力一斉掃射により北東部が消し飛び、残った北西部もついでとばかりに削るつもりらしい。
これで中央大陸の北部は完全に消失する。
現状、無事なのは還らずの都より以南の地域のみ。
東部でもやや北寄りなミサキ君のイシュタル女王国なんて際どいところだ。
それさえも「辛うじて」という枕詞が欠かせない惨状だった。
「まだ北西部にも誰かいるかも知れないのに……ッ!」
いやらしい真似をする破壊神にツバサは毒突く。
顔を歪める守護神に、ロンドは嬉々として鉤爪を振り翳す。
「誰かいるはずだからやってんだろうがッ! オレぁ破壊神だぞ!? 形あるものは原型がなくなるまで念入りにブッ壊す! 命ある者は遺伝子も残さず血の染みになるまでブッ殺す! それが……ッ!」
破壊神の生き様だッ! とロンドはがむしゃらに右腕を振り下ろす。
ツバサはその手首を狙って垂直なキックで蹴り上げた。
蹴りの一撃はロンドの手首に接触していないが、鉤爪を押し止めるように停止させていた。そして、ロンドの右腕はピクリとも動かなくなる。
いや、全身の動作も鈍っていた。
「また合気の裏技とやらか!? いや……そもそも触れてねぇだと!?」
「空間湾曲魔法プラス合気だ」
超級魔法である空間操作魔法でロンドを制止させつつ、湾曲させた空間を自らの手足の如く扱い、合気の妙技を再現させたものだ。
そのまま触れていないロンドの手首をおもいっきり蹴り飛ばす。
反動を使ってトンボ返りをしたツバサは、空を蹴ってロンドの懐へ飛び込み、空間湾曲を応用した右ストレートをお見舞いする。
惑星規模の空間に圧縮を重ね――インパクトの瞬間に解放。
解き放たれるエネルギーに指向性を持たせ、パンチとともに叩き込む。
発勁の原理も使い、空前絶後の貫通力も持たせてある。
「グゥオオオオオッ!? ど、土手っ腹に風穴がぁ……ッ!」
「空いてねえじゃん!?」
ツバサは大穴を開けるつもりで手加減せず打ち込んだというのに、高級スーツが破けて腹筋が焦げた程度で済んでいた。
さすがは破壊神の最終形態、頑丈さも一味違うらしい。
「もっと急所を責めないと駄目か!」
ツバサは愚痴るようにぼやきながらも、巨体の懐に潜り込んだ位置も良かったので、渾身の左アッパーを振り上げた。これも空間圧縮パンチだ。
ロンドの顎を打って舌を噛ませ、強制的に空を仰がせる。
「痛ってぇぇぇぇ……舌噛んだじゃねえか、このメス女神野郎がぁッ!」
「その割にはベラベラと冗舌だな!」
顎をかち上げた拍子に跳んだツバサは、ロンドの頭上まで舞い上がると風車のように縦回転し、踵に遠心力を乗せて踵落としを繰り出す。
空間圧縮の威力も加わり、破壊神の頭蓋骨をも打ち砕くはずだった。
「なのに……鱗を剥ぐのが精々かよ!」
不満げなツバサにロンドは唇をニヤリとさせる。
「掛け値なしの本気を出した破壊神にやりたい放題やりやがって……オレの龍鱗は剥ぐどころか傷付けることもできねえ逸品だぞ!?」
剥げた箇所から混沌の泥が湧いて即座に修復していく。
回復力も全開モードのようだ。生半可な攻撃では通じそうにない。
「来いよぉ! 木偶の坊ッ!」
ロンドが呼び掛けると、大気を押し退けて巨砲が迫り上がってくる。
それは破壊神の足下へ跪くように陣取った。
――百重過大滅殺砲。
百匹の大蛇を縒り合わせて造られた、破壊力を追求した百の過大能力を束ねたエネルギー波を放つ生体兵器だ。その外見は鱗に覆われた蜂の巣を横長にしたようなフォルムで、百の大蛇を素体にしているため規格外の大きさを誇る。
「なんか知らんが……やたら絶好調だなツバサよぉ?」
懐疑的な視線でロンドは睨めつけてくる。
「あれだ、主人公らしくこの土壇場でパーッと覚醒でもしたか? さっきまでと違うってのはオレでもわかるが……何が違うのかよくわからねぇ……」
LV999の枠が外れたことに勘付いている。
だが、具体的にどういうものかは分析できないらしい。
「あ、まさか……?」
ふとM4が漏らした言葉を思い出す。
その意味を考察する前に、注意を引くようにロンドが指を鳴らした。それを合図に足下の生体兵器がツバサへ照準を合わせる。
無数に開いた砲口は集合体恐怖症を思い出させた。
「そんなに強くなったなら……コイツを正面から凌いで見やがれッ!」
言うが早いか百の過大能力が火を噴いた。
個々の性能は束ねられることで焼き潰されている。雑にまとめられた破滅的エネルギー波は、押し寄せる先にあるものを消滅させる力へと昇華されていた
防いだものが何であれ抹消する。
どんなに強固な防御結界であろうと薄紙よろしく破り捨てるはずだ。
これにツバサは正面から受けて立った。
「受けては立つが凌ぎも防ぎもしない……跳躍させる!」
前方へ掲げた両手から巨大な魔法陣を展開させると、そこに次元跳躍という超級魔法を発動させる。文字通り、次元を跳ね越える転移魔法の一種だ。
――百の過大能力をまとめた砲撃。
それは魔法陣に吸い込まれ、次元の彼方へ跳んでいく。
いくつもの次元を渡り歩くように跳躍させ、ジャンプする度に通り過ぎた次元にあるエネルギーを貰えるだけ巻き取り、魔法陣を潜らせた時よりも数乗倍のパワーに高まるまで何度でも跳躍を繰り返させていく。
雪だるま式に増やす感覚に近い。
もう十分――手応えを覚えたツバサは最後の次元跳躍を行う。
「何万倍もの熨斗つけて返してやるよ!」
最後の跳躍先は決まっている。
ロンドの足下――砲撃を終えた百重過大滅殺砲。
その内部中心に次元跳躍を繰り返すことで増大したエネルギー波を転移させると、全体が瞬く間に赤熱化してドロドロと溶解する。
次にあちこちが瘤のように腫れ、個々に大爆発を引き起こす。
やがて天を衝く火柱となって破壊神を飲み込んだ。
「ギャアアアアスゥゥゥゥ……ゥウガアアアアアアアアアアアッッッ!」
直撃を受けたロンドだが、転んでもタダでは起きない。
自身を襲う途轍もない火柱の極炎を、肺がパンク寸前になるまで空気のように吸い込み、破壊神の力を上乗せして吐いてきたのだ。
怪獣が口から吹く火炎放射――その破壊神バージョンである。
「“かえんほうしゃ”なら俺もちょっとうるさいぞ?」
負けじとツバサも息を吸い込む。
大地母神の超爆乳をありえないくらい盛り上がらせてから一気に吐き出せば、口から飛び出すのは破壊神に負けず劣らずな極太の熱線。
――怪獣王の滅光。
昔から使っている、怪獣の王からインスパイアした必殺技だ。
LV999の枠から解放された今、ツバサの想うままに技能や高等技能を組み込んで盛り盛りに強化したので、その攻撃力は以前と比較にならない。
ロンドの火炎放射と激突して業炎を爆ぜ散らかす。
ともに天井知らずの燃焼力を持つ炎。
ぶつかれば大焦熱地獄を作り出し、球状の輻射熱を放っていた。
太陽のような輻射熱を突っ切ってロンドが肉薄する。
「飛び道具ばっか飽きるだろ!? 素手喧嘩ならもっと……ッッッ!」
どつき合おうぜぇ! と殴りかかってきた。
混沌の泥をまとわせて重量を増し、龍鱗を硬く重く刺々しく逆立て、闘気をジェットブースターに見立てた、ミサイルみたいなメガトンパンチだ。
構えていないツバサはまともに受けた。
元男で今女神だろうが手心は加えない――腹部を狙った一撃。
しかしロンドは怪訝な顔をした。
「……手応えがねえッ!? 確かに殴ってんのに……なんだこれッ!?」
一見すれば殴られたように見える。
ロンドも殴ったつもりだが、その拳に感触や実感はないはずだ。殴られたフリをして、その運動エネルギーをすべて受け流しているのだから。
「ま、また合気のなんちゃらかよ!?」
「これが俺の流儀だからな。まともに戦るなら存分に使わせてもらうさ」
しかも単に受け流しただけではない。
大陸をも崩すパンチの運動エネルギーを損なうことなく我が物として取り込み、体幹の動きを通じて流していくと、自分の力を加算させてお返しする。
端的にいえば、相手の攻撃を吸収しての倍返しだ。
