なぜか愛してくるイケメン年下セフレと事後メシを食べる話

みつきみつか

文字の大きさ
2 / 22
1 冬のカツ丼定食

二 夢じゃなかった

しおりを挟む
 歩いて五分のラブホテル。
 金曜日の午後八時前というわけで激戦。一室しか空いていなかった。
 いちばん狭い部屋。セックスをするための場所なのだから充分だ。あああああああ。本当に!? 俺たちこれから……うわあああああ。大興奮。
 クイーンサイズのベッドがでんと置いてあり、歩ける面積は激狭の、ベッドだけの部屋。緊張しすぎてどうにかなりそう。
 冬くんは俺を先に歩かせて、俺はベッドに倒れそうになりながら、帽子を脱いでコートを脱ぐ。スーツの背中をゆるく抱かれて、緊張は最高潮。

「ふふ。花火くん。やーっと会えて嬉しいです。初めてなのに、初めてって感じがしませんね。一年近くSNSでやり取りしてたからでしょうか」

 甘くて柔らかい声が心地いい。イケメンは声もいい。イケボ。素敵……。射精しそう。
 冬くんとはSNSで出会った。
 というか俺は、冬くんを一方的に知っていた。時々おすすめに出てくる、ファッション系サラリーマンでスーツがめちゃくちゃ似合う若い男の子。アパレル案件系で、顔出しはしていないものの雰囲気がばりばり出てて、フォロワー数は数十万単位。
 対して俺はゲイアカウント。
 といってもエロ系ではなくて、出先で外食写真をアップする食いしん坊ウケ野郎。たまに交流して誰かと寝ることもあるものの、メシの写真のほうが人気だからほとんどグルメアカウント。

「ふふ。ずっと会いたかったです。花火くんは?」
「おおおおれも……!」

 サービス精神旺盛の冬くん。お小遣いいるかな。手持ちあるっけ。たしか三万円は財布の中に入っている。もしそれ以上必要だったらATMに寄ってもらわないと……。冬くんにクレジットカード切れないし……。切れるなら限度額まで使っちゃうだろうけど……。
 背後からゆるく抱かれながら首筋に口づけられて、あったかくて唇が気持ちいい。いいにおい。冬くんは汗も髪も何もかもいいにおい。

「んっ、ふ、ふゆくん……」
「かーわいい声。ねー、キスしましょ」

 する。するするする。キスしていいならいくらでもしたい。
 ちゅ、と唇が触れて、それだけでイきそうになる……。
 ある時、冬くんに無言フォローされて、俺は飛びあがって驚いたものだ。
 何かの間違いだろうと思った。ただの飯テロアカウントだと思ってるとか。
 だが二十四時間経っても、四十八時間経っても、三日経ってもフォローされたままだったので、恐る恐る、フォローを返した。
 あのときも手が震えた。
 ちょうど仕事が立て込んでいて、出張が多くて出先で外食をすることが多い俺は、グルメアカと間違えられているんだったらこのままグルメアカのふりをし続けるほうがいいのでは……と思って、とにかくメシを美味しそうに撮影しまくった。冬くんの気を引きたくて。
 我ながらキモい。生きててすみません。
 冬くんからは、いいねがつくようになった。自己承認欲求が満たされまくり、脳内麻薬がドバドバ出た。
 あるとき、無言ですみませんと挨拶をされて、そこからはたまに表で絡んで、好きな食べ物や旅行先で盛り上がったらDMにしたり、時々通話もするようになった。
 今は、ネット上ではいちばん仲がいい。俺は。
 冬くんはもっとたくさんのひととリアルでもネットでも関わっているだろうから、冬くんから見た俺は、『名前を知ってる』程度だろうけれど、俺の暗闇よりも真っ暗な実生活に彩りを添えるただひとりの推しだ。
 推しって凄い。希望の光。
 こりゃみんな推しに沼るわけだよ。
 しばらくして、冬くんがゲイのタチだと知った。そのときまで俺は、自分がゲイでウケだと忘れていた。アイドルに熱狂するファンのように、話せるアイドルである冬くんにのめり込んでいた。冬くんの一挙手一投足に喜んでいた。
 つい一ヶ月前のことだ。
 近くに行くことがあったら遊びませんかと言われて、ももももちろんです! と答えた。
 そして先日、冬くんが大阪に来るというから、出会って一年、初めてのご対面。
 セックスするか訊いたのは、俺のほうだ。
 めっちゃくちゃ勇気を出して、もしよければセックスしますか、と訊いた。返事が来るまでの間、ずっと後悔していた。俺の発言はいつなんどきも後悔が付き物なのである。
 一回でいい。思い出にしたかった。
 NGなんて何もないから、冬くんの好きにされたかった。きっと一回会ったら、俺みたいな陰キャとはもうかかわりあいになりたくないだろうから、ワンチャンス。
 返事は来た。
 そして今に至る。あのとき勇気を出した俺、よくやった。
 ワイシャツとスラックス。ベルトを外して、ベッドに押し倒される。キスしながら。
 唇を食みあって、舌先で触れ合って、絡ませて、体温、におい。唾液。体中の毛が逆立っているのは、あまりにも気持ちいいせい。
 二センチメートルの距離。
 両手で頬を包まれながら真剣な眼差しで見据えられて、とろとろ。

