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3章 仲直りはご飯と共に
02 自己紹介
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部屋に入り、小さなテーブルを挟んで座った僕たち。
しばし、沈黙が流れる。
どっちから、話を切り出すべきか……そんな雰囲気になった。
「まずは、そうだな……ちゃんとした自己紹介が先、かな」
リベールさんが口を開くと共に、立ち上がる。
そのまま、優雅に一礼し、
「チカが滞在しているここ、スピリスト・サスト王国の第一王子。リベリュシュカ・L・スピリストだ」
「……第一王子が、冒険者ってなにやっているんですか」
普通、王位継承権のトップだよね。
城で帝王学を学んだり、外交どうこうって立場なんじゃないの。
すると、リベールさんは肩を落としつつ
「うちの国は特殊でな。生まれた順で継承権は決めてないんだ」
「え? そうなの?」
「実力主義ともいえるな。不公平だろ。後に生まれただけで、どれだけ優秀でも王位を継げないのはさ」
それって、むしろリベールさんが兄弟を測る指標になるってことじゃ。
……それはそれで、大変な気も。
「つか、長男も面倒なんだぞ。何かにつけて弟や妹は『年長者なんだからー』って文句いってさ」
うわっ、大変そう。
どんな世界でも、長男・長女は苦労する……ん?
(あれ? なんか、今の文句どこかで)
アフェクが口走ってたよね。
金銭感覚バグっているし、まさか……まさかね……?
一瞬、脳裏を過ぎった可能性を振り払っていると、リベールさんが言葉を続けた。
「冒険者をやっている理由は……今、我が国が抱える問題が関係している」
「他国からの侵略、でしたっけ」
「いや、違う。人間とモンスターを融合させ、兵器として扱う研究をしている王族がいるんだ」
あのマッドサイエンティストが言ってたことか。
……うん、ちょっとずつ思い出してきた。
そういえば、リベールさんと、現国王は反対側っぽいこと言われていた。
あああっ、こんな単純なこと、なんで思い出さなかったんだ僕!
うぅ、だいぶ自己嫌悪が悪化する。
「王族といっても、叔父や叔母の子、つまりは従兄弟らだな」
リベールさんが言うには、堂々と王族として動くのが難しい問題だそうだ。
……そりゃそうか。
人間オークションという、奴隷市場よりも厄介な場所まで絡んでいるんだし。
「オレらは兄弟総出で、様々な立場に扮して状況証拠を掴んでいるんだ」
「その一環で、冒険者を……ってことだね」
「その通り」
なんだか、破天荒な国だな。
王位継承の件もそうだけど。
王子に冒険者やらせるって判断が凄いというか。
「実際、この立場を隠れ蓑にしている連中もいるんだ」
「そうなの!?」
「ダンジョンなんて、あつらえ向きだろ。融合させるモンスターの捕獲も含めて」
うわああ……!?
そっか、ダンジョンは逆に宝の宝庫じゃん!
宝石やレアアイテム的な意味じゃないのが、すごく頭が痛いけど。
「で、1つ、キミに謝らないといけないことができた」
「僕に? なんで?」
「どうやら、チカがこの世界に来たのは、この件が絡んでいるっぽいんだ」
「……えええええええ!?」
僕の異世界転移、偶然じゃなかったの!?
めちゃくちゃ大自然の中、いきなり盗賊に囲まれるおまけ付きだったから、そんな感じなかったんですけど。
「普通に人を買ったり、攫うよりも、異世界から呼んだ方が騒がれないとかなんとか」
「ゲスい。めっちゃゲスい理由すぎる」
「どちらにしろ、チカには怖い思いをさせてしまった。本当に、申し訳ない」
頭を下げるリベールさんに、僕は慌ててしまう。
「いや、あの、リベールさんのせいじゃないですよね!?」
むしろ、助けてくれようと必死だったわけだし。
「昨日だって、相手から情報を引き出さないといけないから、僕をいったん無視するしかなかったんだし!」
「でも、それでキミは余計に混乱して、怖かっただろ」
「……それは、そう、ですけど」
否定できない。
彼に見捨てられた感覚が凄くて、悲しくて。
「キミが元の世界に帰るまで、オレが責任を持つ」
「……リベール、さん」
彼は懐中からネックレスを取り出す。
これって、この世界で翻訳と通訳を同時にこなす、便利アイテムだよね。
中心に宝石もあるし。
それを、やさしく僕の首にかけてくれた。
「チカのことは、絶対に守り抜く。だから、安心して欲しい」
思わず、見とれてしまう。
綺麗な目、流れるような髪に、やさしい声。
(そっか……安心したかったんだ、僕は)
リベールさんの正体を知りたいとか、そんなのは本当はどうでもよかったんだ。
ただ、今日までずっと僕を気にかけて、世話を焼く、とってもお人好しな彼がいてほしかった。
それに気づいて、自覚して……ホッとした。
「まずは、食生活がすさまじく心配だから、そこからだな」
……いや、あの。
「ここまでシリアスな話をしといて、急に食育の話に戻らないでくださいー!」
「失礼な! 結構まじめに心配しているんだぞ!」
僕の心境というか、安堵の気持ちを返してよ―――!
あーもー! リベールさんのばーか!
