論理で恋を解く男が、星のように揺れる夜

月下花音

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第56話 「君の声が聞こえない」

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 午前3時の病室。

 透は目を覚ました。

 暗闇の中、誰もいない。

 静寂だけがある。

 ◆

 五路交差点発、哲学者のほろにがログ。第56話。

 透は耳を澄ます。

 何か聞こえないか。

 美月の声が聞こえないか。

 でも、何も聞こえない。

 心電図のモニターの音だけ。

 ピッ、ピッ、ピッ。

 透は小さく呟く。

「美月さんの声が……聞こえない……」

 透は記憶を辿る。

 美月の声。

「藤原さん」

「ありがとうございます」

「私、幸せです」

 美月の声が、頭の中で響く。

 でも、それは記憶だ。

 今の美月の声じゃない。

 透は涙を流す。

「美月さん……」

 透は小さく呟く。

「君の声が聞きたい……」

「今の君の声が……」

 透はベッドから起き上がる。

 窓の外を見る。

 星空が見える。

 でも、美月はいない。

 透は窓に手を当てる。

「美月さん……どこにいるんだ……」

 透は叫びたい。

 でも、声が出ない。

 喉が詰まる。

 涙だけが流れる。

「美月さん……」

 透は小さく呟く。

「君の声が聞こえない……」

「君の笑顔が見えない……」

「君の温もりが感じられない……」

 透は床に座り込む。

 心臓が痛む。

 息が苦しい。

「俺は……一人だ……」

 透は頭を抱える。

「美月さんがいない……」

「雪もいない……」

「俺は……一人だ……」

 ◆

 午前10時の病室。

 透は窓の外を見ていた。

 空が青い。

 雲が流れる。

 でも透の心は暗い。

 その時、ドアが開く。

 透は振り返る。

 看護師が入ってくる。

「藤原さん、お電話です」

 透の心臓が跳ねる。

「電話……?」

 看護師は頷く。

「はい。女性の方からです」

 透は立ち上がる。

「美月さん……!」

 透は看護師から電話を受け取る。

「もしもし……!」

 でも、返事がない。

 ただ、息遣いだけが聞こえる。

「美月さん……?」

 透は小さく呟く。

「美月さん……君なのか……?」

 息遣いが続く。

 でも、声は聞こえない。

「美月さん……何か言ってくれ……」

 透は涙を流す。

「君の声が聞きたい……」

 その時、かすかに声が聞こえた。

「ごめんなさい……」

 美月の声だ。

 透の心臓が跳ねる。

「美月さん……!」

 でも、電話が切れる。

 ツー、ツー、ツー。

 透は電話を握りしめる。

「美月さん……!」

 透は叫ぶ。

 でも、もう繋がらない。

 透は床に座り込む。

「美月さん……」

 透は涙を流す。

「君の声……聞こえた……」

「でも……すぐ消えた……」

 透は電話を見る。

「ごめんなさい……」

 美月の最後の言葉。

 透は首を振る。

「謝らないでくれ……」

 透は小さく呟く。

「君は何も悪くない……」

「悪いのは……俺だ……」

 ◆

 午後11時の病室。

 透は眠れずにいた。

 美月の声が頭の中で響く。

「ごめんなさい……」

 その声が、胸に刺さる。

 透は小さく呟く。

「美月さん……」

 その時、雪が現れる。

「お兄ちゃん」

 透は雪を見る。

「雪……」

 雪はベッドの横に座る。

「美月ちゃんの声、聞こえた?」

 透は頷く。

「聞こえた……でも、すぐ消えた……」

 雪は小さく笑う。

「美月ちゃん、お兄ちゃんに会いたいんだよ」

「でも、怖いんだよ」

 透は涙を流す。

「怖い……?」

 雪は頷く。

「お兄ちゃんを傷つけるのが、怖いんだよ」

「私のせいで、お兄ちゃんが苦しむのが、怖いんだよ」

 透は首を振る。

「美月さんは……俺を守ろうとしてるのか……」

 雪は頷く。

「そうだよ」

「でも、それは違うよね」

 透は頷く。

「違う……」

「美月さんがいないと、俺はもっと苦しい……」

 雪は小さく笑う。

「それを、美月ちゃんに伝えなきゃ」

 透は雪を見る。

「どうやって……」

 雪は消える。

 透は一人残される。

「伝える……」

 透は小さく呟く。

「美月さんに……」

 透は目を閉じる。

 美月の声が聞こえる。

「ごめんなさい……」

 透は涙を流す。

「謝らないでくれ……」

「君の声が聞こえるだけで……」

「俺は……生きられる……」

 透は小さく呟く。

 心臓が痛む。

 でも、諦めない。

 美月の声を、もう一度聞く。

 必ず。

(第56話完 次話へ続く)

 次回、透は「君を信じる理由」を探す。
 そして、透の信念が——君の想像する「希望」に、変わる——。
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