鎖人

清志郎

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鎖人

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何度変わろうと思っても私は変わることの出来ない人なのだ。どんな人だろうが、どれだけ言われようが、行動することは出来ず。ただそれをしまい。過ぎ去ることを望みながら息を吐くことしかできない。いつの頃からだっただろうか。私の後ろにはよく人影が現れるようになっていた。それは、はっきりと目に見える形ではないのだが、確かにそこに存在しているそれを、私は鎖人と名づけた。他の誰にも見えないが、鎖人は確かにいるはずなのだ。普段は気づかなくても、ふとした時に現れる。会いたくなくても現れるのである。何度も何度も出てきては、私の手足を掴み、動けないようにしてくる。離れようにも、どれだけ逃げても逃げきれない。そんな存在を私だけが知っている。だが、それだけではない。鎖人は、どんなときでもついてくる。どこにいても、何をしててもついてくる。常に私についてきては、この世で一番気味の悪い私の理解者でもあるとでも言いたいのだろうか。段々と私は鎖人から離れようという気も失せ、少しでもそれを理解しようと思うことにした。なぜ鎖人はついてくるのか、そんなに私に興味でもあるのだろうか?だが私にはこれといって特筆すべき点は見当たらない。理由を聞いた方が良いのだろうか。しかし私に聞く気は起きない。考えているうちに時は進む。鎖人は少しずつではあるが大きくなり、私との距離も近づいてきた。そして私が焦り、なんとかしようとする度に鎖人はどんどん迫り来る。あれからどれだけの時間が過ぎ去ったのだろうか。。。
後ろを振り返ると、鎖人はもう居なくなってしまっていた。。。
私は安堵したのかその場に立ち尽くしていた。そして、ふと前を向くと、光が見えてきた。とても眩しくて、手も届きそうになかったのだが、私は進み始めていた。しばらくすると前のものがはっきりと見えるようになってきた。それは人だったのだ。しかもよく見てみると私にそっくりではないだろうか。呼び止めようと思ったが、声が出ることはなかった。その瞬間に私は理解した。あれだけ時間をかけても分からなかったのに、その全てを理解できたのだ。そうか、そうなのか。変わることも出来ずに、ただ光を奪おうと前にいる私を追うことしかできないこの俺こそが、鎖人だったのだ。
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