その冷たいまなざしで

ココ

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紗奈 6 

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クールな目指しであまり喋らない速水さんは

やっぱり何だか壁があって 

でも さっきまで隣にいた感覚を思い出していた。

その周りにいると

守られている様な不思議な空間を作る人だった。

それなのに

見ていると 何だか胸が切なくなった。 


カウンターに移っていた彼は

長い脚に高い腰で余裕でバーの椅子に腰掛け

右手でグラスを傾けて。

冷たそうなのも素敵で 声をかけにくい雰囲気をつくり。


でもがんばって

「帰りますか?」

と声をかけた。

いや と否定する彼と

二人で居るには 申し訳なくて

 先に帰ろうとした。

冷たい目指しで

「岡崎さんも 付き合ってくれない?」

と 引き留められ。

どうやらまだ 居てもいいみたい。

少し心が暖かくなるのをなるべく気にしないようにした。


椅子に座る拍子に つまづいて。

速水さんに助けてもらった。



1杯目を飲み干して

何にするか悩んでいると 私の好みを聞いて

甘くて飲みやすいダージリンクーラーを速水さんがチョイスしてくれた。

うん 確かに。美味しい。

アルコールも高くないし。

バリエーションが増え 少し大人になった気分が味わえて嬉しくて。

口元が緩み ちょっと楽しくなってきた。

自分の世界に入ってたことに気づき 速水さんを見ると

こちらをじっと見ていて。

驚いて 凝視してしまった。

暫く見つめあっていたが 彼の方から目をそらした。

私は酔っていたのか それでもずっと彼の事を見ていて。

明日休みだった とか もう一杯だけ何か飲みたいな とか

考えながら それでもずっと彼の事を見ていた。

冷たさも感じなくて

何故か照れ臭ささえもなくて。

彼は 何か考えている様子でいたけど ゆっくりこちらを向き

私の何かを探るようにじいっと見つめた。


冷たいと思っていたその目は

よく見ると 目の奥が燃えるように情熱的で。

その目が真っ黒で男らしくて 

でも 煌めいていて。


やっぱり私は 吸い込まれる様に ひたすら彼を見つめていた。

情熱的なのに綺麗で澄んだ瞳は 

私を 動けないぐらいに 捕らえてしまっていた。
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