食育される受付坊ちゃん

夏瀬カグラ

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4章 受付坊ちゃん、事件を嗅ぎ付ける

06 護衛を兼ねた同居生活

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「というわけで、しばらくよろしく」
「……本当に寝泊まりするんだね、リベール」
「今現在、一番危ないのはキミなんだよ、チカ」

 うん、分かってはいる。
 分かってはいるんだけどね。

 あの後、なぜ、僕に護衛が必要になったかの説明はちゃんと受けた。

 一言でいうと、先日の魔法陣で調べられた結果だった。

「魔法陣による情報の転送が、予想以上に早くなっていたことが誤算だったし」
「けど、その魔術を使うのって、例の兵器化している奴らだけなんだし。仕方ないよ、リベール」

 僕という適正が高い人間が見つかったこと。
 第一次の段階で研究された内容との裏付けが確定したこと。

 それにより、今度は呼び出す世界を絞って召喚をしよう、となっていること。

「いくら、異世界の人間なら文句を言われないとはいえ、やることのスケールがやばいね」

 そもそもとして、大規模召喚を行った理由はそれだ。
 自国の民を使う場合、当然ながらバレた王族全体への批判が集中する。
 他国の民を使う場合、もうこれは宣戦布告か何かでしかない。

 じゃあ、それらに抵触しない方法は?

 簡単だ。
 以前、話題に上がった『初心者冒険者たちをダンジョンで使う』
 もしくは、盗賊などが、国と国を行き来する人たちから、無作為に選ぶか。

 これならば、少なくともごまかすことは可能だからね。

「リベールが冒険者、アフェクが盗賊をやってたのも、そういうこととは……」
「オレたちだって、好きで選んだわけじゃないしな」

「ちなみに、どうやって決めたの?」
「じゃんけん」

 もうちょっと、まじめな決め方はなかったのだろうか。
 喉元までせり上がったツッコミを、必死に飲み込んでいると部屋のドアがノックされる。
 こんな遅い時間に、誰だろう。

『夜分遅くにすまないね。2人とも、開けてもらっていいかな?』
「あ、ギルマスさんだ」

 僕はドアに近づき、鍵を開ける。
 そのまま、ギルマスさんを招き入れた。

「追加の寝具を持ってきたんじゃが」
「助かります。急にすいません、こんなことになって」
「気にしなくてよい。リベールは、チカくんの護衛を全力でたのんだよ」

 ドサリと、枕やら毛布が机の上に置かれる。
 こうやって実物が届くと、本格的にリベールが僕の部屋で寝泊まりするんだなって実感する。

「チカくん。明日は遅刻しないように」
「はーい」

 リベールに寄宿舎のルールを軽く伝えたギルマスさんは、部屋を出てゆく。

(というか、1人部屋だから、どうしよう)

 リベールの体格を考えると部屋の広さは、ギリギリなんだよね。
 備え付けであったテーブルとかをどかせば、なんとかなるかもだけど。
 どうすべきかと悩んでいると

「さてと。オレはこのまま、椅子あたりにでも座って寝るよ」

 と、当たり前のようにリベールが言ってきた。
 いやいやいやいや!?

「さすがにそれは、数日で体を壊すよリベール!」
「けど、この部屋の広さだとな」

 う、うーん……

 でもなぁ、いくらなんでも椅子に座ってはダメだって。
 サッカーをやっているから分かるけど、体は資本。
 睡眠も大事な要素なわけだし。

「んー……と」

 僕は無言で、自分のベッドを見る。
 そのまま、両手で軽く室内の長さを確認して……

「リベール、僕のベッドを使ってよ」
「え?」

 これが最適解だ。
 だってほら、僕の方が彼よりも身長は低い。
 しかも、僕は今、ギルドの受付嬢(坊ちゃん)。
 大きく体を動かすことはない。

 対して、リベールは依頼によっては戦闘が発生する可能性がある。
 魔物とならばまだしも、対人戦の可能性もあるわけで。

「いや、この部屋の主はチカなんだから、キミはベッドを使うべきだ」
「僕はもともと期間限定滞在だし、主とか大げさだよ」
「けどな……」
「第一、体がバキバキになって戦えなくなる可能性があるのは、リベールだよ」

 椅子で寝ていて、体がうまく動きませんでした。
 なーんて、勝負の言い訳にすらなりゃしない。

 僕だったら、全国大会決勝の前日から早朝までゲームしていました、レベルの内容だし。

 それで負けたら、実力じゃなくて自己管理不足!
 ましてや、僕のサッカーとは違い、リベールは命のやり取りでもある。
 重要度が段違いってわけで。

「万が一に怪我とかして欲しくないんだよ、僕は」
「けどなぁ……チカだって仕事に支障がでるぞ、絶対に」
「命のやりとりと、書類仕事を同列に扱わないで欲しいんですけど!」
「いや、大事なコトだ。給料を貰うなら、巡り巡って死活問題にもなるんだぞ」

 あーだこーだ、とやりとりが続くが。

(あ、ダメだこれ。埒があかないよ、絶対)

 もうこうなったら仕方ない。
 僕はチラリと自分のベッドを見る。

 うん、手狭にはなりそうだけど、なんとかなるはず。

「よし、じゃあ部屋の主命令! 一緒に寝よう、リベール!」
「はぁ!? いや、チカ、まて、急にお前……!」
「僕は寝相はそこまで悪くないはずだから、攻撃はしないって」
「そうじゃなくてだな!」

 あーもー、実力行使だ。
 僕は掛け布団を手に取り、リベールの顔めがけて投げつける。
 そのまま視界を奪った状態で、ベッドへ落ち着けた。

「さーて、明日も早いから寝るよー」
「ぶはっ!? おい、チカ!?」

「はいはい、おやすみー」

 部屋の明かりを消して、僕もベッドの空いている部分へ。
 そのまま毛布にくるまって目をつむる。

「はぁ……アフェクたちに知られたら、またうるさくなる」

 なんでそこで、アフェクの名前が出てくるんだろ。
 まぁいいか。
 いつもよりちょっとだけ暖かさを覚えつつ、僕は眠りにつく。

「……ったく、人の気も知らないで」

 完全に意識が落ちる直前、リベールが小声でつぶやいていた言葉には気づかぬまま。
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