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58話 不安定
それから私は、自分でもおかしいと感じるほど情緒が不安定になっていた。
ちょっとしたことで苛立ち、急に涙が止まらなくなったかと思えば、何もしたくなくてベッドから出られない朝もあった。
そんな私の様子に、おかしくさせた張本人でもあるガイウスもさすがに不味いと思ったのだろう。
私にある提案をしてきた。
「ハリエル、少し話したいことがある」
珍しくガイウスが真面目なトーンで切り出す。
私は毛布にくるまったまま、ちらりと彼を見た。
「どうしたの?また私をなだめる小言?」
「違う」
ガイウスは私のそばに腰を下ろすと、優しくもどこか慎重な声音で続けた。
「……お前、この部屋から出たがってただろう。正直外に出すのは認められないが、人に会うも大事だと思ってな……我慢のさせ過ぎもよくない」
何か許されたような気分になり、ペットのような扱いを当然のように受け入れたことにイライラし、すぐに疑いの目を向ける。
「どういうつもり?またここの来た人に意味の分からない因縁をつけて、私のことをいじめるんでしょ?」
そもそもどうして私は一々この男の許可を求めなければならないのか……その事実すら私を苛立たせる。
「そんなことしない。ずっと一人きりにさせて悪かったと思ってるし、俺以外の誰かと話すのもお前の為に必要だと思ってな」
「じゃあマーサとオットーと話させてほしいんだけど……」
ガイウスは渋々うなずいた。
「まあ。マーサはいいだろう。後で会わせてやる。ただオットーはあの後アスータに帰ったから今はいない。会いたければ手紙でも書くんだな」
いつの間に帰ってたんだろう。そんなことにも気づかないなんて……
「それとは別でお前のために、会わせたい人をいるんだ」
「……誰?」
「こないだの夜会で会ったジルの番のリラだ。あのときは挨拶程度だったが、今日はあいつと二人でゆっくり話してみてくれ」
「……リラ?」
確か彼女も獣人に無理やり番にされたんだっけ……
「リラもお前と同じ人間で、しかも獣人の番だ。きっと何か助けになるはずだし。リラにお前のことを相談したらまた会わせろと言われてな……」
ここ何日はこの男としか会話していなかった私は、一人で重たい心を抱えていた数日のことを考えて、誰かと思い切り話してみたい気持ちもあって、すぐにうなずいた。
「分かった。……会ってみる」
ガイウスは、ふっと口元を緩め、私の答えに、ほんの一瞬だけ安心したように見えた。
「今日は俺は邪魔しない。好きに話せ。……それが、お前のためにもなると思う」
ガイウスは私の髪をそっと撫で、静かに立ち上がった。
「準備ができたら、呼びに行く。リラは明るい女だし、話もうまいからきっとお前の為になる」
私は胸の奥で、小さな不安と新しい興味をごちゃまぜにした気持ちを感じながら、 少しだけ深呼吸をして、リラとの出会いを待つことにした。
ちょっとしたことで苛立ち、急に涙が止まらなくなったかと思えば、何もしたくなくてベッドから出られない朝もあった。
そんな私の様子に、おかしくさせた張本人でもあるガイウスもさすがに不味いと思ったのだろう。
私にある提案をしてきた。
「ハリエル、少し話したいことがある」
珍しくガイウスが真面目なトーンで切り出す。
私は毛布にくるまったまま、ちらりと彼を見た。
「どうしたの?また私をなだめる小言?」
「違う」
ガイウスは私のそばに腰を下ろすと、優しくもどこか慎重な声音で続けた。
「……お前、この部屋から出たがってただろう。正直外に出すのは認められないが、人に会うも大事だと思ってな……我慢のさせ過ぎもよくない」
何か許されたような気分になり、ペットのような扱いを当然のように受け入れたことにイライラし、すぐに疑いの目を向ける。
「どういうつもり?またここの来た人に意味の分からない因縁をつけて、私のことをいじめるんでしょ?」
そもそもどうして私は一々この男の許可を求めなければならないのか……その事実すら私を苛立たせる。
「そんなことしない。ずっと一人きりにさせて悪かったと思ってるし、俺以外の誰かと話すのもお前の為に必要だと思ってな」
「じゃあマーサとオットーと話させてほしいんだけど……」
ガイウスは渋々うなずいた。
「まあ。マーサはいいだろう。後で会わせてやる。ただオットーはあの後アスータに帰ったから今はいない。会いたければ手紙でも書くんだな」
いつの間に帰ってたんだろう。そんなことにも気づかないなんて……
「それとは別でお前のために、会わせたい人をいるんだ」
「……誰?」
「こないだの夜会で会ったジルの番のリラだ。あのときは挨拶程度だったが、今日はあいつと二人でゆっくり話してみてくれ」
「……リラ?」
確か彼女も獣人に無理やり番にされたんだっけ……
「リラもお前と同じ人間で、しかも獣人の番だ。きっと何か助けになるはずだし。リラにお前のことを相談したらまた会わせろと言われてな……」
ここ何日はこの男としか会話していなかった私は、一人で重たい心を抱えていた数日のことを考えて、誰かと思い切り話してみたい気持ちもあって、すぐにうなずいた。
「分かった。……会ってみる」
ガイウスは、ふっと口元を緩め、私の答えに、ほんの一瞬だけ安心したように見えた。
「今日は俺は邪魔しない。好きに話せ。……それが、お前のためにもなると思う」
ガイウスは私の髪をそっと撫で、静かに立ち上がった。
「準備ができたら、呼びに行く。リラは明るい女だし、話もうまいからきっとお前の為になる」
私は胸の奥で、小さな不安と新しい興味をごちゃまぜにした気持ちを感じながら、 少しだけ深呼吸をして、リラとの出会いを待つことにした。
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