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54話 監禁
寝室の扉が力強くノックされ、朝から抱かれぼんやりとしていた意識は浮上する。
「旦那様!奥様!朝食のご準備ができております!」
マーサの声だ。私は助けを求めるように、そちらに視線を向けた。
「ガイウスさま!開けてください!」
「……マーサか。ハリエルは気分が優れない。食事は後で俺が運ぶ。お前は下がっていろ」
「しかし、奥様のお世話は私の仕事でございます!」
マーサの食い下がる声に、ガイウスの表情が険しくなる。
彼は私を押さえつけたまま、扉に向かって低い声で言い放った。
「俺の番の世話は、俺がする。……二度、言わせるな」
獣人の威圧感が、分厚い扉越しにでも伝わってくる。
マーサの気配が、悔しそうに遠ざかっていくのがわかった。
しばらくして、今度は獣人のメイドが控えめに扉を叩いた。ガイウスが許可を出すと、彼女は顔を伏せたまま、お茶のセットを部屋の隅のテーブルに置いた。
彼女は私とガイウスの姿をちらりと見たが、その瞳には同情と仕方がないとでも言いたげな、気まずい色が浮かんでいた。
獣人の社会では、これが普通なのだろうか。
番を自分の縄張りに閉じ込め、他の雄から完全に隔離する。
それが彼らの愛情表現であり、番の証明なのだとしたら、私はあまりにも無知だった。
ここは人間の国ではないのだ。
ガイウスは私を抱き潰さんばかりの力で、何度も体を求めてきた。
それは暴力とは違う。
けれど、私の意思を完全に無視した、一方的な愛情の押し付けだった。
彼の獣じみた熱に浮かされ、快楽に溺れさせられることで、思考そのものを奪われていく。
「やめて……もう、たくさんだわ……」
涙ながらに訴えても、彼は私の涙を舌で舐めとり、恍惚とした表情で囁くだけだった。
「もっと鳴いてくれ、ハリエル。お前の声は、俺を最高に昂らせる」
抵抗すればするほど、彼の独占欲は燃え上がった。
私の拒絶が、彼にとっては媚薬でしかない。
この男は、私が苦しむ姿にすら、愛しさを感じているのだ。
昼過ぎ、空腹で目眩がする頃になって、ようやく解放された。
しかし、自由になったわけではない。彼は私の手を取り、食事の準備されたテーブルへと連れて行った。
「食べろ」
「……食欲なんてないわ」
「そうか。だが、お前が倒れたら俺は悲しい。……俺が食べさせてやろうか?」
その言葉を無視するとその瞳に狂気が宿り、ガイウスはスプーンを手に取り、私にスープを飲めと差し出してきた。
「スープぐらい飲めるだろう。それともまだ抱かれたいか?」
脅しに屈し、スプーンに口をつけスープを飲むと嬉しそうに笑う。
「ああ。やっぱり可愛いな。これからも俺が食べさせてやるからな」
そうして給餌は続き、一口食べるごとに、彼は満足そうに喉を鳴らす。
まるで、手懐けた小動物に餌を与えているかのように。
私は、なんとなく気まずくなり言葉を探す。
「ねえ……こんなふうに私を閉じ込め続けても、あなた自身が苦しくなるだけじゃないの?」
「苦しくても構わない。お前といられない方がもっとつらい。……お前は、俺がここまでする意味を分かってないんだ」
給餌をやめた彼の大きな手が、私の頬に触れる。
暖かくて、でもどこか震えている。
「ハリエル、お前が俺を嫌いになって離れていくくらいなら、こうして傍に閉じ込めておくほうがよほどましなんだ」
ガイウスは自分胸に私の顔をうずめさせ、抱きしめた。
「愛してる……ハリエル俺の愛しい番」
閉塞感に苛立ちながらも、その腕の中の甘さに、無力感とほのかな甘さを感じないわけではなかった。
「旦那様!奥様!朝食のご準備ができております!」
マーサの声だ。私は助けを求めるように、そちらに視線を向けた。
「ガイウスさま!開けてください!」
「……マーサか。ハリエルは気分が優れない。食事は後で俺が運ぶ。お前は下がっていろ」
「しかし、奥様のお世話は私の仕事でございます!」
マーサの食い下がる声に、ガイウスの表情が険しくなる。
彼は私を押さえつけたまま、扉に向かって低い声で言い放った。
「俺の番の世話は、俺がする。……二度、言わせるな」
獣人の威圧感が、分厚い扉越しにでも伝わってくる。
マーサの気配が、悔しそうに遠ざかっていくのがわかった。
しばらくして、今度は獣人のメイドが控えめに扉を叩いた。ガイウスが許可を出すと、彼女は顔を伏せたまま、お茶のセットを部屋の隅のテーブルに置いた。
彼女は私とガイウスの姿をちらりと見たが、その瞳には同情と仕方がないとでも言いたげな、気まずい色が浮かんでいた。
獣人の社会では、これが普通なのだろうか。
番を自分の縄張りに閉じ込め、他の雄から完全に隔離する。
それが彼らの愛情表現であり、番の証明なのだとしたら、私はあまりにも無知だった。
ここは人間の国ではないのだ。
ガイウスは私を抱き潰さんばかりの力で、何度も体を求めてきた。
それは暴力とは違う。
けれど、私の意思を完全に無視した、一方的な愛情の押し付けだった。
彼の獣じみた熱に浮かされ、快楽に溺れさせられることで、思考そのものを奪われていく。
「やめて……もう、たくさんだわ……」
涙ながらに訴えても、彼は私の涙を舌で舐めとり、恍惚とした表情で囁くだけだった。
「もっと鳴いてくれ、ハリエル。お前の声は、俺を最高に昂らせる」
抵抗すればするほど、彼の独占欲は燃え上がった。
私の拒絶が、彼にとっては媚薬でしかない。
この男は、私が苦しむ姿にすら、愛しさを感じているのだ。
昼過ぎ、空腹で目眩がする頃になって、ようやく解放された。
しかし、自由になったわけではない。彼は私の手を取り、食事の準備されたテーブルへと連れて行った。
「食べろ」
「……食欲なんてないわ」
「そうか。だが、お前が倒れたら俺は悲しい。……俺が食べさせてやろうか?」
その言葉を無視するとその瞳に狂気が宿り、ガイウスはスプーンを手に取り、私にスープを飲めと差し出してきた。
「スープぐらい飲めるだろう。それともまだ抱かれたいか?」
脅しに屈し、スプーンに口をつけスープを飲むと嬉しそうに笑う。
「ああ。やっぱり可愛いな。これからも俺が食べさせてやるからな」
そうして給餌は続き、一口食べるごとに、彼は満足そうに喉を鳴らす。
まるで、手懐けた小動物に餌を与えているかのように。
私は、なんとなく気まずくなり言葉を探す。
「ねえ……こんなふうに私を閉じ込め続けても、あなた自身が苦しくなるだけじゃないの?」
「苦しくても構わない。お前といられない方がもっとつらい。……お前は、俺がここまでする意味を分かってないんだ」
給餌をやめた彼の大きな手が、私の頬に触れる。
暖かくて、でもどこか震えている。
「ハリエル、お前が俺を嫌いになって離れていくくらいなら、こうして傍に閉じ込めておくほうがよほどましなんだ」
ガイウスは自分胸に私の顔をうずめさせ、抱きしめた。
「愛してる……ハリエル俺の愛しい番」
閉塞感に苛立ちながらも、その腕の中の甘さに、無力感とほのかな甘さを感じないわけではなかった。
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