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17話 パーティー
夕方の冷たい空気の中、豪華な馬車の扉が開く。
侍女達が慌ただしくドレスの裾を整え、ガイウスがいつものように強引な手付きで私の手を取った。
「緊張してるのか?」
「あいにく自分の望まない婚約発表の舞台を楽しめる性格じゃないのよ。そもそも、目立つのはあなたでしょ?」
「いいや、今夜の主役は君だ。」
馬車はゆっくりと屋敷を出て、王都の大通りを進む。窓の外に見える群衆すら、馬車の紋章を見てざわついている。
獣人の侯爵家の息子と人間の子爵令嬢の間の新たな結婚の噂はすでに社交界の話題になっていた。
会場へと着くと、きらびやかなシャンデリアの下、色とりどりの衣装に身を包んだ貴族たちがこちらを一斉に振り返る。
ガイウスが小さく囁く。
「目立つのは好きじゃないかもしれないけど、目を逸らす必要はない。」
目立ってるのはあなたよと思いつつ、ガイウスはそれを楽しんでいる風だ。
琥珀色のペンダントが私の胸元で揺れる。
赤絨毯を踏みしめて歩き出すと、周囲の貴族夫人たちや令嬢たちが、さっそく囁き合い始める。
「噂の令嬢よ。人間と獣人の――しかも侯爵家の子息と番になるなんて」
「婚約破棄されたって聞いたけど、よくまた結婚できたものね。獣人でもあのヴァルドリックの軍人閣下ですもの、借金まで返してもらえるんだから玉の輿よね」
「でもあの令嬢の相手って元々トルーノ伯爵の息子のドノバンでしょ?あのフィーナとか言う女と浮気してたらしいし、評判の悪いあの男と結婚せずに済んでよかったじゃない。まあ獣人だけれども」
獣人に嫁ぐことに対しての冷たい目線と羨望と好奇心の渦。その中心に、私がいる。
私はガイウスの腕に触れたまま、正面を見据える。
つくられた微笑みと冷静な視線で、周囲の好奇心を弾き返す。
やがて式の進行役から王家への挨拶を告げられる。
広間の奥に国王が並んで座る、その場所へとゆっくり歩みを進める。
ガイウスは私の手をしっかり握ったまま、堂々と国王の正面に立つ。
「今宵、私ガイウス・ヴァルドリックとハリエル・エヴァンスは正式に“番”として婚約を結びました。彼女こそが私の名誉、そして私の誇りです」
「よって陛下に彼女との婚約を宣言していただきたい」
王の沈黙がひどく重く、場の全員が静まり返る。
王はしばらく私を見つめ、それからガイウスを鋭い目で見据え直す。
「諸国の客人、そして王都の民に向けて君たちの婚約の証をここで宣言する――これで良いか?」
ガイウスは迷いなく頷く。
「はい、陛下。私たちは今夜より正式に“番”として結ばれます」
王の視線が私に向く。
「ハリエル・エヴァンス。君はこの婚約を自ら選んだのか?」
陛下は私に懐疑的な目線を向けた。
それもそうだろう。陛下は先の戦争のせいで獣人嫌いで有名だ。
私はゆっくりと胸元のペンダントに触れ、冷静な声で答える。
「はい、陛下。私の意志でございます」
その言葉のあと、会場がざわめきに包まれる。
そんなことでざわめかないで欲しい。
ここで違いますと言えるわけないだろう。
綺麗事ばかり並ぶ宴席の端で、かつての元婚約者とその浮気相手の姿が静かに見え隠れする。
彼らは気まずげに俯き、周囲の視線を避けている。
私は一瞬だけ彼らの方を見て、目を合わせることもなく、静かに顔を戻す。
王はゆっくりと席を立ち、皆に告げる。
「この新しい絆が、二国の平和と発展の証となるよう、皆で祝福しよう。…ガイウス・ハリエル、よくぞここまで歩んできた」
人々の拍手が静かに広まり、やがて大きな流れとなった。
私のドレスの深い青、胸元に揺れる琥珀色の光が、社交界の話題の中心に鮮やかに浮かび上がる。
ガイウスは小さく私の手を握り直し、満足げに微笑んだ。
「これでもう完全に君は僕のものだと皆に知れ渡っただろう。君はどう受け止める?」
私はつんとした表情で視線をそらし、かすかに笑みを浮かべる。
「……人前では控えめにしてもらえると助かるわ」
夜の宴がさらに高揚し、私たちの新たな運命が、誰もの視線の中に静かに始まりを告げていた。
