【完結】婚約破棄されたら執着獣人閣下に無理やり番にされたので利用し尽くしつくします~運命の番といわれ溺愛されても信じられません~

たるとタタン

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18話 発覚

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拍手と祝福のざわめきが広間を満たす中、私は一歩会場の端へ下がる。

ガイウスは私の手をしっかりと握ったまま、満足そうに群衆を見渡していた。

けれど、この祝福の輪から少し離れた場所で、陰気な視線を感じる。

振り返ると、見覚えのある顔が二つ。元婚約者ドノバンと、その隣にフィーナがいる。

フィーナの派手な衣装は場違いで、他の貴族たちの距離を感じさせる。

ドノバンが私に近づき、薄く嘲るような笑みを浮かべて口を開いた。

「へえ……賭場でもう片っ端から金を無くした子爵が、獣人にお前を売るとは。哀れだな、ハリエル」

フィーナも嫌味な声を重ねる。

「うふふ、いやあの獣人閣下に色仕掛けでもして助けをもとめたんじゃない?ご実家は借金で回らないだろうし」

「お金がないってかなしいわね。貧乏令嬢から、次はアバズレ令嬢なんて呼ばれるんじゃないの?」

私は唇をひっそりと噛み、冷たい視線を二人に向ける。

ガイウスの体温だけが隣でじわじわ熱を帯びていた。

ガイウスが一歩前に出て、低く怒気を孕んだ声で切り出す。

「それ以上のハリエルへの侮辱はやめていただこう。ドノバン殿、フィーナ嬢」

ドノバンは小馬鹿にしたように肩をすくめる。

「脅しているのか、ヴァルドリック閣下?人間相手にそんな粗暴なことしても獣人らしいと思われるだけだぞ。」

フィーナが笑いながら頬を膨らませる。

「番って言うけど、どうせあなたも浮気してたんじゃない?子爵家の金を狙ってたなんてのは誰もが知ってることよ。ねえ、ハリエル、あなたも獣人の次男坊なんかと政略結婚なんて虚しいでしょ?」

私は視線をそらし、冷たく吐き捨てる。

「あなた達こそ、周りに隠れて何をしてきたのか分かっているのか?」

ガイウスは、さりげなく懐から分厚い封筒を取り出した。

その中にはドノバンが家の金を私的に使い込み、王都の賭場で財産を溶かし、さらに帳簿を偽造していたことを記した証拠書類が収められている。

フィーナと共謀し、複数の貴族から賄賂や金品を巻き上げた金の流れも詳細に記されていた。

「先程、貴族評議会の監査官がこの証拠を確認した。お前たちは、家門の裏切り者だ。それから、もう一つ忘れてはいけないことがある」

会場の空気がピンと張り詰める。

ガイウスは声を抑えながらも、その怒りをまっすぐに向けて続ける。

「ハリエルへの誘拐未遂については王都の正規捜査官から記録が出ている。フィーナ、お前も共犯だ。該当事件の証言と現場の証拠品もすべてそろえてある」

監査官と衛兵が静かに二人の背後に迫る。

周囲の貴族たちがざわめき始め、ドノバンの顔色がみるみる青くなっていく。

フィーナは一瞬「馬鹿な!」と叫び、肩を震わせる。

ガイウスが静かに宣告した。

「君たちの罪状はすでに王家にも伝達済みだ。この場で連行されることになる。自分たちが蒔いた種だ、潔く受け止めろ」

衛兵が「証拠は確認済みです」と合図を送り、ドノバンとフィーナの両腕を強く掴んだ。

ドノバンは最後まで小声で「あれは違うんだ…」「無実だ」と何度も唸り、フィーナは周囲に助けを求める視線を投げかけるが、誰も助けようとしない。

私はその様を無言で見つめ、かすかな哀れみと、胸の奥の冷たい満足感を味わっていた。

ガイウスが静かに私の手を取る。

「これで、君を脅かす過去は終わった。俺がしたかった復讐の舞台は、これで幕引きだ」

私は軽く肩をすくめて答える。

「派手にやりすぎよ。でも……今は少しだけ、スッキリした気分かも」

ガイウスは満足げに微笑み、低い声で囁いた。

「君がこの場に立ち、君自身のままでいられるように。俺はすべてを整えてきた。これからは――誰も君を否定できない」

会場は、一度は祝福のざわめきに包まれたが、今や囁きと羨望がドノバンとフィーナを飲み込んでいった。

王は遠くから静かに一部始終を見届け、 「悪事は必ず暴かれる。 この新しい夫婦の絆が真の名誉となることを願う」と苦虫を潰したようにいった。

私は琥珀色のペンダントにそっと触れ、少しだけ強く、前を向いて歩き出す。
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