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45話 リュカス
夜会から数日後の昼下がり、屋敷に珍しい客が訪れた。
あの夜に話した商人リュカスが、ガイウスが注文したアスータの果実酒を抱えて現れたのだった。
「失礼いたします。ご注文された品をお届けにあがりました」
リュカスは整った手付きで箱をひとつずつ並べながら、穏やかに笑う。
「アスータの白ワインと、ポリシアのウィスキー、それに奥様のお好きだと伺ったライレイ酒も……」
「まあ、思ったよりいい状態ですわね」
「ええ、首都からわざわざ取り寄せさせました」
商品の確認をしているうち、いつのまにかリュカスとのやり取りが自然に弾みはじめる。
「グリュンワルドでこれだけの品をそろえるのは大変だったでしょう」
「この国の商いにはだいぶ慣れましたので。けれど、奥方のように味に良いこだわりを持つお客様は少ないですよ」
「ふふ、単に懐かしいだけですわ。お世辞がうまいですわね」
ガイウスは遠巻きにその様子を見ている。
最初は静かに見守っていたが、会話が止まらずに笑顔が続くと、じわじわ彼の影が近くなってきた。
「もう確認は済んだのか?」
唐突に割って入るガイウス。
「ええ私のは。せっかくだから貴方も確認したら?」
「後でな……もう用は済んだだろう。私が送ろうか?」
明らかに声が棘を含んでおり、苛立ちが滲んでいる。
リュカスは穏やかに微笑むだけ。
「いえ……それには及びません。何か不足があればすぐに呼んでください」
「またお願いするかも知れません。その時はよろしくお願いしますね」
名残惜しさもなく帰ろうとするリュカス。
けれどガイウスはその背を名残惜しげというより警戒しきって見送っていた。
リュカスが帰り自室に帰ろうとしたところガイウスに引き止められる。
「……さっきのやつと、何か親しく話し込むことでもあったのか」
「ただ世間話をしていただけですけど……」
また始まった。
「随分楽しそうに見えた」
「彼は博識で話も上手いですからね。色んな国を回った旅の話など色々面白いんですよ」
「俺の話は面白くないのか……」
「その辺は向き不向きでしょう……もう拗ねないでください」
少し機嫌悪く鬱陶しがると、私に抱きついてグルーミングしだして、撫でろと言わんばかりに頭を差し出してきた。
仕方なしに撫でてやる。
こいつ私がそうゆう動物攻撃に弱いことを知って私の機嫌を取ろうとしてくるのだ。
効いてしまうのが悔しい……
ただガイウスは意見を変える気はないのか、気に入らないと言う様にしっぽをぺちぺちと振り回し拗ね始めた。
「……それでも気に入らん。手紙なんか出すなよ。届いたら俺に見せろ」
「いちいち束縛するのやめてほしいんですけど」
「見せたくないのか。リュカスに気でもあるのか?」
ハリエルは呆れ返ってしまった。
「ばかばかしい。一応、あなたの妻ですのよ。浮気なんてありえないでしょう」
「それでも、あいつを見て笑ってた。どうせお前は人間の方が良いんだろ」
「人間も獣人も関係ないわ。あなたが全部人の好意を恋愛に結びつけようとするだけで……」
向こうも商売相手に愛想良くしてるだけだろう。
「それでも……お前と俺以外の空間があるのが嫌なんだ」
あからさまな独占欲を見せてきた。
「子供じゃないんだから……」
溜息交じりに言うと、ガイウスはなおも諦めきれぬ顔で言い募る。
「外出も、できれば俺が連れていってほしい」
「一人で大丈夫です。それに使用人もいるので来ないでください」
「……危ない目にはあってほしくない」
「安全ですってば。あなたじゃなくても、護衛はちゃんといますもの」
「そう思っているのは君だけだ。街には妙な奴も多いし、……お前が誰かから声をかけられたら、俺は耐えられないかもしれない」
本気で辟易しつつも、ハリエルは彼の目を見返す。
「貴方がいない時にだって外出したい時はあるの。それに私1人で出かける何てしてないでしょ?それでも気に入らないの?」
一人で買い物なんてアスータにいる時にしたのが最後である。
「ごめん。でも、どうすれば平気なのか分からなくなる」
その困惑と執着に異常さを感じ、気持ち悪くなる。
「ちょっと外の新鮮な空気でも吸ってきますわ」
ハリエルが軽く手を上げて部屋を出ると、ガイウスは不満そうな顔をして自室に戻って行った。
