食育される受付坊ちゃん

夏瀬カグラ

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プロローグ

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 僕の名前は、小鳥遊千賀(たかなし ちか)
 年齢は16歳。主にシミュレーションゲームが好きで、サッカー部に所属する、ごく普通の高校2年生。
 現在、異世界の冒険者ギルドにて、元の世界に戻るアイテムを入手すべく、受付嬢として働いている。

 なお、実情を知っているメンバーからは『受付坊ちゃん』と言われています。

 ……うん、受付嬢。つまりは、女装をしていることだけはお察し頂きたい。
 そんな僕には、頭を抱えたくなるような困りごとが1つある。

「よぉ、チカ! 今日も一緒に昼食を食べよう!」
「ギルドカードを出しやがって下さりやがれ、冒険者・リベール様」
「また他人行儀な。名前も正しく呼んでくれよ」
「……今回は、どのような、クエストを、受注、されるのでしょうかッ!」

 朝・昼・晩の1日3食を、徹底的に食事管理をしてくる、冒険者リベールの存在だ。
 いや、冒険に行って欲しいんだけど。
 自分のやるべきこと、やってくれ、切実に。
 あと僕は、現在、絶賛、お仕事中!

「おーい、またチカとリベールが夫婦漫才やってんぞー」
「業務外でやれー!」

 でもって、リベールより後ろにいる冒険者たちがヤジを飛ばす。
 表情がニヤついているんですが……この状況を楽しんでいるよな、絶対。
 はたから見たら、受付嬢(坊ちゃん)を口説くべく、手料理と共に足しげく通う好青年、だもんな……
 自分で言っていてアレだが、頭痛がしてきた。

「今日はオニオンスープと、卵をうまい具合に焼いて、野菜で挟んだホットサンドなんだぜ」
「で・す・か・ら、クエストの受注は決めていただけませんか?」
「ああそうそう。新鮮なフルーツも手に入ったんだ、きっと気に入ると思うぞ」
「クエスト、を、決めてくださいっ!」

 僕は大量の紙束を、バサリッ、と机の上に広げたまさにその時。

 ―――キーンコーン、キーンコーン

 お昼を告げる、冒険者ギルドの鐘が鳴り響いた。
 すると、並んでいた冒険者たちは『昼飯いくかー』と、次々と解散して離れていく。
 ああああ、僕の仕事ー!

「おっ、ナイスタイミング。チカ、今日はいい天気だから公園で食べないか?」
「…………」

 周囲確認。
 他の冒険者たちは、全員、ギルドから出ていったな。
 ここに残っているのは、事情を知る同業者たちのみ。
 そこまで確認した僕は、深呼吸をしてから叫ぶ。

「営業妨害はやめろよ、リベール――――――!!」
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