拳打でも脚打でも頭突きでも、すべて綺麗に受け流す。
攻められた分だけロンドにお返ししてやった。
受け流した力で加速させたパンチやキックで反撃に転じるのだ。
攻撃すれば倍返し、倍返しに立ち向かえば更に倍。その応酬で自分のダメージ量の方が大きいと覚ったロンドは困惑する。
「こ、このッ……殴り合いはウェイトの差がすべてだろうがぁッ!?」
吠えるロンドは懲りずに肉弾戦を仕掛けてきた。
LV999だけあって多彩な格闘術を収めたようだが、やってることは無手勝流のケンカ殺法だ。ルール無用で殺しに掛かってくる。
だが、格闘の基本は踏まえていた。
五指を硬く握り締めて握力を高め、ありったけの筋力を速度に費やし、そこに自らの体重や腰の回転力を加え、打ち出すことで破壊力にする。
身体のどこを使おうとも殴る原理は変わらない。
それを星を砕くレベルでやるのだから、紛れもない破壊神である。
惑星を滅ぼすほどの攻撃をどれだけ打ち込まれようとも、我が身を損なうことなく受け流して、天を薙ぐほどの反撃に変えてお返ししていく。
だというのにロンドはビクともしない。
ダメージは通っているはずだが怯むことなく嬉々としていた。
「キヒッ、キヒヒ、カハハハハッ……楽しいなぁ!」
破壊力の規模こそ世界を終焉へと導く神々の黄昏レベルだが、やってることは立ち技での殴る蹴るどつくと立ち技のオンパレードだ。少年誌で連載する人気のバトル漫画のクライマックスみたいなことをひたすら繰り返していた。
これが楽しいのだ――これに憧れるのだ。
漢ならば義務教育のように味わっておくべき体験である。
「オジさん、ドラゴンボ○ル思い出して脳内でOP無限再生してるぜ!」
「ツバサの世代だとワンピ○スだな。ギリギリだけど」
ジェネレーションギャップかぁ!? とロンドは叫びながら疑問符を浮かべるも、ドッカンと爆発しそうなバトルを白熱させていく。
手足とともに龍の尾まで打ち振るってきた。
一振りで大地の起伏をならすほどの攻撃力を秘めた尾だ。
攻撃の手数を増やすことでツバサを追い込むつもりかも知れないが、慌てることなく淡々と処理する。別の魂胆もありそうなので注意していく。
案の定、手と足と尾へ隠すように顔面が迫ってきた。
龍の魔神みたいな顔で迫るロンドは、おもっきり顎を開いた。
「――百重過大滅殺砲ッッッ!」
「ロンドも吐くのかよ!?」
別におかしくはない。破壊神の必殺技なのだから当たり前だ。
ツッコミを入れるツバサだが、まだチャージ段階なので発射までに0.0000数秒あると気付いた瞬間、躊躇せずロンドの口に拳を突っ込んだ。
その手に宿す超級魔法は恒星爆発。
ただの爆発ではない。恒星の燃え滾るエネルギーを爆縮により極限まで高めて、ロンドを吹き飛ばすように方向も整えておく。
そして、ロンドの吐く砲撃で誘爆させる。
「ドッカアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッッッ!?」
ロンドは爆発音のオノマトペみたいな悲鳴を上げた。
もう何度目になるかわからない、時空をも震撼させる大爆発だ。
巻き込まれて少し手に火傷を負ったツバサだが、風に乗って遠ざかることで間合いを取り、殴り合いで乱れた息を整えることにした。
「普通なら上半身ごと吹っ飛んでなきゃおかしいよな……」
回復魔法で火傷を癒やすツバサは様子を見守る。
天空の女神、魔法の女神、殺戮の女神。
変身モードの能力を120%再現できる分身を召喚し、ツバサ自身は変身せずともそれぞれの長所を引き上げた戦闘方法を使えるようになってきた。
おかげで戦術の幅が増え、破壊神さえも手玉に取っている。
だが、それでもなお両者の実力は拮抗していた。
「ふんがああああああああぁぁぁーーーッ! 足んねえぞおいぃぃぃッ!」
ロンドの怒号が爆発の炎を吹き消す。
「眷族よ敗残者どもよ混沌の泥よ! オレにもっと力を寄越せぇぇいッ!」
全身から混沌の泥を湧かせたロンドは、それを素材にして損傷した部分を修復していくと、見る間に元通りの姿を取り戻した。
そう――あの尋常ならざる再生能力が厄介なのだ。
滾々と湧いてくる混沌の泥。
その正体は世界中に沈殿していた悪意から生じる汚濁した“気”。これが破壊神に無限大のエネルギーをもたらす源として働いていた。
負傷してもすぐ再生、殺しても即復活、体力魔力スタミナは減らない。
ツバサが最高水準の“質”ならば、ロンドは無尽蔵の“量”だ。
これが互いの短所を埋め合わせており、これほど長時間の死闘を続けても終わりが見えない、互角の激戦を繰り広げさせていた。
龍蛇の魔神皇は混沌の泥へ叱咤するように檄を飛ばす。
「パワーもエネルギーも全然供給が追いついてねぇじゃねえかぁッ! あんなメスガキ女神野郎に力負けさせるなんざありえねぇだろうがぁッ!?」
――すべてに置いて破壊神が上だ!
ロンドは自負を知らしめるように胸板を叩いた。
「神族としての出力も、肉体的な強度も生命力も……生物としてのポテンシャルならば破壊神に並ぶ奴などいない! なのに、どうして……ッッッ!」
女神一匹始末できねえ!? とロンドは絶叫した。
「……………………」
ツバサは相槌を打たず茶化しもせず、ロンドを睨みつけたまま無言に徹した。その脳内ではある考察を進めている。
恐らく――これがM4の言及していた弱体化なのだ。
ロンドはまだLV999の枷を嵌めている。
混沌の泥という無限に等しいエネルギーのバックアップこそ受けているが、それを操る当人はまだレベルやステータスといった呪縛に囚われており、それが破壊神の力を封じるが如く能力の行使に限界を強いているのだ。
LV999の呪縛が能力を頭打ちにする。
すべてのプレイヤーは元より、GMや灰色の御子でさえ例外ではない。
この地で生まれ育った彼らでさえもだ。
これは推測なのだが――。
№00のグランドGMを始めとするM4のチームがステータス管理やレベル制の裏に隠されたシステムを、自分たち最上位GMたちだけが知る特権として極秘裏にした理由はこの辺りにあるのだろう。
破壊神ロンド、猛将キョウコウ、野望を抱く灰色の御子たち……。
暴走する要素を秘めた彼らのような危険分子が事を起こした際、その力を最低限でもいいから抑制するための役目もあったと思われる。
謂わば――最後の制御装置だ。
それでも唯我独尊な彼らのこと、最期まで我を通すに違いない。
№00はそうした未来を見越していたのだろう。
いずれ真なる世界を脅かす彼らの野望を見逃すことで、他のプレイヤーに対する障害に見立てたのかも知れない。双方に成長を促すべく競い合わせ、種として更なるレベルアップに励むよう仕向けた可能性だって無きにしも非ずだ。
……考えすぎか? ツバサは考察を打ち切った。
推測や仮説を立てて理論的に考えることを忘れてはいけないが、度が過ぎればトンデモ理論を信じて疑わない妄想狂となりかねない。
信じられるのは実証された事実を積み重ねた現実。
突拍子もない仮説ばかり組み立てても真実の前には儚く脆い。
破壊神はまだLV999――真なる能力の解放には至っていない。
その事実だけを踏まえておけば良い。
「とはいうものの……あの泥が本当に曲者なんだけどな」
あれのおかげで、どれだけ致命傷を与えても何事もなかったかのように復活されるのだから堪らない。ラスボスが完全回復魔法を連発するようなものだ。
英雄神がトドメの一撃を刺すのは決定事項。
その一撃を防ぐことも避けることもできないほど弱らせておきたい。
それが守護神の仕事だと心得ているのだが、破壊神の粋が良すぎて困っているところだ。ツバサはLVから解放されて更なる能力に覚醒しているというのに、LV999のまま対等に渡り合えるロンドが異常なのだ。
ほんの一時でいい――抵抗できないほど弱らせたい。
