論理で恋を解く男が、星のように揺れる夜

月下花音

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第63話 「消えた星のイラスト」

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 透の部屋。深夜零時。

 机の上に、美月の絵のポスターが広げてある。

 ◆

 五路交差点発、哲学者のほろにがログ。第63話。

 俺は、美月の絵を見つめていた。

 星のイラスト。

 繊細な線で描かれた、夜空。

 その中に、一つだけ、消えかけている星がある。

「これ…」

 俺は、その星を指でなぞった。

 他の星とは、違う。

 薄く、ぼやけている。

 まるで、消えようとしているみたいに。

「美月、これは何を描いたんだ…」

 俺は、ポスターを裏返した。

 そこに、小さな文字で書いてあった。

「消えた星は、また輝く」

 美月の字だ。

「消えた星は、また輝く…」

 俺は、その言葉を繰り返した。

 美月は、何を伝えようとしているんだ?

 ◆

 午前十時の相談所。

 俺は、机に向かっていた。

 今日の置き手紙。

『諦めるべきでしょうか?

 何度も挑戦して、何度も失敗しました。

 もう、疲れました。

 諦めた方が、楽になれる気がします。』

 俺は、ペンを取る。

 諦めること。

 俺は、美月を探すのを諦めるべきか?

 何度も空振りして、疲れた。

 でも、諦められない。

 俺は、書き始める。

『諦めないでください。

 疲れても。

 失敗しても。

 諦めないでください。

 諦めた瞬間、全てが終わります。

 でも、諦めなければ、まだ可能性があります。

 俺は、諦めません。

 美月を探すことを。

 何度でも。

 それが、俺の愛だから。』

 俺は、ペンを置く。

 これは、自分への手紙だ。

 俺は、諦めない。

 美月を。

 何度でも。

 ◆

 翌朝、俺は新に電話した。

「新、美月の絵に、メッセージがあった」

「メッセージ?」

「『消えた星は、また輝く』って」

「それ、どういう意味だ?」

「分からない。でも、美月は何か伝えようとしてる」

 新が、少し考えてから言った。

「透、美月さんは、自分のことを言ってるんじゃないか?」

「自分のこと?」

「そうだ。美月さんは、今、消えかけてる。でも、また輝くって」

 俺は、息をのんだ。

「つまり、美月は…」

「戻ってくるつもりなんだ。透のところに」

 俺の胸が、熱くなった。

「美月…」

「透、待ってろ。美月さんは、必ず戻ってくる」

「うん」

 俺は、電話を切った。

 そして、ポスターをもう一度見た。

 消えかけている星。

 でも、その星は、まだ光っている。

 微かに。

 でも、確かに。

 美月も、同じだ。

 今は見えなくても、必ず戻ってくる。

 俺は、それを信じる。

 ◆

 夜、透の部屋。

 俺は、ベッドに横になっていた。

 目を閉じると、美月の顔が浮かぶ。

 笑顔。

 泣き顔。

 怒った顔。

 全部、愛おしい。

「美月、待ってるから」

 俺は、呟いた。

「何度でも、待ってるから」

 その時、また雪の幻覚が現れた。

「お兄ちゃん」

 雪が、俺の隣に座っている。

「雪…」

「美月ちゃん、頑張ってるよ」

「え?」

「美月ちゃんは、お兄ちゃんのために、強くなろうとしてる」

 雪が、微笑んだ。

「だから、待ってあげて。美月ちゃんが、自分で戻ってくるまで」

「雪…」

「お兄ちゃん、美月ちゃんを信じて」

 雪の姿が、消えた。

 俺は、天井を見つめた。

 雪が、美月を応援してくれている。

 それなら、俺も信じる。

 美月を。

 何度でも。


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