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第二章
一 彼との顛末
しおりを挟む『今いい?』
『お前、本当に行ったんだ』
『行けって言ってたよね』
『ビッチ』
『話があるんだけど』
『俺にはねぇよ』
『わかった。じゃあね』
「……これで終わりでした」
俺は久しぶりに元恋人とのメッセージ履歴をスクロールし、隣に立つBさんに、ことの顛末を話し終えた。
今朝、地下鉄のホームでBさんに再会したのは偶然だった。
一年前のことだ。
俺はBさんと出会い、一晩、その腕で眠らせてもらった。そして別れた。
その後、恋人と別れた俺は大学四年生になり、いまは、就活を終えて、卒論の口頭試問を終え、講義はほぼなく、短期アルバイトに勤しんでいる。
アルバイト先を、Bさんの会社があるという駅ビル付近で探した。あわよくばもう一度Bさんに会えないかという邪な考えがあったことは否定できない。なにしろ、連絡先を知らなかったのだ。
オフィス階の二十階に会社があると言っていたのに、いつの間に移転したのか、しばらくして検索したときには、二十階は空きとなっていた。
マンションの場所もあやしく、しかも似たような高級マンションは乱立しているし、部屋番号もわからない。名前も知らない。
会おうと思えばいつだって会えるつもりだったから、二度と会えないかもしれないと思うと焦った。
結果的には再会した。アルバイトが忙しくなり、徹夜となった翌朝、帰宅しようと始発に乗ろうとしたら、電車を待つ列にBさんがいたのだ。
目が合ったとき、ほっとした。Aくん、と呼ぶ声も笑顔も、記憶のままだった。
オフィスが移転したので、電車通勤なのだという。話しを聞いてみれば、始発で行って終電で帰るBさんの生活は、俺がアルバイトをしている時間帯と正反対で、時計の針がまったく重ならないすれ違いの状態だった。
降車駅は異なり、俺のほうが先に目的地に到着してしまう。目で惜しがってしまい、Bさんは俺の駅で一度降りてくれた。
眠い目をこすりながら、立ち話をする。早く行かせてあげなきゃと思いながらも、Bさんは「ゆっくり話していいよ」と言い、その言葉に甘え、電車を何本も見送らせてしまった。
聞き終えたBさんは言った。
「彼には、君は勿体なかったですね。離れるべき人とは縁が切れるものです」
「……そういってもらえると、ほっとします。別れ方、あんまりよくなかったから」
俺は最低限でしかゼミに顔を出さなくなった。向こうも同じだった。会釈を交わす程度で、ゼミ以外では目も合わせない。もともと、付き合っていたことは誰も知らない。友人だということは知られていたが、友人関係が疎遠になっても、誰にも何も勘ぐられなかった。あっさりと、彼とは遠ざかった。
まるで、なかったことみたいに、消えてなくなった。何も感じないよう、心に蓋をしている今は、履歴を追わなければ、本当にあったのかさえ疑いたくなる。履歴を覗き込めば、当時の痛みが鮮明に蘇るのに。
別れましょうそうしましょうで円満に別れられるほうが珍しいよ、とBさんは微笑んだ。友達から始まったとしても、一度手放してしまった以上は、もとに戻ることはできない。
「実はね、Aくんが罰ゲームで来させられたかなと思っていたんです。事情は違ったけれど、あのとき抱かなくてよかったです」
俺は、曖昧に微笑んだ。
「あの話って、有効ですか?」
「何?」
俺は意を決して言った。
「……抱かれたくなったら大歓迎」
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