そのためにはロンド本人を完膚なきまでにぶちのめした上で、破壊神を取り巻く混沌の泥とそこから生まれる怪物どもをなんとかしなければならない。
神々の乳母、殺戮の女神、魔法の女神、天空の女神。
四女神で総攻撃を叩き込めば、確実に大ダメージを与えられる。
その目算は立っているのだが、肝心の女神が三柱も混沌の泥や怪物の排除に大わらわで忙しい。ぶっちゃければ手が足りないのだ。
分身を追加したいところだが、今のツバサでは負担にしかならない。
三体の女神を分身とするのが上限ギリギリだった。
レベルやステータスの枠を超えた強さを得たといって無敵になったわけではないのだ。ロンドとの激戦で疲弊した体力や魔力は取り戻せていないのだから……。
どうしたものか? とツバサは逡巡する。
『ツバサ母様! 援軍です! お友達がそっちに向かってます!』
駄目元で遊撃手たちに援軍要請をしようと通信網を開いたところ、情報ネットワークの向こうから、いきなり可愛い娘の声が鳴り響いてきた。
還らずの都を奉る巫女――ククリ・オウセン。
彼女の母親の魂をツバサがそっくり受け継いだため、成り行きで『母様』と慕われている次第だ。しかし、不思議と悪い気はしない。
(※ククリの母をモデルにした変身モードが魔法の女神)
この戦争では、還らずの都でアキとともに情報網構築に一役買っていた。
おとなしい彼女の大声にツバサは面食らう。
「ク、ククリちゃん? どうしたの急に……援軍のお友達って何?」
『そのまんまの意味だよ! ツバサさんの友達が援軍でそっち行ってる!』
すると回線にミロが割り込んできた。
一番最後の連絡のやり取りだと、カンナのバイクでこちらまで送ってもらう手筈だったためか、ミロの声には風の流れる音が混じっていた。
ミロは早口で捲し立ててくる。
『簡単に言うと、還らずの都にずっと承認されてなかった英霊さんがいたらしくて、その人たちが実はツバサさんの友達で、なんでかわかんないけど今になって英霊になったみたいで、スゴい勢いでそっちに飛んでってるの!』
内容が端折られているので噛み砕けない。
そもそも還らずの都は英霊登録を一時停止していたはずでは? という前置きがあったため、余計にツバサを困惑させてくれた。
おまけに脳内には無駄なイメージが溢れかえる。
何かを見付けた娘たちが母親へ「おかあさん! あのねあのね!」と一生懸命に報告しているシーンが思い浮かんでしまったのだ。
戦闘中に母性本能を疼かせている場合か! とツバサは頭を振る。
「なるほど……なんだかわからんがとにかくわかった!」
二人の娘の訴えは焦りこそあるものの、恐怖や絶望とは程遠い。
むしろ希望を感じているように聞こえた。
いまひとつ状況は飲み込めないが、なんとなくは理解できるので、漢たるもの目の前で起きることをありのままに受け止めるべきだろう。
取り敢えず、英霊の援軍が来ることはわかった。
やたら「ツバサの友達」と主張されるのが腑に落ちないが……?
短い思考タイムはそろそろ終わりを告げる。
女神たちが頑張っているおかげで、混沌の泥も量が減っているのかロンドも回復に手間取ったらしい。ほんの数秒だがこちらも小休止できた。
ラウンド制ならば、これで何ラウンド目か?
そろそろファイナルラウンドに突入した今日この頃だ。
情報網で遊撃手たちに応援を頼みつつ、ミロたちの連絡も正体不明なところはあるものの期待を寄せることにした。
「さぁツバサよぉい! もっとハジケようぜ! ハジケ祭開催だぁッ!」
完全復活した龍蛇の魔神皇は気炎ではなく業炎を吐いた。
「……うるせえな、一人で勝手に爆ぜてろよ。ドンパッチってな」
うんざりした気持ちをツバサは露骨に顔へ出してやった。
その時――小気味良い音が鳴り響いた。
コォーン! と金属音に近いのだが、それにしては微妙に柔らかくて弾力性に富んだ音だった。何個もある象牙の球がぶつかり合うような音だ。
「……なんだぁ? ビリヤードみたいな音させやがって」
さすが遊び人、盛り場で遊んだ記憶から呼び起こしたらしい。
確かに――これはビリヤードのショット音だ。
撞球とも呼ばれている。ビリヤードテーブルという台の上でキューというステッキを用いて、いくつものボールを突いて、テーブルの各所にある穴(ポケット)へと順番に落としていくスポーツ遊技である。
こんなところでビリヤード? とツバサもロンドも訝しげだ。
ふと辺りを見渡せば音の原因が飛び散っていた。
硬い音が鳴り響くまで凝結させた“気”。
ビリヤードボール大の硬球は満天を埋め尽くす星の数ほどあり、先ほどのショット音で弾かれたのか、空へばら撒くように散り散りとなっていた。
亜音速で飛び交う“気”の硬球。
まるで凄腕の撞球達人が打ったテクニカルショットの如しだ。
目にも止まらない速度で突き進みながらも、ボール同士が連携を取るかのように互いを弾いて、狙った穴へ落ちるように目標へ飛んでいく。
目標は――巨獣と巨大獣の軍勢だ。
無数の“気”の硬球は、ひとつ残らず破壊神の眷族に命中した。
直後に大爆発の連鎖を引き起こし、それが収まる頃には100mを越える巨獣の図体も、全長1㎞に及ぶ巨大獣の残骸すら見当たらなかった。
一撃の爆破で確実に消し飛ばしているのだ。
「なんだなんだなんだッ!? 本気で何が起きてやがるッッッ!?」
巨獣の軍勢を一掃されたロンドの慌てようはない。
唐突の事態にツバサも呆けていると、背後に忍び寄る気配があった。
『いつぞや働いた無礼、その迷惑料には足らないが……』
少しはお役に立てたかな? と懐かしい声は言った。
振り返るとそこには――高潔な品格を漂わせる紳士が佇んでいた。
この紳士の姿は透けており、淡い“気”をまとっている。
彼は還らずの都より召喚された英霊だ。
真なる世界の未来とそこに生きる者を案じて殉じた勇者のみが、死後に一度だけ全盛期の能力で復活し、世界を護るために戦うことができる。
何より――その容姿にツバサは記憶を揺さぶられた。
背が高くがっしりした体型なのに、不思議とスマートに感じられる風体。燕尾服の要素をアレンジしたスーツを崩すことなく整然と着込み、やや長めの髪も綺麗に整えて、鍔が広めのフェルトハットを目深に被る。
手にする得物は棍なのだが、その形状は棒術で使うには特殊だった。
明らかにビリヤードのキューを意識した造形なのだ。
「お、おまえは……ハスラー・キュー……ッ!」
忘れもしない友人の名を叫んだツバサだが、その声は嗚咽に震えていた。
VR格闘ゲームの最高峰――アシュラ・ストリート。
ツバサたちはアシュラ八部衆と恐れられたが、後輩のエンオウや拳銃師バリーのように、八部衆に次ぐ強さを誇った第二の上位グループもいた。
こちらはアシュラ・ベスト16と呼ばれていた。
ハスラー・キューはその一人だ。
彼もVRMMORPGを楽しんでおり、ツバサたち同様に異世界転移へ巻き込まれたのだが、蕃神の手に落ちて怪物に変えられてしまった。
(※『第3章 彼方に消えしは幽冥街』参照)
堕ちた友人を見るに堪えず、苦渋の決断でツバサが処した。
あれがツバサにとって――初めて人を殺した経験である。
「そんな、おまえが……なんで、どうして……」
柄にもなく動揺するツバサの瞳からはハラハラと涙がこぼれ落ち、喉の奥からは封じていた後悔の念が、謝罪の弁となってこみ上げようとする。
ハスラーは優しく微笑むと細い顎をしゃくった。
『私だけじゃない。彼らも来ているぞ』
示された先に目を向けた途端、腹に響く重低音が轟いた。
ズドン! という大型戦艦から放たれた巨砲の砲撃音にしか聞こえないそれは、実際には大蛇の首を跳ね飛ばした途方もない斬撃の音だった。
しかも一度や二度ではない。
数多いる大蛇を雑草でも毟り取るかのように斬り捨てていく。
大蛇を断つのは“気”の燐光を帯びる刃。
その刃は巨大な蛇を両断するほどだから大きく見えるのだが、よく観察すると何百本もの刀剣を瞬時に操る斬撃の集合体だった。
