1 / 7
プロローグ
しおりを挟む
「馬鹿な! 勇者は今は王都には居ないのではなったのか!?」
「勇者? それは知らないが、貴様は俺に倒される… その未来は変わらん…」
ここはクロワールと言う世界の王都、全身を黒いレザースーツとライトメイル漆黒のフルフェイスヘルムに身を包んだ男が、目の前にいる異形の者を睨みつけそう吐き捨てる。
異形の者は背中から蝙蝠の様な翼を生やした男であった。ただ、この男の顔色は白に近い紫色をしており、耳は鋭く尖っており、その口からは鋭い牙と、そして何より臀部からはひょろ長い尻尾が生えていた。
「何? 勇者では… ない? カッカッカ! 保有している魔力が高いので勇者かと思ったが、なんだ少し強い程度の人間であったか! 人間風情が高位魔族である私に楯突くなど、身の程を知れ!」
「貴様が何者か等どうでもいい、ただ、人々の平穏を脅かす怪人と言うのなら、俺は容赦はせん…」
ギュッと拳を握り格闘戦の構えを取るレザースーツの男を嘲笑う様に魔族を名乗る男はその右手に漆黒の魔力の剣を作り出す。
「容赦はしない? カッカッカ! どう容赦しないのかな? 下等なる人間風情が?」
「勿論… この手で倒す…」
「見た所丸腰の様だが? 下等生物風情が、この高位魔族である私相手に素手で挑もうなど…」
「貴様など、この拳だけで十分だ… 来い怪人」
「下等生物風情が… なめるな!!」
レザースーツの男の態度に激高した魔族はドンッと地を蹴ると目に見えぬ速さで男に肉薄し右手に纏った魔力の剣で切りつける。
男はその攻撃を紙一重で避けると左手で振り下ろされた魔族の右手を払いのける。
まさか避けられるとは思っていなかった魔族は、男を驚愕の目で見ると、ふと握りしめられた右手の拳が目に入った。
「ブレイバー… パンチ」
男がそう呟いた刹那、腹部を貫く衝撃が魔族を襲った。
何が起こったと魔族が自分の腹部を見ると、そこには男の右手が深々と突き刺さっていた。
「そ、そんな! この私が! 高位魔族であるこの私が! 人間などに!」
「……」
魔族の嘆きを我関せずといった様子で男は魔族の腹部に突き刺さった右腕を引き抜く。
すると、引き抜かれたところからヒビが入る様に魔族の男の身体が光り始める。
「こんな! こんなバカな! 勇者ではない! 勇者ではないなら! 貴様は… 貴様は何者だというんだ!」
腹部を押さえ少しでも消滅を免れようと自分に回復魔法を掛けているのであろう魔族だが、体を這うヒビは徐々にその範囲を広げ消滅は時間の問題であった。
そんな魔族の断末魔にも似た今際の叫びにレザースーツの男はただ静かに答えた。
「仮面…ブレイバー」
「勇者? それは知らないが、貴様は俺に倒される… その未来は変わらん…」
ここはクロワールと言う世界の王都、全身を黒いレザースーツとライトメイル漆黒のフルフェイスヘルムに身を包んだ男が、目の前にいる異形の者を睨みつけそう吐き捨てる。
異形の者は背中から蝙蝠の様な翼を生やした男であった。ただ、この男の顔色は白に近い紫色をしており、耳は鋭く尖っており、その口からは鋭い牙と、そして何より臀部からはひょろ長い尻尾が生えていた。
「何? 勇者では… ない? カッカッカ! 保有している魔力が高いので勇者かと思ったが、なんだ少し強い程度の人間であったか! 人間風情が高位魔族である私に楯突くなど、身の程を知れ!」
「貴様が何者か等どうでもいい、ただ、人々の平穏を脅かす怪人と言うのなら、俺は容赦はせん…」
ギュッと拳を握り格闘戦の構えを取るレザースーツの男を嘲笑う様に魔族を名乗る男はその右手に漆黒の魔力の剣を作り出す。
「容赦はしない? カッカッカ! どう容赦しないのかな? 下等なる人間風情が?」
「勿論… この手で倒す…」
「見た所丸腰の様だが? 下等生物風情が、この高位魔族である私相手に素手で挑もうなど…」
「貴様など、この拳だけで十分だ… 来い怪人」
「下等生物風情が… なめるな!!」
レザースーツの男の態度に激高した魔族はドンッと地を蹴ると目に見えぬ速さで男に肉薄し右手に纏った魔力の剣で切りつける。
男はその攻撃を紙一重で避けると左手で振り下ろされた魔族の右手を払いのける。
まさか避けられるとは思っていなかった魔族は、男を驚愕の目で見ると、ふと握りしめられた右手の拳が目に入った。
「ブレイバー… パンチ」
男がそう呟いた刹那、腹部を貫く衝撃が魔族を襲った。
何が起こったと魔族が自分の腹部を見ると、そこには男の右手が深々と突き刺さっていた。
「そ、そんな! この私が! 高位魔族であるこの私が! 人間などに!」
「……」
魔族の嘆きを我関せずといった様子で男は魔族の腹部に突き刺さった右腕を引き抜く。
すると、引き抜かれたところからヒビが入る様に魔族の男の身体が光り始める。
「こんな! こんなバカな! 勇者ではない! 勇者ではないなら! 貴様は… 貴様は何者だというんだ!」
腹部を押さえ少しでも消滅を免れようと自分に回復魔法を掛けているのであろう魔族だが、体を這うヒビは徐々にその範囲を広げ消滅は時間の問題であった。
そんな魔族の断末魔にも似た今際の叫びにレザースーツの男はただ静かに答えた。
「仮面…ブレイバー」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
転生したら王族だった
みみっく
ファンタジー
異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。
レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる