元カレが社内で迫ってくる

みつきみつか

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最終章 社内、午前八時

十五 好き(※)

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 またお風呂でしちゃってふらふら。

「徹平くん、平気?」
「あ、あついです……」

 のぼせながら脱衣場に出て、俺は膝がくがくで高岡主任におまかせして、拭いてもらったりスウェットを着せてもらったりした。
 着替えた高岡主任と一緒に歯を磨いて、寝室。常夜灯。高岡主任の腕枕でまったり。はあ、落ち着いたぁ。
 すごく静かだなぁ、このマンション。
 防音がしっかりしてて、寝室全部にローベッドを敷いて広くて天井が高くて、高岡主任のにおいに満ちている。
 高岡主任が乾かしたばかりの俺の横髪を手ぐしで丁寧に梳いてる。思わず目を閉じて堪能してしまうほど心地良い。

「寝られる? 暑かったね」
「あ、はい。大丈夫です」

 でも現実感がなくて、もう少しかかりそう。しばらくのあいだ、高岡主任がそうやってしているのを味わう。
 高岡主任は俺の手をとって、そっと指先を絡めた。約束をするみたいな仕草だった。

「徹平くんが不安にならないように、一所懸命がんばるから、そばにいてね」
「高岡さんにばかり頑張らせる気がして……」

 それ自体も不安。
 俺、足手まといだもん。
 できることなんもないよ。

「徹平くんがそばにいれば、僕は大丈夫」
「ほんとお荷物ですよ?」
「お荷物とは思わないけど、そんなにお荷物っていうならお荷物でいいよ。僕のお荷物になって、持っていかせて。大切にするから。それじゃあだめかな」

 そこまでいうなら、お荷物として堂々としていようか。
 捨てたくなったって簡単には捨てられないのだけ覚悟しておいてくれよな。
 まぁ、でも、もし高岡主任に他にいいひとが現れたら身を引くだけの分別は、忘れずに持って行こう。
 あと、ガチで荷物にはならないようにしよう。
 会社が居場所を用意してくれるんだから、そこでがむしゃらに頑張ろう。
 こうなったら置かれた場所で咲くしかない。

「何か余計なこと考えてる?」
「え」
「徹平くん、わりと顔に出るよ」
「……もし高岡さんに、好きなひとができたらって考えてました」
「あらそう」
「ちゃんと身を引きます……たぶん」

 高岡主任は俺を仰向けにころんと転がして、馬乗りになった。スウェットの上着を脱ぎ捨てて、俺の顎を掴む。

「ま、時間はこれからたっぷりあるわけだから、僕はきみにわかってもらえるように最大限努力しなきゃね」
「??」
「三年分取り返さないといけないし、そもそも片想い長かったし」

 高岡主任は俺のスウェットの下を脱がせて、一気に下着も脱がせた。
 さっき風呂場でしたばかりの敏感なそこに指が触れる。

「た、高岡さん」
「あれ? 修は?」
「修さん、またするんですか?」
「する」

 触って、といわれて触ると、スウェットを押し上げるそれはすっかり大きくなっている。
 俺の体で高岡主任が興奮してるんだと思うと、俺のほうも興奮してくる。
 さっき風呂場で挿入されたときの感覚がまだ体内に残っている。

「徹平くん」
「はい」
「あんまり触ると出ちゃうから」

 高岡主任は恥ずかしそうに俺の手を退けた。

「すみません」

 それからしばらく、キスをしたり、まったり触り合ったり。
 唇が触れると、どうしてこんなに幸せを感じるんだろう。体のどこが触れるよりもあたたかい。
 無理に入れなくてもいい、と言ってくれたけど、ローションでなかをぐにゅぐにゅ出入りされると、やっぱりつながりたくなるというか、大きいのが欲しくなる。一緒に気持ちよくなりたい。
 俺の体で気持ちよさそうにしているのを見ると、なんだか嬉しいんだ。

「修さん」
「挿れる? 大丈夫そう?」
「欲しいです……」
「おねだりかわいい……」

 ふたりとも横になったまま、俺は高岡主任に背を向けて、いわゆる背面側位。
 入ってくると密着感がすごいというか、腕を回されてバックハグが気持ちいい上に、下半身が繋がっていて、ものすごく興奮する。

「んっ、んっ、あっ、あ……」

 俺の首筋だったり、頬だったりをついばみながら突いてくる。
 背中を当ててる胸が熱くて汗ばんで、耳元でたまらなさそうに喘いでいる。

「っ、徹平くん、きもちい……」
「修さん、俺も……」

 尻の間をぬるぬる出入りする高岡主任の竿の長さがあまりに長くて、こんなに長いのが腹の中に入ってるんだと思うと、奥のほうが切なくなった。
 高岡主任が俺の顎をつかんでくる。唇が触れて、唇ごと食べられた。舌を激しくねじこまれて、貪られてる。

「ん、ふ、うぅ」

 上も下もおかしくなりそう。おかしくなってる。喘ぎ声を我慢できない。
 高岡主任のピストンに合わせて腰を押し付けたり、引いたり、あるいは引かれるのを追いかけるみたいに押し付ける。そのたびに内側をこすれる性器の感触に、電気が走るみたい。
 快感の波が強くなってきて、何も考えられずに腰を振りっぱなし。高岡主任が俺の腰を軽くつかんで、俺も手を後ろに伸ばして高岡主任の尻をつかんで、息を合わせて快感を追う。
 これのことしか考えられない。

「は、徹平くん、あ、う。きもちい」
「ん、んぅ、すき、あ、おなか、すご」
「っ、あっあっ、なか、とろとろ」
「きもち、あっ、修、さんっ、きもちい、あっ、すき」
「徹平くん、好き、あっ」

 ふたりで気持ちよくて同時に達して、息を整えるさなか、高岡主任が俺にひっついてきた。

「徹平くん……」
「初めて……」
「ん?」
「初めて好きって言われた」

 高岡主任、俺のこと本当に好きなんだ。
 そうやって笑うと、高岡主任は、それこそ初めて気付いたようで、

「え、言ったことなかった!?」

 と驚いた。

「現在進行形ではっきり言われたのは、初めてです……」

 会議室でやられたときに。「当時好きだった」とは言ってたけどさ。
 高岡主任は手元のティッシュで拭いたりしながら青ざめている。器用だ。

「え……嘘でしょ、僕」
「だからかな、好きかどうか、ちょっとわからなかったかも……」
「ええー……どうしよ」
「言ってもらえると……嬉しいですね……」

 それから高岡主任は寝間着を着せた俺にひっついて、「好きだよ」と囁き続けたのだった。
 寝るまで。
 寝落ちするときに、俺はやっと気づいたんだ。
 なーんにも考えずに、ただ幸せだった頃に戻りたいと思ってた。
 それは、俺だけが幸せ、という状況なのではなくて、高岡主任も幸せそうだったから、だからこそ、あのときに戻りたかった。
 俺、自分だけが幸せでは、納得できない。
 高岡主任に、幸せになってもらいたいんだ。
 だから明日からは、どんなに自信がなくても、後ろ向きな言葉は言わないでおこう。
 ふたりで幸せになれますように。それだけを考えてみよう。

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