それが“気”を帯びる巨大な刃に見えるよう錯覚を起こすのだ。
まるで巨大な百足が宙を薙ぐかのようだった。
斬られた大蛇は混沌の泥を湧かせて再生することもできず、毒でも浴びたかのようにグズグズと腐れていき、やがて腐臭漂う土塊となる。
「大蛇どもまでッ……どうなってやがる! どうして復活しねぇんだ!?」
『物を知らねぇオッサンに教えてやろう』
大蛇の首を刎ねていた影、“気”をまとう英霊が口を開いた。
素浪人――なんて言葉が似合う格好の男だ。
短軀ではないが大柄でもない。中背でこそあるものの鍛え抜かれた鋼のような肉体には、真っ白な着物を身にまとっている。その白い生地には乱雑に赤が彩られているのだが、どう見ても返り血にしか見えなかった。
――肩に掛けるは唐紅の長羽織。
その背には黒く“卍”が染め抜かれており、幾重にも百足が絡んでいた。長羽織の内側には数え切れないほどの刀剣が仕込まれている。
『百足ってのは――龍や蛇の天敵なんだぜ』
乱れた髪で適当に髷を結った男は、藪睨みな顔で笑っていた。
(※主に大陸からの伝承。百足は年を経ると巨大化して飛行能力を得、龍や蛇を脅かす存在になる。これが日本にも伝わったのか、大百足に悩まされる龍神が人間の英雄に助太刀を求める伝説がある。有名なところは俵藤太の百足退治)
その顔をツバサはよく覚えている。
「卍郎……おまえまで……ッ!」
感極まったツバサは息が詰まり、あふれる涙が止まらなかった。
アシュラ・ベスト16の一人――百足の卍郎。
ハスラーと同じく、彼もまたアトラクアと名付けられた蜘蛛の蕃神の手に掛かり、奴らの毒を浴びて蕃神の眷族に堕ちてしまったのだ。
(※『第3章 彼方に消えしは幽冥街』参照)
ツバサが手に掛けた者の一人である。
ロンドに大見得を切った卍郎が、スーッとこちらに流れてくる。
罪悪感で胸が張り裂けそうなツバサの前を通り過ぎていく際、こちらの気持ちを慮りながらも照れ臭そうにポツリと言う。
『あのよ、この間は……悪かったな、その、服、ボロボロにしちまって』
蕃神の手先となってしまった卍郎。
彼との戦いでツバサは、嫌がらせのように衣服をボロボロにされていた。それはもう陵辱された乙女のように酷い有様にされたものだ。
蕃神の毒で暴走していた――言い訳は立つ。
だが気の良い卍郎は、死後も気に病んでいたらしい。
『詫びにもならんが助太刀させてもらうぜ!』
照れ臭さを振り払うように元気な声を上げた卍郎は再び大蛇討伐へ向かい、ハスラーも会釈をすると巨獣の駆除へ戻っていった。
のみならず、破壊神にも立ち向かう。
「死に損ないの亡魂どもがッ! このオレに楯突こうってのかッ!?」
卍郎は大蛇の首を狩る斬撃を放ちながら斬り掛かり、ハスラーは巨獣や巨大獣を“気”のビリヤードボールで撃破しつつ棍で突き込んでいく。
守護神から破壊神を遠ざけるべく立ち回っていた。
ここに来て――ミロやククリの言葉にツバサは思い至る。
『英霊の援軍が来る。それはツバサさんのお友達だ』
一言一句、間違いない。
彼らは英霊となった援軍であり、戦友とも呼ぶべきツバサの友だ。
『ようやく借りが返せるな――ウィング』
ウイングは、アシュラ・ストリート時代のツバサのハンドルネームだ。
その名を呼ぶ三人目の英霊が降りてくる。
ハスラーと卍郎が助けに来てくれたのだから、共に駆けつけてくれるに決まっていると、ツバサは心の片隅で信じていた。
かつて一世を風靡した、ターミネーターという映画の登場人物。
インパクトあるキャラクターに彼はそっくりだった。
そのキャラを演じた肉体派俳優に似た、日本人離れした巨体と筋骨隆々の肉体美を誇る軍人風の男だ。靴底の厚い軍用ブーツにアーミー仕様のパンツ、鍛えた肉体を披露するべく上半身は黒のタンクトップのみだ。
その上には薄手のアーミベストを羽織る。
太い首の上には金属製の弁当箱みたいに四角くて頑丈な顔が乗っており、短く刈り込んだ頭髪と色の濃いサングラスが印象的だった。
『また、会えたなウィング。いや……ツバサ・ハトホルよ』
「ジ、ジャガナート……ッ!」
アシュラ・ベスト16の一人――ジャガナート。
彼はハスラーや卍郎とともに蕃神アトラクアに魔改造され、三位一体のアシュラ・トリムルティという怪人にされてしまったのだ。
(※『第3章 彼方に消えしは幽冥街』参照)
三人の中で唯一、ジャガナートだけは人間の意識を残していた。
だからこそ蕃神に意識を蝕まれる恐怖に苛まれた。
人間でいられるうちに――殺してくれ。
アシュラ・ストリートを愛した者として、できるならば戦いの中で死んでいきたいと懇願するジャガナートの望みを、ツバサは叶えてやることにした。
三人まとめて太陽の紅炎で焼き尽くしたのだ。
彼らのためとはいえ、命を奪った事実は覆らない。
あの時は「仕方なかった」という諦念で感情を押し殺したけれど、ツバサの胸の奥には、いつまでも殺人の罪悪感から生じる棘が刺さっていた。
泣き腫らした顔でジャガナートを見つめる。
「ジャガナート、ハスラー、卍郎……す、すま……」
意識せずともツバサの喉から謝罪の一言が漏れようとする。
それをジャガナートは大きな掌で制した。
『謝ることはない。おまえは俺たちの願いを叶えてくれた』
それで十分だ――あいつらも心得ている。
ジャガナートは無愛想な顔にぎこちない微笑みを浮かべた。
彼らの誠意を無下にすれば漢が廃ると思い、ツバサは吐露しかけた言葉を飲み干すと、涙を拭って平静を取り繕おうとする。
「でも、どうして……おまえたちが還らずの都へ……?」
思わず口を突いて出たのは疑問だった。
かつて猛将キョウコウとの諍いに端を発する、超巨大蕃神“祭司長”の侵攻を食い止める戦いで、還らずの都から英霊の軍団を召喚する事態に見舞われた。
その英霊の中にジャガナートたちはいなかった。
後日ククリが還らずの都を正式に継承し、都の全機能を管理できる巫女の権限を得てからのこと。登録されていた英霊の記録をチェックさせてもらったが、やはりジャガナートたちの名前は見当たらなかった。
彼らの性格ならば、死後も世のため人のために戦うはず。
密かに期待したツバサだが、懸念した不安材料が足を引っ張った。
先述の通り、彼らは蜘蛛の蕃神の毒を受けている。
その毒は彼らをアトラクアの眷族である異形の蜘蛛へと変身させつつ、その身も心も魂までも服従するように侵していた。
ツバサが太陽の紅炎で焼き清めても不完全だったらしい。
そのため“蕃神の眷族”と認定され、還らずの都は別次元の異物と判定を下し、ジャガナートたちを英霊として登録しなかったのだ。
ミロの直感&直観、そしてツバサの洞察力でそこまでは判明した。
しかし、ジャガナートたちは英霊として此処にいる。
LV999に匹敵する“気”を備え、大いなる英霊として降臨した。
『ウィングと骨の先生……クロウさんのおかげだ』
ジャガナートは答え合わせのように言った。
親友と再会できた法外な喜びと、彼らを手に掛けた苦悩の記憶。それらが堰を切ったように雪崩れ込んだ心では、ジャガナートたちがこの場に現れた理由を読み解くことができずに動揺するばかりだった。
一度は拭ったはずの涙が後から後から溢れてくる。
「俺と……クロウさんが……おまえたちに、何をしてやれたんだ……?」
涙に塗れたツバサは満足に受け答えできない。
ジャガナートは小さく頷き、わかりやすく教えてくれた。
『ウィングが太陽の炎で焼いてくれたおかげで、俺たちの血肉を蝕んだ蕃神の毒は浄化された……だが、魂をも歪ませた毒までは無理だったんだ……』
彼らも英霊として還らずの都に登録されることを望んだ。
しかし予想通り、蕃神によって魂をも変形させられてしまったため、還らずの都に認められなかったらしい。
それでも一応、仮登録という形で都には留まれたそうだ。
『いつか……蕃神の毒が脱けるかも知れない』