侍女達が慌ただしくドレスの裾を整え、ガイウスがいつものように強引な手付きで私の手を取った。
「緊張してるのか?」
「あいにく自分の望まない婚約発表の舞台を楽しめる性格じゃないのよ。そもそも、目立つのはあなたでしょ?」
「いいや、今夜の主役は君だ。」
馬車はゆっくりと屋敷を出て、王都の大通りを進む。窓の外に見える群衆すら、馬車の紋章を見てざわついている。
獣人の侯爵家の息子と人間の子爵令嬢の間の新たな結婚の噂はすでに社交界の話題になっていた。
会場へと着くと、きらびやかなシャンデリアの下、色とりどりの衣装に身を包んだ貴族たちがこちらを一斉に振り返る。
ガイウスが小さく囁く。
「目立つのは好きじゃないかもしれないけど、目を逸らす必要はない。」
目立ってるのはあなたよと思いつつ、ガイウスはそれを楽しんでいる風だ。
琥珀色のペンダントが私の胸元で揺れる。
赤絨毯を踏みしめて歩き出すと、周囲の貴族夫人たちや令嬢たちが、さっそく囁き合い始める。
「噂の令嬢よ。人間と獣人の――しかも侯爵家の子息と番になるなんて」
「婚約破棄されたって聞いたけど、よくまた結婚できたものね。獣人でもあのヴァルドリックの軍人閣下ですもの、借金まで返してもらえるんだから玉の輿よね」
「でもあの令嬢の相手って元々トルーノ伯爵の息子のドノバンでしょ?あのフィーナとか言う女と浮気してたらしいし、評判の悪いあの男と結婚せずに済んでよかったじゃない。まあ獣人だけれども」
獣人に嫁ぐことに対しての冷たい目線と羨望と好奇心の渦。その中心に、私がいる。
私はガイウスの腕に触れたまま、正面を見据える。
つくられた微笑みと冷静な視線で、周囲の好奇心を弾き返す。
やがて式の進行役から王家への挨拶を告げられる。
広間の奥に国王が並んで座る、その場所へとゆっくり歩みを進める。
ガイウスは私の手をしっかり握ったまま、堂々と国王の正面に立つ。
「今宵、私ガイウス・ヴァルドリックとハリエル・エヴァンスは正式に“番”として婚約を結びました。彼女こそが私の名誉、そして私の誇りです」
「よって陛下に彼女との婚約を宣言していただきたい」
王の沈黙がひどく重く、場の全員が静まり返る。
王はしばらく私を見つめ、それからガイウスを鋭い目で見据え直す。
「諸国の客人、そして王都の民に向けて君たちの婚約の証をここで宣言する――これで良いか?」
ガイウスは迷いなく頷く。
「はい、陛下。私たちは今夜より正式に“番”として結ばれます」
王の視線が私に向く。
「ハリエル・エヴァンス。君はこの婚約を自ら選んだのか?」
陛下は私に懐疑的な目線を向けた。
それもそうだろう。陛下は先の戦争のせいで獣人嫌いで有名だ。
私はゆっくりと胸元のペンダントに触れ、冷静な声で答える。
「はい、陛下。私の意志でございます」
その言葉のあと、会場がざわめきに包まれる。
そんなことでざわめかないで欲しい。
ここで違いますと言えるわけないだろう。
綺麗事ばかり並ぶ宴席の端で、かつての元婚約者とその浮気相手の姿が静かに見え隠れする。
彼らは気まずげに俯き、周囲の視線を避けている。
私は一瞬だけ彼らの方を見て、目を合わせることもなく、静かに顔を戻す。
王はゆっくりと席を立ち、皆に告げる。
「この新しい絆が、二国の平和と発展の証となるよう、皆で祝福しよう。…ガイウス・ハリエル、よくぞここまで歩んできた」
人々の拍手が静かに広まり、やがて大きな流れとなった。
私のドレスの深い青、胸元に揺れる琥珀色の光が、社交界の話題の中心に鮮やかに浮かび上がる。
ガイウスは小さく私の手を握り直し、満足げに微笑んだ。
「これでもう完全に君は僕のものだと皆に知れ渡っただろう。君はどう受け止める?」
私はつんとした表情で視線をそらし、かすかに笑みを浮かべる。
「……人前では控えめにしてもらえると助かるわ」
夜の宴がさらに高揚し、私たちの新たな運命が、誰もの視線の中に静かに始まりを告げていた。
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