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35話 接近禁止
数日が過ぎ、ハリエルの体もようやく元の調子を取り戻しつつあった。
その間、ガイウスはマーサや侍女たちの厳重な“接近禁止令”により、部屋に入るのは許されず、廊下で所在なく何度も追い返される姿が日常と化していた。
けれど、ドアの下にはほぼ毎朝、ガイウスからの手紙や小さなブーケが届けられていた。
“無理はしていないか”“今日も君が心配だ”“本当に会いたい”――力強い筆跡で書かれた真っ直ぐな言葉に、ハリエルは、これで贖罪でもしているつもりなのかと冷めた目で花束を眺める日も多かった。
(まあこんなので許されると思わないでほしいわね)
マーサや侍女たちは昼も夜も甲斐甲斐しく世話を焼いてくれ、なんとか外に出られるようになった。
そんなある日、結婚式のために遠方から訪れていたハリエルの両親が、ようやく帰国の仕度を始めた。
落ち着いた日差しのなか、屋敷の玄関では礼装の父母とマーサ、そして緊張気味なガイウスが揃って見送りの準備をしている。
ハリエルも久々にドレスアップされ、侍女の手を借りて静々と廊下を歩く。
扉を抜けて姿を見せると、ガイウスが一瞬目を見張り――
その後、咳払い一つ、でも嬉しそうな笑みを浮かべて歩み寄ってきた。
「……数日ぶりだな。もう、体は本当に大丈夫なのか?」
「まあね。お陰様でベットから何日も動けなかったわよ」
本当に大変だった。最初の一日はベットの中を動くのですら辛かった。
「悪かった……次からは気をつける……もう何日も会えないのはこりごりだ」
本当に反省しているらしい。その瞳からは心配と恋しさが伝わってくる。
「ならもっと反省して。当分は一緒に寝ないからね」
「わかっ……た」
めちゃくちゃ悔しそうな、恨めしそうに見てくるが自業自得である。
(そんなに簡単に信じられるほど私は馬鹿じゃない)
久しぶりに玄関まで出る。
今日は両親の見送り。
結婚式のためだけに呼ばれた両親は、義務的な微笑みを浮かべる。
「何日も会えなかったが、元気になったようで安心した」
「立派な家でよかった」
「あなたなら大丈夫よ」
両親は優しげに声をかける。
(――何が安心できるよ。初夜であんなにボロボロにされて何日も会えなくさせるような男のどこに安心できると思ったのよ。あんたたちが私を金のために売ったのに、親らしいこと言わないで欲しい)
「ガイウス様に迷惑をかけないようできるかぎり尽くすのだぞ」
父親から背中を軽く叩かれた。
気持ち悪い。なんであの男にわたしが尽くさないといけないんだ。
どうせ父親はわたしが見放されれば、ガイウスが一旦肩代わりした借金を払わなければいけなくなることを心配しているだけだ。
「手紙書いてちょうだいね。オットーもあなたの結婚が分かればそのうち手紙を出すだろうから、返信してあげなさいよ」
継母は寄宿舎にいる継母の溺愛している実子の弟のことを話した。
確かに一応手紙で結婚の報告はしたが、王都から少し離れた都市の郊外なので届いているのは今頃だろう。
あの家族の中で、唯一私のことを気にして目を合わせてくれた存在。
(弟が結婚式に来られなかったこと、いちばん残念だったな……)
その間、ガイウスはマーサや侍女たちの厳重な“接近禁止令”により、部屋に入るのは許されず、廊下で所在なく何度も追い返される姿が日常と化していた。
けれど、ドアの下にはほぼ毎朝、ガイウスからの手紙や小さなブーケが届けられていた。
“無理はしていないか”“今日も君が心配だ”“本当に会いたい”――力強い筆跡で書かれた真っ直ぐな言葉に、ハリエルは、これで贖罪でもしているつもりなのかと冷めた目で花束を眺める日も多かった。
(まあこんなので許されると思わないでほしいわね)
マーサや侍女たちは昼も夜も甲斐甲斐しく世話を焼いてくれ、なんとか外に出られるようになった。
そんなある日、結婚式のために遠方から訪れていたハリエルの両親が、ようやく帰国の仕度を始めた。
落ち着いた日差しのなか、屋敷の玄関では礼装の父母とマーサ、そして緊張気味なガイウスが揃って見送りの準備をしている。
ハリエルも久々にドレスアップされ、侍女の手を借りて静々と廊下を歩く。
扉を抜けて姿を見せると、ガイウスが一瞬目を見張り――
その後、咳払い一つ、でも嬉しそうな笑みを浮かべて歩み寄ってきた。
「……数日ぶりだな。もう、体は本当に大丈夫なのか?」
「まあね。お陰様でベットから何日も動けなかったわよ」
本当に大変だった。最初の一日はベットの中を動くのですら辛かった。
「悪かった……次からは気をつける……もう何日も会えないのはこりごりだ」
本当に反省しているらしい。その瞳からは心配と恋しさが伝わってくる。
「ならもっと反省して。当分は一緒に寝ないからね」
「わかっ……た」
めちゃくちゃ悔しそうな、恨めしそうに見てくるが自業自得である。
(そんなに簡単に信じられるほど私は馬鹿じゃない)
久しぶりに玄関まで出る。
今日は両親の見送り。
結婚式のためだけに呼ばれた両親は、義務的な微笑みを浮かべる。
「何日も会えなかったが、元気になったようで安心した」
「立派な家でよかった」
「あなたなら大丈夫よ」
両親は優しげに声をかける。
(――何が安心できるよ。初夜であんなにボロボロにされて何日も会えなくさせるような男のどこに安心できると思ったのよ。あんたたちが私を金のために売ったのに、親らしいこと言わないで欲しい)
「ガイウス様に迷惑をかけないようできるかぎり尽くすのだぞ」
父親から背中を軽く叩かれた。
気持ち悪い。なんであの男にわたしが尽くさないといけないんだ。
どうせ父親はわたしが見放されれば、ガイウスが一旦肩代わりした借金を払わなければいけなくなることを心配しているだけだ。
「手紙書いてちょうだいね。オットーもあなたの結婚が分かればそのうち手紙を出すだろうから、返信してあげなさいよ」
継母は寄宿舎にいる継母の溺愛している実子の弟のことを話した。
確かに一応手紙で結婚の報告はしたが、王都から少し離れた都市の郊外なので届いているのは今頃だろう。
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