「冬くん……」

 スラックスごしにお互いのそれが触れている。固くてぱんぱんに張ってる。冬くんも感じてる。吐息がやらしい。
 夢みたい。夢じゃなかった! 泣きそう。
 めっちゃ好き。めっちゃ推し。

「花火くん。えっちしましょ」

 とけそうー……。


しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

またのご利用をお待ちしています。

あらき奏多
BL
職場の同僚にすすめられた、とあるマッサージ店。 緊張しつつもゴッドハンドで全身とろとろに癒され、初めての感覚に下半身が誤作動してしまい……?! ・マッサージ師×客 ・年下敬語攻め ・男前土木作業員受け ・ノリ軽め ※年齢順イメージ 九重≒達也>坂田(店長)≫四ノ宮 【登場人物】 ▼坂田 祐介(さかた ゆうすけ) 攻 ・マッサージ店の店長 ・爽やかイケメン ・優しくて低めのセクシーボイス ・良識はある人 ▼杉村 達也(すぎむら たつや) 受 ・土木作業員 ・敏感体質 ・快楽に流されやすい。すぐ喘ぐ ・性格も見た目も男前 【登場人物(第二弾の人たち)】 ▼四ノ宮 葵(しのみや あおい) 攻 ・マッサージ店の施術者のひとり。 ・店では年齢は下から二番目。経歴は店長の次に長い。敏腕。 ・顔と名前だけ中性的。愛想は人並み。 ・自覚済隠れS。仕事とプライベートは区別してる。はずだった。 ▼九重 柚葉(ここのえ ゆずは) 受 ・愛称『ココ』『ココさん』『ココちゃん』 ・名前だけ可愛い。性格は可愛くない。見た目も別に可愛くない。 ・理性が強め。隠れコミュ障。 ・無自覚ドM。乱れるときは乱れる 作品はすべて個人サイト(http://lyze.jp/nyanko03/)からの転載です。 徐々に移動していきたいと思いますが、作品数は個人サイトが一番多いです。 よろしくお願いいたします。

オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?

中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」 そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。 しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は―― ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。 (……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ) ところが、初めての商談でその評価は一変する。 榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。 (仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな) ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり―― なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。 そして気づく。 「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」 煙草をくゆらせる仕草。 ネクタイを緩める無防備な姿。 そのたびに、陽翔の理性は削られていく。 「俺、もう待てないんで……」 ついに陽翔は榊を追い詰めるが―― 「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」 攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。 じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。 【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】 主任補佐として、ちゃんとせなあかん── そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。 春のすこし手前、まだ肌寒い季節。 新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。 風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。 何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。 拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。 年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。 これはまだ、恋になる“少し前”の物語。 関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。 (5月14日より連載開始)

おすすめのマッサージ屋を紹介したら後輩の様子がおかしい件

ひきこ
BL
名ばかり管理職で疲労困憊の山口は、偶然見つけたマッサージ店で、長年諦めていたどうやっても改善しない体調不良が改善した。 せっかくなので後輩を連れて行ったらどうやら様子がおかしくて、もう行くなって言ってくる。 クールだったはずがいつのまにか世話焼いてしまう年下敬語後輩Dom × (自分が世話を焼いてるつもりの)脳筋系天然先輩Sub がわちゃわちゃする話。 『加減を知らない初心者Domがグイグイ懐いてくる』と同じ世界で地続きのお話です。 (全く別の話なのでどちらも単体で読んでいただけます) https://www.alphapolis.co.jp/novel/21582922/922916390 サブタイトルに◆がついているものは後輩視点です。 同人誌版と同じ表紙に差し替えました。 表紙イラスト:浴槽つぼカルビ様(X@shabuuma11 )ありがとうございます!

先輩、可愛がってください

ゆもたに
BL
棒アイスを頬張ってる先輩を見て、「あー……ち◯ぽぶち込みてぇ」とつい言ってしまった天然な後輩の話

営業活動

むちむちボディ
BL
取引先の社長と秘密の関係になる話です。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

タトゥーの甘い檻

マリ・シンジュ
BL
執着系わんこ攻(大学生)× 高潔な美形教授受(30代) どのお話も単体でお楽しみいただけます。 ​「先生、ここ……僕の瞳を入れるから。ずっと、僕だけを見てて」 ​真面目な大学教授・新城が、大学生の・羽生にだけ許した、あまりにも淫らな「わがまま」。 ​それは、誰にも見えない内腿の奥深くに、消えないタトゥーを刻むこと。 「下書き」と称して肌を赤く染めるペン先の冷たさ。 アトリエの無機質なライトの下、四つん這いで晒される大人の矜持。 ​ずっと年下の青年の、必死で、残酷で、純粋な独占欲。 愚かだと知りながら、新城はその熱に絆され、ゆっくりと「聖域」を明け渡していく――。 ​「……お前のわがままには、最後まで付き合う」 ​針が通るその時、二人の関係は一生消えない「共犯」へと変わる。 執着攻め×年上受け、密やかに刻まれる秘め事のお話。

壁乳

リリーブルー
BL
ご来店ありがとうございます。ここは、壁越しに、触れ合える店。 最初は乳首から。指名を繰り返すと、徐々に、エリアが拡大していきます。 俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 じれじれラブコメディー。 4年ぶりに続きを書きました!更新していくのでよろしくお願いします。 (挿絵byリリーブルー)

処理中です...