真なる世界は自浄作用が強い。長い時を経れば蕃神の影響もなくなる可能性がありそうだったので、ジャガナートたちはこれに懸けたという。
『そこへ現れたのが骨の先生……クロウさんだ』
タイザン府君国代表――クロウ・タイザンフクン。
帰らずの都の麓に建国した彼は、穢れを浄化する過大能力を持っている。
過大能力──【不浄は輪廻転生を経て浄化されよ】。
超巨大蕃神“祭司長”の残した瘴気を清めるため、幾度となくこの過大能力を使ってきた。瘴気の掃除が済んだ後も、余力があれば清浄な“気”を国の周辺に振り撒くため過大能力を使っていた。
『そして今……混沌の泥を祓い清めるため過大能力を使っている』
「……それが、おまえたちの毒も洗い流したのか!?」
ようやく合点がいった。
破壊神が操る混沌の泥は、今や真なる世界中に蔓延っている。
還らずの都とその麓にある2つの国家(タイザン府君国とルーグ・ルー輝神国)を守るため、クロウが過大能力をフル回転させているのは知っていた。
これまでも浄化の力で蕃神の毒が緩和してきたのだろう。
それがこの戦争を契機に一気に加速し、蕃神アトラクアの毒が完全に脱けたので仮登録が解かれて英霊として認定されたらしい。
浄化された大量の“気”を手土産に持たされて――。
『こんな好機に恵まれるとはな……』
歓喜に打ち震えるジャガナートは両腕の筋肉を盛り上げた。
目に見えるほど膨張させたのは腕の筋肉ばかりではない。全身の筋繊維が嬉しい悲鳴を上げるくらい、最大限を越えて力を溜めていた。
総身から熱い闘気を立ち上らせる。
『死後も幾許かの意識を保ちながら思ったのは……俺たちを蕃神から解放してくれたウィング……おまえへの感謝だった……』
迷惑を掛けた……ジャガナートは謝罪を告げながら目を伏せた。
一転、顔を上げると朗らかな表情を見せてくれる。
『これでやっと――恩を返せる』
言うが早いか、ジャガナートは急転直下で落ちていく。
重力に任せるだけではなく、自らの飛行系技能をフルパワーで推進力とし、ありったけの筋力と“気”を加速に費やして落下していった。
LV999の神族によるフルパワーのタックル。
それは核弾頭をも上回る破壊力を発揮する絶大な爆撃となった。
爆心地に白く染まるドーム状の火球が生じる。
そこから放射状に波動が発せられた。何もかも掃き清める純白の“気”を帯びた衝撃波は、混沌の泥を打ち消しながらどこまでも広がっていく。
吹き飛ばされた泥の下から、海面や砕かれた大地の破片が現れる。
そして、混沌の泥の再出現が遅れていた。
どうやら白い“気”には何らかの抑制効果があるらしい。
「オ、破壊神の眷族が……何しやがる筋肉野郎ッ!?」
ロンドがいくら喚こうとも、混沌の泥はこれまでのような勢いで湧いてこない。雨上がりの地面みたいにジクジクと湿らせるのが精々だった。
巨獣も巨大獣も大蛇も――1匹残らず駆逐された。
それら生み出す元凶だった混沌の泥も消え失せている。
少なくともツバサの視野が届く範囲には確認できず、新たに湧くことも許されないような様子だった。
これは――破壊神の力を五割は削げたと見ていいだろう。
ジャガナートは海面を蹴って急上昇。
ハスラーと卍郎もロンドにキツい一撃をお見舞いしてから離脱すると、光り輝く軌跡を引いてこちらへと戻ってくる。そこに飛び上がってきたジャガナートも合流すると、三人は戦闘機のように編隊を組んで空を駆け抜けていた。
ツバサの背後へと回り、両脇を通り過ぎていく。
『『『いつかまた――会おう』』』
再会を約束する言葉を遺して、ジャガナートたちは旅立った。
最期の置き土産とばかりに、英霊の肉体を構成する大量の“気”を燃え上がらせて、龍蛇の魔神皇と化したロンドへ特攻を仕掛ける。
「なめやがってぇ……いつまでも端役が出しゃばってんじゃねえェェェッ!」
ロンドは大口を開いて業火を吐き出した。
百の過大能力をまとめた砲撃だ。空を貫く大河のようなそれをジャガナートたちは躱さずに受け止め、逆に破壊神の力を取り込もうとする。
自滅する前提だからこそ押し通せる無茶な戦法だった。
『端役か……言ってくれるじゃありませんか!』
『だがなぁオッサンよ……端役にも端役の意地ってもんがある!』
ハスラーと卍郎の英霊が炸裂する。
『端役でも三枚目でも、ここ一番の出番は回ってくるものです!』
『主役のために悪役へせめて一太刀! これが俺たちの晴れ舞台よ!』
鋭く突かれた棍がロンドの右肩を貫いて右腕を落とし、何本もの刀剣が防御態勢を取ろうとした破壊神の左腕をズタズタに斬り裂く。
『何より、苦労を掛けた友への恩返しだ』
最後にジャガナートがショルダータックルを決める。
『死出の道への先触れだ……黄泉路で待っているぞ破壊神ッ!』
混沌の泥を吹き飛ばした爆撃に勝る一撃、それはロンドごと空間を爆裂させた。破壊神でも五体を維持できない威力である。
こうして――三人の英霊は姿を消した。
「おぉおぉぉッ……三下風情がイキりやがってぇぇぇ……ッ!」
毒突くロンドは全身から混沌の泥を喚び出そうとする。
呼んでもなかなか現れないので、破壊神のバイパスを使って空間を飛び越えるように召喚しているらしい。しかし、それさえも遅い。
破壊神の力が著しく低下していた。
呆れるほど戦い続けているのだ。疲労で弱ってもおかしくはない。
……逆に言えばツバサもそろそろ限界が近い。
「えぇいッ! 忌々しいし邪魔臭ぇッ!」
大急ぎで五体を取り戻したロンドは、治りかけの腕を振り回す。
三人の英霊が爆発した余韻が鬱陶しかったのだろう。目の前に居座る爆炎の名残を力尽くで打ち払おうとしていた。
それが消えた瞬間――目の前にツバサが現れる。
正確には天空の女神、分身の一体だ。
ジャガナートたちが破壊神の眷族を掃除してくれたおかげで、分身たちは煩わしい仕事から解放されていた。三体とも誰に気兼ねなく動ける。
ツバサとともにロンドを集中攻撃することも――。
友が与えてくれた最大のチャンス、活かせねば罰が当たってしまう。
先陣を切ったのが天空の女神である。
留まることを知らない“気”の奔流、蒼に染まる長髪と羽衣。
どちらも縒った糸をほぐすようにばらけさせると、万を超える蒼い手に変えていく。万に及ぶ手はひとつひとつが合気を極めたツバサの手に等しい。
「刹那に一京回――絶死の投術を喰らうがいい!」
宣言通り、刹那(諸説あるが約0.013秒)で一京回投げ回す。
常識の通じない豪速で四肢を引き千切るようにぶん回し、ロンド自身の力で胴体がねじ切れるまで投げ捨てる。隙あらば心臓に位置する破壊神の核を殴り壊すために拳や蹴りを叩き込んだ。
「ぐっ……があっ! 待っ……身体の修復が……追いつか……ねえッ!?」
「息をつかせる暇だってやるかよ!」
天空の女神はボロ雑巾のようにしたロンドを高々と放り投げる。
そこで役目は終わりとばかりに消え去った。
ツバサも分身に回せる余力がなくなってきている証拠だ。
かなりの高度で戦っていたツバサたちだが、更に上空へとロンドを投げ飛ばす。この隙にロンドは重傷を負った肉体を修復しようとする。
「……そんな隙をくれてやると思うか?」
「ですよねー!? 予測可能回避不可能だよコンチクショーッ!」
上空で待ち受けていたのは魔法の女神だった。
既に超級魔法で構築された分厚い攻性障壁でロンド包囲網を展開しており、ろくに反応できないロンドを押し潰すように取り囲む。
「非可逆圧縮で砂の一粒になるまで凝り固めてやる!」
「うぉぉぉぉぉぉぉッ!? 人の心ないんか兄ちゃんはぁぁぁぁぁーッ!?」
ロンドからの非難をツバサは鼻で笑う。
「生憎だったな……俺はもう神という生き物になった」
友愛も慈愛も温情も慈愛も知っている。人情にも人一倍の理解はある。
「ただし、使う相手は選ぶ――それだけだ」
「は、破壊神に女神さまの情けは無用ってか……そりゃそうか!」
――恵んでもらうほど落ちぶれてねぇがな!