あの夜に話した商人リュカスが、ガイウスが注文したアスータの果実酒を抱えて現れたのだった。
「失礼いたします。ご注文された品をお届けにあがりました」
リュカスは整った手付きで箱をひとつずつ並べながら、穏やかに笑う。
「アスータの白ワインと、ポリシアのウィスキー、それに奥様のお好きだと伺ったライレイ酒も……」
「まあ、思ったよりいい状態ですわね」
「ええ、首都からわざわざ取り寄せさせました」
商品の確認をしているうち、いつのまにかリュカスとのやり取りが自然に弾みはじめる。
「グリュンワルドでこれだけの品をそろえるのは大変だったでしょう」
「この国の商いにはだいぶ慣れましたので。けれど、奥方のように味に良いこだわりを持つお客様は少ないですよ」
「ふふ、単に懐かしいだけですわ。お世辞がうまいですわね」
ガイウスは遠巻きにその様子を見ている。
最初は静かに見守っていたが、会話が止まらずに笑顔が続くと、じわじわ彼の影が近くなってきた。
「もう確認は済んだのか?」
唐突に割って入るガイウス。
「ええ私のは。せっかくだから貴方も確認したら?」
「後でな……もう用は済んだだろう。私が送ろうか?」
明らかに声が棘を含んでおり、苛立ちが滲んでいる。
リュカスは穏やかに微笑むだけ。
「いえ……それには及びません。何か不足があればすぐに呼んでください」
「またお願いするかも知れません。その時はよろしくお願いしますね」
名残惜しさもなく帰ろうとするリュカス。
けれどガイウスはその背を名残惜しげというより警戒しきって見送っていた。
リュカスが帰り自室に帰ろうとしたところガイウスに引き止められる。
「……さっきのやつと、何か親しく話し込むことでもあったのか」
「ただ世間話をしていただけですけど……」
また始まった。
「随分楽しそうに見えた」
「彼は博識で話も上手いですからね。色んな国を回った旅の話など色々面白いんですよ」
「俺の話は面白くないのか……」
「その辺は向き不向きでしょう……もう拗ねないでください」
少し機嫌悪く鬱陶しがると、私に抱きついてグルーミングしだして、撫でろと言わんばかりに頭を差し出してきた。
仕方なしに撫でてやる。
こいつ私がそうゆう動物攻撃に弱いことを知って私の機嫌を取ろうとしてくるのだ。
効いてしまうのが悔しい……
ただガイウスは意見を変える気はないのか、気に入らないと言う様にしっぽをぺちぺちと振り回し拗ね始めた。
「……それでも気に入らん。手紙なんか出すなよ。届いたら俺に見せろ」
「いちいち束縛するのやめてほしいんですけど」
「見せたくないのか。リュカスに気でもあるのか?」
ハリエルは呆れ返ってしまった。
「ばかばかしい。一応、あなたの妻ですのよ。浮気なんてありえないでしょう」
「それでも、あいつを見て笑ってた。どうせお前は人間の方が良いんだろ」
「人間も獣人も関係ないわ。あなたが全部人の好意を恋愛に結びつけようとするだけで……」
向こうも商売相手に愛想良くしてるだけだろう。
「それでも……お前と俺以外の空間があるのが嫌なんだ」
あからさまな独占欲を見せてきた。
「子供じゃないんだから……」
溜息交じりに言うと、ガイウスはなおも諦めきれぬ顔で言い募る。
「外出も、できれば俺が連れていってほしい」
「一人で大丈夫です。それに使用人もいるので来ないでください」
「……危ない目にはあってほしくない」
「安全ですってば。あなたじゃなくても、護衛はちゃんといますもの」
「そう思っているのは君だけだ。街には妙な奴も多いし、……お前が誰かから声をかけられたら、俺は耐えられないかもしれない」
本気で辟易しつつも、ハリエルは彼の目を見返す。
「貴方がいない時にだって外出したい時はあるの。それに私1人で出かける何てしてないでしょ?それでも気に入らないの?」
一人で買い物なんてアスータにいる時にしたのが最後である。
「ごめん。でも、どうすれば平気なのか分からなくなる」
その困惑と執着に異常さを感じ、気持ち悪くなる。
「ちょっと外の新鮮な空気でも吸ってきますわ」
ハリエルが軽く手を上げて部屋を出ると、ガイウスは不満そうな顔をして自室に戻って行った。
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