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chapter:7.
しおりを挟む「……まさか#王_キング_#御自ら敵陣に紛れ込むとは思いもしませんでしたので」
「まぁな。……皆の記憶も大分弄らせてもらったしな」
白軍#騎士官_ナイト_#改め、黒軍#王_キング_#、シエル――薄紫だった頭髪は真紅に、桃色だった瞳は紫に、そしてランスだった#武器_エモノ_#はハンマーに#変わって_戻って_#いた――は、戦車の上から話しかけるというオレの無礼を咎めるかのように睨む。……鬼上官は相変わらずのようだ。
レオンハルトとガートレイは、わけが分からないと言う風にオレ達のやり取りを見ている。
「なるほど、同じ記憶の改ざん能力を持っているアナタには、オレの行動も丸見えだった、と」
「まぁ、そういうことだな」
「で、さっきヤったアチラの#女王_クイーン_#さん曰く、オレの事売って自分の身は守ろうとした、と」
「コレは戦争だぞ? #王_キング_#たる俺自身が自らを守らなくてはどうするのだ。皆の希望は俺の双肩にかかっているというのに」
「それはそれは」
戦車から降りて彼と対峙する。これがオレ達の守るべき#王_キング_#。オレ達の願いの――オレの「世界征服」という野望を叶える為の#駒_キー_#。
いつの間にかツクヨミもシエルの元に駆けつけ、敵兵2体から#王_キング_#を護衛する。てっきりレインとリンゲージと共に、白の#王_キング_#を討伐しに向かったのだと思っていたのだが。
敵兵のうち、先に我に返ったのはレオンハルトの方だった。敵の#王_キング_#がすぐ目の前にいる、そのことで彼はますます闘志を漲らせている。
「ウェイルドだけじゃなく、シエルまでオレを騙していたって言うのか!? このオレを!? ……巫山戯るのも大概にしやがれ!」
鎌を振り上げながらシエルへの間合いを詰めるレオンハルトとの間には、オレが入る。反対に、結界を張ろうとしていたガートレイの元へはツクヨミが向かう。
「なぁ、レオンハルト?」
俺はダガーで彼の鎌を受けながら話しかける。激昂している彼の太刀筋は読みやすく、リーチの違い過ぎるはずのダガーでも十分に対処できてしまう。
「何だよ、『裏切り者のブレイド僧正官』さんよぉ!」
「今は『城将官』なんだがな」
溜め息を吐きながら、鎌を弾く。小高くなった丘の方からは、ガートレイとツクヨミの討ち合いの音が聞こえてくる。ガタイの良いガートレイ相手では、いくら手練れとはいえ女性のツクヨミでは不利かもしれない。
「お前の『願い』は何だった? 進軍するたびに口にしていたあの『願い』はよぉ?」
「『世界平和』、だ!」
「だが、お前はその平和的な願いすら、こうやって血に塗れなければ果たせないんだぜ? 戦場で散々、罪もない敵兵を討ち取った奴が、『世界平和』だなんて、ちゃんちゃらおかしいな!」
オレの言葉に、びくりとしたレオンハルトは、そのまま鎌を引いてしまう。
詰まらない。もっと絶望した顔を見せてくれよ。
何を願ったって結局は、誰かの犠牲が必要だってコトに気づいて、絶望に堕ちろよ。
「じゃあ、お前の『願い』は何なんだよ!?」
再び鎌を構えて俺に尋ねるレオンハルト。その瞳には何故か、まだわずかに希望が残っている。
「『世界征服』だ」
オレは黒軍に入ってから初めて、己の願望を口に出した。その望みに、シエルは驚いたような表情を見せる。王たる者であっても、考えなかった願いなのだろうか。
「……そんなんじゃ世界は救われない! ただの独裁は民に不満と反発を抱かせるだけだ!」
そう言いながら再びオレに向かってくるレオンハルト。
だが、甘い。
「世界を救うなんて考えちゃいないさ。ただ、レオンハルト。お前のその淡すぎる望みじゃ、何時まで経っても世界は『平和』になんてならないぜ」
甘い男だ。自身の能力を過信し、何でも望むとおりになると思っている。正真正銘の莫迦だ。
極めつけは――オレが「#僧正官_ビショップ_#」ではなく「#戦車番_ルーク_#」であることを忘れていたという事だ。
戦車から放たれた砲弾は、レオンハルトの身体を無残に砕いた。
「コレが白軍のエース様、ねぇ。世も末だな」
そう言ってレオンハルトの亡骸に一瞥を送る。シエルはオレの近くを着かず離れずの絶妙な位置取りで突っ立っている。
「そうだな、ブレイド。オレもそう思うよ」
そんなオレの言葉に答えたのはガートレイだった。いつの間にかオレ達の方へ距離を詰めていたらしい。――という事はやはりツクヨミはこの男にやられたのか。
「確かに、レオンの『願い』はふわふわしてて、掴みどころが無くて、現実感も無かった。でも、それでもオレ達のエースはアイツだったからね。みんな、アイツの言葉に勇気づけられて、それでここまで戦ってこられたんだと、オレは思ってるよ」
ガートレイはオレの横を素通りしてシエルの元へと向かう。阻止しようとするが、オレはいつの間にかガートレイの結界の中に閉じ込められていた。――何時からだ?
「ちなみにね、オレ達の新しい#王_キング_#はとにかく『逃げる』事が得意なんだ。ユニ様がいうには、精霊たちが味方してくれてるんだって。俺には良くわかんないけどね。ほら、君のところの戦車と女王がスッゴイ顔して追っかけ回してる」
遠くに見えるレインたちの攻防……というよりは鬼ごっこのようなものを見る。真白な長髪を風になびかせながら、双剣を持った少女が笑いながら走り回っている。その後ろをレインが追い掛け回し、リンゲージはなんとかユニの前に回り込もうと奮闘している。
「さて。ここでオレ達の現状に戻るとするんだけどね」
のんびりとした口調で、ガートレイは続ける。
「ブレイドはオレの結界で動けないし……まぁ動こうとしたらその瞬間に結界ごと消滅させるんだけど……それに相手の王様もこんなに近くにいる」
ガートレイは動かないシエルの方に手をポンと置いて、言った。
「#王手_チェック_#」
*****
【後書き】
人物データ
ユニは白のキング。白の髪にオレンジの瞳。武器は双剣。精霊を召喚する事が出来る。人懐っこい性格。黒のポーンに片思いされている。願い事は「不老不死」です。
チェス盤戦争http://shindanmaker.com/286476より
2015年1月24日 初出、小説家になろう投稿
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