【完結】婚約破棄されたら執着獣人閣下に無理やり番にされたので利用し尽くしつくします~運命の番といわれ溺愛されても信じられません~

たるとタタン

文字の大きさ
54 / 69

54話 監禁

寝室の扉が力強くノックされ、朝から抱かれぼんやりとしていた意識は浮上する。

「旦那様!奥様!朝食のご準備ができております!」

マーサの声だ。私は助けを求めるように、そちらに視線を向けた。

「ガイウスさま!開けてください!」

「……マーサか。ハリエルは気分が優れない。食事は後で俺が運ぶ。お前は下がっていろ」

「しかし、奥様のお世話は私の仕事でございます!」

マーサの食い下がる声に、ガイウスの表情が険しくなる。

彼は私を押さえつけたまま、扉に向かって低い声で言い放った。

「俺の番の世話は、俺がする。……二度、言わせるな」

獣人の威圧感が、分厚い扉越しにでも伝わってくる。

マーサの気配が、悔しそうに遠ざかっていくのがわかった。

しばらくして、今度は獣人のメイドが控えめに扉を叩いた。ガイウスが許可を出すと、彼女は顔を伏せたまま、お茶のセットを部屋の隅のテーブルに置いた。

彼女は私とガイウスの姿をちらりと見たが、その瞳には同情と仕方がないとでも言いたげな、気まずい色が浮かんでいた。

獣人の社会では、これが普通なのだろうか。

番を自分の縄張りに閉じ込め、他の雄から完全に隔離する。

それが彼らの愛情表現であり、番の証明なのだとしたら、私はあまりにも無知だった。

ここは人間の国ではないのだ。

ガイウスは私を抱き潰さんばかりの力で、何度も体を求めてきた。

それは暴力とは違う。

けれど、私の意思を完全に無視した、一方的な愛情の押し付けだった。

彼の獣じみた熱に浮かされ、快楽に溺れさせられることで、思考そのものを奪われていく。

「やめて……もう、たくさんだわ……」

涙ながらに訴えても、彼は私の涙を舌で舐めとり、恍惚とした表情で囁くだけだった。

「もっと鳴いてくれ、ハリエル。お前の声は、俺を最高に昂らせる」

抵抗すればするほど、彼の独占欲は燃え上がった。

私の拒絶が、彼にとっては媚薬でしかない。

この男は、私が苦しむ姿にすら、愛しさを感じているのだ。

昼過ぎ、空腹で目眩がする頃になって、ようやく解放された。

しかし、自由になったわけではない。彼は私の手を取り、食事の準備されたテーブルへと連れて行った。

「食べろ」

「……食欲なんてないわ」

「そうか。だが、お前が倒れたら俺は悲しい。……俺が食べさせてやろうか?」

その言葉を無視するとその瞳に狂気が宿り、ガイウスはスプーンを手に取り、私にスープを飲めと差し出してきた。

「スープぐらい飲めるだろう。それともまだ抱かれたいか?」

脅しに屈し、スプーンに口をつけスープを飲むと嬉しそうに笑う。
 
「ああ。やっぱり可愛いな。これからも俺が食べさせてやるからな」

そうして給餌は続き、一口食べるごとに、彼は満足そうに喉を鳴らす。

まるで、手懐けた小動物に餌を与えているかのように。

私は、なんとなく気まずくなり言葉を探す。

「ねえ……こんなふうに私を閉じ込め続けても、あなた自身が苦しくなるだけじゃないの?」

「苦しくても構わない。お前といられない方がもっとつらい。……お前は、俺がここまでする意味を分かってないんだ」

給餌をやめた彼の大きな手が、私の頬に触れる。

暖かくて、でもどこか震えている。

「ハリエル、お前が俺を嫌いになって離れていくくらいなら、こうして傍に閉じ込めておくほうがよほどましなんだ」

ガイウスは自分胸に私の顔をうずめさせ、抱きしめた。

「愛してる……ハリエル俺の愛しい番」

閉塞感に苛立ちながらも、その腕の中の甘さに、無力感とほのかな甘さを感じないわけではなかった。
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完】麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜

こころ ゆい
恋愛
※完結しました!皆様のおかげです!ありがとうございました! ※既に完結しておりますが、番外編②加筆しました!(2025/10/17)  狼獣人、リードネストの番(つがい)として隣国から攫われてきたモモネリア。  突然知らない場所に連れてこられた彼女は、ある事情で生きる気力も失っていた。  だが、リードネストの献身的な愛が、傷付いたモモネリアを包み込み、徐々に二人は心を通わせていく。  そんなとき、二人で訪れた旅先で小さなドワーフ、ローネルに出会う。  共に行くことになったローネルだが、何か秘密があるようで?  自分に向けられる、獣人の深い愛情に翻弄される番を描いた、とろ甘溺愛ラブストーリー。