そう叫んだロンドは肉体の八割を引き千切るように切り捨てて、圧縮途中の攻性防壁から逃れることに成功する。ほとんど上半身しか残っていない。
脱出の際、崩れた障壁から漏れる圧力で吹き飛ばされる。
一方、仕事が終わったかのように魔法の女神もまた消えていく。
更に高高度の空へと打ち上げられる破壊神。
薄い空気を割り、音速の壁を易々と越える射出速度だ。
二度あることは三度ある――ロンドは近付く成層圏を嫌々見上げる。
「待ってたぜ、極悪親父」
そこでは殺戮の女神が牙を剥いた笑顔で待ち構えていた。
超爆乳ではなく超胸筋にしか見えない胸の前で、バキボキと拳を鳴らす凶猛な姿は女神と信じたくない。女ハルクとタメを張れるメフレックスだ。
ロンドは情けない笑顔で泣くしかない。
「わァ……ぁ……ァ……もうヤダ……女神の暴力三連チャンて……」
殺戮の女神は右肩を回してウォーミングアップする。
「安心しろ、殺戮の女神が締めじゃない」
「安心できるかぁ!? なに、四連チャンなの五連チャンなの!?」
質問には応えず、殺戮の女神は右手に滅日の紅炎を灯す。
それは燃え上がるのではなく小さな一点で吸い込まれるように集まり、大きさを変えることなく密度を高めていき、最終的には極点へと進化する。
新たな恒星となるほどの熱気だ。
際限なく圧縮されたそれを殺戮の女神は握り締めた。
眼前まで登ってきた破壊神、その核へ目掛けて拳で殴りつける。
――殴打するインパクトの瞬間。
極点になるまで圧し縮めた紅炎を爆縮、そのエネルギーをひとつも漏らすことなくロンドの大事な核へ捻じ込むように叩きつけてやった。
敢えて名付けるなら――恒星爆縮パンチ。
紅蓮の火柱を噴き上げて、ロンドを焼き焦がしながら突き上げる。
破壊神の核を守るように残された上半身。
その九割を炭化させて、神族や魔族であろうと再起不可能な状態まで追い込んで尚、ロンドの双眼が光を失うことはなかった。
成層圏の手前まで辿り着いたロンドは、そこで急停止した。
「カッ、カハハ……どんなにやったって無駄だっての」
女神たちの総攻撃を破壊神はあざ笑う。
ゆっくりだが着実に、混沌の泥を垂らして肉体の再形成を始める。
「おまえもわかってんだろぉツバサよぉ……破壊神を完璧に殺せるのは英雄神! それも主神の王権を持つ本物の英雄だってなぁ!」
炭化した部分が剥がれ、新しい龍蛇の魔神皇が形作られていく。
体格も大きくなっているが、それだけでは済まない。分析を使うまでもなく、すべての能力が格段のパワーアップを遂げていた。
悔しいが――破壊神の底が見えない。
「ミロ嬢ちゃんからもらったみてえな主神の王権は時間切れ! いくらおまえさんが新たな強さに覚醒しようとも破壊神のトドメにゃならねえ! そんでもって肝心のミロ嬢ちゃんもいつ来るか知れたもんじゃない!」
より獰猛になった鉤爪を尖らせてロンドは煽ってくる。
三女神の追撃――それを追ってツバサも飛んでいた。
ロンドに締めの一撃をお見舞いするべく、正面から突っ込んでいく。
その直向きな有り様をロンドはせせら笑っていた。
「ケケケケケッ! この期に及んで何だぁッ!? 三匹の女神が全力を振り絞った必殺技が無駄で終わったんだぞぉッ!? 今更…………ッ!?」
煽り文句の途中だが、ロンドは両眼を剥いて絶句する。
真正面から一切の小細工なし、まっすぐな渾身の右ストレートで繰り出そうとするツバサの拳に宿る光を目の当たりにして言葉を失っていた。
青ざめて恐怖すら覚えているようだ。
神々しくも煌びやかな――最高位を示す金色に瞬く光輝。
「……主神の王権だとぉぉぉぉーーーッッッ!?」
ロンドの人物像からして、打っ魂消るという表現が似合うはずだ。
仰天の雄叫びが轟いた直後、音光速を超える歩法で踏み込んだツバサはロンドの懐へと飛び込み、破壊神の核へ迷わず拳を打ち込んだ。
肉を潰す感触の後、骨とは異なる硬い何かを割る手応えがあった。
破壊神の核に亀裂を入れたと確信する。
ツバサの拳から極光が解き放たれ、ロンドの中心を打ち砕こうとしていた。
「馬、鹿な……? なんで、おまえがそれを……ッ!?」
身体を“く”の字に折ったロンドが呻く。
拳を押し込むツバサは教えてやる。
「確かに、俺には主神の王権を持っていない……」
だから――創った。
天照大御神が天孫に王位を授けたように、猛神マルドゥークが龍母神ティアマトを殺すことで王権を得たように、全能神ゼウスが大地母神ガイアからオリュンポス神族の王と認められたように……。
「大地母神は次の王に――主神の王権を与えられる権限を持っている」
不意にそんな発想が閃いて、実行に移したまでのことだ。
「ぶっつけ本番だから仕上げが甘いかもな」
「ぶっつけ、本番って、おま……ええええええええええええええーーーッ!?」
ツバサは一気に拳を振り抜いた。
フルスイングのアッパーみたいな要領で力任せに殴り飛ばせば、ついにロンドは成層圏の超高度へと突入する。
「えええええがあああああああああああああーーーッ!?」
絶叫を迸らせる龍蛇の魔神王、その巨躯が木っ端微塵に弾け飛ぶ。
主神の王権によって核が割れたことで、力が制御できなくなったらしい。甲殻が剥がれ落ちるようにボロボロと崩れていく。
後に残るのは、極悪親父な格好をしたロンドのみ。
その身体も全身がひび割れており、砕け散る寸前のガラスのようだ。
「い、痛ぇッ……たしか、に、主神の王権、だ……」
だが――惜しかったな。
頬に亀裂が走ろうともロンドは勝ち誇った笑みを露わにする。
「おまえは女神としては完熟だが……大地母神としてはまだまだ早熟! おまけにこんな土壇場の即興じゃあまともな主神の王権を拵えられるわけがねえ!」
挑発的な嘲りを受けてもツバサは涼しい顔だった。
「だから言っただろ――仕上げが甘いと」
即席な技でロンドを仕留められると自惚れていない。
反撃はおろか防御もできないくらいの大ダメージを与えて、本命のトドメとなる一撃に備える。そのために創った試作品に過ぎない。
どうして破壊神をこんな空高く打ち上げたのか?
