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最終章 社内、午前八時
九 低カロリービスケット
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「お疲れさま~」
社内システム。夕方。
水族館に付き合った後に解散して、会社を覗くと、断線したLANをつなげたのち、そのまま別の仕事をしているらしき社シスくんを発見。
水族館で低カロリーのビスケットを見つけたので、お土産に買って、持ってきた。四連になっていて、二十グラムずつ入っている幼児向けみたいなやつ。
社シスくんは久しぶりのお菓子を喜んでいる。さいきんお菓子をセーブしてるもんね。
だがいじけているので、デートのお土産ビスケットだとこすってくる。
「ラブラブ彼女と水族館ラブラブデート、か。彼女とはうまくいってない! なんて俺向けのリップサービス、よく言ったものですね」
と恨みがましい視線と怨嗟の声。
卑屈が過ぎるだろ。
「ブッブー! 残念。姉貴でーす!」
「はー? 証拠見せろや!」
姉に撮影させられた自撮り水族館デート写真を見せる。姉とイルカと俺。
姉も妹もそれなりに美人だけど元ヤンのギャル系なので、社シスくんの好みではないと思う。
「うお、結川と顔は似てるのに、お姉様ギャル……」
俺は社シスくんのとなりのスツールに掛けた。
「妹も顔似てるギャルだよ」
「ふーん。彼女とはうまくいってないままなのー?」
「うーん」
「そんなんさぁ、愛してる! ガバッ! ぶっちゅー! ハッピーエンッなんじゃないの?」
「映画じゃあるまいし……そんなの言うかね」
愛してるなんて、言ったことないよ。
言われたこともないし。
「えっ、じゃあどうやって付き合ったの? 俺いつも不思議なの。世の中の男女っていったいどうやって始まるの? 俺だけが一向に始まらないんだよ。いつ始まるの?」
俺だって女子と始まったことない。ひとのこと言えないけどそれは伏せる。
そういえば、高岡主任に、好きだって言われたことないな。
「装備が弱いんだよ」
「最初の村から出られん」
「まだチュートリアル」
「チュートリアルのまま三十歳になったよ?」
「えっ、誕生日? おめでとう! いつ?」
「今日。帰ったら誕生日パーティー。実家で。今日はチートデイだからたっぷり食べるんだ。ビスケットも全部食う!」
そう言いつつ、社シスくんはビスケット一袋だけにしている。俺は嬉しくなる。
なんだかんだいいながら、進歩してるじゃんね。ダイエットも板についてきてさ。
なんでも好きなように食べるチートデイを設定してる、つまり、ふだんはちゃんと抑制してるってことだ。やるじゃん。
以前は、ポテトチップス二袋を一息に開けて食い尽くして、「ポテトチップスは飲み物」といって憚らなかったのに。
ずいぶん成長したなぁ。
俺も成長しなきゃ。
高岡主任とよく話し合うんだ。
何か、見つけられるかもしれないから。別れることになったとしても、話さなきゃ。
「よし、いまからなら着いても電車で帰れるし、船橋まで歩こうか。付き合うよ」
「狂ってる……? あ、部長から頼まれてたメモリーカード渡しにいかなきゃ」
「おっけ。正面玄関で待ってるね」
「え、上こそ付き合ってよ。役員室なんか一人で行きたくないよ」
役員室と秘書課、経営企画、財務のあるフロアは、たしかに他のフロアとは雰囲気が異なる。
社シスくんの気持ちはわからないでもないけど、日頃どうやって仕事してるんだろ。
中央エレベーターでふたりで並ぶ。階段を使うか訊ねたものの、「階段昇降は死んでしまう」といって断られた。
フロアに着いて、俺は社シスくんの後ろをついていく。
一応まともな格好だけど、スーツではないし、休日だし、どこまで入っていいかな。雰囲気を見て引き返そう。
広いフロアは全面絨毯敷きで、壁を抜いたオープンなフロアをグリーンでゾーニングしていて、奥にガラス張りの役員室と会議室と資料室が並んでいる。だいぶ雰囲気の違う、おしゃれでスタイリッシュなエリアだ。
今日、このフロアは全員集合かな。重要な会議でもあるのかもしれない。
ふだんは平日メインだけど、重役と海外との折衝があるときは曜日や時間帯関係なく動いてる。そんな部署。
経営企画はシュッとしてる。財務はお堅そう。渉外のひとも混ざってる。
秘書課は華やかだな~。そもそも美しい弊社のお嬢様方。そのなかでも指折りの美女軍団。
と、高岡主任がいた。
