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7話 朝
「おはようございます」
控えめに着席すると、継母は横目でちらりとこちらを見てから、乾いた笑みを浮かべる。
「おはよう、ハリエル。……あら、今日はずいぶん早いのね」
父は新聞から目を上げない。
けれど手元のカップに微かな力が入っているのが分かる。
「王都では最近、不穏な出来事が続いている。お前もむやみに外出するな」と短く告げる。
「わかりましたわ」
それだけ答えると、再び静寂が戻った。
そんな空気を和ませるように、マーサがそっとキッチンから顔を出す。
「お嬢様、失礼いたします。最近、町の方で妙なお客人や獣人、それにならず者の噂がちらほら増えて、貴族や資本家なんかの上流階級の誘拐も増えているようですのでくれぐれもご用心を……」
心配そうな声に、継母はハンカチで口元をおさえて眉をひそめる。
「物騒な時代ね。金目当ての雑種たちが跋扈するなんて……」
ハリエルは、マーサの忠告に苦い顔をした。
「やはりお嬢様が心配です。警備を今まで以上に増やした方がよろしいかと」
マーサはそう言うけれど、そんな余裕なんてわが家にはまるでない。
父も黙っているし、継母はハンカチで口元を覆い、冷たい声で言う。
「それならお金を持ってきてちょうだい。家計は赤字なの、分かる?その人の給料をあなたが払ってくれるのかしら?」
マーサは言いづらそうに目を伏せた。
「ですが、お嬢様のお身になにかあったら……」
「もういいから、朝ごはん食べさせて」と継母。
テーブルでは再び静寂が落ちる。
その後食卓では会話が断片的に続き、緊張感の下で朝の時間が過ぎていった。
家族の視線はどこか自分を監視するようで、さりげなく冷ややかだった。
マーサは申し訳なさそうに目を伏せる。
ハリエルは微かな不安と苛立ちを覚えながら、答えのないまま食堂を後にした。
ハリエルはため息まじりに席を立った。廊下へ出ると心臓が妙に騒がしい。
獣人と言えば……
ハリエルは、心の片隅に浮かんだガイウスの顔を思い出した。
黒狼の獣人との先日の質屋での出会い。あの時の不思議な緊張と、心の奥でうずくような感覚。
それはハリエルの不安を煽った。
(まさか、本当に彼が何かに関わっているわけじゃないよね……でもあの獣人からは怪しい気配しか感じなかった……)
「それに……そう言えば私の事ずっと付けてたわよね。一応護衛とか言ってたし何もされなかったけど……」
ふわりと胸がざわつく。
「でも、サファイアのブローチを買い戻してくれたしね。あんまり恩人を疑うのは止めましょう」
心の奥に、言いようのない予感は凶兆なのか、それとも運命なのか。
日は否応なく、高く昇り始めていた。
控えめに着席すると、継母は横目でちらりとこちらを見てから、乾いた笑みを浮かべる。
「おはよう、ハリエル。……あら、今日はずいぶん早いのね」
父は新聞から目を上げない。
けれど手元のカップに微かな力が入っているのが分かる。
「王都では最近、不穏な出来事が続いている。お前もむやみに外出するな」と短く告げる。
「わかりましたわ」
それだけ答えると、再び静寂が戻った。
そんな空気を和ませるように、マーサがそっとキッチンから顔を出す。
「お嬢様、失礼いたします。最近、町の方で妙なお客人や獣人、それにならず者の噂がちらほら増えて、貴族や資本家なんかの上流階級の誘拐も増えているようですのでくれぐれもご用心を……」
心配そうな声に、継母はハンカチで口元をおさえて眉をひそめる。
「物騒な時代ね。金目当ての雑種たちが跋扈するなんて……」
ハリエルは、マーサの忠告に苦い顔をした。
「やはりお嬢様が心配です。警備を今まで以上に増やした方がよろしいかと」
マーサはそう言うけれど、そんな余裕なんてわが家にはまるでない。
父も黙っているし、継母はハンカチで口元を覆い、冷たい声で言う。
「それならお金を持ってきてちょうだい。家計は赤字なの、分かる?その人の給料をあなたが払ってくれるのかしら?」
マーサは言いづらそうに目を伏せた。
「ですが、お嬢様のお身になにかあったら……」
「もういいから、朝ごはん食べさせて」と継母。
テーブルでは再び静寂が落ちる。
その後食卓では会話が断片的に続き、緊張感の下で朝の時間が過ぎていった。
家族の視線はどこか自分を監視するようで、さりげなく冷ややかだった。
マーサは申し訳なさそうに目を伏せる。
ハリエルは微かな不安と苛立ちを覚えながら、答えのないまま食堂を後にした。
ハリエルはため息まじりに席を立った。廊下へ出ると心臓が妙に騒がしい。
獣人と言えば……
ハリエルは、心の片隅に浮かんだガイウスの顔を思い出した。
黒狼の獣人との先日の質屋での出会い。あの時の不思議な緊張と、心の奥でうずくような感覚。
それはハリエルの不安を煽った。
(まさか、本当に彼が何かに関わっているわけじゃないよね……でもあの獣人からは怪しい気配しか感じなかった……)
「それに……そう言えば私の事ずっと付けてたわよね。一応護衛とか言ってたし何もされなかったけど……」
ふわりと胸がざわつく。
「でも、サファイアのブローチを買い戻してくれたしね。あんまり恩人を疑うのは止めましょう」
心の奥に、言いようのない予感は凶兆なのか、それとも運命なのか。
日は否応なく、高く昇り始めていた。
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