元カレが社内で迫ってくる

みつきみつか

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番外編 ピロートーク(修視点)7話

一 齟齬

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 ピロートーク



「はぁ、気持ちよかった……」

 徹平くんは満足そうに目を閉じて言った。かわいい。
 はねた髪と口元がとくにかわいい。ぜんぶ好きだけど、とくに口元が好き。時折覗く白い八重歯がいっとうかわいい。
 抱き合った後、徹平くんの全身をホットタオルで拭いて、僕も拭いて二人でお揃いのスウェットに着替えて、ベッドに横たわっている。
 ベッドが広すぎるのが目下の悩みだ。もっと狭くすればよかった。ひとりのときは広々でいいけれど、ふたりのときはもっとくっつきたいので狭くていい。
 僕は仰向けで、横向きの徹平くんを腕枕する。徹平くんの髪から、僕の使っているコンディショナーの香りがする。汗をかいたせいか、いつもよりしっとりしている。
 触れる肌が心地良い。頬はもちもち。徹平くんの体温が気持ちいい。穏やかで優しい、眠るまでのひとときだ。徹平くんとのこんな時間がずっと続けばいい。

「よかった?」
「はいっ!」
「それならよかった。好きだよ、徹平くん」
「俺もっ! 修さん大好き! えへへっ!」

 肩に上掛けをかけてあげると徹平くんはふちを持って、僕の胸に頬を寄せて、僕をじっと見る。上目遣いがかわいい。かわいすぎる……。
 僕にしか見せない徹平くんの姿を堪能する。髪をおろしているのが幼くて、細い肩や背中、白い肌、なにもかも僕だけが知っている。

「ちょっと心配なんですけど、俺……乱れすぎじゃないですかね……。まだそんなにしてないのに、こんなに気持ちいいなんて……恥ずかしい……修さんが上手だからですよね?」

 僕は混乱した。
 何を言っているんだろう、この子。

「えっと……」
「……百戦錬磨の修さんに翻弄されてますね、俺」

 なぜか僕が百戦錬磨というレッテルを貼られている。
 口が裂けても言わないが、僕は徹平くん以外に経験がない。中学生以降、男ばかりの環境にいて、勉学と部活動と仕事に勤しんでいたら、ついぞその機会を逃したのだ。
 大学のときに女性に告白されて交際したことは何度かあったが、いずれも経験する前に振られた。僕からは手を出さなかったせいだ。
 それに――。

「まだそんなにしてない……っけ?」

 僕が訊ねると、徹平くんは指折り数えて首をかしげる。

「ちょっと慣れてきましたけど……五回目?」

 僕の混乱は極まった。
 徹平くん、まさか記憶喪失?

「島根でも、してたよ?」
「ほらあのときは……三回くらい? でしたよね?」

 ずいぶん……ずいぶん認識が違うようだ。
 僕は目を閉じる。

「……三回、泊まったかな」
「ですよねっ!」

 徹平くんの回数の数え方は、どうやら僕と違うらしい。
 そこで僕は、三年前の交際について思い出してみることにした。
 三回泊まって、合計十八回セックスした、当時のことを。

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