気まぐれや偶然ではない。これも打ち合わせた作戦の内なのだ。
ツバサは成層圏の上限――オゾン層の手前を見上げる。
こちらの視線に気付いたロンドも仰ぎ見ると、見る見るうちに顔色がどんよりと曇っていく。鼻水をたらして開いた口も塞がらない。
大気摩擦で燃える流星のように、銀色の機体が駆け抜ける。
それがツインテールの女騎士が駆る空飛ぶバイクだと認めると、後部座席に乗り込んでいた小さな影が勇んで飛び降りた。
影は真っ白い雲を引いて一直線にロンドへ向かう。
距離が狭まるにつれて、影の正体がはっきりする。姫騎士と呼びたくなる見目麗しい美少女が、身の丈を越える大剣を振り上げている。
英雄神――ミロ・カエサルトゥス。
ここへ来るよう情報網を介して誘導しておいた。
ジャガナートたちが切り拓いた道を女騎士カンナが天翔るバイクで飛ばし、巨獣や巨大獣の手が届きにくい成層圏へと迂回してもらったのだ。
ミロの手に握られた――覇唱剣オーバーワールド。
漆黒の大剣から高貴なる王の輝きが迸った。
主神の王権に染まる闘気が、天をも斬り裂く光の大剣となる。
「この真なる世界を統べる大君が申し渡す!」
覇唱剣を振り下ろして一刀両断、過たず破壊神の核を叩っ斬った。
「破壊神の負けだ――ロンド・エンド!」
~~~~~~~~~~~~
ロンドは正中線から真っ二つに斬り分けられた。
その胸に納められていた核も、左右へ半分ずつになるよう綺麗に分断されていた。半球となった核からはビシリと亀裂の走る音がする。
ツバサが主神の王権で殴りつけた傷だ。
亀裂が縦横無尽に走った後、半球となった核はそれぞれ砕け散った。
再生する気配はない。破壊神の核が消滅したのだ。
だが、ミロは油断していない。
固有技能である直感&直観が「まだ終わってない」と囁いているのだろう。大剣を振り下ろしたまま残心の構えで警戒していた。
無論、ツバサも気を抜かずに身構える。
ゆっくりとした動きでミロの傍らへ近寄っていく。
不測の事態が起きても愛娘を守るため、ロンドの前へ立ち塞がる。ミロも心得たもので、お母さんの背中に隠れる幼女のようにススス……と退いた。
「……誰がお母さんだ」
「……この状況でも決め台詞を忘れないんだ」
さすがツバサさん、と真顔のミロに小声で指摘されてしまった。
両断されたロンド――その左右の腕が動いた。
おもむろに斬られた側の半身を引き寄せると、接着剤を塗った断面同士を合わせるように左右の身体を繋ぎ合わせる。
切断面はあっという間に癒着し、両断された刀傷すら見当たらない。
そして、不遜な微笑みを唇に添える。
「……核が壊れたくらいで……くたばると思ってくれるなよ?」
そこは死んどけよ、とツバサとミロは小声でツッコんだ。
声から生気は失せたが、諦めの悪さを滲ませる。
どこからともなく異音が響いてきた。
気流よりも粘り気のある、重々しい強風が流れるような音。濁流が土砂を巻き込んですべてを押し流す土石流にも似た轟音だった。
正体は――混沌の泥。
核を壊した成果なのか、新たに湧いてくる泥はない。
あれらは世界を覆い尽くしていた混沌の泥だ。
竜巻のように一筋の渦となって空を飛ぶ泥の集まり。泥の竜巻はひとつやふたつではなく、何十何百となって四方八方からこちらに向けて飛来する。
ロンドが最後の力を振り絞って、世界中から掻き集めているらしい。
突然の事態に何が起きるか予測できないため、ツバサはミロに下がるよう促しながら、自分もロンドから距離を取る。呼び寄せられた混沌の泥はロンドを中心にして渦を巻き、ある巨大なものを組み上げつつあった。
「心臓を破られようと……他の臓器をやりくりして動いてみせる……」
泥は形を変えて、天と地を繋ぐ柱を立てようとする。
大蛇を上回る全長を誇る世界蛇、それを再臨させようとしているらしい。
「脳を潰されたって……細胞がやるべきことを覚えてる……」
やがて完成する世界蛇。だがしかし――。
「違う……こいつは世界蛇じゃない!」
ツバサはミロの手を取り、巻き込まれないよう飛び退いた。
世界中から呼び戻される混沌の泥を継ぎ足して、世界蛇になると思われていたものは巨大化を続けた。疾うの昔に世界蛇のサイズを超えている。
あまりに巨大な存在感により時空が歪んでいた。
ただそこにいるだけで、空間や次元も軋むほどの圧迫感を放っている。
「なにこれ……世界じゃなくて宇宙サイズじゃん!」
ミロの率直な感想が正しい。
世界蛇を越える長大な体躯を持った――宇宙蛇だ。
神格化されたコブラに無数の逆鱗を生やして、数えるのも嫌になるほど蛇の顔を生やした多頭蛇。メインとなる顔の大きさは計り知れない。
大きく顎を開けば月さえも飲み干すだろう。
頭は成層圏を越え、胴は世界中を這い回り、尾はどこにあるか判然としない。
身動ぎするだけでツバサたちでも吹き飛ばされそうになる。
しかもこの宇宙蛇、三つ叉に分かれていた。
中央の首に比べると見劣りするが、それでも世界蛇を越える首が2つ。
――3つの鎌首を擡げた宇宙蛇。
『バオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオーーーーーッ!』
超音波な遠吠えを上げてからロンドの声色で喋り始める。
『ツバサよ! ミロ嬢ちゃんよ! 破壊神の核を割ったのは見事だ! もう褒めてやるくらいしか言葉が見当たらねえ! だが、まだだッ!』
まだ終わらねえッ! とロンドは往生際の悪さをアピールしてきた。
首を伸ばすだけで大気が重圧となって押し寄せる。
星をも噛み砕く宇宙蛇の眉間が迫ってきた。
『これぞオレの本性! ありったけの混沌の泥から生み出す宇宙蛇! こいつがある限り破壊神に敗北の二文字はねえ! おまえらがどれだけ強かろうともだ、この世の一切合切を殲滅できる破壊神に勝てる奴なんざいねえんだ!』
その厳然たる事実――教えてやる!
宇宙蛇と一体化したロンドは嵐のような咆哮で息巻いた。
「虚勢を張るなよ、死に損ない」
ミロを背後に庇いつつ、自分は前へと出て行くツバサは強気に言った。
喧嘩腰ではなく、冷徹に真実を突き付ける。
「どんな時でも伊達男で決めてたロンドが、そんなバケモノの姿になるのは理由があるってことだ……ここまで来れば理由はふたつに絞られる」
ひとつ、瀕死に陥った破壊神が今際の際に燃やした最後の灯火。
ふたつ、守護神と英雄神に追い込まれたので本当の切り札を使った。
「どっちみち余裕がないってバラしたも同然だ」
ぐむぅ……宇宙蛇は喉の奥で唸り声を噛み殺した。
奥歯がないのに顎の根元を噛み締めたのか口元が歪んでおり、眉間の皺は谷よりも深く眉尻の釣り上がり方は隆起する山脈のようだった。
図星を突かれたのが見え見えである。
『だったら……殺してみやがれってんだッ! この宇宙蛇をなッ!』
その時――銀河を貫く大砲が火を噴いた。
北西の空から見たこともないスペクトル光を発する破滅の奔流が走ってきたかと思えば、3つある宇宙蛇の首のひとつを頭から三つ叉に分かれる根元までを飲み込むように直撃し、灰すら残さない火力で焼き払ってしまった。
破壊、殺戮、破滅、消滅、時間、加速、風化……。
様々な滅びが織り込まれた、七色を超えて色彩を変えるエネルギー波。宇宙蛇の首のひとつを再生不可能に追い込むまで焼き潰す。
それを放ったのは列車のような巨砲だった。
銃神砲――銃神ジェイク・ルーグ・ルーの秘密兵器だ。
混沌の泥を掻い潜って生き延び、ここまで駆けつけてくれたらしい。
「……黄金龍を殺したのはリードの野郎だ」
巨砲の引き金を握ったままジェイクは祈るように項垂れていた。
「だけどさ、破壊神が唆さなきゃ……バッドデッドエンズなんてもんを立ち上げなけりゃ……黄金龍も、みんなも、誰も死ぬことはなかったんだ!」
ロンドを睨みつける銃神、その眼は憎悪に燃えていた。
恐らくは――最後の復讐心。
憎悪を燃やし尽くす勢いで放った銃撃だったことが窺える。
「せめて一矢報いたい! と思ってさ……だけど……」
銃神砲の各部が爆発して火を噴き、バラバラと分解しながら消えていく。
ジェイクもまた活動限界を超えていたのだ。
「病み上がりでこの無茶は……ちょっと重かったかなぁ……」
ジェイクの肩から力が抜け、全身を弛緩させて真っ逆さまに落ちていく。飛行系技能を使うこともできず、気を失ってしまったらしい。