俺には気づいていなくて、秘書のひとりと資料を見合わせて、何やら笑っていた。
社内システム。夕方。
水族館に付き合った後に解散して、会社を覗くと、断線したLANをつなげたのち、そのまま別の仕事をしているらしき社シスくんを発見。
水族館で低カロリーのビスケットを見つけたので、お土産に買って、持ってきた。四連になっていて、二十グラムずつ入っている幼児向けみたいなやつ。
社シスくんは久しぶりのお菓子を喜んでいる。さいきんお菓子をセーブしてるもんね。
だがいじけているので、デートのお土産ビスケットだとこすってくる。
「ラブラブ彼女と水族館ラブラブデート、か。彼女とはうまくいってない! なんて俺向けのリップサービス、よく言ったものですね」
と恨みがましい視線と怨嗟の声。
卑屈が過ぎるだろ。
「ブッブー! 残念。姉貴でーす!」
「はー? 証拠見せろや!」
姉に撮影させられた自撮り水族館デート写真を見せる。姉とイルカと俺。
姉も妹もそれなりに美人だけど元ヤンのギャル系なので、社シスくんの好みではないと思う。
「うお、結川と顔は似てるのに、お姉様ギャル……」
俺は社シスくんのとなりのスツールに掛けた。
「妹も顔似てるギャルだよ」
「ふーん。彼女とはうまくいってないままなのー?」
「うーん」
「そんなんさぁ、愛してる! ガバッ! ぶっちゅー! ハッピーエンッなんじゃないの?」
「映画じゃあるまいし……そんなの言うかね」
愛してるなんて、言ったことないよ。
言われたこともないし。
「えっ、じゃあどうやって付き合ったの? 俺いつも不思議なの。世の中の男女っていったいどうやって始まるの? 俺だけが一向に始まらないんだよ。いつ始まるの?」
俺だって女子と始まったことない。ひとのこと言えないけどそれは伏せる。
そういえば、高岡主任に、好きだって言われたことないな。
「装備が弱いんだよ」
「最初の村から出られん」
「まだチュートリアル」
「チュートリアルのまま三十歳になったよ?」
「えっ、誕生日? おめでとう! いつ?」
「今日。帰ったら誕生日パーティー。実家で。今日はチートデイだからたっぷり食べるんだ。ビスケットも全部食う!」
そう言いつつ、社シスくんはビスケット一袋だけにしている。俺は嬉しくなる。
なんだかんだいいながら、進歩してるじゃんね。ダイエットも板についてきてさ。
なんでも好きなように食べるチートデイを設定してる、つまり、ふだんはちゃんと抑制してるってことだ。やるじゃん。
以前は、ポテトチップス二袋を一息に開けて食い尽くして、「ポテトチップスは飲み物」といって憚らなかったのに。
ずいぶん成長したなぁ。
俺も成長しなきゃ。
高岡主任とよく話し合うんだ。
何か、見つけられるかもしれないから。別れることになったとしても、話さなきゃ。
「よし、いまからなら着いても電車で帰れるし、船橋まで歩こうか。付き合うよ」
「狂ってる……? あ、部長から頼まれてたメモリーカード渡しにいかなきゃ」
「おっけ。正面玄関で待ってるね」
「え、上こそ付き合ってよ。役員室なんか一人で行きたくないよ」
役員室と秘書課、経営企画、財務のあるフロアは、たしかに他のフロアとは雰囲気が異なる。
社シスくんの気持ちはわからないでもないけど、日頃どうやって仕事してるんだろ。
中央エレベーターでふたりで並ぶ。階段を使うか訊ねたものの、「階段昇降は死んでしまう」といって断られた。
フロアに着いて、俺は社シスくんの後ろをついていく。
一応まともな格好だけど、スーツではないし、休日だし、どこまで入っていいかな。雰囲気を見て引き返そう。
広いフロアは全面絨毯敷きで、壁を抜いたオープンなフロアをグリーンでゾーニングしていて、奥にガラス張りの役員室と会議室と資料室が並んでいる。だいぶ雰囲気の違う、おしゃれでスタイリッシュなエリアだ。
今日、このフロアは全員集合かな。重要な会議でもあるのかもしれない。
ふだんは平日メインだけど、重役と海外との折衝があるときは曜日や時間帯関係なく動いてる。そんな部署。
経営企画はシュッとしてる。財務はお堅そう。渉外のひとも混ざってる。
秘書課は華やかだな~。そもそも美しい弊社のお嬢様方。そのなかでも指折りの美女軍団。
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俺には気づいていなくて、秘書のひとりと資料を見合わせて、何やら笑っていた。
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