「偽聖女」と追放された令嬢は、冷酷な獣人王に溺愛されました~私を捨てた祖国が魔物で滅亡寸前?今更言われても、もう遅い

腐ったバナナ
恋愛
伯爵令嬢フィーア・エメラインは、地味で効果が現れるのに時間がかかる「大地の浄化」の力を持っていたため、派手な治癒魔法を使う異母妹リシアンの嫉妬により、「偽聖女」として断罪され、魔物汚染が深刻な獣人族の国へ追放される。 絶望的な状況の中、フィーアは「冷酷な牙」と恐れられる最強の獣人王ガゼルと出会い、「国の安寧のために力を提供する」という愛のない契約結婚を結ぶ。

【完結】 「運命の番」探し中の狼皇帝がなぜか、男装中の私をそばに置きたがります

廻り
恋愛
羊獣人の伯爵令嬢リーゼル18歳には、双子の兄がいた。 二人が成人を迎えた誕生日の翌日、その兄が突如、行方不明に。 リーゼルはやむを得ず兄のふりをして、皇宮の官吏となる。 叙任式をきっかけに、リーゼルは皇帝陛下の目にとまり、彼の侍従となるが。 皇帝ディートリヒは、リーゼルに対する重大な悩みを抱えているようで。

完璧な政略結婚のはずでしたが、宰相閣下の“私の妻”扱いが甘すぎます

星乃和花
恋愛
政略結婚のはずでした。 家同士の利も、立場の釣り合いも、全部きちんと整った、完璧に合理的な結婚。 ……なのに、夫となった冷徹宰相は、なぜか人前で私を「最高の妻」と紹介し、暮らしを完璧に整え、他人に近づかれると不機嫌になってしまいます。 “天使”と噂される穏やかな令嬢フィオナもまた、 そんな不器用な優しさに少しずつ心をほどかれて――。 これは、条件で選ばれたはずの夫婦が、 いつの間にかお互いを“ただ一人”として欲しくなるまでの、甘くてやさしい政略結婚物語。 (毎日21:50更新ー全8話)

【完結】たれ耳うさぎの伯爵令嬢は、王宮魔術師様のお気に入り

楠結衣
恋愛
華やかな卒業パーティーのホール、一人ため息を飲み込むソフィア。 たれ耳うさぎ獣人であり、伯爵家令嬢のソフィアは、学園の噂に悩まされていた。 婚約者のアレックスは、聖女と呼ばれる美少女と婚約をするという。そんな中、見せつけるように、揃いの色のドレスを身につけた聖女がアレックスにエスコートされてやってくる。 しかし、ソフィアがアレックスに対して不満を言うことはなかった。 なぜなら、アレックスが聖女と結婚を誓う魔術を使っているのを偶然見てしまったから。 せめて、婚約破棄される瞬間は、アレックスのお気に入りだったたれ耳が、可愛く見えるように願うソフィア。 「ソフィーの耳は、ふわふわで気持ちいいね」 「ソフィーはどれだけ僕を夢中にさせたいのかな……」 かつて掛けられた甘い言葉の数々が、ソフィアの胸を締め付ける。 執着していたアレックスの真意とは?ソフィアの初恋の行方は?! 見た目に自信のない伯爵令嬢と、伯爵令嬢のたれ耳をこよなく愛する見た目は余裕のある大人、中身はちょっぴり変態な先生兼、王宮魔術師の溺愛ハッピーエンドストーリーです。 *全16話+番外編の予定です *あまあです(ざまあはありません) *2023.2.9ホットランキング4位 ありがとうございます♪

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

復讐の悪女になるはずが、天使系義兄からピュアな執着と溺愛で邪魔されてます!

鈴宮(すずみや)
恋愛
 サウジェリアンナ王国の王女エルシャは、不幸だった前世の記憶を持って生まれてきた。現世ではみんなから愛され、幸せになれると信じていたエルシャだったが、生後五ヶ月で城が襲撃されてしまう。  絶体絶命かと思いきや、エルシャは魔術師の男性から救出された上『リビー』という新たな名前を与えられ、養女として生きることに。  襲撃がジルヴィロスキー王国によるものと気づいたリビーは、復讐のため王太子妃になることを思いつく。けれど、義理の兄であるゼリックがあまりにもリビーを溺愛するため、せっかく王太子アインハードに近づくことに成功しても、無邪気に邪魔され計画がうまく進まない。  ゼリックの干渉を減らすためリビーは彼の婚約者を探したり、ゼリック抜きでアインハードとお茶をして復讐を成功させようと画策する。  そんな中、十六歳に成長したリビーはアインハードと同じ学園に入学し、本格的なアプローチを開始する。しかし、ゼリックが講師として学園へ来てしまい、チャンスをことごとく潰されてしまう。 (わたしは復讐がしたいのに!)  そう思うリビーだったが、ゼリックから溺愛される日々はとても幸せで……?

「俺にしがみつくのはやめろ」と言われて恋が覚めたので、しがみつかずにリリースします。相容れないとほざくあなたは、今、私に捨てられましたわ

西野歌夏
恋愛
前世でフラれた記憶を思いだしたフローラ・ガトバンは、18歳の伯爵令嬢だ。今まさにデジャブのように同じ光景を見ていた。 エイトレンスのアルベルト王太子にまつわるストーリーです。 ※の付いたタイトルは、あからさまな性的表現を含みます。苦手な方はお気をつけていただければと思います。 2025.5.29 完結いたしました。