「カンナさん、お願いします!」
念のため後方待機をお願いしておいて正解だった。
ミロを現場まで送ってくれたカンナに、情報網を通じてジェイクの回収をお願いする。バイク乗りの彼女は他の遊撃手より機動力にも優れていた。
了解! と返事があったので任せる。
次の瞬間――天地を一度に打ち砕く打撃音が轟いた。
どこからともなく飛行機雲を棚引かせて飛んできた者がいたかと思えば、宇宙蛇の首のひとつに飛び掛かり、その豪拳を脳天にお見舞いしたのだ。
一撃必殺ならぬ一撃全殺を成し遂げる拳。
宇宙をも泳ぎ渡る蛇であろうとお構いなしに殴殺する。
ジェイクの砲撃は右の首を潰したが、この全殺の拳は宇宙蛇の左側の首を殴りつけていた。殴ったところからボコボコと腫れ上がり、行き場のない破壊力が大蛇の肉を膨れ上がらせて、最終的に三つ叉の根元まで吹き飛ばした。
こちらも再生する様子はない。
殴殺ならぬ鏖殺の威力を持った拳――人獅子絶殺打。
身の丈5mを越える獅子の顔を持った逞しい拳神。本気を出したノラシンハ翁が変身した姿、人獅子大帝が繰り出す奥義である。
ロンドとの決戦で力を使い果たしたが、休息を経て再戦を挑みに来たのだ。
「なんでんかんでん、すぐ諦めるな……確かにオレはそう教えたな」
息子よ、と純白の鬣を靡かせて人獅子は教え諭す。
「せやけどな……引き際が悪いのはあかんで?」
素直に往生せいや、とノラシンハは言い残して崩れ落ちる。
短時間の休息では一回の変身と一回の奥義を放つのがやっとだったのか、全身から白い蒸気を噴き出して、人獅子大帝が痩せ細った老体に戻っていく。
こちらもジェイク同様、重力に引かれるまま自由落下だ。
連絡を取るまでもなくカンナが「あちらも私が!」と進んでノラシンハの回収に向かってくれた。こういう時は気が利く女性なので助かる。
伝説の邪龍を思い出させる三つ首の宇宙蛇。
しかし、左右の首は思わぬ援護射撃で潰されて跡形もない。
残るは破壊神の意志が宿る本体の首のみ。
予想外の不意打ちで大きく力を削がれた宇宙蛇は呆然としていた。
『オレが……負ける? 世界廃滅のために生まれた、このオレが……』
否ッッッ! と宇宙蛇は大きく頭を振って鎌首を左右に揺らす。それは途轍もなく巨大なのに、子供が駄々を捏ねているように見えた。
まだ遊び足りない――そう言わんばかりだ。
『オレが負ける……わけがねええええええええええええええええーーーッ!!』
宇宙蛇は大顎を上下に開き、ツバサたちへ噛みついてくる。
いや、圧倒的なサイズ差から一口に飲むつもりだ。
宇宙蛇の腹の中で何をされるか知れたものではないが、きっとろくな目には遭わないはずだ。それでもツバサとミロは臆することなく退きもしない。
むしろ自分たちから宇宙蛇の口へ突撃を敢行する。
「ミロ! 俺の背に乗れ!」
「合点承知の助!」
飲み込まれる寸前、ツバサはミロに命じた。
仔細を問うまでもなくミロは意図を理解してくれる。
そして――宇宙蛇の顎は閉じられた。
ツバサとミロを口中に閉じ込めた宇宙蛇はその眼を弓なりに曲げる。まるで愉悦を覚えた人間がほくそ笑むような表情筋の動きだ。
だが、すぐさま真円を描くみたいに大きく両眼を見開いた。
驚愕の相を浮かべた宇宙蛇、その鼻先から光り輝く巨大な剣が現れる。
「覇唱剣――オーバーロード!」
剣に闘気を這わせて大きな敵を絶つ巨大なエネルギーブレイドとする技だ。ミロは最大出力の闘気を発し、そこに主神の王権を通わせる。
破壊神には効果絶大の攻撃力を持つはずだ。
そんな凶器を口腔内で使われ、上顎から鼻先を貫かれたのだから堪らない。
「まだまだぁ! こんなもんじゃないぞ極悪親父!」
ツバサさん! とミロに呼び掛けられたツバサが動き出す。
応! と返事をしたツバサはミロを背中に乗せて飛んだ。外へ出ようとするのではなく、宇宙蛇の腹の中へ潜り込んでいく。
宇宙蛇の鼻先を貫いた覇唱剣のエネルギーブレイド。
ツバサとミロが宇宙蛇の内側へ進もうとすれば、光り輝く大剣もそれに釣られて動き出し、大蛇の顔を割って頭を断ち、その長い胴体を斬り裂いていく。
喉を越えて、食道を渡り、胃袋を突き進む。
光速を超えるスピードで飛翔するツバサの背に跨がったミロは、エネルギーブレイドを保持したままの覇唱剣で宇宙蛇を背開きにしようとしていた。
剣を構えたままのミロは名案みたいに叫ぶ。
「――ツバサさん! もう一押し!」
「当たり前だ! フルコースで御馳走してやるぜ!」
言われるまでもなくツバサは行動に移る。
ありったけの攻撃魔法を手当たり次第にばら撒いたのだ。
轟雷が肉を焼き焦がし、怪獣王の滅光が骨を砕き、圧縮した空間が血管を巻き込んで収縮すると破裂し、金翅鳥の群れが宇宙蛇の胃壁を突き破り……。
思いつく限りの攻撃手段を散りばめる。
ツバサとミロが通り過ぎた後には塵のひとつも残らない。
宇宙蛇を消滅させながら進撃する。
『んんんぐぅぅぉおおおや゛め゛ろ゛おおおおおおおおおおおおおッ!?』
宇宙蛇は断末魔に等しい声で悶絶する。
どこまでも突き進むツバサとミロは、ついに終点へ到着した。
――宇宙蛇の腹の底。
そこは血管が密集する肉の壁になっていた。
網の目状に張り巡らされた野太い血管の中心へ、ロンドが紛れ込むように融合していた。核を失おうとも、あの姿が本体という表れらしい。
ロンドを見つけたミロはツバサの背から飛び立った。
「この真なる世界を統べる大君が大事なことなのでもう一度申し渡す!」
覇者の勇猛と王者の貫禄を帯びる高貴なる光。
主神の王権で形作られた光の大剣が、ロンドの肉体を八つに斬り断つ。
「破壊神の負けだ――ロンド・エンド!」
トドメの追い打ちとばかりに、ツバサも詰め寄っていく。
振り上げた拳に宿すのは紅炎。
そこに編み出したばかりの主神の王権を宿すと、金色に輝く翼を幾重にも羽ばたかせる日輪に変えて、王の気高さを表すように燃え上がらせる。
太陽を象徴する神聖な隼のように紅炎は嘶いた。
「落日の太陽が地の果てへ沈むように……」
八等分にされた男であろうと手加減せず、情け容赦ない一撃を投じる。
紅炎をまとう日輪を叩き落としたのだ。
「……落ちろぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーッッッ!!」
西の地平線へ太陽が隠れるように、ロンドは地上へと落ちていく。
この瞬間――破壊神の力が世界から途絶えた。
~~~~~~~~~~~~
ほとんどが海底に没した――中央大陸の北部。
辛うじて大小の小島程度の地面が残っているのだが、そのひとつにロンドは運良く墜落したようだ。痕跡があるのでよくわかる。
その小島は底の浅い鉢のように、中心部へ向かってへこんでいた。
とても薄いがクレーターになっているのだ。
その地面は太陽の熱量によって珪素爆発を起こしており、溶けた地表が冷えて固まることでガラス状になっていた。茶黒いガラスで覆われている。
間違いない、ツバサの放った太陽の影響によるものだ。
ガラスの島にツバサとミロは降り立った。
無論、ロンドへ絶対的な引導を渡したかの確認のためである。
今現在――破壊神の気配はどこにもない。
世界中まで気を張り巡らせても感知できず、情報網を通じて各地の仲間に確認してもらっても、気配どころか混沌の泥さえ見つからなかった。
完全に破壊神を倒した――と思いたい。
しかし、用心深いツバサはこの目で確かめるまで安心できなかった。
ロンドの死を見届けるまで落ち着けないのだ。
太陽の熱を浴びてガラスになったこの島に落ちたのは間違いない。
ツバサはミロを連れて島の中心に向かう。
そこはガラス化したクレーターの中心でもあるのだが、近付くにつれて白い靄がわだかまっていき、やがて人影らしくものを結ぶようになった。
「……ロンドのオッサン!」
すかさずミロが覇唱剣を正眼に構えようとする。
片手でミロを制したツバサは、無言で「必要ない」と暗に示す。
白い靄が象る人影はロンドその物だった。
しかし、破壊神の力を微塵も感じない。形だけの残滓みたいなものだ。
「ロンド……その名はもはや意味を成さないな」
ロンドを象る靄は口を開き、自分は異なるものだと主張する。
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