「あっ、そうだチカ。1つお願いがあるんだが」
「ん? なに?」
「アフェクの奴を呼び捨てにしてただろ。オレもそうしてくれ」
「え!?」
急になんでそんなことを。
……いや、うん、でも、いいか。
それぐらいで、彼が喜ぶなら。
「えっと……リベール? あ、本名の方が良い?」
「王族とバレるからダメ。うん、ありがとう、チカ」
笑顔で返された言葉に、僕は小さくうなずく。
「さて、いったん落ち着いて食事にしよう! 他にも説明いるだろうし」
「うん! 僕、おなかぺこぺこ」
しばし、沈黙が流れる。
どっちから、話を切り出すべきか……そんな雰囲気になった。
「まずは、そうだな……ちゃんとした自己紹介が先、かな」
リベールさんが口を開くと共に、立ち上がる。
そのまま、優雅に一礼し、
「チカが滞在しているここ、スピリスト・サスト王国の第一王子。リベリュシュカ・L・スピリストだ」
「……第一王子が、冒険者ってなにやっているんですか」
普通、王位継承権のトップだよね。
城で帝王学を学んだり、外交どうこうって立場なんじゃないの。
すると、リベールさんは肩を落としつつ
「うちの国は特殊でな。生まれた順で継承権は決めてないんだ」
「え? そうなの?」
「実力主義ともいえるな。不公平だろ。後に生まれただけで、どれだけ優秀でも王位を継げないのはさ」
それって、むしろリベールさんが兄弟を測る指標になるってことじゃ。
……それはそれで、大変な気も。
「つか、長男も面倒なんだぞ。何かにつけて弟や妹は『年長者なんだからー』って文句いってさ」
うわっ、大変そう。
どんな世界でも、長男・長女は苦労する……ん?
(あれ? なんか、今の文句どこかで)
アフェクが口走ってたよね。
金銭感覚バグっているし、まさか……まさかね……?
一瞬、脳裏を過ぎった可能性を振り払っていると、リベールさんが言葉を続けた。
「冒険者をやっている理由は……今、我が国が抱える問題が関係している」
「他国からの侵略、でしたっけ」
「いや、違う。人間とモンスターを融合させ、兵器として扱う研究をしている王族がいるんだ」
あのマッドサイエンティストが言ってたことか。
……うん、ちょっとずつ思い出してきた。
そういえば、リベールさんと、現国王は反対側っぽいこと言われていた。
あああっ、こんな単純なこと、なんで思い出さなかったんだ僕!
うぅ、だいぶ自己嫌悪が悪化する。
「王族といっても、叔父や叔母の子、つまりは従兄弟らだな」
リベールさんが言うには、堂々と王族として動くのが難しい問題だそうだ。
……そりゃそうか。
人間オークションという、奴隷市場よりも厄介な場所まで絡んでいるんだし。
「オレらは兄弟総出で、様々な立場に扮して状況証拠を掴んでいるんだ」
「その一環で、冒険者を……ってことだね」
「その通り」
なんだか、破天荒な国だな。
王位継承の件もそうだけど。
王子に冒険者やらせるって判断が凄いというか。
「実際、この立場を隠れ蓑にしている連中もいるんだ」
「そうなの!?」
「ダンジョンなんて、あつらえ向きだろ。融合させるモンスターの捕獲も含めて」
うわああ……!?
そっか、ダンジョンは逆に宝の宝庫じゃん!
宝石やレアアイテム的な意味じゃないのが、すごく頭が痛いけど。
「で、1つ、キミに謝らないといけないことができた」
「僕に? なんで?」
「どうやら、チカがこの世界に来たのは、この件が絡んでいるっぽいんだ」
「……えええええええ!?」
僕の異世界転移、偶然じゃなかったの!?
めちゃくちゃ大自然の中、いきなり盗賊に囲まれるおまけ付きだったから、そんな感じなかったんですけど。
「普通に人を買ったり、攫うよりも、異世界から呼んだ方が騒がれないとかなんとか」
「ゲスい。めっちゃゲスい理由すぎる」
「どちらにしろ、チカには怖い思いをさせてしまった。本当に、申し訳ない」
頭を下げるリベールさんに、僕は慌ててしまう。
「いや、あの、リベールさんのせいじゃないですよね!?」
むしろ、助けてくれようと必死だったわけだし。
「昨日だって、相手から情報を引き出さないといけないから、僕をいったん無視するしかなかったんだし!」
「でも、それでキミは余計に混乱して、怖かっただろ」
「……それは、そう、ですけど」
否定できない。
彼に見捨てられた感覚が凄くて、悲しくて。
「キミが元の世界に帰るまで、オレが責任を持つ」
「……リベール、さん」
彼は懐中からネックレスを取り出す。
これって、この世界で翻訳と通訳を同時にこなす、便利アイテムだよね。
中心に宝石もあるし。
それを、やさしく僕の首にかけてくれた。
「チカのことは、絶対に守り抜く。だから、安心して欲しい」
思わず、見とれてしまう。
綺麗な目、流れるような髪に、やさしい声。
(そっか……安心したかったんだ、僕は)
リベールさんの正体を知りたいとか、そんなのは本当はどうでもよかったんだ。
ただ、今日までずっと僕を気にかけて、世話を焼く、とってもお人好しな彼がいてほしかった。
それに気づいて、自覚して……ホッとした。
「まずは、食生活がすさまじく心配だから、そこからだな」
……いや、あの。
「ここまでシリアスな話をしといて、急に食育の話に戻らないでくださいー!」
「失礼な! 結構まじめに心配しているんだぞ!」
僕の心境というか、安堵の気持ちを返してよ―――!
あーもー! リベールさんのばーか!
「あっ、そうだチカ。1つお願いがあるんだが」
「ん? なに?」
「アフェクの奴を呼び捨てにしてただろ。オレもそうしてくれ」
「え!?」
急になんでそんなことを。
……いや、うん、でも、いいか。
それぐらいで、彼が喜ぶなら。
「えっと……リベール? あ、本名の方が良い?」
「王族とバレるからダメ。うん、ありがとう、チカ」
笑顔で返された言葉に、僕は小さくうなずく。
「さて、いったん落ち着いて食事にしよう! 他にも説明いるだろうし」
「うん! 僕、おなかぺこぺこ」
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